122 / 240
2部 焼け落ちる瑞鳥の止まり木
第42話 ジルベスタ(アシュレイ視点)
しおりを挟む
ノアの髪の毛が激しく浮き上がり、結いが解けまるで生き物のように激しく動き回る。そこにルイスが押さえていても漏れ出すルークの断末魔が響き渡った。ルークは痛むのか本能からくる激しい痙攣でノアとルイスを跳ね除けた。
「ジル! ジル! 足を押さえて! アシュレイも手伝え!」
ルイスがすごい形相で俺とジルに命令する。慌てて2人駆け寄り、ジルは足を、俺は胸を押さえつけ、ルイスは布の猿ぐつわを押さえつける。そこにノアが跨がりさっきより激しく髪の毛を揺らした。
「ノア、ノア! お願い! お願い!」
ルイスは瞳を激しく動かしながらノアに叫び続ける。そうでもしなければルークの絶叫に耐えられなかったのだろう。
ルークは悶絶し、体を激しく痙攣させる。魔人2人でやっと押さえられるのだ。どれだけの苦痛か想像に堪えない。ノアはそれが分かっているのだろう。汗か涙もわからない水滴が顔中を伝い、しかしそれを拭うことなどせずにただひたすらに集中していた。ノアの顎からボタボタと水滴が落ち、ダメだ、ダメだと譫言のように呟いたあと、激しさを増していたルークの痙攣がピタッと止まった。
全員がそれを認識して、そしてルイスとのジルと俺がノアを見た。ノアはまたがっていたルークから降りて、息も絶え絶えに呟く。
「お願い……!」
その声に全員が絶望し、押さえていた力が抜ける。
その瞬間、ガバッとルークが上半身を起こした。
「めちゃくちゃ痛かったぞ! ノア!!」
ルークの怒号に、ルイスではなくジルが真っ先に反応した。足を押さえていたジルが、そのまま押し倒す形でルークの胸に飛び込んだのだ。
「なんだ、なんだ!? やめろ気持ち悪い!」
「兄様! 兄様! 兄様ぁーー!」
ジルに折り重なるようにルイスも飛び込む。膝立ちをしていたノアは、安心したのかその場にへたり込んだ。そして俺の顔を見るなり呟く。
「アシュレイ、さっきはごめんなさい。すごく焦っていて……」
ノアは俺の手をはらい、そして怒鳴ったことを謝っているのだろう。俺が言葉を探しているうちに、ルイスがノアに抱きついた。
「ノア! ノア! ノア!」
感激からかルイスはノアの名しか呼べないようだった。それを見たノアは安心した顔で呑気なことを言う。
「スコーンが食べたい」
ルイスは大声で泣き出し、どうしようもなくなってしまった。ノアに抱かれ、大声で泣くルイスを見れば、ここに来るまでどれだけの恐怖を味わったか想像できる。そして、慈愛に満ちたノアの表情を見ながら、俺は王の訪問を思い出していた。
確かにこれまで、王が父に奇跡の猶予を与えてくださったと思っていた。それは訪問により父が励まされたといった精神論においてそう思っていたのだ。しかしノアの一連の魔法を目の当たりにし、その考えは打ち砕かれた。
それとともに、父に奇跡の猶予を与えてくださった王をなんとしてでも守らなければならないと決意するに至る。
いつの間にか兄弟全員に抱かれているノアを短く呼んだ。兄弟はそれを慮りノアを解放する。
俺に抱きついたノアを抱え上げながら俺は心からの謝辞を述べた。
「ノア、俺の手を振り払い成すべきことを成してくれてありがとう。こんな結末を後で知り得たならば、俺は一生、手を離さなかった後悔を背負って生きただろう」
「そんな、そんな」
「ノアが心のままにと、何度もそう願う真意がようやくわかった。ノア、感謝に絶えない。ルークを救ってくれてありがとう」
ノアが俺の首に手を回して抱きついた。顔が見えなくなってしまったが、きっと伝わっただろう。
「聞きたいことは沢山あるのだが、王をお守りするのが優先事項だ」
ノアとルイスが上空から現れた時から疑問は沢山あった。なぜ王都の光は消えノアは塔を出たのか、どうして上空から現れて無事に着地ができたのか、そしてルークを救ったその力はなんなのか。
俺の決意に意外にもルイスが応えた。
「僕たちに安全なところはもうないから、足手まといかもしれないけどアシュレイ達と一緒に行きたい」
その言葉に、他でもないルークとジルが心を打たれたようで、ルイスは2人にもみくちゃにされた。
「わかった。首謀者と思しき者が1人そこの武器庫に入っているが、もう1人のレオとやらを取り逃した。まずは王の元へ向かう」
「わかった」
ルークが返事をしたので、ルイスが心配そうに彼の顔を撫でた。
「兄様……大丈夫ですか? お顔もこんなにされて……」
「これはジルがやったんだ。理由は聞くんじゃない」
ルークの必死さにルイスもジルも笑った。だから俺は安心し、ノアを抱えながら厩舎に向った。
「ジル! ジル! 足を押さえて! アシュレイも手伝え!」
ルイスがすごい形相で俺とジルに命令する。慌てて2人駆け寄り、ジルは足を、俺は胸を押さえつけ、ルイスは布の猿ぐつわを押さえつける。そこにノアが跨がりさっきより激しく髪の毛を揺らした。
「ノア、ノア! お願い! お願い!」
ルイスは瞳を激しく動かしながらノアに叫び続ける。そうでもしなければルークの絶叫に耐えられなかったのだろう。
ルークは悶絶し、体を激しく痙攣させる。魔人2人でやっと押さえられるのだ。どれだけの苦痛か想像に堪えない。ノアはそれが分かっているのだろう。汗か涙もわからない水滴が顔中を伝い、しかしそれを拭うことなどせずにただひたすらに集中していた。ノアの顎からボタボタと水滴が落ち、ダメだ、ダメだと譫言のように呟いたあと、激しさを増していたルークの痙攣がピタッと止まった。
全員がそれを認識して、そしてルイスとのジルと俺がノアを見た。ノアはまたがっていたルークから降りて、息も絶え絶えに呟く。
「お願い……!」
その声に全員が絶望し、押さえていた力が抜ける。
その瞬間、ガバッとルークが上半身を起こした。
「めちゃくちゃ痛かったぞ! ノア!!」
ルークの怒号に、ルイスではなくジルが真っ先に反応した。足を押さえていたジルが、そのまま押し倒す形でルークの胸に飛び込んだのだ。
「なんだ、なんだ!? やめろ気持ち悪い!」
「兄様! 兄様! 兄様ぁーー!」
ジルに折り重なるようにルイスも飛び込む。膝立ちをしていたノアは、安心したのかその場にへたり込んだ。そして俺の顔を見るなり呟く。
「アシュレイ、さっきはごめんなさい。すごく焦っていて……」
ノアは俺の手をはらい、そして怒鳴ったことを謝っているのだろう。俺が言葉を探しているうちに、ルイスがノアに抱きついた。
「ノア! ノア! ノア!」
感激からかルイスはノアの名しか呼べないようだった。それを見たノアは安心した顔で呑気なことを言う。
「スコーンが食べたい」
ルイスは大声で泣き出し、どうしようもなくなってしまった。ノアに抱かれ、大声で泣くルイスを見れば、ここに来るまでどれだけの恐怖を味わったか想像できる。そして、慈愛に満ちたノアの表情を見ながら、俺は王の訪問を思い出していた。
確かにこれまで、王が父に奇跡の猶予を与えてくださったと思っていた。それは訪問により父が励まされたといった精神論においてそう思っていたのだ。しかしノアの一連の魔法を目の当たりにし、その考えは打ち砕かれた。
それとともに、父に奇跡の猶予を与えてくださった王をなんとしてでも守らなければならないと決意するに至る。
いつの間にか兄弟全員に抱かれているノアを短く呼んだ。兄弟はそれを慮りノアを解放する。
俺に抱きついたノアを抱え上げながら俺は心からの謝辞を述べた。
「ノア、俺の手を振り払い成すべきことを成してくれてありがとう。こんな結末を後で知り得たならば、俺は一生、手を離さなかった後悔を背負って生きただろう」
「そんな、そんな」
「ノアが心のままにと、何度もそう願う真意がようやくわかった。ノア、感謝に絶えない。ルークを救ってくれてありがとう」
ノアが俺の首に手を回して抱きついた。顔が見えなくなってしまったが、きっと伝わっただろう。
「聞きたいことは沢山あるのだが、王をお守りするのが優先事項だ」
ノアとルイスが上空から現れた時から疑問は沢山あった。なぜ王都の光は消えノアは塔を出たのか、どうして上空から現れて無事に着地ができたのか、そしてルークを救ったその力はなんなのか。
俺の決意に意外にもルイスが応えた。
「僕たちに安全なところはもうないから、足手まといかもしれないけどアシュレイ達と一緒に行きたい」
その言葉に、他でもないルークとジルが心を打たれたようで、ルイスは2人にもみくちゃにされた。
「わかった。首謀者と思しき者が1人そこの武器庫に入っているが、もう1人のレオとやらを取り逃した。まずは王の元へ向かう」
「わかった」
ルークが返事をしたので、ルイスが心配そうに彼の顔を撫でた。
「兄様……大丈夫ですか? お顔もこんなにされて……」
「これはジルがやったんだ。理由は聞くんじゃない」
ルークの必死さにルイスもジルも笑った。だから俺は安心し、ノアを抱えながら厩舎に向った。
1
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる