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二話
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「――斗、ねぇ海斗ってば!」
名前を呼ばれて目を覚ますと、そこには何故か芹香がいた。腰に手を当て、どこか怒った様子だ。
「もう! 海斗ったらなんで寝てるの!?」
状況が掴めず、間抜けな顔をしたまま辺りを見回すとそこは映画館の中だった。周りにいる人達は皆出口へと向かって歩いている。
「デートの途中で寝るなんて最低!」
芹香は声を荒らげ、茶色い髪を揺らしてそっぽを向く。俺は彼女の怒りを収めるために謝るが、芹香は聞こうとしない。
「芹香、悪かったって。なぁ、こっち向けって」
手を伸ばし芹香の肩を掴んでこちらを向かせた顔には、チョークで塗り潰したようになっていて表情が見えなかった。
「うわぁぁぁっ!?」
驚いて仰け反ると、背中に鈍い痛みが走った。痛みに耐えながら目を開けるとそこは床で、俺はベッドから落ちてしまったらしい。
「……今のは、夢……?」
そうだ、今のは夢だったんだ。だって芹香は、もういない。あの子は一年前に……自殺して俺の傍からいなくなってしまったのだから。
忘れなきゃ、彼女のことを。
もう二度と思い出したくない。
――誰でもいいから代わりが欲しい。俺の隙間を埋めてくれるような人が。
名前を呼ばれて目を覚ますと、そこには何故か芹香がいた。腰に手を当て、どこか怒った様子だ。
「もう! 海斗ったらなんで寝てるの!?」
状況が掴めず、間抜けな顔をしたまま辺りを見回すとそこは映画館の中だった。周りにいる人達は皆出口へと向かって歩いている。
「デートの途中で寝るなんて最低!」
芹香は声を荒らげ、茶色い髪を揺らしてそっぽを向く。俺は彼女の怒りを収めるために謝るが、芹香は聞こうとしない。
「芹香、悪かったって。なぁ、こっち向けって」
手を伸ばし芹香の肩を掴んでこちらを向かせた顔には、チョークで塗り潰したようになっていて表情が見えなかった。
「うわぁぁぁっ!?」
驚いて仰け反ると、背中に鈍い痛みが走った。痛みに耐えながら目を開けるとそこは床で、俺はベッドから落ちてしまったらしい。
「……今のは、夢……?」
そうだ、今のは夢だったんだ。だって芹香は、もういない。あの子は一年前に……自殺して俺の傍からいなくなってしまったのだから。
忘れなきゃ、彼女のことを。
もう二度と思い出したくない。
――誰でもいいから代わりが欲しい。俺の隙間を埋めてくれるような人が。
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