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第六章
第六章-05-※
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十一年前――。
下級悪魔との戦闘を難なく終了し、忍たちはミーティングルームに戻ってきた。隊員たちは適当に報告書をまとめると早々に退勤し、忍がひとりで残っていた時だ。突如、部屋の電気が消え真っ暗になった。
「……なんだ?」
眉をひそめ、忍は天井を見上げる。幸いノートパソコンは内蔵バッテリーのおかげで停電しても電源は生きていた。あと少しで完成するだけに、ここでデータが飛んでしまったら怒ってパソコンを叩いていただろう。
窓の方へ首を動かすと、外の建物は煌々と明かりが灯っている。この部屋の電気だけが落ちているようだ。
「クソダリぃ……」
怪訝に思いながら、ブレーカーを確認しようと椅子を引いて立ち上がろうとする。
「――っ!」
左脇に何か押し当てられた。
「うあっ」
払いのけるのが一足遅かった。バチッと青白い火花が散ったかと思うと、身体が痺れて動かなくなる。それがスタンガンだと気付いたのは床に倒れてからだ。
「よし、今のうちに服を脱がせ」
「分かった」
「ついでに腕を縛っておこうぜ」
暗闇の中で、複数の男たちの声がした。
(なんで、こいつらがいるんだ!?)
それは帰宅したはずの隊長と先輩たちで、信じられないことに忍の動きを封じたスタンガンを押し当てた犯人でもある。
崩れるように倒れた忍を仰向けにすると、ひとりが両手をひとまとめにして手錠で拘束する。もうひとりは焦っているのか、もたつきながら隊服の上着のボタンを外していた。
「な……っ」
何しやがる――と叫びたいのに声が出ない。痺れた身体は指先一つも動かせなかった。その間に上着を脱がされる。シャツは乱暴に引きちぎられボタンが弾け飛んだ。
「――っ!」
ひたりと薄い胸に汗ばんだ手が触れ、ぞわりと肌が粟立つ。
「ははっ、ザマァないな。いつもの威勢はどうした?」
「明かりがあった方がいいんじゃないか?」
「ブレーカー落としただろ。せめて写真撮っとくか」
カシャ、とフラッシュと共に携帯のカメラのシャッター音が響く。
「どうせなら動画のがいいだろ」
「つーか、ほんとに男なんだな。胸がないや」
「まあまあ、下も確かめてやろうじゃないか」
カチャカチャとベルトを外す音を響かせながら、下着ごとずり下ろされる。
「や、めっ……」
隊長の太くて短い指が、無遠慮に股間に触れた。
「……くっ、ぅ」
萎えているそれを握り締め、先端を親指の爪で軽く引っ掻いている。
「ああ、思った通り綺麗だ」
形を確かめるように手のひらと指で感触を楽しんだ後、うっとりした声で呟いた。隊長の汚い手がゆっくりと滑るように撫でてくる。指の腹でかき混ぜるように忍の茂みを堪能しているのも気持ち悪い。
「うわっ、すね毛も生えてないのかよ」
「腰ほっせー」
胸や腹、大腿に直接男たちの手が触れている。隅々まで確かめているのか、尻の割れ目にまで手を這わされ、忍は僅かに身じろぐ。
「さわ、ん……な――っ」
頬に衝撃が走った。一瞬、視界に星がちらつき、意識が遠のく。数秒後、ジンジンと熱と共に痛みが走り、口の中で血の味が広がる。頬を叩かれた拍子に口端を切ったらしい。
「痛っ……」
髪を掴まれ、強引に上体を起こされる。
「お前が悪いんだ」
生臭い息を吐きながら、隊長が叩いた頬に舌を這わせた。
「……っ、クソが……いっ――!」
背後に回った誰かが力いっぱいに忍の乳首を摘まんだ。
意識が削がれた隙に、別の者が大きく足を開かせる。
「そうだ、お前が悪い」
「生意気な態度ばっかとってるから、こうなんるんだぞ」
口々にそう言って、抵抗できない忍の肌をまさぐり、鼻を近づけては匂いを嗅いだ。
(やめろ、触るな!)
ある者は頬、瞼、耳、うなじに口づけと舌で味わい、またある者は薄い胸に舌を這わせ、乳首を摘まみ、吸い付き、歯を立てた。そして、最初は自分が犯すのだとばかりに隊長が股の間に入り込み、忍のものを乱暴に扱き、己のものを引きずり出すと擦り併せている。
「はあはあ、いい……いいぞっ!」
豚のように喘ぎながら、必死に腰を振っている。先走りで濡れた水音を響かせ、徐々に硬くなっていくのを皮膚を通して伝わってくるのに、忍は吐き気に耐えながら、早く身体が動くことを願っていた。
(動け、動け、動け、動け――!)
勢いよく噴き出した白濁が、腹や胸だけでなく顔にもかかった。
(クソがっ――!)
言葉の代わりに、フーフーと荒い呼吸を繰り返しながら目の前にいるであろう隊長を睨み付ける。
「あはは、隊長ばっか勃起してますけど、こいつ萎えっぱなしですよ?」
「気持ちよくないみたいだし、やっぱ下のお口を可愛がった方が喜ぶんじゃね?」
「っ!?」
窄まりに指が一本突っ込まれ、痛みに顔を歪める。
「あ、ぁっ……」
息を詰まらせながら、か細く喘いだ声に気を良くしたのか、背後に回っていた男が更に奥へと指を侵入させる。
「キツいな……。女みてーに濡れないから進みが悪いぞ」
「――っ」
誰が喜ばせるものか、と忍は唇を噛みしめる。
「オラ、啼けって!」
「いぁっ……」
ビリッと鋭い痛みが走った。ポタポタと雫が床に落ちる音が聞こえる。
「ヤベッ、血がでた。ま、いっか。これで滑りがよくなったぜ」
「おー、そのまま俺らの突っ込めるまで広げちまえ」
(嫌だ……)
二本目を挿入されると、今度は抜き差しだけでなく指を広げて腸壁を押し広げてくる。反応してなるものかと忍も耐えていたが、動きに合わせて時折、身体を激しく痙攣させた。
(な、んだ……? 意志に反して、変な……)
ある一点を、指の腹で押されると電流が走ったように甘い痺れが襲ってくる。わけもわからず、忍自身も混乱していた。
「気持ちいいんじゃね? そこ突いたらイくかもよ?」
「へえ、ここがいいんだ。忍ちゃん、エロいねー」
「ちがっ……あ、んっ――」
いつもだったら、このようなクズを簡単に蹴散らせるのに、身体が思うように動かない。
「うわ、エッロ。そーいう可愛い声が聞きたかったわけよ」
「前も弄ったら、感度よくなるんじゃね?」
「あああっ」
ぎゅっと握りしめられ、忍は甲高い声を上げた。
「うわっ、中の締め付けが強くなったぞ」
「よし、いけ! そのままイかせろ!」
「はあはあ……その前に、やりたいことがある。コレを御堂の口に突っ込みたい」
ゆらりと立ち上がった隊長が、自身のものを握り締めている。
「うわ、ひでー。隊長最低だ。ぎゃははは!」
「ほら、口が留守だぞ。隊長にご奉仕しろよ」
「なっ!?」
迫り来るペニスに忍は大きく見開く。顎を掴まれ、強引に口を開かされた。
(嫌だ、嫌だ、嫌だあっ!)
今まで一度も身体を許したことはない。
(こんな下衆どもに犯されるのかよ……!)
忍は初めて恐怖を覚えた。この最悪の状況から抜け出すための方法を求め、必死に頭を巡らせる。
(何でもいい。何かないか……誰か――!)
「あれ、御堂は? もう帰ったのかな?」
不意に、ミーティングルームの扉が開いた。
直江の声に驚いた隊長たちは、ぎょっとして動きを止める。
(助かった……)
地獄に仏とは、まさにこのことだ。忍は初めて直江に心から感謝した。これで、この悪夢も終わる。
パチン、と電気のスイッチを押した直江は、明るくなった室内で横たわる忍に群がる隊長たちを見て目をぱちくりさせた。
「あらら、なんか凄いことになってるねぇ」
白濁と先走りにまみれた忍は、申し訳程度に上着と破れたシャツが腕にかかっている以外は裸だ。しかも、今まさに彼の口の中に自身のものを突っ込もうとしていた隊長のむき出しのそれといい、何処からどう見てもレイプ現場に他ならなかった。
衝撃の光景のはずなのに、特別驚いた様子もなく直江はのほほんと眺めている。
「なんだ、須賀か……」
「驚かせやがって」
直江だと分かった途端、焦っていた男たちの顔に安堵と笑みが浮かぶ。
「そ、そうだ。須賀も混ざらないか?」
「う~ん……」
隊長の誘いに、直江はゆったりとした動作で腕を組んだ。今まさに犯されている忍へ視線を移すと、やっと表情に変化が生じる。首を傾け、扉に寄りかかると唇を歪めた。
「僕はいいよ。どうぞ続けて」
「――っ」
瞬間、忍は頭の中が真っ白になった。
全身から湧き上がる衝動のままに、忍は外へと“それ”を解放する。風も吹いていないのに長い髪がぶわりと巻き上がり、彼を中心に閃光が迸った。
「ぎゃああああああああああああああああああっ」
隊長たちの悲鳴と共に、ミーティングルームは白い光に包まれる。人間だけでなく、あらゆるものが吹き飛ばされ、大きな爆発音が轟き、窓ガラスが吹き飛んだ。
気付いたときには、景色が一変していた――。
「はあはあ……」
一気に霊力を爆発させたせいか、身体が鉛のように重い。両手を床につき、荒い呼吸を整えていた忍の前に長い髪が広がっている。先ほどの暴走で、結んでいた髪留めもちぎれたらしい。
手錠で拘束されていたはずなのに、いつの間にか自由になっている。指を動かすと、チャリ……と金属音がした。砕け散った手錠の破片が床に散らばっている。
「はあ……」
顔を上げ、忍は辺りを見回す。バチバチと配線から火花が散っている。照明が天井から剥がれ、今にも落ちてきそうだ。窓ガラスは吹き飛び、外気が室内へと入り込んでいる。事務机も粉々になっていて、椅子の一部が壁にめり込んでいた。
「う……」
「あ、が……」
「ごふっ……」
隊長と先輩たちが白目を剥いて倒れている。頭や鼻から血を流し、全身痣だらけだ。至近距離で忍の全力の霊気を浴びたため、骨や内臓も傷ついているかもしれない。
「凄い、凄い。部屋中が滅茶苦茶だよ」
パチパチと拍手している直江だけが無傷だった。霊力の暴走に、自分だけ巻き込まれないようにアミュレットと結界を張って防いだのだろう。
「……許さねぇ。こいつらも、お前も……」
忍は、よろめきながら立ち上がると直江を睨み据えた。出来ることならば胸ぐらを掴んで、その顔をぼこぼこに殴りたい。けれども、霊力を消耗しきった肉体は立っているのがやっとだ。代わりに、ありったけの憎悪を込めて睨み付ける。
「そんなこと言われても、僕はたまたま居合わせただけだし」
肩をすくませ、直江は嘆息した。それから、改めて忍を見やる。
「ひどい格好だね。服を剥かれて、色んなところを触られたみたいだけど……指はともかく、まだ突っ込まれてないのかな。いやぁ、それだけは良かったね」
「ふざけんな!」
忍の怒気に呼応し、窓に残っていたガラスの破片が弾けた。一部が直江の頬を擦り、うっすら赤い血が滲む。
「うわ、最悪。血が出たし……」
直江は手のひらで傷に触れ、思いっきり顔をしかめた。
「八つ当たりしないでくれる?」
「下に転がってる奴らのようにならないだけマシだろ」
ここに味方はいない――。
一瞬でも、目の前の男に救いを求めてしまった自分が許せなかった。
(自分の身を守れるのは、自分だけだ!)
もう誰にも救いを求めたりしない――。
力みすぎて手のひらに爪が食い込んだが、忍は気にせず拳を握り締めていた。
下級悪魔との戦闘を難なく終了し、忍たちはミーティングルームに戻ってきた。隊員たちは適当に報告書をまとめると早々に退勤し、忍がひとりで残っていた時だ。突如、部屋の電気が消え真っ暗になった。
「……なんだ?」
眉をひそめ、忍は天井を見上げる。幸いノートパソコンは内蔵バッテリーのおかげで停電しても電源は生きていた。あと少しで完成するだけに、ここでデータが飛んでしまったら怒ってパソコンを叩いていただろう。
窓の方へ首を動かすと、外の建物は煌々と明かりが灯っている。この部屋の電気だけが落ちているようだ。
「クソダリぃ……」
怪訝に思いながら、ブレーカーを確認しようと椅子を引いて立ち上がろうとする。
「――っ!」
左脇に何か押し当てられた。
「うあっ」
払いのけるのが一足遅かった。バチッと青白い火花が散ったかと思うと、身体が痺れて動かなくなる。それがスタンガンだと気付いたのは床に倒れてからだ。
「よし、今のうちに服を脱がせ」
「分かった」
「ついでに腕を縛っておこうぜ」
暗闇の中で、複数の男たちの声がした。
(なんで、こいつらがいるんだ!?)
それは帰宅したはずの隊長と先輩たちで、信じられないことに忍の動きを封じたスタンガンを押し当てた犯人でもある。
崩れるように倒れた忍を仰向けにすると、ひとりが両手をひとまとめにして手錠で拘束する。もうひとりは焦っているのか、もたつきながら隊服の上着のボタンを外していた。
「な……っ」
何しやがる――と叫びたいのに声が出ない。痺れた身体は指先一つも動かせなかった。その間に上着を脱がされる。シャツは乱暴に引きちぎられボタンが弾け飛んだ。
「――っ!」
ひたりと薄い胸に汗ばんだ手が触れ、ぞわりと肌が粟立つ。
「ははっ、ザマァないな。いつもの威勢はどうした?」
「明かりがあった方がいいんじゃないか?」
「ブレーカー落としただろ。せめて写真撮っとくか」
カシャ、とフラッシュと共に携帯のカメラのシャッター音が響く。
「どうせなら動画のがいいだろ」
「つーか、ほんとに男なんだな。胸がないや」
「まあまあ、下も確かめてやろうじゃないか」
カチャカチャとベルトを外す音を響かせながら、下着ごとずり下ろされる。
「や、めっ……」
隊長の太くて短い指が、無遠慮に股間に触れた。
「……くっ、ぅ」
萎えているそれを握り締め、先端を親指の爪で軽く引っ掻いている。
「ああ、思った通り綺麗だ」
形を確かめるように手のひらと指で感触を楽しんだ後、うっとりした声で呟いた。隊長の汚い手がゆっくりと滑るように撫でてくる。指の腹でかき混ぜるように忍の茂みを堪能しているのも気持ち悪い。
「うわっ、すね毛も生えてないのかよ」
「腰ほっせー」
胸や腹、大腿に直接男たちの手が触れている。隅々まで確かめているのか、尻の割れ目にまで手を這わされ、忍は僅かに身じろぐ。
「さわ、ん……な――っ」
頬に衝撃が走った。一瞬、視界に星がちらつき、意識が遠のく。数秒後、ジンジンと熱と共に痛みが走り、口の中で血の味が広がる。頬を叩かれた拍子に口端を切ったらしい。
「痛っ……」
髪を掴まれ、強引に上体を起こされる。
「お前が悪いんだ」
生臭い息を吐きながら、隊長が叩いた頬に舌を這わせた。
「……っ、クソが……いっ――!」
背後に回った誰かが力いっぱいに忍の乳首を摘まんだ。
意識が削がれた隙に、別の者が大きく足を開かせる。
「そうだ、お前が悪い」
「生意気な態度ばっかとってるから、こうなんるんだぞ」
口々にそう言って、抵抗できない忍の肌をまさぐり、鼻を近づけては匂いを嗅いだ。
(やめろ、触るな!)
ある者は頬、瞼、耳、うなじに口づけと舌で味わい、またある者は薄い胸に舌を這わせ、乳首を摘まみ、吸い付き、歯を立てた。そして、最初は自分が犯すのだとばかりに隊長が股の間に入り込み、忍のものを乱暴に扱き、己のものを引きずり出すと擦り併せている。
「はあはあ、いい……いいぞっ!」
豚のように喘ぎながら、必死に腰を振っている。先走りで濡れた水音を響かせ、徐々に硬くなっていくのを皮膚を通して伝わってくるのに、忍は吐き気に耐えながら、早く身体が動くことを願っていた。
(動け、動け、動け、動け――!)
勢いよく噴き出した白濁が、腹や胸だけでなく顔にもかかった。
(クソがっ――!)
言葉の代わりに、フーフーと荒い呼吸を繰り返しながら目の前にいるであろう隊長を睨み付ける。
「あはは、隊長ばっか勃起してますけど、こいつ萎えっぱなしですよ?」
「気持ちよくないみたいだし、やっぱ下のお口を可愛がった方が喜ぶんじゃね?」
「っ!?」
窄まりに指が一本突っ込まれ、痛みに顔を歪める。
「あ、ぁっ……」
息を詰まらせながら、か細く喘いだ声に気を良くしたのか、背後に回っていた男が更に奥へと指を侵入させる。
「キツいな……。女みてーに濡れないから進みが悪いぞ」
「――っ」
誰が喜ばせるものか、と忍は唇を噛みしめる。
「オラ、啼けって!」
「いぁっ……」
ビリッと鋭い痛みが走った。ポタポタと雫が床に落ちる音が聞こえる。
「ヤベッ、血がでた。ま、いっか。これで滑りがよくなったぜ」
「おー、そのまま俺らの突っ込めるまで広げちまえ」
(嫌だ……)
二本目を挿入されると、今度は抜き差しだけでなく指を広げて腸壁を押し広げてくる。反応してなるものかと忍も耐えていたが、動きに合わせて時折、身体を激しく痙攣させた。
(な、んだ……? 意志に反して、変な……)
ある一点を、指の腹で押されると電流が走ったように甘い痺れが襲ってくる。わけもわからず、忍自身も混乱していた。
「気持ちいいんじゃね? そこ突いたらイくかもよ?」
「へえ、ここがいいんだ。忍ちゃん、エロいねー」
「ちがっ……あ、んっ――」
いつもだったら、このようなクズを簡単に蹴散らせるのに、身体が思うように動かない。
「うわ、エッロ。そーいう可愛い声が聞きたかったわけよ」
「前も弄ったら、感度よくなるんじゃね?」
「あああっ」
ぎゅっと握りしめられ、忍は甲高い声を上げた。
「うわっ、中の締め付けが強くなったぞ」
「よし、いけ! そのままイかせろ!」
「はあはあ……その前に、やりたいことがある。コレを御堂の口に突っ込みたい」
ゆらりと立ち上がった隊長が、自身のものを握り締めている。
「うわ、ひでー。隊長最低だ。ぎゃははは!」
「ほら、口が留守だぞ。隊長にご奉仕しろよ」
「なっ!?」
迫り来るペニスに忍は大きく見開く。顎を掴まれ、強引に口を開かされた。
(嫌だ、嫌だ、嫌だあっ!)
今まで一度も身体を許したことはない。
(こんな下衆どもに犯されるのかよ……!)
忍は初めて恐怖を覚えた。この最悪の状況から抜け出すための方法を求め、必死に頭を巡らせる。
(何でもいい。何かないか……誰か――!)
「あれ、御堂は? もう帰ったのかな?」
不意に、ミーティングルームの扉が開いた。
直江の声に驚いた隊長たちは、ぎょっとして動きを止める。
(助かった……)
地獄に仏とは、まさにこのことだ。忍は初めて直江に心から感謝した。これで、この悪夢も終わる。
パチン、と電気のスイッチを押した直江は、明るくなった室内で横たわる忍に群がる隊長たちを見て目をぱちくりさせた。
「あらら、なんか凄いことになってるねぇ」
白濁と先走りにまみれた忍は、申し訳程度に上着と破れたシャツが腕にかかっている以外は裸だ。しかも、今まさに彼の口の中に自身のものを突っ込もうとしていた隊長のむき出しのそれといい、何処からどう見てもレイプ現場に他ならなかった。
衝撃の光景のはずなのに、特別驚いた様子もなく直江はのほほんと眺めている。
「なんだ、須賀か……」
「驚かせやがって」
直江だと分かった途端、焦っていた男たちの顔に安堵と笑みが浮かぶ。
「そ、そうだ。須賀も混ざらないか?」
「う~ん……」
隊長の誘いに、直江はゆったりとした動作で腕を組んだ。今まさに犯されている忍へ視線を移すと、やっと表情に変化が生じる。首を傾け、扉に寄りかかると唇を歪めた。
「僕はいいよ。どうぞ続けて」
「――っ」
瞬間、忍は頭の中が真っ白になった。
全身から湧き上がる衝動のままに、忍は外へと“それ”を解放する。風も吹いていないのに長い髪がぶわりと巻き上がり、彼を中心に閃光が迸った。
「ぎゃああああああああああああああああああっ」
隊長たちの悲鳴と共に、ミーティングルームは白い光に包まれる。人間だけでなく、あらゆるものが吹き飛ばされ、大きな爆発音が轟き、窓ガラスが吹き飛んだ。
気付いたときには、景色が一変していた――。
「はあはあ……」
一気に霊力を爆発させたせいか、身体が鉛のように重い。両手を床につき、荒い呼吸を整えていた忍の前に長い髪が広がっている。先ほどの暴走で、結んでいた髪留めもちぎれたらしい。
手錠で拘束されていたはずなのに、いつの間にか自由になっている。指を動かすと、チャリ……と金属音がした。砕け散った手錠の破片が床に散らばっている。
「はあ……」
顔を上げ、忍は辺りを見回す。バチバチと配線から火花が散っている。照明が天井から剥がれ、今にも落ちてきそうだ。窓ガラスは吹き飛び、外気が室内へと入り込んでいる。事務机も粉々になっていて、椅子の一部が壁にめり込んでいた。
「う……」
「あ、が……」
「ごふっ……」
隊長と先輩たちが白目を剥いて倒れている。頭や鼻から血を流し、全身痣だらけだ。至近距離で忍の全力の霊気を浴びたため、骨や内臓も傷ついているかもしれない。
「凄い、凄い。部屋中が滅茶苦茶だよ」
パチパチと拍手している直江だけが無傷だった。霊力の暴走に、自分だけ巻き込まれないようにアミュレットと結界を張って防いだのだろう。
「……許さねぇ。こいつらも、お前も……」
忍は、よろめきながら立ち上がると直江を睨み据えた。出来ることならば胸ぐらを掴んで、その顔をぼこぼこに殴りたい。けれども、霊力を消耗しきった肉体は立っているのがやっとだ。代わりに、ありったけの憎悪を込めて睨み付ける。
「そんなこと言われても、僕はたまたま居合わせただけだし」
肩をすくませ、直江は嘆息した。それから、改めて忍を見やる。
「ひどい格好だね。服を剥かれて、色んなところを触られたみたいだけど……指はともかく、まだ突っ込まれてないのかな。いやぁ、それだけは良かったね」
「ふざけんな!」
忍の怒気に呼応し、窓に残っていたガラスの破片が弾けた。一部が直江の頬を擦り、うっすら赤い血が滲む。
「うわ、最悪。血が出たし……」
直江は手のひらで傷に触れ、思いっきり顔をしかめた。
「八つ当たりしないでくれる?」
「下に転がってる奴らのようにならないだけマシだろ」
ここに味方はいない――。
一瞬でも、目の前の男に救いを求めてしまった自分が許せなかった。
(自分の身を守れるのは、自分だけだ!)
もう誰にも救いを求めたりしない――。
力みすぎて手のひらに爪が食い込んだが、忍は気にせず拳を握り締めていた。
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