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第六章

第六章-07-

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 悪霊ゴーストの行動を嵐のクラフトである予測感知で探る――。
 千景のアドバイスに従って嵐はコンテナ群を見回した。
「あっ!」
 淡く光る瞳が捉えたのは、悪霊ゴーストたちが赤いコンテナに集まる光景ヴィジョンだ。コンテナの中に眠る少女に群がっている様子がえる。
「赤いコンテナ……ここじゃない!」
 似たようなコンテナが積み上がっているが、嵐は近くにあるものには目もくれず真っ直ぐ突き進む。
「っと、行き止まりだ」
 高く積み上がったコンテナが行く手を阻んでいる。
「任せて! むむむ……っ」
 威が両手を突き出して意識を集中させると、軋んだ音を立てながら動き出した。不安定にぐらぐら揺れながら浮かび上がったコンテナたちが、左右のコンテナの上にゆっくりと下ろされていく。
「ふう……こんな感じでどう?」
 額に滲んだ汗を拭い、威は笑いかけた。自分たちの前にそびえ立っていたコンテナの壁を左右に移動させて道を作りあげる。
 それを見て嵐は親指を立てて笑いかけた。
「ナイス!」
「えへへ」
 褒められて気を良くしたのか、威は顔をくしゃくしゃにしている。
「ここにあるのって、輸入されてきたものでしょ。下手に壊したら、都市の経済に影響出そうだもんね。できるだけ壊したくないな」
「まあね。んじゃ、この先を真っ直ぐ進んだら、またクラフトで視るよ」
「よろしくー」
 駆け出した嵐の後を威も追う。
 しかし、捜索は上手くいかなかった。
「また行き止まりだし!」
「赤いコンテナっていっぱいあるもんね」
 コンテナを動かして迷路に組み替えたとはいえ、どれくらいの規模を直江は移動させたのだろう。複雑に入り組んでいて、嵐と威は完全に迷子になっていた。
「ああ、もうっ! 時間がないのに~!」
「無線が使えないのが、こんなに大変だなんてね。諜報スピオンの偉大さを噛みしめるよ」
 頭を抱えて叫んでいる嵐に、威は苦笑いを浮かべる。
「オレのクラフト精度が高かったら、もっと早く目的地に到着してたはずなんだ」
 悔しそうに顔を歪める嵐に、落ち着かせようと威は肩に手を置いた。
「嵐が劣ってるなんて思ったことないよ。こういう時こそ焦らず冷静に、ね。飴ちゃん食べて元気だして」
 ポケットから取り出した飴玉を、嵐の手のひらに乗せる。
「うん……」
 素直に受け取った嵐は、包みを剥がして口の中に放り込む。甘さの中にほどよく酸味がある。
「……イチゴ味だ」
 ふわりと表情が和らいだのを見て、威も自分の分の飴玉を取り出して口の中に入れる。こちらはオレンジ味だ。コロコロと舌で転がしながら、これからどうしようかと考えていると……。
『嵐、威。行き詰まってるようだね。大丈夫、間違いなく目標に近づいてるよ』
 頭の中に直接呼び掛けてきた千景の声に、ふたりは同時に肩を震わせた。
「びっくりした……。千景さんの遠方感知テレパシーか」
「ほんとに?」
『ああ。一旦、引き返して分かれ道に戻ってほしい。そこを左に曲がった先で悪霊ゴーストが集まり出してる』
 千景の指示に従い、ふたりはすぐに引き返した。
「こっちを左っと……」
「凄いなぁ。千里眼サイコメトリーで迷路の全体把握した上で索敵ダウジングを同時に使ってるんでしょ。しかも、遠方感知テレパシーで無線代わりに連絡してくれるし、千景さん頼もしすぎ」
『あはは、その分脳みそが沸騰しそうなくらい熱いわ、痛いわで吐きそうだよ』
 威は念力サイコキネシスのクラフトしかないので、千景がどれだけ凄いことをしているのか想像することしか出来ない。一つの能力を使いこなすだけでも血の滲むような努力が必要だ。それを同時に三つも操るのだから、脳が沸騰しそうになるのも頷ける。
「うぅ……後でいっぱいお疲れ様の肩もみするね」
『ありがとう。さあ、もうすぐゴールが近い。最初のタイムリミットが迫ってる。後は頼むよ』
「見つけた!」
 嵐の声で、威はハッとして空を見上げる。かなりの数の悪霊ゴーストが集まっているが、その下にあるのは赤いコンテナだ。
「よーし、今度こそ……ダイナミックお邪魔しまーす!」
 タンッと力強く地面を蹴った威は悪霊ゴーストたちへと突っ込んで行く。
「はっ!」
 大腿に巻いていた投擲ナイフを引き抜いた嵐が、威の足元に向かって放つ。
「よっと! っと、そーい!」
 念力サイコキネシスでコンテナを階段状に積み上げて移動する威を守ろうと、周囲の悪霊ゴーストを嵐のナイフで浄化していく。
 頂上の赤いコンテナに到着した威はドアヘッドに手を掛けて張り付くと、ハンドルを念力サイコキネシスでこじ開けた。
「嵐!」
「いるよ!」
 加速ヘイストで高速移動してきた嵐が、開いたコンテナの中に入った。遅れて威も滑り込む。
 最初のタイムリミットである十五分ギリギリのところで、ふたりはコンテナの中で横になっている少女を見つけた。
「いた!」
「大丈夫ですか!?」
 ふたりが駆け寄ると、気を失っていた少女のまぶたがカッと開いた。
「あああああああああああああっ!」
 耳をつんざくような声を発せられ、咄嗟に両耳を塞ぐ。
「うわあっ、びっくりした」
「超音波出てない? 反則でしょ」
 ガンガンと響く声に、ふたりは思いっきり顔をしかめる。
 ゆらりと立ち上がった少女は眼球が存在しなかった。真っ暗な闇がふたつ、ぽっかりと穴が空いたように広がっている。
「こいつ悪霊ゴーストだ!」
 少女に化けた悪霊ゴーストだ。まさかダミーまで用意していたとは思っていなかった。
「オオオオオオオオオオオオオッ!」
 ぐねぐねと不自然に左右に揺れたかと思うと、悪霊ゴーストは奇怪な動きをしながら威のもとに飛びかかってきた。
「うわわっ」
 慌てながらも、威は念力サイコキネシスで吹き飛ばす。
「消えてくださいっ!」
 すかさず拳銃のトリガーを引いた。
「ぎゃああっ」
 額の真ん中に銃弾が命中する。絶叫をあげ、悪霊ゴーストは塵となって消滅した。
「ふう……。新しい弾丸の威力凄いね。使いすぎは注意だけど、前より敵を倒しやすくなったよ」
「これが囮なら本物は何処に――っ!」
 外に出た嵐は、クラフトを使って悪霊ゴーストの動きを探る。
「九時の方向、悪霊ゴーストが集まってる! あと三時の方向にも反応あり!」
「了解。んじゃ、九時の方は俺が行くね!」
「任せた!」
 ふたりは、それぞれ別方向へ飛び出した。
 コンテナの中へ次々と侵入していく悪霊ゴーストたちを発見し、威はドアパネルごと念力サイコキネシスで乱暴に引き剥がした。
「きゃああっ!」
 本物の少女は覚醒していた。今にも魂を抜き取ろうと手を伸ばしている悪霊ゴーストたちに向けて、威は連射を放つ。
「えいっ!」
 銃弾を食らった悪霊ゴーストたちが絶叫をあげて、次々と消滅していく。
「はあ……間に合った」
 今度こそ本物の少女を救出できた、と威はホッと胸をなで下ろす。
「もう大丈夫ですよ」
「ありがとう……ございます」
 お礼を言うと、少女の目からポロリと涙の雫がこぼれ落ちた。
「ひっく……うっ……うわあああああああんっ」
「ずっと、ひとりで怖かったよね」
 泣きじゃくる少女を優しく抱きしめ、背中をさすってやる。

     × × ×

 一方、嵐は襲いかかる悪霊ゴーストたちを銃で撃ち抜いて一掃すると、ロックを銃弾で破壊して扉を開けた。空っぽの中に、ぽつんと中年男性が倒れている。
「二人目発見……んっ?」
 男のすぐ傍に電子時計が置かれている。表示されている数字は進むのではなく、一秒ずつ減っていた。もっとよく確かめようと怪訝に思いながらも、嵐は目を凝らす。
「げっ!」
 時計の先にあるコードには、テープで巻かれた小型爆弾だ。時限爆弾だと気付き、嵐は急いで男の腕を取って自身の肩に回す。
「う~、重い。威、早く来て~!」
「はいはい……って、どうしたの!?」
 遅れてやって来た威は反対側に回って男の腕を取る。
「爆弾が仕掛けられてる。早くここから離れないと!」
「わ、分かった。急ごう!」
 いそいそと男を連れ出し、できるだけ遠くへ逃げる。
 五分後、爆弾が作動して爆発が起こった。

 ――ドォンッ!

 吹き飛んだコンテナの破片が降り注いできたが、威の念力サイコキネシスで弾き返す。
「ギリギリセーフ……」
「ずっと、こんなことが続くのかな」
 罠を仕掛けたと直江は言っていたが、付き合わされるこちらの身が持たない。疲れた表情のふたりは重いため息を吐いて項垂れた。

「おいおい、もう降参か?」

 不意に、男の声が頭上から降ってくる。
「嵐、誰か来た」
「はあ……最悪」
 禍々しい気配を発する男の声に聞き覚えがある。予想がはずれてほしい、と思いながらも嵐は投擲ナイフを四方へ放った。地面に突き刺さったそれらが淡い光を発する。暗視スコープを装備していない夜戦で、嵐はこうして照明代わりに術を使った。
「ゲームってのは雑魚を倒した後、ボスが待ち変えてるもんだろ? 今度は俺たちが相手してやるよ」
「あたし、輝斗ちゃんの方が良かったわ。なんでクソガキの相手をしないといけないのよ」
 ぼんやりと明かりに照らされた三節棍を手にするヤマトと、不満そうに唇を尖らせているカオルが、それぞれコンテナの上に佇んでいる。
「うわあ、今度はこの二人と戦うの!?」
「出たな妖怪」
「相変わらず失礼ね! あたしは妖怪じゃなくて、とびきり美人な悪魔よ!」
 嵐の嫌味に、すかさずカオルが反論する。
「はあ? お前がとびきり美人なら、オレは宇宙一可愛いし!」
「嵐、そこ張り合うところじゃないから。ていうか、前も同じことで言い争ってたよね」
「つーか、どうでもいいだろ」
 困り顔の威とヤマトは呆れた様子で、ふたりのいつものやりとりを見ていた。
「どうでもよくない!」
「どうでもよくないわ!」
 同時に答えるので、ヤマトは肩をすぼめる。
 相変わらず可愛い対決をしているふたりは放っておいた方が良さそうだと、ヤマトと威は視線を交わす。
「えっと、なんでここにいるの?」
「ゲームに参加しろって直江が言うから、仕方なく付き合ってる。んで、お前たちの足止めだ」
「できれば、お帰り願いたいなーなんて。ダメ?」
 仔犬のようなきゅるんとした眼差しを向けておねだりをする威に、ヤマトは軽くあしらうようにパタパタと片手を振る。
「まあ、そう言うなって。あくまで足止めだって言ってんだろ。適当に遊んでやっから。んじゃ、いくぜ!」
 一足飛びで距離を詰め、威に向かって三節混を振るった。
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