罪と魔女

大田ネクロマンサー

文字の大きさ
5 / 16

第5話 魔女の時間厳守論 (※)

しおりを挟む
 服屋は大体10時開店なのでその前に床屋に行った。さっぱりしたあと開店と同時に紳士服屋に入店したが、必要最低限とはいえ思いの外時間がかかり、息急き切って会社に戻ったのは11時半。もう12時までに昼食を作ることは不可能だと感じ、先に謝ろうと2階の事務所の扉を開けた。

 暗い事務所に入って聞こえてきた荒々しい嬌声の出所も、意味も、すぐに理解できた。窓からの逆光がそのシルエットを生々しく、また印象的にしていた。

「誰だ……あっ……誰だてめぇは!」

 ソファの上で四つん這いになり、尻に男性器を突っ込まれている男性が、息も絶え絶えに虚勢を張る。

「あれは時間も守れない新しい従業員だ」

 ゆっくり奥深くまで差し込まれ男は顎を突き上げ身悶えする。

「ノブ、こっちへ来い、こいつは見られると興奮するんだ」

「やめ……やめて……」

「大丈夫だ、NDAは締結してある。ほら、今日は私をいかせるまで我慢するんだろ?」

 真下さんの指示と、男の拒絶で僕はその場を一歩も動けない。

「早く来い、もうこいつは限界だぞ」

 真下さんはそう言い、自分のそれをさらに深く差し込む。

「あぁっ……あぁっ……もういきたいっ……」

 真下さんが男性器を突き刺す動きに合わせ男が歪んだ声で言葉を溢す。その声がどんどんとうわずり、声が声にならなくなってきた。しかし、荒々しい呼吸で男性が限界を迎えそうになった瞬間、真下さんは男性の性器の付け根を握る。

「あああああっ……いかせて……! いかせてぇ……!」

「あいつにお願いしろ、こっちにきて見てくださいって」

 男はうわ言のように何かを言っているが、ここまで聞こえなかった。真下さんは男の顎を掴み上体を仰け反らせるように手を引いた。

「ああああああっ!」

「いい子だから言ってごらん? ここがいいんだろ?」

「お……お願いします……こ……こっちに来て……」

「こっちに来てください、だ」

「こっちに……来てください……!」

 しばらくその場から動けなかったが、再度名前を呼ばれて、2人のそばまで歩き出した。近くに行けば行くほど真下さんへの違和感が増す。僕が男の目の前に来たところで、真下さんは男の性器から手をゆっくりと外し、腰を両手で掴んだ。

 男に腰を打ち付けるたび、真下さんのはだけた服から隆々たる腹筋が見え隠れする。男は快楽を求めて自ら上体を起こし、自身の顔も性器も恥ずかしげもなく僕の眼前に晒す。涎を垂らし、声にならない声で呻く男は、その嬌声に似合わない中年だった。何度か腰を揺すられ、限界を迎えたその中年は勢いよく精液を飛ばす。その白濁がソファに落ちるたび、男は恍惚として息を漏らし震えた。

 真下さんは男から性器を引き抜き、ローテーブルにあったティッシュの箱を男性の前に投げつける。そしてソファに沈み込みながら吐き捨てた。

「時間だ」

 その言葉に僕は時計を見る。11時45分だった。男はいそいそと自身と、自身の撒き散らしたソファの精液を拭き、服を整え事務所をあとにした。

 僕は真下さんの男性器をじっと見つめていて、男が出ていったことを扉を閉める音で知る。それは脈を打っており、はだけたブラウスに届きそうなほど反り立っていた。

 真下さんはコンドームを乱暴に剥がしてゴミ箱に入れる。そして、おさまらない男性器を無理やりパンツスーツにねじ込みながら立ち上がった。

「時間を守らないお前が悪い」

 その苛立ちを宿す口調で、自分が今どんな顔をしているのだろうと慌てて取り繕う。

「すみませんでした……」

 謝って俯いた視界の先に、真下さんの綺麗な手が伸びてきた。その手が簡単に僕の性器を取り出した時に気がついた。あんな狂気を見て勃起していたことを。

「そこに座れ」

 乱暴に腹を押され、僕は反対側のソファに腰から落ちる。真下さんは陽炎のように僕の股間に吸い込まれ、視界から消えた。

 真下さんの唇が性器に触れた瞬間。今まで感じたことのない触覚で、関係のない映像が頭をよぎる。それは彼女を思いながら自慰をしている自分の姿だった。彼女は会社に出入りする仕出屋の従業員だった。一生懸命に働くその姿に惹かれ、気がつかれないように見つめては家で自慰に耽る。そんな惨めな自分を上から見ているような不思議な感覚に囚われ、一気に罪悪感が噴き出した。

「余計なことを考えるな」

 少し萎えた僕の性器を吐き出しながら、彼女は冷酷な声で言い放つ。真下さんが咥えるその姿を見ていられなくなって、顔を背け声が漏れないように口を手で押さえた。真下さんはその口調や態度からは考えられないくらい熱心に僕を慰める。まるで甘えているかのように吸っては吐き出し、僕の輪郭をなぞる。そんな優しい愛撫に耐えることなどできず、自分でも恥ずかしくなるほど簡単に精液を吐き出した。

 真下さんは僕の精液を飲み込んで、しばらく俯いて顔を上げなかった。何を考えているのか見当もつかなかった。

「今日の昼飯はこれでいい、午後は14時からだ」

 その蚊の鳴くような声になぜか胸を締め付けられ、何かを言いかけたがそれは遮られた。彼女が胸に飛び込んできて魔法で僕の胸を満たしたからだ。

「男にいかされるのは屈辱か? 明日からはリハビリだと思って私のことを女だと思え」

 真下さんの見当違いな言葉とその悲しそうな声に驚き、否定することさえできない。僕の言葉など待たずに彼女は足早に部屋を出て行った。1人残された事務所で、昨日の夜中のような孤独を味わいはしなかった。昨日今日で目まぐるしく変わる魔女の表情に翻弄され、僕は孤独を感じることすら忘れていたのだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...