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第四章

第四章-07-※

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 ジュブジュと卑猥な水音が、娼館の一室にあるベッドの上で淫らに響いていた。
「あっ、は――ぁ、んっ」
 骨張った大きな手がフェイの腰をがっしりと掴み、激しく突き上げてくる。その度に華奢な身体は大きく揺さぶられた。呼吸もままならない強い打ち付けに頽れそうになるのを背後の男が許さない。
「もっと頑張れるだろう?」
「は、い……」
 荒い呼吸で促され、フェイは弱々しく返事をする。
 だぼついた上着はそのままに、下だけ脱がされた状態で後ろから犯されていた。正面よりも背後からの方が、より深く繋がれるからだ。
(今日のお客さんは、ちゃんとお金を払ってくれるから良かった)

     × × ×

「きみ、可愛いね」
 買い物帰り、自宅を目指していたフェイを初老の紳士が声をかけてきた。
「僕ですか……?」
「そう、きみだ。娼館街にいるということは、?」
 含みのある問いに、フェイはコクリと首を縦に振る。
「はい……そうです」
「私は、きみのような子が好みなんだ。いくらだい?」
 褐色肌の少年を抱くのが趣味らしく、通りすがりにフェイを見つけてひと目で気に入ったらしい。
「えっと……このくらい、です」
 手のひらを見せ、指を折り曲げる。算数は得意ではないが、一回いくらかはボスに教えて貰った。その数字を見せれば、客の方が察するらしい。
「おや、そんなに安いのか。じゃあ、少し弾むから、一晩私のものになってくれないか? どうだろう?」
「あ……」
 前に手ひどく痛めつけられた身体のため本調子ではなかったが、少しでもお金を稼げるのなら、とフェイは少し考えてから男の誘いに乗ることにした。
「分かりました。旦那様、よろしくお願い、します……」
 承諾したフェイに微笑んだ男は「おいで」と手を差し伸べ、近くの娼館へ連れ込むと部屋代を支払ってすぐに行為に及んだ。
「服はそのままでいい。私が脱がそう」
「はい……」
 ベッドの上に寝かされたフェイは言われたとおり、男の好きなようにさせた。
「んっ……」
 服の上から体格を確かめるように大きな手が触れてくる。
「細いな……。ちゃんとご飯は食べてるのかい?」
「あんまり……です」
「そうか……。じゃあ、私の報酬で、栄養のあるものを食べるといい」
「はい……あっ」
 下着ごとズボンを下ろされ、外気に触れた大腿が粟立つ。
も、なんて愛らしいんだ」
「んんっ」
 包むようにフェイのものを片手で握り込むと、やわやわと揉み出した。やがて、じんわりと熱を帯びたそれから先走りの濡れた音が耳朶を打つ。
「感度がいいね」
「はぁ、あっ、ん」
「実に美味しそうだ……んっ」
「あんっ」
 最初は執拗にフェイのものを舐めたり吸い付いたりして楽しんでいた。
 ためらいもなく口に含まれ、フェイは生暖かいぬめった舌の感触に背中をのけぞらせる。時折歯を立てられ、ジンとした甘い痺れに我慢できず、甘い声で啼いた。
「ふふっ、気持ちいいかい?」
「は、い……もっとくださ、い。あっ、あんっ、そこ……もっとぉ」
 申し訳程度に生えている茂みも唾液と先走りで、しとどに濡れている。喉の奥まで飲み込もうとするかのように、男はフェイのものをしゃぶりつづけた。
「ひゃんっ」
 不意に、左手でフェイの袋を摘まむように揉まれ、甲高い声を上げてしまう。
「あ、ああ……旦那様……あっ、んんっ」
 可愛い、可愛いとフェイのものを袋まで堪能し、白濁を吐き出すまでざらついた舌でじっくりと味わっていた。
「はあはあ……」
「今度は、きみが奉仕してくれるかな?」
「はい、旦那様……」
 それから自分のものも可愛がってほしいと強請り、フェイは大きな彼のものを口いっぱいに含んで奉仕した。だんだんと口腔内で硬く、大きくなっていくそれを懸命に喜ばせようと持てる技量で楽しませた。
「ふっ――」
 やがて男は低い声で呻き、フェイの中で射精した。
「んんっ」
「飲みなさい」
「んぅっ……」
 飲み干すように命じられ、フェイは迷うことなく喉を鳴らして全て飲み込んだ。
「いい子だ。きみに声を掛けて、本当に良かった。さあ、もっと楽しもう」
「旦那様の望む通りに……」

     × × ×

 そして、今に至る――。フェイの小さな窄まりに深々と楔を打ち込まれ、激しく腰を振り出した。
 金払いはいい男だが年齢の割にとにかく行為が長く、一度果てただけでは満足出来ずに既に三回目だ。
「はうっ、あ――おっ、ふっ……ああっ」
 先に吐き出された白濁でフェイの中はグチャグチャだ。抜き差しをするたびに細かい泡が立ち、グプリと嫌らしい音を立ててあふれ出す。
「いいね……とてもいいよ」
「おっ、あ、ああーっ」
 奥まで当たっている。
 一際強い快楽の波が押し寄せ、フェイはよだれを垂らしながら嬌声を上げた。
「ここがいいのかい?」
「あ、んっ、んっ、んんー!」
 ビュクリ、とフェイの先端から白濁が吐き出される。あまり量は出なかったのは、連続で行為に及んでいるからだ。
「いい子だね。ご褒美をあげよう」
「んん~~~~~っ!!!」
 吐精したばかりで全身が痙攣している中、抉るような突き出しにフェイの意識が一瞬飛んだ。
「あ……」
「可愛いね。本当に、可愛い……」
 男が満足したのは、更に二度行為に及んだ後だった――。

     × × ×

「ありがとう。とても楽しかったよ」
 身なりを整えた男は先に部屋を後にした。
 フェイは疲れ果てて最後の方は意識を失っていたが、男は逃げることなく目を覚ますまで傍にいてくれた。少し弾んでくれたお金を握り締め、フェイは小さく息をつく。
「……帰らなくちゃ」
 汚れた身体をバスルームで洗い流して衣服を整えると、ベッドサイドに置きっぱなしにしていた紙袋を持って部屋を出た。
 外はすっかり日が落ちている。
「っと……気をつけて歩こう」
 何度かふらついて転びそうになるが、フェイは荷物を落とさないように気を配りながら帰路についた。
 トタン屋根に薄い壁の小さな二階建てのアパートは、フェイと似たような境遇の子供たちがひしめいている。錆びだらけの階段を上り、右から四番目の部屋の前に立つと、フェイはポケットから鍵を取り出した。
「ただいま」
 施錠を解除し、ドアノブに手を回すと中に入る。決して広くないワンルームだが、最低限の生活が出来れば充分だ。生きていくのに精一杯なフェイにとって、屋根付きの家に住めるだけマシだと思っている。
 玄関で靴を脱ぎ、真っ直ぐベッドへと向かう。そこには、かなり大柄な男が横になっていた。ベッドのサイズが小さすぎるのか長い足が飛び出している。男は上体を起こし、フェイを出迎えた。
「おかえり」
 微笑を浮かべる男に、フェイは無邪気な笑顔を見せる。
「うん!」
 男は銀色の長い髪に灰色の瞳をしていた。彫りの深い顔立ちをしており、逞しい体つきをしている。その厚い胸板には包帯が巻かれていた。
 フェイが近づくと、男は鼻をスンと鳴らす。
「雄の臭いがする」
「あ……ちゃんと洗ったんだけど分かっちゃった? 買い物の後、仕事もしてたから」
「怪我が治っていないのに、雄と交尾をして大丈夫なのか?」
 心配そうな男にフェイは頷く。
「ちょっと疲れちゃったけど、平気だよ」
「そうか……」
「今日ね、親切な人が無償でお金をくれたんだ。仕事で貰ったお金もあるし、これなら満足な食事と治療が出来るよ」
 紙袋の中身を嬉しそうに見せるフェイの頭を、男は優しく撫でる。
「僕よりも傷が深いでしょ。早く元気になるといいね」
 フェイは男に抱きつき、頬をすり寄せた。包帯の上に耳を当てると心臓の鼓動が聞こえる。トクトクと規則正しいその音に、フェイは安堵のため息を零す。

「こんばんは、レナート」

 ふたりきりの室内に、知らない男の声が響いた。
「誰……?」
「…………」
 怯えるフェイを抱き寄せ、男は薄暗い室内の一点を凝視する。
 何もない空間から、突如人の手がぬっと飛び出してきた。
「ひっ」
 小さな悲鳴を上げ、フェイはレナートと呼ばれた男にしがみつく。
 それは白い手袋をしており、ステッキが握られている。最初は腕だけだったが、次第に人の形になった。
「土足で失礼しますよ。おっと……狭いですね」
 狭い室内に姿を現したのは全身を真っ白なスーツで包み、鮮やかな青いタイをしている長身の男だ。灰金髪プラチナブロンドの長髪と青緑色の瞳を持つ異国の風貌をしている。
 彼の背後には、肩の上で綺麗に切りそろえられた黒檀を連想させる髪に赤紫の瞳が印象的なロングスカートのメイドが控えていた。
「何の用だ?」
 突然の訪問者を警戒しているのか、レナートは低い声で唸った。
「そう睨まないでください。私はキミを助けに来たのです」
「助けだと?」
「実は悪魔狩りの連中が、キミを捜しているようでして。ああ、安心してください。私の仲間が追い払ってくれましたから」
 にこやかな笑顔で話す男は、手にしていたステッキで軽く床を突いた。
「ですが、ここもいずれ連中に見つかるでしょう。早々に移動した方がいい」
「……分かった」
「レナート行っちゃうの?」
 ベッドから降りようとするレナートを、フェイが引き留める。
「フェイ、世話になった」
「行かないで!」
 目にいっぱいの涙を溜め、フェイはレナートの腰に抱きついた。
「まだ傷も治ってないんだよ? ここにいて……」
「もう充分だ。悪魔狩りの連中がオレを捜してる。お前に迷惑をかけたくない」
 ぶんぶんと首を横に振って、フェイは抱きしめる手に力を込める。
「僕の傍にいて。ひとりにしないで……」
 レナートを見上げるフェイの目から涙があふれ出す。
「フェイ……」
 泣きじゃくるフェイの頭を撫でながら、レナートは困惑した表情を浮かべる。簡単に引き剥がすことも可能だが、彼自身も離れることを躊躇っていた。
 フェイが、どんな暮らしをしてきたのか短い間だが共に暮らしてきて分かった。子供が身体を売ってお金を稼がなければならない過酷さに胸が痛んだ。もっとずる賢かったら、要領よく生きられただろう。レナートにとって、人間など魂を得るための肉塊でしかない。そう思っていたのに、目の前の少年は違った。欲望と絶望が渦巻くスラムで、フェイは純粋な心を失わず、優しい心を持っている。
 狼男であるレナートを恐れず、それどころか綺麗だと笑った。
 こんなにも血で汚れた獣に対して、恐れるどころか笑顔を向けてくれた唯一の人間だ。
「ひっく……。お願い……行かないで」
「その少年を連れて行っても構いませんよ」
「なんだと!?」
 予想外の言葉に、レナートは大きく見開く。
「……いいの?」
 涙目でフェイも男に確認する。
「いいですよ。レナートと一緒にいたいのでしょう?」
「ありがとう、お兄さん!」
「はい、どういたしまして」
「本当に……いいのか?」
「ええ」
 ようやくレナートの表情が和らいだ。
「さあ、時間がありません。仕度をしてください」
「はい!」
 フェイは必要最低限の荷物を詰めた鞄を提げ、レナートの横に立った。元々、財産と呼べるものはほとんどない。
「行こう」
「うん!」
 差しのばされた大きな手を握り返し、フェイは歩き出す。
「…………」
 アパートを出たふたりを見送ったメイドは主人へ向き直る。
「よろしいのですか?」
「ええ。愛玩動物くらい与えてやりましょう。それよりも……」
 男は優雅な動作で身体の向きを変えると、メイドと向き合う。
「悪魔狩りの中に、気になる人物がいます。アキトとユキヒロと言いましたか……。彼のことを“聖”と呼んでいましたね。かつての友のようですが興味深い」
 ふふっと声に出して笑う。
「そのふたりのことを調べてもらえますか?」
「畏まりました」
「頼みましたよ」
 恭しく頭を下げたメイドに、男は嬉しそうに目を細めた。
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