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本編
第5話 クロの家
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「キャゥッ!! キャンキャンキャンキャン!」
俺は視覚情報に頼って生きている、そう感じざるを得ない大惨事を目のあたりにしている。
彼が炒め物に顔から突っ込み、熱さから体を仰け反らした拍子にランチョンマットを引っ掛け、熱々の味噌汁や炊き立ての米が全裸の彼を襲った。今、彼は部屋の隅で吠え続けている。
見た感じからきっと温かい(人間が食べるような)ご飯がよかろうという親切心が、彼を部屋の隅に追いやってしまったのだ。
大した時間もかけていないが、一瞬で床に散らばった食事たち。俺はそれをよけながら彼の前に座る。全裸で丸まって震える彼を見ると、自分がとてつもなく悪者に感じる。
「クロ……?」
「カンのやつがいい! カンのやつがいい! キャンのキャンッ! キャンキャンキャン!」
缶詰の柔らかい餌がいいのはわかった。俺が悪かったからキャンキャン吠えないでほしい。幸い戸建てだから苦情は来ないが、その責めるような声が胸を抉る。
「少し触るぞ……」
彼の太腿に触れると、懐かしい匂いが立つ。そして彼は急に大人しくなった。腕を掴み上げて腹を見ると、ところどころ痛々しい赤いマダラができていた。
「クロ、立てるか?」
彼の顔を覗き込んだ時、俺は頭に生える耳を見て固まる。人間も頭から耳が生えているといえばそうだ。だが俺が見た耳とはいわゆる犬のような毛むくじゃらの耳だった。
また吠えられるんじゃないかとビクビクしながらそっと耳に手をあてる。クゥーンと鼻で鳴いたから、視線を落とすと尻には尻尾が生えていた。
「これ……」
「お腹すいた!」
全裸の雄々しい男がケモ耳と尻尾をつけて幼稚に餌をねだる。加えて本当に昔飼っていた犬かもという可能性も添加され、俺は大パニックだった。
「あの服は新しい飼い主に買ってもらったのか?」
「飼い主はハルチカだけだ!」
「クロ。缶の柔らかい餌をあげる」
「服は……俺が……人間になってから……服の着方とか教えてくれた人にもらった……」
クロはこれを答える時に耳を後ろにたたみ、尻尾を下げた。母に怒鳴られていた時の反応とまったく一緒だった。
「あまり言いたくないか……クロ、今日は缶はないから、あれを一緒に食べよう」
「カンのやつが! カンのやつがいい!」
耳をそっと撫でてそのまま髪をすいてやる。するとたちまちに目を細めて大人しくなる。
「ほら立って」
一緒に立ち上がると、クロは意外にも従順に俺についてきた。そしてぶち撒かれた料理をよけて俺側のダイニングチェアに座らせると、あからさまに怯えだした。
多分、白米とおかずを一緒に食べさせるのは難しい。だから味噌汁に米を突っ込み、ねこまんまにした。そして取り分け用に置いていたスプーンで一口すくって、フーフーと息を吹きかけてやる。
少しだけ舐めて冷めたのを確認したら、クロの口に近づけた。
「口をあけて」
クロに一口与えたら、あとは心配など必要なかった。学習したクロは何度も催促して、ついには待ちきれずに、お椀に食らいついた。そして食べ終わったお椀をいつまでもいつまでも舐める。ドライフードしか与えない母の目を盗んで、クロに缶詰の餌をあげた時と同じだった。あの日も缶と一緒に寝ていた……。
じゃねぇよ! なに本気にしてるんだよ!?
俺は調光を明るさマックスにすべく立ち上がり、そしてもう一度耳を触ろうとした。しかし無いのだ。普通明るくしたほうがよく見えるというのに、さっきまで見えていた耳や尻尾がなくなっている!
そして、我に返った俺の目の前には、料理がぶちまけられた部屋の惨状が広がっていた。
「クロは、今日なんで家に来たんだ?」
目的がまったくわからなかった。人の一番弱い部分を抉っておきながら要求すらない。
「ハルチカはやっぱり、俺を覚えてないの?」
「おい、いい加減にしろよ! ちゃんと答えろ!」
「ハルチカに会いたかったに決まってるだろ! なんでそんなこと聞くんだよ!」
「犬じゃねぇからだよ!」
クロは目を見開き、信じられないといった顔をする。信じられないのはこっちだ!
「飼い主は、犬じゃなくても責任を持てよ!」
またこれだ。知能から察するに困ったらこれを言えと誰かに教わったのだろう。
「人間はペットにできない。もしペットにしてやるなんていうやつについて行ってみろ。酷い目に遭うぞ」
「俺は、俺はクロだ! もう犬には戻れないんだ! なんキャンッ、なんでっ! 飼い主はハルチカしかいないのに! 家もなくなっちゃったんだ! 俺の家!」
途中上擦りながら、必死で窓の先を指さす。
「あそこは俺の家だ! 俺のっ! キャンキャンキャンキャン!」
「あぁっ! もうその鳴き声やめろ! 住みたかったら外に住め! 家に入ってくるな!」
言い過ぎたと我に返った時、クロは意外にも目を輝かせた。
「ハルチカ、お母さんみたい!」
凶悪な言葉とは裏腹にサーチライト顔負けの眩しい笑顔が照射される。そのままウキウキで庭に出て行こうとするクロを止めた。
「ハルチカも一緒に寝る?」
心の底から嬉しそうに、庭で寝ることを勧めるクロ。その顔にやはり飼い犬の面影があるような気がしてしまう。
「服を着たら、家の中でもいい」
「本当!?」
「ただし……ちゃんと人間として暮らさなければダメだ」
「ハルチカと……暮らせる……?」
プルプルと震え、この世の喜びを体全体で表現するクロを見ていたら、後戻りできないところまで流れ着いてしまったと一気に後悔が襲いかかる。
パタ、パタ、となにかが滴る音が足元から聴こえる。視線を落とすと、クロは少量の小便を落としていた。それに驚愕しているあいだに今度は胸に強い衝撃が走る。
「また一緒に暮らせる……!」
「おしっこも……その辺にしちゃダメだ……」
「うん、うん。ごめんなさい……」
胸に飛び込んできたクロの背中に手を回すと、やっぱり尻尾らしきものがブンブン振り回されていた。香り立つ懐かしくも狂おしい匂いが俺の胸を打って、彼の背に手を回さずにはいられない。しかし思うのだ。
明日、一応警察に行ったほうがいいのだろうか。彼はずっとこの家で暮らすつもりなのだろうか。彼は本当にクロなのだろうか。
腕の中でブルブル震える大きな生き物に愛おしさを抱くとともに、自分の背負う責任の重さを感じていた。
俺は視覚情報に頼って生きている、そう感じざるを得ない大惨事を目のあたりにしている。
彼が炒め物に顔から突っ込み、熱さから体を仰け反らした拍子にランチョンマットを引っ掛け、熱々の味噌汁や炊き立ての米が全裸の彼を襲った。今、彼は部屋の隅で吠え続けている。
見た感じからきっと温かい(人間が食べるような)ご飯がよかろうという親切心が、彼を部屋の隅に追いやってしまったのだ。
大した時間もかけていないが、一瞬で床に散らばった食事たち。俺はそれをよけながら彼の前に座る。全裸で丸まって震える彼を見ると、自分がとてつもなく悪者に感じる。
「クロ……?」
「カンのやつがいい! カンのやつがいい! キャンのキャンッ! キャンキャンキャン!」
缶詰の柔らかい餌がいいのはわかった。俺が悪かったからキャンキャン吠えないでほしい。幸い戸建てだから苦情は来ないが、その責めるような声が胸を抉る。
「少し触るぞ……」
彼の太腿に触れると、懐かしい匂いが立つ。そして彼は急に大人しくなった。腕を掴み上げて腹を見ると、ところどころ痛々しい赤いマダラができていた。
「クロ、立てるか?」
彼の顔を覗き込んだ時、俺は頭に生える耳を見て固まる。人間も頭から耳が生えているといえばそうだ。だが俺が見た耳とはいわゆる犬のような毛むくじゃらの耳だった。
また吠えられるんじゃないかとビクビクしながらそっと耳に手をあてる。クゥーンと鼻で鳴いたから、視線を落とすと尻には尻尾が生えていた。
「これ……」
「お腹すいた!」
全裸の雄々しい男がケモ耳と尻尾をつけて幼稚に餌をねだる。加えて本当に昔飼っていた犬かもという可能性も添加され、俺は大パニックだった。
「あの服は新しい飼い主に買ってもらったのか?」
「飼い主はハルチカだけだ!」
「クロ。缶の柔らかい餌をあげる」
「服は……俺が……人間になってから……服の着方とか教えてくれた人にもらった……」
クロはこれを答える時に耳を後ろにたたみ、尻尾を下げた。母に怒鳴られていた時の反応とまったく一緒だった。
「あまり言いたくないか……クロ、今日は缶はないから、あれを一緒に食べよう」
「カンのやつが! カンのやつがいい!」
耳をそっと撫でてそのまま髪をすいてやる。するとたちまちに目を細めて大人しくなる。
「ほら立って」
一緒に立ち上がると、クロは意外にも従順に俺についてきた。そしてぶち撒かれた料理をよけて俺側のダイニングチェアに座らせると、あからさまに怯えだした。
多分、白米とおかずを一緒に食べさせるのは難しい。だから味噌汁に米を突っ込み、ねこまんまにした。そして取り分け用に置いていたスプーンで一口すくって、フーフーと息を吹きかけてやる。
少しだけ舐めて冷めたのを確認したら、クロの口に近づけた。
「口をあけて」
クロに一口与えたら、あとは心配など必要なかった。学習したクロは何度も催促して、ついには待ちきれずに、お椀に食らいついた。そして食べ終わったお椀をいつまでもいつまでも舐める。ドライフードしか与えない母の目を盗んで、クロに缶詰の餌をあげた時と同じだった。あの日も缶と一緒に寝ていた……。
じゃねぇよ! なに本気にしてるんだよ!?
俺は調光を明るさマックスにすべく立ち上がり、そしてもう一度耳を触ろうとした。しかし無いのだ。普通明るくしたほうがよく見えるというのに、さっきまで見えていた耳や尻尾がなくなっている!
そして、我に返った俺の目の前には、料理がぶちまけられた部屋の惨状が広がっていた。
「クロは、今日なんで家に来たんだ?」
目的がまったくわからなかった。人の一番弱い部分を抉っておきながら要求すらない。
「ハルチカはやっぱり、俺を覚えてないの?」
「おい、いい加減にしろよ! ちゃんと答えろ!」
「ハルチカに会いたかったに決まってるだろ! なんでそんなこと聞くんだよ!」
「犬じゃねぇからだよ!」
クロは目を見開き、信じられないといった顔をする。信じられないのはこっちだ!
「飼い主は、犬じゃなくても責任を持てよ!」
またこれだ。知能から察するに困ったらこれを言えと誰かに教わったのだろう。
「人間はペットにできない。もしペットにしてやるなんていうやつについて行ってみろ。酷い目に遭うぞ」
「俺は、俺はクロだ! もう犬には戻れないんだ! なんキャンッ、なんでっ! 飼い主はハルチカしかいないのに! 家もなくなっちゃったんだ! 俺の家!」
途中上擦りながら、必死で窓の先を指さす。
「あそこは俺の家だ! 俺のっ! キャンキャンキャンキャン!」
「あぁっ! もうその鳴き声やめろ! 住みたかったら外に住め! 家に入ってくるな!」
言い過ぎたと我に返った時、クロは意外にも目を輝かせた。
「ハルチカ、お母さんみたい!」
凶悪な言葉とは裏腹にサーチライト顔負けの眩しい笑顔が照射される。そのままウキウキで庭に出て行こうとするクロを止めた。
「ハルチカも一緒に寝る?」
心の底から嬉しそうに、庭で寝ることを勧めるクロ。その顔にやはり飼い犬の面影があるような気がしてしまう。
「服を着たら、家の中でもいい」
「本当!?」
「ただし……ちゃんと人間として暮らさなければダメだ」
「ハルチカと……暮らせる……?」
プルプルと震え、この世の喜びを体全体で表現するクロを見ていたら、後戻りできないところまで流れ着いてしまったと一気に後悔が襲いかかる。
パタ、パタ、となにかが滴る音が足元から聴こえる。視線を落とすと、クロは少量の小便を落としていた。それに驚愕しているあいだに今度は胸に強い衝撃が走る。
「また一緒に暮らせる……!」
「おしっこも……その辺にしちゃダメだ……」
「うん、うん。ごめんなさい……」
胸に飛び込んできたクロの背中に手を回すと、やっぱり尻尾らしきものがブンブン振り回されていた。香り立つ懐かしくも狂おしい匂いが俺の胸を打って、彼の背に手を回さずにはいられない。しかし思うのだ。
明日、一応警察に行ったほうがいいのだろうか。彼はずっとこの家で暮らすつもりなのだろうか。彼は本当にクロなのだろうか。
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