口なしに熱風

大田ネクロマンサー

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第7話 百年の呪い

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「この国が魔族から受けた百年の呪い。男性が死亡すると魔物に変異してしまう呪い。その呪いを、リディアの口ひとつで守ってくれているのだ。儀式の途中、口を縫うから穴があいている」

「確かに穴があるようだが、言われなければ気づかないな。リディア、ランダと申します。今日は来てくれてありがとう。口布も外してくれてありがとう」

「どっ、どういたしまして! 口布はつけないと街の人が”人死に”があったって怖がっちゃうから、しています!」


ビシッと直立不動になったリディアを見て、ランダは笑みを溢す。さっきは見惚れたその笑顔も、今はなんだかソワソワする。


「いい子ですね。ダグラスは最高の伴侶に巡り会えたようで」


ランダの問いにダグラスははっきり「はい」と返答する。威嚇が隠しきれていないぞ、ダグラス。


「こちら、私服で申し訳ないですが、今は街でも物資が不足しており。当座はこちらで凌いでいただけますか?」


ダグラスの私服を受け取ったランダは一層優しい顔になる。


「かたじけない。しばらくお借りいたします」


借りた服を愛おしそうに撫でるランダを確認したダグラスは、リディアを連れてさっさと部屋を後にした。きっと私と同じ焦燥を感じたに違いない。


「気持ちのいい人たちだ。それにダグラスの伴侶は……もっと違う男性を想像していた。まるで少女のようだ」

「そうだな……」


ランダが半裸でいたおかげで、ダグラスは余計なことを言及せずに出て行ってくれた。だから、これでよかったのだ。

それに、男はああいう可憐な少女のようでなければ靡かないのも、すでに理解はできている。


「ランダ。当面はこの部屋で暮らしてくれ。夜伽も違う部屋だと他の護衛が勘繰る」

「陛下はどうなさるので?」

「違う部屋で寝るさ。さっき言ったとおり、一度も夜伽をしていないので直接の面識はないが……明かりを落とすなりしてランダの顔も極力隠してくれ。一応、王として私の面は割れているからな」

「なぜ、陛下は俺にそんなに……」


ランダは疑問を呈し、そのまま押し黙った。


──こんな男の体を触ったくらいで暴れだすほどご無沙汰なのだろう?


自分でも驚くほど卑屈な考えが脳裏をよぎる。


「愛する者を失う悲しみは、耐え難いものだろう?」

「陛下にはそういった方はいらっしゃらないのですか」


ランダの碧い瞳は、心臓に悪い。見つめていると、なんだか違う可能性があるのではないかとさえ思えてくるのだ。


「さっきも言ったとおり、不能なのだ。だから後にも先にも、いない」


今までもこれからも、こうやって心がザワザワする兆しを鎮める方法を心得ている。今回もそうするだけだ。

人との関係はなにも恋愛感情だけではない。私のように命がけで国を守るような強さのない男は、人々の隙間で他人の幸福を祈ることしか許されないのだ。

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