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第四章
第四章-06-
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「……ぅ、っ」
一度に大人数を連れて飛んだ負荷がかかったのか、忍は崩れるように倒れた。
「大丈夫!?」
「……大丈夫じゃねぇ」
羽鳥が肩を貸して、やっと立ち上がれる状態だ。顔面蒼白で呼吸も荒く、大量の汗をかいている。
「敵が追ってくるかもしれない。出来るだけ遠くへ逃げよう」
一度背後を振り返ってから羽鳥が促し、輝斗たちは歩き出す。
「あ、いたいた。みんな~、遅れてごめんね!」
「うわあ、輝斗くんも忍さんもボロボロだし」
そこに嵐と威が駆けつけてきた。
「お前ら、遅ぇ……。今まで何処にいやがった?」
こっちは大変な目に合ったんだぞ、と忍は有りっ丈の想いを込めて睨みつけている。
「オレたちだって急いでたんだからね。ちゃんと千景さんのナビ通りに移動してても、この辺って似たような建物がいっぱいあるから分かり難くてさぁ」
「それで迷っちゃった。ごめんね」
言い訳をする嵐と両手を合わせて謝罪する威に、忍の怒号が響き渡る。
「ふざけんなああああああああああっ!」
「わっ、急に怒鳴らないでよ」
「ごめんなさい~っ!」
「三人とも落ち着いて。隊長と千景さんがいる所まで引き返そう。ね?」
羽鳥が間に入って忍をなだめながら、ふたりにも話しかける。
「……チッ、行くぞ」
舌打ちをし、忍も足を踏み出す。その横で羽鳥は小さく安堵の息をついていた。
しばらくして、入り組んだ道を移動している中、それまで沈黙していた輝斗がぽつりと呟いた。
「聖が生きていたなんて……」
「そうだね……」
暗い表情の輝斗と幸弘を交互に見て、嵐と威は不思議そうに目を瞬かせた。
「ふたりともどうしたの?」
「いつもの輝斗くんらしくないね」
「うん……さっき色々あったんだ」
言葉を濁しながら羽鳥が答える。
「あいつ、聖って言ったか。知り合いなのか?」
「ちょっと、忍」
羽鳥も敢えて質問するのを避けていたのに、直球で尋ねる忍に冷や汗を滲ませる。だが輝斗は質問に答えず、自身と対話しているかのように言葉を続けた。
「聖が悪魔と契約してた……。俺たちの敵……」
「輝斗……」
声が震えている。幸弘が気遣うように名前を呼ぶが届いていない。
「でも……生きてた」
緋色の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「生きて……た……っ」
それから堰を切ったようにあふれ出したので、周囲の者たちがぎょっとする。あの人形のように無表情な輝斗が涙を流しているのだから一大事だ。
「輝斗、泣かないで」
「マジかよ」
「わわっ、どうしよう」
「嘘でしょ、あの輝斗くんが泣いてるんだけど!?」
「ええっ? ほんとに何があったの!?」
動揺する一同は、とりあえず一旦立ち止まることにした。
「うっ……うぅっ……」
顔をくしゃくしゃにして泣いている。
「ずっと会いたかったんだよね」
泣きじゃくる輝斗を抱き寄せ、幸弘は背中を優しく叩いている。
「東、どういうことか説明しろ。あの聖って奴は神条の何だ?」
輝斗がここまで大泣きするのを初めて見たのは忍だけではない。他の者たちも動揺を隠せなかった。
幸弘は忍の顔を見た後、複雑そうな表情を浮かべて地面に視線を落とした。やがて、覚悟を決めたのか口を開く。
「彼の名前は白瀬聖。オレと輝斗の親友で……元TJ部隊の候補生だった」
「なんだと……?」
候補生とはいえ自分たちと同じ仲間だとは思っていなかったので、忍たちは瞠目した。
一度に大人数を連れて飛んだ負荷がかかったのか、忍は崩れるように倒れた。
「大丈夫!?」
「……大丈夫じゃねぇ」
羽鳥が肩を貸して、やっと立ち上がれる状態だ。顔面蒼白で呼吸も荒く、大量の汗をかいている。
「敵が追ってくるかもしれない。出来るだけ遠くへ逃げよう」
一度背後を振り返ってから羽鳥が促し、輝斗たちは歩き出す。
「あ、いたいた。みんな~、遅れてごめんね!」
「うわあ、輝斗くんも忍さんもボロボロだし」
そこに嵐と威が駆けつけてきた。
「お前ら、遅ぇ……。今まで何処にいやがった?」
こっちは大変な目に合ったんだぞ、と忍は有りっ丈の想いを込めて睨みつけている。
「オレたちだって急いでたんだからね。ちゃんと千景さんのナビ通りに移動してても、この辺って似たような建物がいっぱいあるから分かり難くてさぁ」
「それで迷っちゃった。ごめんね」
言い訳をする嵐と両手を合わせて謝罪する威に、忍の怒号が響き渡る。
「ふざけんなああああああああああっ!」
「わっ、急に怒鳴らないでよ」
「ごめんなさい~っ!」
「三人とも落ち着いて。隊長と千景さんがいる所まで引き返そう。ね?」
羽鳥が間に入って忍をなだめながら、ふたりにも話しかける。
「……チッ、行くぞ」
舌打ちをし、忍も足を踏み出す。その横で羽鳥は小さく安堵の息をついていた。
しばらくして、入り組んだ道を移動している中、それまで沈黙していた輝斗がぽつりと呟いた。
「聖が生きていたなんて……」
「そうだね……」
暗い表情の輝斗と幸弘を交互に見て、嵐と威は不思議そうに目を瞬かせた。
「ふたりともどうしたの?」
「いつもの輝斗くんらしくないね」
「うん……さっき色々あったんだ」
言葉を濁しながら羽鳥が答える。
「あいつ、聖って言ったか。知り合いなのか?」
「ちょっと、忍」
羽鳥も敢えて質問するのを避けていたのに、直球で尋ねる忍に冷や汗を滲ませる。だが輝斗は質問に答えず、自身と対話しているかのように言葉を続けた。
「聖が悪魔と契約してた……。俺たちの敵……」
「輝斗……」
声が震えている。幸弘が気遣うように名前を呼ぶが届いていない。
「でも……生きてた」
緋色の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「生きて……た……っ」
それから堰を切ったようにあふれ出したので、周囲の者たちがぎょっとする。あの人形のように無表情な輝斗が涙を流しているのだから一大事だ。
「輝斗、泣かないで」
「マジかよ」
「わわっ、どうしよう」
「嘘でしょ、あの輝斗くんが泣いてるんだけど!?」
「ええっ? ほんとに何があったの!?」
動揺する一同は、とりあえず一旦立ち止まることにした。
「うっ……うぅっ……」
顔をくしゃくしゃにして泣いている。
「ずっと会いたかったんだよね」
泣きじゃくる輝斗を抱き寄せ、幸弘は背中を優しく叩いている。
「東、どういうことか説明しろ。あの聖って奴は神条の何だ?」
輝斗がここまで大泣きするのを初めて見たのは忍だけではない。他の者たちも動揺を隠せなかった。
幸弘は忍の顔を見た後、複雑そうな表情を浮かべて地面に視線を落とした。やがて、覚悟を決めたのか口を開く。
「彼の名前は白瀬聖。オレと輝斗の親友で……元TJ部隊の候補生だった」
「なんだと……?」
候補生とはいえ自分たちと同じ仲間だとは思っていなかったので、忍たちは瞠目した。
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