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第四章
第四章-01-
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まだTJ部隊に入隊する前の学生時代。輝斗は可もなく不可もなくの中間の成績で、特別優れているわけではなかった。学力も戦闘力も平均のため、教官からは部隊に配属されても無難に任務をこなす程度だろうと評価されていた。
注目される成績上位者はふたりいて、その中のひとりが幸弘だ。霊力は中間クラスだが、彼は誰よりも目と耳がいい。射撃の腕は学園内でもトップクラスで、特にライフルの扱いはピカイチだ。
そして、もうひとりは学年主席の男だった。
「輝斗、また残ってクラフトの練習か?」
実技室に残っていた輝斗に声を掛けた男は、明るい笑顔を浮かべながら近づいてきた。
「聖……」
赤紫の髪は猫っ毛で金色の瞳をした長身の男は、輝斗と同じ訓練生だ。名前を白瀬聖といい、輝斗とは寮も同室である。
「お前のクラフトって、確か加速と……」
「発火能力だ」
「そうそう、火を操るもんな。けど、いつまで経ってもコントロール出来ないって教官がぼやいてたが、まだ調子悪いのか?」
「……見てくれ」
嘆息してから、輝斗は手の平の上に炎を生み出す。赤い炎は、ゆらゆらと揺らめいているが、強くなったり弱くなったりと火力が不安定だ。
炎を覗き込んだ聖は、なるほどと納得する。
「発火能力の能力者は少ないからなぁ。威力はあるが、炎のコントロールが難しい。そのため、実技試験では上位になりにくいんだっけ」
「ああ。次の試験で失敗したら、補習だって教官に言われた。はあ……炎を維持するだけでも難しいのに、どうすればいいんだ」
炎を消し、輝斗はがっくりと肩を落とす。次も失敗したら、何度目の補習だろうか。いい加減、一発で合格したい。
「そう焦るなって。お前が努力家なのは教官も分かってる。練習を重ねれば、自在に炎もコントロール出来るようになるさ。俺も練習に付き合うよ」
「ありがとう」
学年主席の聖は困っている人を放っておけず、一緒に解決策を考えてくれる。自分の実力に決して驕らず、常に努力することを怠らない。彼は誰からも好かれていた。そんな聖の友人であることが、輝斗は誇らしかった。
「聖は凄いな。今日の実技でも幸弘を破って一番だった」
「正直、ギリギリだった。あいつに狙撃銃を持たせたら無敵だ。今日はアサルトライフルだったから、なんとか接近戦に持ち込んで勝てた。これが狙撃銃だったら勝てるか自信ない」
言い終わると、聖は苦い顔を浮かべた。無敵なのは聖も同じはずだが、そんな彼でさえ自信ないと語る幸弘もまた優れた狙撃手だ。
「ふたりに比べると、俺はまだ未熟だな」
「そんなことないさ」
輝斗の肩に手を置き、聖は笑みを深めた。
「お前と組んだおかげで、幸弘をおびき出せた。俺たちは最高のバディだ。今日の実技だって、俺たちの勝利だからな。俺の相方は輝斗、お前だけだ!」
聖の満面の笑顔に、輝斗も釣られて微笑する。
「俺も……聖と組めて嬉しい」
そうやって、彼はいつも自分を励ましてくれる。本来ならば、ひとりで何でもこなせるのに、いつも輝斗をサポートしてくれた。
優しくて、強くて、頼りになる聖は、輝斗の憧れの存在であり目標だ。
「あ、いたいた。輝斗、聖」
実技室に顔を出した幸弘は、輝斗と聖の元へ駆け寄ってきた。
「もうすぐ点呼の時間だよ。寮に戻ろう」
「分かった」
「もうそんな時間か。んじゃ、練習はまた今度な。寮に戻ろう」
輝斗を挟んで左右に聖と幸弘が立つ。これがいつもの定位置だ。
三人並んで歩きながら、今日の実技を振り返る。
「幸弘、次の実技は大差をつけて勝つからな!」
「どうかな? 今度こそオレが勝つよ」
「ふたりが本気を出したら、俺含めて他の奴らは傍観者になってしまうな」
苦笑を漏らす輝斗に、幸弘は眉根を下げる。
「いつも聖が勝負を挑んでくるから、每回ヒヤヒヤしてるよ。オレのバディもフォローしてほしいのに、決まって遠くで眺めてるだけだし……。酷いと思わない?」
「幸弘も大変だな」
こうした何気ない会話を、いつまで出来るのだろう。成績上位のふたりは、いずれエリート部隊に配属されるだろう。そうなれば、輝斗は別部隊に配属されて離ればなれになってしまう。
(寂しいな……)
仲良しごっこをするために、TJ部隊を目指しているわけではない。それは輝斗自身も充分理解している。けれども、叶うならば三人とも同じ配属先になりたい。
「輝斗、黙り込んでどうした?」
「何か考え事?」
「……別に。何でもない」
訝しむふたりに、輝斗は首を横に振って笑いかける。別部隊に配属されても、彼らと友達なのは変わらないはずだ。
(今、この瞬間を大切にしよう。学生の間は三人で過ごせるのだから)
そう思っていたのに――。
「ひ……じり……」
土砂降りの雨の中、輝斗は相棒の名前を呼ぶ。
「ぐ、あっ、あああっ、うあああああっ!」
自身の胸に手を当て、悶え苦しむ聖を見つめることしか出来ない。
――早く聖を助けないと!
そう思うのに身体が動かない。敵の攻撃によって、輝斗は弱りきっていた。
「輝……斗……」
聖が自分を呼んでいる。完全無欠の男が救いを求めているのに……。
「痛っ……」
上体を起こそうとすると、全身の関節が悲鳴をあげた。
(俺のせいだ……。俺を庇ったから、聖は……)
激痛に顔を歪めながら、輝斗は聖を救いたい一心で指に力を込める。
やっとの思いで上体を起こしたその時だ――。
――パァンッ。
破裂音が響き、聖の額の中心を一発の銃弾が貫いた。
「あ……」
その光景が、スローモーションのようにゆっくりと見える。仰向けに倒れようとしている彼を支えようと、輝斗は手を伸ばそうとするが……。
――ズドドドドドドドドドドドッ!
追い打ちをかけるように、集中砲火が襲いかかった。
「わあっ」
爆風に輝斗も吹き飛ばされる。ゴロゴロと転がり、全身泥だらけになりながら輝斗は首だけを動かす。
「聖……っ!?」
ようやく静かになった頃には景色が一変していた。
硝煙の臭いが鼻をつき、黒く立ち上る煙が視界を覆っている。先ほどの一斉攻撃で地滑りを起こしたのか、聖が立っていた場所そのものが、ごっそりと消えていた。
(崖の下で倒れているのかも。そうだ、ロープを……)
だが、輝斗の希望を打ち消すように、教官が発した言葉は――。
『諦めろ。彼は死んだ」
死んだ――。
「うああああああああああああああっ」
自分が弱いばかりに、聖を助けられなかった。
全部弱い自分のせいだ――!
× × ×
「――っ!!」
目を覚ました輝斗は、しばらくの間、天井を眺めていた。
さっきまで雨が降っていたはずだ。それなのに、この部屋は硝煙の臭いが漂っていない。黒い煙も立ち上っておらず、自分は怪我を負っていない。
――なにより、彼はもういない。
「……夢か」
また“あの頃”の夢を見た。
「はあ……」
緩慢な動作で上体を起こし、輝斗は重いため息を吐く。寝ている間に汗を掻いたのか、パジャマが肌に張り付いて気持ち悪い。乱れた呼吸を整えようと、数回深呼吸を繰り返す。
「これで何度目だ?」
八年間、ずっと悪夢を見続けている。いや、あれは夢ではない。過去にあった出来事だ。
「聖……」
大切な親友を失ったあの日から、輝斗は醒めない夢に囚われている。
この悲しみを、この憤りを、この痛みを……決して忘れてはならない。
全ては弱い自分が招いた悲劇なのだから――。
「強くならなければ……。誰にも頼らず、敵を倒す力を持たなければ、また繰り返す」
あんな悲しい想いを自分だけでなく、誰にも味わってほしくない。
そのためには心も体も強くならなければ……。
「大丈夫……。俺は大丈夫だ……」
心を落ち着かせようと、輝斗はベッドサイドに手を伸ばす。そこにはヒビの入ったラピスラズリの欠片が置かれていた。石を握り締め、胸元へ持っていく。
「……っ」
ぎゅっと目を閉じ、輝斗は俯いた。こうしていると、不思議と心が落ち着く。
――大丈夫、お前なら出来る。
そう励ましてくれるような気がするのだ。
八年前、あの大惨事から唯一現場に残っていた聖の遺品。それがラピスラズリの欠片だった。
注目される成績上位者はふたりいて、その中のひとりが幸弘だ。霊力は中間クラスだが、彼は誰よりも目と耳がいい。射撃の腕は学園内でもトップクラスで、特にライフルの扱いはピカイチだ。
そして、もうひとりは学年主席の男だった。
「輝斗、また残ってクラフトの練習か?」
実技室に残っていた輝斗に声を掛けた男は、明るい笑顔を浮かべながら近づいてきた。
「聖……」
赤紫の髪は猫っ毛で金色の瞳をした長身の男は、輝斗と同じ訓練生だ。名前を白瀬聖といい、輝斗とは寮も同室である。
「お前のクラフトって、確か加速と……」
「発火能力だ」
「そうそう、火を操るもんな。けど、いつまで経ってもコントロール出来ないって教官がぼやいてたが、まだ調子悪いのか?」
「……見てくれ」
嘆息してから、輝斗は手の平の上に炎を生み出す。赤い炎は、ゆらゆらと揺らめいているが、強くなったり弱くなったりと火力が不安定だ。
炎を覗き込んだ聖は、なるほどと納得する。
「発火能力の能力者は少ないからなぁ。威力はあるが、炎のコントロールが難しい。そのため、実技試験では上位になりにくいんだっけ」
「ああ。次の試験で失敗したら、補習だって教官に言われた。はあ……炎を維持するだけでも難しいのに、どうすればいいんだ」
炎を消し、輝斗はがっくりと肩を落とす。次も失敗したら、何度目の補習だろうか。いい加減、一発で合格したい。
「そう焦るなって。お前が努力家なのは教官も分かってる。練習を重ねれば、自在に炎もコントロール出来るようになるさ。俺も練習に付き合うよ」
「ありがとう」
学年主席の聖は困っている人を放っておけず、一緒に解決策を考えてくれる。自分の実力に決して驕らず、常に努力することを怠らない。彼は誰からも好かれていた。そんな聖の友人であることが、輝斗は誇らしかった。
「聖は凄いな。今日の実技でも幸弘を破って一番だった」
「正直、ギリギリだった。あいつに狙撃銃を持たせたら無敵だ。今日はアサルトライフルだったから、なんとか接近戦に持ち込んで勝てた。これが狙撃銃だったら勝てるか自信ない」
言い終わると、聖は苦い顔を浮かべた。無敵なのは聖も同じはずだが、そんな彼でさえ自信ないと語る幸弘もまた優れた狙撃手だ。
「ふたりに比べると、俺はまだ未熟だな」
「そんなことないさ」
輝斗の肩に手を置き、聖は笑みを深めた。
「お前と組んだおかげで、幸弘をおびき出せた。俺たちは最高のバディだ。今日の実技だって、俺たちの勝利だからな。俺の相方は輝斗、お前だけだ!」
聖の満面の笑顔に、輝斗も釣られて微笑する。
「俺も……聖と組めて嬉しい」
そうやって、彼はいつも自分を励ましてくれる。本来ならば、ひとりで何でもこなせるのに、いつも輝斗をサポートしてくれた。
優しくて、強くて、頼りになる聖は、輝斗の憧れの存在であり目標だ。
「あ、いたいた。輝斗、聖」
実技室に顔を出した幸弘は、輝斗と聖の元へ駆け寄ってきた。
「もうすぐ点呼の時間だよ。寮に戻ろう」
「分かった」
「もうそんな時間か。んじゃ、練習はまた今度な。寮に戻ろう」
輝斗を挟んで左右に聖と幸弘が立つ。これがいつもの定位置だ。
三人並んで歩きながら、今日の実技を振り返る。
「幸弘、次の実技は大差をつけて勝つからな!」
「どうかな? 今度こそオレが勝つよ」
「ふたりが本気を出したら、俺含めて他の奴らは傍観者になってしまうな」
苦笑を漏らす輝斗に、幸弘は眉根を下げる。
「いつも聖が勝負を挑んでくるから、每回ヒヤヒヤしてるよ。オレのバディもフォローしてほしいのに、決まって遠くで眺めてるだけだし……。酷いと思わない?」
「幸弘も大変だな」
こうした何気ない会話を、いつまで出来るのだろう。成績上位のふたりは、いずれエリート部隊に配属されるだろう。そうなれば、輝斗は別部隊に配属されて離ればなれになってしまう。
(寂しいな……)
仲良しごっこをするために、TJ部隊を目指しているわけではない。それは輝斗自身も充分理解している。けれども、叶うならば三人とも同じ配属先になりたい。
「輝斗、黙り込んでどうした?」
「何か考え事?」
「……別に。何でもない」
訝しむふたりに、輝斗は首を横に振って笑いかける。別部隊に配属されても、彼らと友達なのは変わらないはずだ。
(今、この瞬間を大切にしよう。学生の間は三人で過ごせるのだから)
そう思っていたのに――。
「ひ……じり……」
土砂降りの雨の中、輝斗は相棒の名前を呼ぶ。
「ぐ、あっ、あああっ、うあああああっ!」
自身の胸に手を当て、悶え苦しむ聖を見つめることしか出来ない。
――早く聖を助けないと!
そう思うのに身体が動かない。敵の攻撃によって、輝斗は弱りきっていた。
「輝……斗……」
聖が自分を呼んでいる。完全無欠の男が救いを求めているのに……。
「痛っ……」
上体を起こそうとすると、全身の関節が悲鳴をあげた。
(俺のせいだ……。俺を庇ったから、聖は……)
激痛に顔を歪めながら、輝斗は聖を救いたい一心で指に力を込める。
やっとの思いで上体を起こしたその時だ――。
――パァンッ。
破裂音が響き、聖の額の中心を一発の銃弾が貫いた。
「あ……」
その光景が、スローモーションのようにゆっくりと見える。仰向けに倒れようとしている彼を支えようと、輝斗は手を伸ばそうとするが……。
――ズドドドドドドドドドドドッ!
追い打ちをかけるように、集中砲火が襲いかかった。
「わあっ」
爆風に輝斗も吹き飛ばされる。ゴロゴロと転がり、全身泥だらけになりながら輝斗は首だけを動かす。
「聖……っ!?」
ようやく静かになった頃には景色が一変していた。
硝煙の臭いが鼻をつき、黒く立ち上る煙が視界を覆っている。先ほどの一斉攻撃で地滑りを起こしたのか、聖が立っていた場所そのものが、ごっそりと消えていた。
(崖の下で倒れているのかも。そうだ、ロープを……)
だが、輝斗の希望を打ち消すように、教官が発した言葉は――。
『諦めろ。彼は死んだ」
死んだ――。
「うああああああああああああああっ」
自分が弱いばかりに、聖を助けられなかった。
全部弱い自分のせいだ――!
× × ×
「――っ!!」
目を覚ました輝斗は、しばらくの間、天井を眺めていた。
さっきまで雨が降っていたはずだ。それなのに、この部屋は硝煙の臭いが漂っていない。黒い煙も立ち上っておらず、自分は怪我を負っていない。
――なにより、彼はもういない。
「……夢か」
また“あの頃”の夢を見た。
「はあ……」
緩慢な動作で上体を起こし、輝斗は重いため息を吐く。寝ている間に汗を掻いたのか、パジャマが肌に張り付いて気持ち悪い。乱れた呼吸を整えようと、数回深呼吸を繰り返す。
「これで何度目だ?」
八年間、ずっと悪夢を見続けている。いや、あれは夢ではない。過去にあった出来事だ。
「聖……」
大切な親友を失ったあの日から、輝斗は醒めない夢に囚われている。
この悲しみを、この憤りを、この痛みを……決して忘れてはならない。
全ては弱い自分が招いた悲劇なのだから――。
「強くならなければ……。誰にも頼らず、敵を倒す力を持たなければ、また繰り返す」
あんな悲しい想いを自分だけでなく、誰にも味わってほしくない。
そのためには心も体も強くならなければ……。
「大丈夫……。俺は大丈夫だ……」
心を落ち着かせようと、輝斗はベッドサイドに手を伸ばす。そこにはヒビの入ったラピスラズリの欠片が置かれていた。石を握り締め、胸元へ持っていく。
「……っ」
ぎゅっと目を閉じ、輝斗は俯いた。こうしていると、不思議と心が落ち着く。
――大丈夫、お前なら出来る。
そう励ましてくれるような気がするのだ。
八年前、あの大惨事から唯一現場に残っていた聖の遺品。それがラピスラズリの欠片だった。
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