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第五章
第五章-08-
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一方、威と嵐、羽鳥の三人は奥の墓地で悪霊と対峙していた。
「ふう……。魂を持っている悪霊は、あらかた片付いたね」
羽鳥は物体移動のクラフトを使い、千景が転送してくれた式神に回収した被害者たちの魂を託した。
たおやかな女性の姿をした式神は渡された魂を壊さないように大切に抱えると、一礼して飛び立った。遠くなっていく姿を見送り、羽鳥は嵐の方へ向き直る。
「あとは侑李と美華か……。嵐、居場所は特定できそう?」
暗闇の中では嵐の予測感知能力が頼りだ。
「うん、このまま真っ直ぐ進んだ先に――っ!?」
先導していた嵐が立ち止まった。
「ふたりとも下がって!」
言うや否や、嵐はベルトに手を伸ばす。投擲ナイフを数本引き抜くと、空に向かって投げた。
――キィンッ、バチッ!
金属音と共に小さな火花が散る。何者かがナイフを弾き飛ばしたのだ。
闇の中に、誰かいる――。
「ちょっと危ないじゃない」
「気配を消してたのにバレてたか」
聞き覚えのある声に、嵐は思いっきり顔をしかめる。
「最悪……一番会いたくない奴だし」
嵐は指の間にナイフを挟み、四方へ投げた。
近くの木の幹や地面に突き刺さったそれらは、刃の部分が光を放ち周囲を明るく照らした。ナイフに術をかけ、照明弾代わりにしたのだ。
「あたし、輝斗ちゃんと忍ちゃんの相手をしたかったわ。よりにもよって、なんで小僧なのよ」
漆黒の翼を羽ばたかせ、カオルとヤマトが姿を現した。彼らが地面に降り立つと、翼はバラバラと散らばり、黒い羽根となって四散する。それらは地面に降り積もる前に塵となって消えた。
「それはこっちの台詞だし。おじさんと当たって気分悪いんだけど」
「お姉さんと呼びなさい。クソガキ」
「オッサンこそ、オレのこと美少年って呼んだら?」
嫌味の応酬だ。視線がぶつかり、火花が散っているような錯覚を覚える。
「お前たちも元は人間だろ? どうして、悪魔と契約なんて愚かな真似をしたんだ?」
羽鳥の質問に、カオルとヤマトはきょとんとした表情を見せた。
「アスモデウスは、あたしの願いは面白いって乗ってくれたの」
カオルは、ゆったりとした動作で腕を上げると自身の頬に手を添えた。
対してヤマトは真顔で答える。
「正義ってのは、勝者の理屈だ、俺は弱者の声を届けるために必要な悪もあると思ってる。政府によって仲間を殺され、俺自身も死にそうになってた所にマモンが現れた」
昔のことを思い出しているのか、だんだん険しい表情になっていく。
「生き延びるため――今度こそ革命を為すために、俺はマモンと契約した」
それぞれの強い想いに、悪魔は引き寄せられたのだ。
「ヤマトの理由は分かったけど、カオルの願いって?」
「ふふっ、決まってるじゃない♪」
カオルは腰に手を当て、斜め四十五度に身体の向きを変える。まるでファッションモデルのようなポーズだ。
「この世のすべてのオネエが、人生を謳歌できる素晴らしい世界にするの!」
「…………」
自信たっぷりに宣言するので、羽鳥だけでなく威もぽかんと口を開けている。
己の欲望に忠実で、ある意味シンプルな願いかもしれない。いっそ清々しいくらいだ。
「くっだらない!」
まなじりをつり上げ、嵐は吐き捨てた。そして、カオルに向けて銃を撃ったがサッと避けられる。
「まだ話の途中でしょ!」
「聞いて損した!」
「まあ、カオルにとっては大事なことだ。理解してもらおうなんて、これっぽっちも思っちゃいねーよ」
淡々と話すヤマトに向かって嵐は話しかける。
「そーいうお前は革命って言ってたけど、テロでも起こす気?」
「まあな。人間だった頃、俺は政治思想犯だった。弱者を虐げる政府をぶっ壊したいんだ」
「お前の行いで多くの人たちが死ぬことになってもいいのか?」
行動が矛盾している、と羽鳥が指摘する。
「出来れば、最小限の犠牲に留めたいさ。俺は他の連中と違って、争いはそれほど好きじゃねぇ」
「ヤマトってば、綺麗事ばっかなのよ」
苦笑を漏らすヤマトに、カオルは呆れた眼差しを向けている。
悪魔は気まぐれな性格だ。カオルのような願い事でも耳を傾けることもあれば、ヤマトのような志に惹かれもする。
「さてと……。たまには真面目に戦わないとな。集めた魂を返してもらうぞ!」
話を切り上げ、ヤマトは一足飛びで距離を詰めてきた。
「加速を使えるのか!?」
羽鳥は左手でフックショットを取り出し、近くの木に向かってワイヤーを撃ち込んだ。身体が浮き、その場を離れると入れ違いに三節棍の先端が地面にめり込む。
「逃げても無駄だ!」
ヤマトの叫び声に応じて周囲の墓石が重力に反してふわりと浮き上がり、一斉に羽鳥に向かって襲いかかる。
「羽鳥さん!」
咄嗟に両手を伸ばした威がクラフトで墓石の動きを止めた。
「へえ、お前も念力を使うのか。おもしれぇ。どっちが強力か力比べしようぜ!」
感心したように口笛を吹いたヤマトは、更に墓石を動かした。
「俺だって負けないよ!」
力一杯に腕を振ると、動きに合わせて空中で停止していた墓石がヤマトに向かっていく。
――ドガンッ!
石が砕ける音が響き、土煙が舞い上がる。
「あたしとも遊んでちょうだい!」
もうもうと煙る中、視界不良も気にせずカオルは手にした拳銃を威に向かって引き金を引いた。強烈な破裂音が響いたが、見えない障壁によって防がれる。
「オッサンの相手はオレがしてやるよ。どっちが上か決着つけたいしね!」
威を守るように術を仕込んだナイフが地面に刺さっている。即席の結界を張って弾丸を防いだのだ。
「仕方ないわね。勝負は見えてるけど遊んであげる!」
嵐に向かって一直線で突っ込んだカオルは右手に持つ拳銃を連射する。
「当たらないよ!」
結界で難なく防いでいる。
「これはどう?」
左の拳を叩き込んできた。
「危なっ……!」
咄嗟に腕をクロスさせて防御の態勢に入る。アミュレットのローズクォーツが輝き、拳の威力を軽減させる。
「うっ」
凄まじい一撃だ。折れてはいないが、腕がビリビリと痺れ、地面に靴が食い込んだ。
「いったあ~。馬鹿力すぎ……って、メリケンサック!?」
やけに威力があると思ったが、カオルは指にはめてパンチの威力を上げる金属製の武器を装備している。ゴージャスな装いに反して、かなりのパワータイプのようだ。
ドレスの裾を翻しながら着地したカオルは得意げに笑った。
「念力は、ヤマトだけじゃなくてよ!」
地面に弧を描くようにヒールを滑らせたカオルは近くにある墓石を操り、背後に向かって投げつけた。
「うわっ!?」
気配を消して近づいていた羽鳥は、フックショットを使って間一髪回避する。
「ふふっ♪」
振り向かずにカオルは身体を反転させた。踊るような華やかな動きだ。足の動きに合わせて地面に複雑な紋様が浮かび、召喚の魔方陣が写し出される。
――オオオオオオオオオオッ。
魔方陣から悪霊が続々と飛び出してきた。
「あたしは念力と念写が得意なの。さあ、行きなさい。あたしの可愛い僕たち!」
カオルの号令で悪霊たちが襲いかかってくる。
「ふふっ、遊びは始まったばかりよ」
「この程度で潰れるんじゃねーぞ」
まだ本気を出していないようで、カオルとヤマトは余裕の笑みを浮かべている。
「こっちも気を引き締めていかないと、足元を掬われる」
「分かってる」
「頑張るよ!」
羽鳥の呼びかけに嵐と威は頷く。
「なんてたって、この世で一番可愛いのはオレだからね! あんな奴に負けるわけない!」
「いいえ。この世で一番美しいのは、あたしよ!」
「……え?」
「あれ? そんな勝負だったっけ?」
「はあ~~~~~~~」
目をぱりくりさせている羽鳥と威。額に手を当て、重いため息を吐いて項垂れるヤマト。そんな彼らを余所に嵐とカオルの争いはヒートアップしていくのであった。
「ふう……。魂を持っている悪霊は、あらかた片付いたね」
羽鳥は物体移動のクラフトを使い、千景が転送してくれた式神に回収した被害者たちの魂を託した。
たおやかな女性の姿をした式神は渡された魂を壊さないように大切に抱えると、一礼して飛び立った。遠くなっていく姿を見送り、羽鳥は嵐の方へ向き直る。
「あとは侑李と美華か……。嵐、居場所は特定できそう?」
暗闇の中では嵐の予測感知能力が頼りだ。
「うん、このまま真っ直ぐ進んだ先に――っ!?」
先導していた嵐が立ち止まった。
「ふたりとも下がって!」
言うや否や、嵐はベルトに手を伸ばす。投擲ナイフを数本引き抜くと、空に向かって投げた。
――キィンッ、バチッ!
金属音と共に小さな火花が散る。何者かがナイフを弾き飛ばしたのだ。
闇の中に、誰かいる――。
「ちょっと危ないじゃない」
「気配を消してたのにバレてたか」
聞き覚えのある声に、嵐は思いっきり顔をしかめる。
「最悪……一番会いたくない奴だし」
嵐は指の間にナイフを挟み、四方へ投げた。
近くの木の幹や地面に突き刺さったそれらは、刃の部分が光を放ち周囲を明るく照らした。ナイフに術をかけ、照明弾代わりにしたのだ。
「あたし、輝斗ちゃんと忍ちゃんの相手をしたかったわ。よりにもよって、なんで小僧なのよ」
漆黒の翼を羽ばたかせ、カオルとヤマトが姿を現した。彼らが地面に降り立つと、翼はバラバラと散らばり、黒い羽根となって四散する。それらは地面に降り積もる前に塵となって消えた。
「それはこっちの台詞だし。おじさんと当たって気分悪いんだけど」
「お姉さんと呼びなさい。クソガキ」
「オッサンこそ、オレのこと美少年って呼んだら?」
嫌味の応酬だ。視線がぶつかり、火花が散っているような錯覚を覚える。
「お前たちも元は人間だろ? どうして、悪魔と契約なんて愚かな真似をしたんだ?」
羽鳥の質問に、カオルとヤマトはきょとんとした表情を見せた。
「アスモデウスは、あたしの願いは面白いって乗ってくれたの」
カオルは、ゆったりとした動作で腕を上げると自身の頬に手を添えた。
対してヤマトは真顔で答える。
「正義ってのは、勝者の理屈だ、俺は弱者の声を届けるために必要な悪もあると思ってる。政府によって仲間を殺され、俺自身も死にそうになってた所にマモンが現れた」
昔のことを思い出しているのか、だんだん険しい表情になっていく。
「生き延びるため――今度こそ革命を為すために、俺はマモンと契約した」
それぞれの強い想いに、悪魔は引き寄せられたのだ。
「ヤマトの理由は分かったけど、カオルの願いって?」
「ふふっ、決まってるじゃない♪」
カオルは腰に手を当て、斜め四十五度に身体の向きを変える。まるでファッションモデルのようなポーズだ。
「この世のすべてのオネエが、人生を謳歌できる素晴らしい世界にするの!」
「…………」
自信たっぷりに宣言するので、羽鳥だけでなく威もぽかんと口を開けている。
己の欲望に忠実で、ある意味シンプルな願いかもしれない。いっそ清々しいくらいだ。
「くっだらない!」
まなじりをつり上げ、嵐は吐き捨てた。そして、カオルに向けて銃を撃ったがサッと避けられる。
「まだ話の途中でしょ!」
「聞いて損した!」
「まあ、カオルにとっては大事なことだ。理解してもらおうなんて、これっぽっちも思っちゃいねーよ」
淡々と話すヤマトに向かって嵐は話しかける。
「そーいうお前は革命って言ってたけど、テロでも起こす気?」
「まあな。人間だった頃、俺は政治思想犯だった。弱者を虐げる政府をぶっ壊したいんだ」
「お前の行いで多くの人たちが死ぬことになってもいいのか?」
行動が矛盾している、と羽鳥が指摘する。
「出来れば、最小限の犠牲に留めたいさ。俺は他の連中と違って、争いはそれほど好きじゃねぇ」
「ヤマトってば、綺麗事ばっかなのよ」
苦笑を漏らすヤマトに、カオルは呆れた眼差しを向けている。
悪魔は気まぐれな性格だ。カオルのような願い事でも耳を傾けることもあれば、ヤマトのような志に惹かれもする。
「さてと……。たまには真面目に戦わないとな。集めた魂を返してもらうぞ!」
話を切り上げ、ヤマトは一足飛びで距離を詰めてきた。
「加速を使えるのか!?」
羽鳥は左手でフックショットを取り出し、近くの木に向かってワイヤーを撃ち込んだ。身体が浮き、その場を離れると入れ違いに三節棍の先端が地面にめり込む。
「逃げても無駄だ!」
ヤマトの叫び声に応じて周囲の墓石が重力に反してふわりと浮き上がり、一斉に羽鳥に向かって襲いかかる。
「羽鳥さん!」
咄嗟に両手を伸ばした威がクラフトで墓石の動きを止めた。
「へえ、お前も念力を使うのか。おもしれぇ。どっちが強力か力比べしようぜ!」
感心したように口笛を吹いたヤマトは、更に墓石を動かした。
「俺だって負けないよ!」
力一杯に腕を振ると、動きに合わせて空中で停止していた墓石がヤマトに向かっていく。
――ドガンッ!
石が砕ける音が響き、土煙が舞い上がる。
「あたしとも遊んでちょうだい!」
もうもうと煙る中、視界不良も気にせずカオルは手にした拳銃を威に向かって引き金を引いた。強烈な破裂音が響いたが、見えない障壁によって防がれる。
「オッサンの相手はオレがしてやるよ。どっちが上か決着つけたいしね!」
威を守るように術を仕込んだナイフが地面に刺さっている。即席の結界を張って弾丸を防いだのだ。
「仕方ないわね。勝負は見えてるけど遊んであげる!」
嵐に向かって一直線で突っ込んだカオルは右手に持つ拳銃を連射する。
「当たらないよ!」
結界で難なく防いでいる。
「これはどう?」
左の拳を叩き込んできた。
「危なっ……!」
咄嗟に腕をクロスさせて防御の態勢に入る。アミュレットのローズクォーツが輝き、拳の威力を軽減させる。
「うっ」
凄まじい一撃だ。折れてはいないが、腕がビリビリと痺れ、地面に靴が食い込んだ。
「いったあ~。馬鹿力すぎ……って、メリケンサック!?」
やけに威力があると思ったが、カオルは指にはめてパンチの威力を上げる金属製の武器を装備している。ゴージャスな装いに反して、かなりのパワータイプのようだ。
ドレスの裾を翻しながら着地したカオルは得意げに笑った。
「念力は、ヤマトだけじゃなくてよ!」
地面に弧を描くようにヒールを滑らせたカオルは近くにある墓石を操り、背後に向かって投げつけた。
「うわっ!?」
気配を消して近づいていた羽鳥は、フックショットを使って間一髪回避する。
「ふふっ♪」
振り向かずにカオルは身体を反転させた。踊るような華やかな動きだ。足の動きに合わせて地面に複雑な紋様が浮かび、召喚の魔方陣が写し出される。
――オオオオオオオオオオッ。
魔方陣から悪霊が続々と飛び出してきた。
「あたしは念力と念写が得意なの。さあ、行きなさい。あたしの可愛い僕たち!」
カオルの号令で悪霊たちが襲いかかってくる。
「ふふっ、遊びは始まったばかりよ」
「この程度で潰れるんじゃねーぞ」
まだ本気を出していないようで、カオルとヤマトは余裕の笑みを浮かべている。
「こっちも気を引き締めていかないと、足元を掬われる」
「分かってる」
「頑張るよ!」
羽鳥の呼びかけに嵐と威は頷く。
「なんてたって、この世で一番可愛いのはオレだからね! あんな奴に負けるわけない!」
「いいえ。この世で一番美しいのは、あたしよ!」
「……え?」
「あれ? そんな勝負だったっけ?」
「はあ~~~~~~~」
目をぱりくりさせている羽鳥と威。額に手を当て、重いため息を吐いて項垂れるヤマト。そんな彼らを余所に嵐とカオルの争いはヒートアップしていくのであった。
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