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第5話 預言による断罪
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ミオは俺が少しでも黙ればすぐに唇を寄せて舌でくすぐろうとする。だから俺はその小さな背中を撫でて、話しはじめた。
「リベリオには先の未来が見えるらしい。俺は大罪を犯すそうだ」
「え? レジーはなにかを企んでいたの?」
「いや、考えたこともない……突拍子もないことだった」
「大罪ってなにさ! そんな話レジーだって……! たとえ入れ上げてたとしても皇帝だって信じないだろ!」
「俺が皇帝を殺害すると」
ミオは口をキュッと結び、背筋を伸ばした。
「そ、そんな。未来に起こるかもしれない可能性の話なんか信じてたら、帝国は罪人ばかりになるだろ。案外皇帝っていうのは小心者なんだな。自分が殺されるかもなんてだけで、そんな話鵜呑みにして、腹心の武官を追放するなんて……」
「いや……」
ミオの疑問は、人気のない部屋に呼び出されてリベリオに告げられた時、俺自身が思ったことでもあった。自分でさえ納得ができなかったのに、ミオが納得できるはずもない。
「リベリオは俺しか知り得ないことを話し始めた。俺はそれで自分が大罪を犯すことを確信した」
「レジーにしか知り得ないこと? それは国を揺るがす機密情報なのか?」
「個人的なことさ。人に知られたくない恥ずかしい……事実だ……」
ミオは心配そうに俺を見る。今までの言動からは不釣り合いな視線に戸惑いが生じる。
「やっぱりリベリオに弱みを握られてたんじゃないか」
「違う。リベリオは心から帝国のことを考えて言ってくれたのだ」
そう。それが俺は受け入れられなかった。
「でも、それじゃおかしいだろ。レジーがその起こることさえわからない大罪の可能性に納得して国を出るって言うなら、国外追放を帝国中に知らしめるなんて! そんな見せしめみたいなこと……皇帝は非道いじゃないか!」
リベリオは皇帝のいない部屋に俺を誘い申し訳なさそうに言った。
『僕は皇帝の寵愛などどうでもいい。なんだったら、こんな面倒なこと放って森の奥で静かに暮らしたい。でもこの国の未来が揺らぐのは避けたいんだ』
リベリオの真の正義に、目の前の風景が歪み、怒りで……
「我を忘れて、俺はリベリオに掴みかかった。その現場に陛下が鉢合わせて、怒りを買ったんだ」
ミオは解せない、そんな顔で俺をじっと見ていた。それはそうだろう、俺が自分の大罪に納得していたのなら、リベリオに掴みかかる理由などなにもない。
「その秘密、そんなに知られたくなかったの?」
「そうだな……ミオはとても賢いな」
「俺のことなんてどうでもいいんだ……」
俺はミオからその秘密を教えろとせがまれるのかと思った。しかしミオは俺の頭を優しく撫でるだけで、質問をやめた。
「ミオは優しい」
「優しくなんてないさ。レジーが秘密を知られたくないように、俺だって宝物の良さを人には知られたくない。知られてしまったら盗まれてしまうからな。大切な秘密なんだろ?」
ミオの言葉にまた胸がギュッと縮まる。目頭に熱が立ち込めたと思ったら、急にミオが俺の頭を抱いて胸に引き寄せた。
船が大陸に着くのは5日後。ミオは毎日、兄弟のキスで俺の唇をくすぐり、その胸に俺を引き寄せ夜を明かした。ミオの幼さを案じ、出稼ぎをやめさせるはずが、結局心を救済されたのは俺の方だった。
「リベリオには先の未来が見えるらしい。俺は大罪を犯すそうだ」
「え? レジーはなにかを企んでいたの?」
「いや、考えたこともない……突拍子もないことだった」
「大罪ってなにさ! そんな話レジーだって……! たとえ入れ上げてたとしても皇帝だって信じないだろ!」
「俺が皇帝を殺害すると」
ミオは口をキュッと結び、背筋を伸ばした。
「そ、そんな。未来に起こるかもしれない可能性の話なんか信じてたら、帝国は罪人ばかりになるだろ。案外皇帝っていうのは小心者なんだな。自分が殺されるかもなんてだけで、そんな話鵜呑みにして、腹心の武官を追放するなんて……」
「いや……」
ミオの疑問は、人気のない部屋に呼び出されてリベリオに告げられた時、俺自身が思ったことでもあった。自分でさえ納得ができなかったのに、ミオが納得できるはずもない。
「リベリオは俺しか知り得ないことを話し始めた。俺はそれで自分が大罪を犯すことを確信した」
「レジーにしか知り得ないこと? それは国を揺るがす機密情報なのか?」
「個人的なことさ。人に知られたくない恥ずかしい……事実だ……」
ミオは心配そうに俺を見る。今までの言動からは不釣り合いな視線に戸惑いが生じる。
「やっぱりリベリオに弱みを握られてたんじゃないか」
「違う。リベリオは心から帝国のことを考えて言ってくれたのだ」
そう。それが俺は受け入れられなかった。
「でも、それじゃおかしいだろ。レジーがその起こることさえわからない大罪の可能性に納得して国を出るって言うなら、国外追放を帝国中に知らしめるなんて! そんな見せしめみたいなこと……皇帝は非道いじゃないか!」
リベリオは皇帝のいない部屋に俺を誘い申し訳なさそうに言った。
『僕は皇帝の寵愛などどうでもいい。なんだったら、こんな面倒なこと放って森の奥で静かに暮らしたい。でもこの国の未来が揺らぐのは避けたいんだ』
リベリオの真の正義に、目の前の風景が歪み、怒りで……
「我を忘れて、俺はリベリオに掴みかかった。その現場に陛下が鉢合わせて、怒りを買ったんだ」
ミオは解せない、そんな顔で俺をじっと見ていた。それはそうだろう、俺が自分の大罪に納得していたのなら、リベリオに掴みかかる理由などなにもない。
「その秘密、そんなに知られたくなかったの?」
「そうだな……ミオはとても賢いな」
「俺のことなんてどうでもいいんだ……」
俺はミオからその秘密を教えろとせがまれるのかと思った。しかしミオは俺の頭を優しく撫でるだけで、質問をやめた。
「ミオは優しい」
「優しくなんてないさ。レジーが秘密を知られたくないように、俺だって宝物の良さを人には知られたくない。知られてしまったら盗まれてしまうからな。大切な秘密なんだろ?」
ミオの言葉にまた胸がギュッと縮まる。目頭に熱が立ち込めたと思ったら、急にミオが俺の頭を抱いて胸に引き寄せた。
船が大陸に着くのは5日後。ミオは毎日、兄弟のキスで俺の唇をくすぐり、その胸に俺を引き寄せ夜を明かした。ミオの幼さを案じ、出稼ぎをやめさせるはずが、結局心を救済されたのは俺の方だった。
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