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第六章

第六章-06-

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 あの頃と同じように、忍は拳を握り締めている。眉をつり上げ、金の瞳は怒りに満ちていた。
「――っ」
 思い出すだけで腸が煮えくり返る。十一年間、屈辱と絶望を味わった“あの日”を忘れたくても忘れることが出来なかった。
 己を性的な目で見ていただけでなく、レイプしようとした下衆たち。現場を目撃しながら、見逃そうとした直江も同罪だ。
 憎悪と憤りを含んだ視線を注がれ、直江は不思議そうに目をぱちくりさせると首を傾けた。
「凄い睨んでるけど……もしかして、“あの日”のことをまだ恨んでるの?」
「たりめぇだ。許すわけねーだろ!」
 感情が爆発し、荒い声になって弾ける。そんな忍の様子に、直江は唇を歪めた。
「ふふっ、あの時は驚いたよ。誇り高いきみが、僕に『助けて』って、必死に目で訴えているんだもの」
「お前の勘違いだ」
 間髪入れずに返す忍に、直江はスッと目を細める。
「そういうことにしといてあげる。でもさ……」
 緩慢な動作で両手を胸の前で合わせると、くすりと笑った。
「きみの知らないことが、まだあるんだよねぇ」
「あ?」
「“あの出来事”は、暇つぶしにはちょうど良かったよ。思った以上に楽しい結果になったしね」
 当時のことを思い出しているのか頬を高揚させるも、すぐに表情を曇らせる。
「まあ、すぐにきみは余所へ転属になっちゃったけど。しかも大怪我を負った隊長たちが長期入院で、余所から派遣された隊員との日常はつまらないのなんの……」
 わざと聞こえるように大きなため息を吐き、直江は目を伏せた。
「はああ~……。こんなことなら、きみに薬を盛ればよかった」
「なんだと?」
「逆らえないくらいグズグズにして、隊長たちに犯されれば良かったんだ。そしたら壊れていくきみを、もっと長く観察できたのに。もったいないことしたなぁ」
「まさか……」
 目を瞠る忍に、直江の目が怪しくキラリと光った。
「ふふっ」
「てめぇ……」
 忍の中で確信に変わる。怒りを通りこして殺気を込めて直江を睨み据える。握り締めた拳は力みすぎて小刻みに震えていた。
「隊長たちをけしかけたのは、お前かっ!」
 忍の問いに、直江は大きく頷いた。
「そうだよ。ずっと前から……。ううん、きみがやって来た日から、隊長はきみを自分のものにしたいと欲望を抱えていた。先輩たちは、きみの態度が気に食わなかったけど、同時に滅茶苦茶にしたいと思っていた」
 それは忍自身も察していた。彼らは舐めるような視線を向け、執拗に肩や腰に腕を回して接触してきただけでなく、股間や尻を触ってきたこともある。また忍の目を盗んで私物や下着を盗んでいた。その度に忍が拳や蹴りを食らわせていたが、彼らは懲りるどころか欲望をエスカレートさせる一方だった。
 遂に我慢の限界が訪れて、“あの出来事”が起きたのだと思っていたが――。
「欲望を募らせていた彼らに、僕が提案したんだ」

 ――御堂をものにしたいのなら、僕が手伝ってあげるよ。わざと部屋を停電させるから、きみたちはスタンガンで動きを封じて、その後好きにすればいい。

「――ってね。でもさぁ、隊長は早漏すぎるし、先輩たちも要領悪すぎ。せっかくお膳立てしたのに、誰も突っ込まないし。じれったすぎて途中で飽きちゃったんだよねぇ」
 だから、直江は部屋の扉を開けて声を掛けた。あれは偶然ではなく、わざとだったのだ。
「笑えるよねぇ。僕に混ざれって誘ってくるんだから冗談じゃない。あんな豚どもと一緒にしないでほしいよ。僕は、きみを犯したいんじゃない。きみが壊れるところを楽しみたいんだ。そこをはき違えないでほしいよ」
 歪んだ笑みを称えながら語る直江に、忍の怒りは頂点に達した。
「須賀ぁっ!」
 素早く抜刀した忍が、一足飛びで距離を詰める。
「あははっ」
 軽々と跳躍した直江は、忍の攻撃をかわすとコンテナの上に降り立つ。
「クソが!」
 血走った眼で睨み付ける忍を見下ろし、嘲りを含んだ笑いを滲ませながら直江は言葉を続ける。
「きみがいなくなってから、とてもつまらなかった。それで悟ったよ。僕を退屈させないのは、きみだけだってね」
 直江は右手を差しのばすと視界に捉えた忍を掴むように、グッと指を折り曲げた。
「つまらない日々を過ごしていた僕の前に、ベルフェゴールが現れた」

 ――退屈だと嘆き、仲間だけでなく世の中の人間さえ、どうでもいいと思うその心……気に入ったぞ。どうだ、人間。我と契約しないか?

「このまま悪魔狩りを続けても、大して面白くない毎日が続くだけだ。いっそ、悪魔になった方がマシかもって思ったんだよね」
 そうして、直江はベルフェゴールの申し出を受け入れ、自らの肉体を差し出した。
「確かに、人間の頃より面白いよ。部隊を内部崩壊させて全滅に追いやった時も、多少はわくわくしたもの」
 ひとり、またひとりと悪魔に殺される隊員たちの断末魔をスピーカー越しに聞いていた直江は、笑いを堪えるのに必死だった。やがて前線にいた者たちの声がまったく聞こえなくなると、パニックになった隊長と諜報員が逃げだそうとしたので、直江は悪魔に念を飛ばして知らせた。
「隊長の最期はね、豚のような悲鳴を上げながら、必死に命乞いをしてたよ。でも、その願いも虚しく頭をガブリと囓られて終わった。ああ、きみを犯そうとした先輩たちも四肢を割かれたり、丸呑みにされたから。悪魔に怨みを晴らして貰えて良かったね」
「…………」
 ギリッと奥歯が鳴るくらい、忍は歯を軋らせる。
「あの時は、ゲームのミッションをオールクリアした時の感覚に似てたな」
 人を殺したのに、ゲームにたとえている神経を疑う。
「最後の仕上げとして、自分が死んだように見せるため偽の死体を用意した。知っての通り、僕はハッキングも得意だから、本部のサーバーに侵入してデータ改ざんも完璧さ。で、全滅させた証拠を消してから身を隠したんだ」
 おしまい、と両手を合わせて直江はにっこり微笑んだ。
「後は『破壊者フェアニヒター』として西国ヴェステンへ渡った。TJ部隊の情報をハッキングしたり、人間の魂を狩ったり……。ふふっ、人間を守る方から狩る方になったんだ」
 話に夢中になっているのか、だんだん早口になっていく。
東国オステンに戻ってから遂に四凶・檮杌とうこつを復活させた時は鳥肌が立ったよ。やっぱり刺激がないと退屈だよねぇ」
 あの災いで、どれほどの人の命が奪われただろうか。直江にとっては、四凶ですらゲームに出現する敵のボスくらいにしか思っていないのかもしれない。
「世界は、お前の玩具じゃねぇ!」
 忍は刀を水平に振るい、白銀の光を放つ。
「おっと……」
 直江の佇むコンテナが真っ二つになり、ガラガラと崩れ落ちた。素早く隣のコンテナに移った直江は、振り返らずに懐から拳銃を取り出すと、迷うことなくトリガーを引いた。
「ちぃっ」
 瞬間移動テレポーテーションで直江の背後に回っていた忍は、咄嗟に身につけていたアミュレットの石の力で弾丸を防いだ。動きを読まれていたことに舌打ちするも、刀を下から掬うようにして斬りつける。しかし、これもあっさり躱されてしまう。
「この前の戦闘で、きみはローザに右手を傷つけられた。その傷が、まだ回復してないよね」
「!?」
 輝斗や他の仲間たちも気付いていないのに、直江は忍が本調子でないことを知っている。
「くすっ」
 動揺したのを見逃さなかった直江は、忍の右手を狙って連続で弾丸を撃ち込んだ。
「くっ……」
 直江が持つのは連射速度が速く、貫通性の高い銃だ。防弾チョッキも貫くものだが、忍はアミュレットで全て防ぐ。
「お返しだ!」
 今度はこちらの番だと連激を放つが、風の障壁を築かれ、直江に傷ひとつ付けられない。
「まだまだいくよ!」
 直江の足元から旋風が巻き起こる。
「ハッ、こっちだって防戦ばっかじゃねぇぞ!」
 懐から札を数枚取り出し、結界を張って防ぐ。次の攻撃を放とうとする直江の背後に回ろうと、忍は二回目の瞬間移動テレポーテーションを使った。
「もらった!」
 完全に死角だ。背中に受かって刃を振り下ろす。
「なっ、んだと……?」
 しかし、刃が触れるギリギリの所で動きが止まった。細いワイヤーが刃に巻き付いている。
「クソッ」
「残念だったね」
 それは直江の左手首に固定されたリストバンドから伸びていた。直江が指をくいっと動かすと、一瞬にしてワイヤーがほどける。
「――っ!」
 バランスを崩した忍の首に、銀色のワイヤーが幾重にも巻き付く。
「あぐっ、う――」
 息が出来なくて苦悶の表情を浮かべる。
 身体の向きを変え、距離を詰めた直江はワイヤーを引き寄せて忍を前のめりにさせると、残念そうに眉を下げた。
「長い髪を切ったのもったいないな。綺麗だったのに」
「う……っせ……」
「ああ、まだ余力があるね」
 更に締め付けを強めた。
「かはっ、ぁ……」
 酸素を奪われた忍は苦しくて口端からよだれが垂れる。頭がぼうっとしてきた。次第に指に力が入らなくなり、遂には刀を落としてしまう。
 それでもワイヤーを引きちぎろうと首筋に手を伸ばすも、ほどけるどころか皮膚に食い込む一方だ。
「首を切断して持って帰ろうかな。うーん、胴体と繋がったままの方がいいかな。ああ、でも持ち運ぶの大変か」
 わざともったいぶった言い方をしている。忍が苦しむ様子を眺めて楽しんでいるのだ。
(意識が……持たない……)
 視界がぼやけ、直江の顔がよく見えない。
(最後の力を使って逃げれば……)
 忍の瞬間能力テレポーテーションは、一日三回までしか使えない。既に二回使用したが、最後の一回が残っている。迷っている暇はない。早く使わなければ命が危ない。
(クソが……)
 しかしながら首を絞められ、酸素を奪われた状態では意識を集中することが出来なかった。
 煙に覆われたように、うっすらと意識が霞んでいく――。

 ――パァンッ!

 一発の銃声が響いた。
「あ、切れた」
 忍と直江を繋ぐワイヤーが、プツリと切れた。
「ヒュッ……」
 締め付けが緩くなり、忍は喉を鳴らす。肺に空気を入れようと、思いっきり息を吸い込んだ。
「げほげほっ……」
 咳込みながら胸元のシャツを掴む。崩れるように両膝をつき、何度か深呼吸を繰り返す。
「火の玉……?」
 無防備な忍を守るように、火の玉が宙に浮かんでいることに気付いた直江が片眉をあげる。
「おっと……」
 一瞬にして炎の勢いが増し、炎の壁へと変化した。遅れて銃声がまた轟く。
 直江は右手を広げて風の障壁を生み出して銃弾を弾くと、攻撃してきた者を確かめるように目を凝らす。
「へえ、思ったよりも早く到着したね」
 直江はジャンプして後退し、忍から距離を取った。
「忍!」
 炎の壁の前に降り立ったのは輝斗だ。右手にフックショット、左手には拳銃を握っている。
「神条……」
 輝斗がここにいるということは、諜報スピオンの千景と幸弘が忍の居場所を特定したのだ。隊服についているバッジには発信器が内蔵されているが、元TJ部隊の直江ならば信号を無効化できる。だが先ほどの反応から察するに、わざとそのまま放置していたに違いない。
 忍が気を失っている間に装備や武器を奪うこともしなかった。輝斗が駆けつけてくるのを待っていたのだろう。
「忍さん、無事で良かったぁ」
「まさか港の方にいるとは思わなかったよね」
「心配したよ」
 直江を挟んで右に威、左に嵐。後ろには羽鳥が銃を構えている。
「逃げ場がないぞ。大人しく降参しろ」
 フックショットをしまい、輝斗は左手に持つ銃の引き金に指を掛けたまま、徐々に距離を詰めていく。
「追い詰めたつもりみたいだけど、勘違いしないでくれる?」
 囲まれているのに、直江は焦っていない。
「僕が、きみたちをおびき寄せたんだよ」
 言い終わると、直江を中心に爆発が起きた。
「!!」
 輝斗たちは各々が身につけているアミュレットで防壁を築き、吹き飛ばされないようにその場に踏みとどまる。
 やがて煙が晴れてくると、そこに直江の姿はなかった。
「消えた!?」
「ゲームをしようよ」
 どこからともなく、直江の声が響き渡る。
「誘拐した八人を、このコンテナのどこかに分散して隠した。制限時間は二時間。今から十五分単位でひとりずつ悪霊ゴーストが魂を抜き取る。きみたちは、制限時間内に全員を見つけ出せるかな?」
 声が遠のくと、空に大量の悪霊が出現した。くるくると頭上を回っている。
「え~、見渡す限りコンテナだよ。そんな中で、たった八人を見つけるなんて無理だよ」
「嵐、最初から諦めない。うちには優秀な諜報がいるだろ」
 早々に降参のポーズをとる嵐に羽鳥が窘める。
「忍、動けるか?」
「……たりめぇだ。このまま、やられっぱなしでいられるかよ」
 何度か自身の首を撫でた後、忍は落とした刀を拾った。その目は怒りの炎で燃えている。
 輝斗と忍は、ぐるりと首を巡らせてコンテナ群を見回した。
 広大な敷地に等間隔にコンテナが置かれている。まとまって動くより、いくつかポイントをわけて捜索した方が効率が良さそうだ。
「ああ、そうだ。言い忘れてたけど……」
 また直江の声がした。地響きと共に、周囲が騒がしくなる。
「なんかガタガタうるさいんだけど……って、なにこれえぇぇっ!?」
 ぎょっとした嵐の声が裏返る。
 積み上がっていたコンテナが勝手に動き出し、ぴったりとくっついて並び出す。また別のコンテナは縦に移動したり、何重にも積み重なっていく。
「なんだこれは……?」
 表情の変化が乏しい輝斗でさえ、目を大きく見開いている。
 複雑に積み上がったコンテナ群は、まるでゲームのダンジョンのようだ。
「コンテナ迷路の出来上がり~。行き止まりや罠もあるから気をつけてね」
「舐めやがって……」
 苛立たしげに呟くと、忍は乱暴に刀を振った。
「千景、幸弘。索敵ダウジングで行方不明者を捜して……もしもし?」
 ワゴン車で控えている諜報スピオンのふたりに呼び掛けていた羽鳥は違和感を覚える。イヤモニから聞こえてくるのは軽快なメロディだ。
『パンパカパーン。この無線は、僕がジャックしちゃいました♪』
「ええっ!?」
 羽鳥だけでなく、輝斗たちにも直江の声がイヤモニから聞こえる。驚く一同を楽しんでいるのか、直江の声は心なしか弾んでいた。
『びっくりしてくれて、ありがとー。そういうわけで、自分の足で頑張って捜してね。んじゃ、ゲームスタート』
 一方的に宣言すると、プツリと通信が切れた。
「……これって不味くない?」
 頬を引きつらせながら、威が一同を見回す。
「無線を解析されたってことは、俺たちの情報が筒抜けってことだ」
 忍の言うとおりだ。それは実戦部隊の敗北を意味する。情報を得ることも伝えることも出来なければ、敵に自分たちの行動が筒抜けで、窮地に陥っても作戦支持を仰げない。
「元諜報らしい姑息な手を使いやがる……!」
 忌々しそうに、忍は顔を渋面にする。
 輝斗たちと対峙している間、直江は気付かれないよう器用に能力を使って諜報のいるワゴン車の居場所を特定し、無線の周波数コードを入手したのだ。
 見た目はやる気がなさそうで弱そうに見える男だが諜報スピオンとしては間違いなくトップクラスだ。味方ならば心強いが、敵にすると厄介なことこの上ない。
「こうしている間も、時間は過ぎてる。あわわ、どうしよう……」
 蒼白の威は口元に手を当てている。
「オレたちが独断で動き回るしかないけど、こんな広い場所で誘拐された八人を見つけるのは難しいよ」
 腰に手を当て、嵐は嘆息する。
「…………」
「チッ……」
 輝斗と忍も苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。
「困ったことに、俺たちは索敵ダウジングのクラフトを持ってないからね」
 羽鳥の言う通りだ。行方不明者を捜し出すのに、どれだけ時間が掛かるだろう。
 ここにはいないが、離れた場所で狙撃タイミングをはかっていた侑李も、輝斗たちと合流すべきか迷っているはずだ。
「ひとまず、みんな落ち着こう。この状況を千景と幸弘が放っておくはずがない。俺たちと合流しようと、今頃こっちへ向かってるはず」
「……確かに。羽鳥さん、遠方感知テレパシーで千景さんと連絡を取ってください」
 首肯し、輝斗は今できる最善を尽くそうと羽鳥に話しかける。
「分かった」
 羽鳥は瞼を閉じ、意識を集中させた。

     × × ×

 五分後――幸弘と千景、そして侑李が合流した。
「現状を隊長に報告した上で、今から作戦を説明するね。制限時間は二時間だけど、現在一人目の魂を抜き取るまで残り十分。そこで僕と幸弘の索敵ダウジング、あと侑李の透視能力が頼りだ」
 千景は淡々と政宗から指示された作戦内容を伝える。
「輝斗と忍は正面の道から進んでほしい。障害物があるなら、輝斗のフックショットや忍の瞬間移動テレポーテーションで飛ぶこと」
「了解」
「あいよ」
 頷くと、輝斗と忍は正面入口から迷路の中へ入った。
「次に威と嵐。嵐の予測感知で悪霊ゴーストの行動を探るんだ」
「そっか。行方不明者を捜すんじゃなくて、悪霊の行動から居場所を探るのか」
「なるほど、逆転の発想だね」
 嵐と威は、ほぼ同時に手を突いた。
「障害物があったら、威の念力サイコキネシスで破壊すること。きみたちは左の入口から進んで」
「分かった。行ってくるね!」
「急げ~!」
 ふたりは左側の入口に向かって駆け出した。
「羽鳥と侑李は、右側の入口から向かってほしい。何かあったら、遠方感知テレパシーを送って」
「了解」
「草薙さんと東さんは、どうするんですか?」
「恐らく敵はウィルスをコンピューターに流し込んでる。早急に駆除しないと。同時に、千里眼サイコメトリーを使って行方不明者を捜索して居場所が分かった順に遠方感知テレパシーで連絡する」
 それは千景自身が索敵装置になるということだ。反面、かなりの霊力を消耗するため肉体に負荷がかかる。
「待って、千景ひとりに負荷がかかりすぎるよ」
「無理しないといけない状況だからね」
「そうだけど……」
 身を案じている羽鳥に、千景は微笑みかける。
「僕が潰れる前に、八人を見つよう」
「ウィルス駆除はオレがやります」
 ノートパソコンを開き、幸弘が作業を開始する。
「頼むよ。さあ、時間との勝負だ。必ず全員を救出しよう」
 千景が促すと、羽鳥と侑李は表情を引き締めた。
「行こう、侑李」
「はい!」
 ふたりの姿が見えなくなってから、千景は意識を集中しようと目を閉じる。
「始めようか……」
 千景を中心に細い糸のような白い光が足元から放射状に広がっていく。蜘蛛の巣のような複雑な紋様を描きながら、それは迷路の方へと伸びる。
「僕の千里眼サイコメトリーは、あらゆるものを見通す。悪魔の好きにさせないよ」
 ゆっくりと目を開け、千景は低い声で呟いた。淡く輝く瞳は、コンテナ迷路全体を把握しようと解析を始めた。
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