運命の番(Ω)がガチ目の犬すぎてこまる

大田ネクロマンサー

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本編

第17話 大パニック公園

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地元の商店街は、最寄り駅を挟んで東西に伸びている。クロとよく遊んだ公園は家とは反対側、線路の向こう側に位置していた。犬も走り回れる広い公園で、芝生の生い茂る自然公園だ。学区はこの線路を挟んで分かれていたため、子どもの頃は向こう側に行くことに恐れを抱いていた。でもクロがいたからちょっとした冒険もできたのだ。

公園に着いたクロの興奮はクライマックスを迎え、買ってあげたボールを投げることを躊躇うほど大暴れしていた。初夏にしては日差しが厳しい陽気もあってか、幸いこの広い公園のど真ん中でボール遊びをしている家族はいない。

「クロ! もう犬じゃないんだから、そんなに暴れ回ると怪我するぞ!」

「俺のっ! 俺のボール!」

クロは、頭から背中から地面に突っ込み、エビのようにビチビチ跳ねている。これ以上生傷を増やすよりはボールを追いかけたほうが怪我も少なかろうと、買った軟式テニスボールを遠くに投げた。

クロは無言でダッシュする。驚きの速度で走るクロの白いシャツに、初夏の繊細な日差しが反射して揺れる。まだ深くない芝生や木々の緑に、白い陽炎が揺れているみたいだ。

 こんな日差しを感じるのはいつ以来だろう。

「キャンキャンキャンキャンッ!」

クロが遠くで俺を呼んでいる。それがなんだか嬉しくて、走り出す。毎日デスクワークで、ジムにも通っていない生粋のインドア。だから走ることなんて面倒だとばかり思っていたのに。しかし2歩3歩踏み出したところで、体中が喜んでいるみたいな感覚に支配されて、止められなくなった。全力疾走でクロの元へ辿り着いた時、息は上がって汗も吹き出したが、胸に涼やかな感動が通り抜ける。

「ああ、クロ。犬の時みたいに口じゃ咥えられないぞ。手で拾うんだ。ほら、手を貸してみろ」

クロの手を掴んで一緒にボールを拾う。クロはまた恥ずかしがっているだろうか。でも嬉しさが抑えきれなくて、言葉が溢れ出す。

「走るの、気持ちがいいな。今度は一緒にボール取りに行こう。どっちが取れるか競争、だっ!」

いい終わりにボールを投げて、クロと一緒に走り出す。

大人が2人、全力で遊ぶ。誰かに見られたら通報レベルかもしれないが、今日は幸運にも貸し切り状態だ。だからだろう、自分でも不可解だと感じるくらいはしゃいで、日が傾くまでクロと走り回ってしまった。


「ああ……これは明日筋肉痛になるな……」

体力の限界を迎え、俺は芝生に横たわる。クロは朝のように行儀よく俺の隣に手足をついて座った。

「ハルチカもう1回やろ?」

「クロ、わかったけど、ちょっと休ませてくれ。ほら、クロも喉が渇いただろ」

さっき走るついでに自販機で買ってきたペットボトルの蓋をあけてやる。1回目はシャツをビショビショにしてしまったが、今回はうまく角度を調整してゴクゴクと上手に飲んだ。プハッと飲み終わったクロの笑顔に自然と手が伸びる。

「クロはなんでもすぐできるようになるな。いい子いい子」

クロは俺の手にまとわりついて、もっと撫でろと催促する。一陣の風が通り抜けて銀髪を乱した。風にのったクロの匂いが鼻を通り抜けると、胸が急に膨らんだように苦しくなる。

「クロ、今日は夕ご飯の買い物して帰ろう。缶のやつ忘れずに買って、帰ったらまたクロの髪の毛を洗ってやるぞ」

「キャウンッ!」

「今日もクロ、いい子だったからな」

疲れから重くなった体を起こして立ち上がろうとすると、クロが腕を引っ張ってくれる。フザけてそのまま背中に飛び乗ったら、俺を背負ったまま歩き出そうとした。駅ビルではあんなに怯えていたのに、そのギャップに笑ってしまった。

公園の出口でクロに下ろしてもらったら、夕日で伸びた影を踏んで、2人並んで商店街を歩く。ところどころ店は入れ替わり昔とまったく同じ風景ではない。でもクロと歩いた商店街と同じ空気だった。

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