風に凪ぐ花

みん

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潜入と出会い

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 次の日から授業のオリエンテーションが始まった。
 午前中は教室で座学、午後からは訓練場で選択科目の実技というのが、初学年の一日の流れだ。
 最初の一週間は、科目の説明とカリキュラムがほとんどのため、風花はほとんど聞き流して終わった。


 入学して三日が経つが、風花は教室の誰とも言葉を交わしていなかった。
 教室での風花は、いつも窓の外を見ている。
 笑えば柔軟になる顔も、教室ではずっと無表情のままだ。
 綺麗すぎる分近寄り難いのか、遠巻きに見るだけで誰も話しかけようとはしない。
 風花は、安堵半分憂慮半分の複雑な気持ちでいた。

 友というものを得たくないわけではない。素のままの自分で語り合える存在を、心のどこかでは求めていた。
 だが、友を得たとて自分の先が変わることがあるだろうか。
 自分の存在が、友となるものに辛苦を与えることはないだろうか。

 考えても答えは出なかった。
 風花にとって人間は、精霊たちよりも遠いところにいる。

 人間は、異なるものを諾としない。自分と違うものを畏怖し、ときに蔑み、排斥したがる生き物だ。
 風花は短い生涯の中で、それだけは嫌という程経験していた。
 だから、このままで良い。良いのだ。

(少しだけ、さみしいだけ。少しだけ、かなしいだけ)

 風花は昼休憩の半分を教室の席で過ごし、誰よりも早く外の訓練場へ向かった。



 拓けた丸い訓練場は、草地と砂地に分かれていた。
 中央が砂地で、外縁に向かうにつれ草の地面へと変わる。
 丸く切り取られた空間は、囲うように大きな木々が植えられていた。
 風花はその中の一つの木の精霊に断りを入れて、その下に腰を据えた。

 実技は選択科目ごとに分かれて行う。
 選択は、魔騎士前衛、魔騎士後衛、魔騎士喩術の三つだ。
 時間や場所こそ同じであるが、それぞれ担当教師が指導にあたる。

 週の一日目は、三つの科が合同で行う魔力行使の素養強化実習。
 二日目と三日目は体術実技。
 四日目と五日目は魔騎士実践。

 素養強化実習は、魔力を使う技術と精霊を呼ぶ技術の底上げ。
 体術実技は前衛科と後衛科は精霊や魔力の力を借りてそれぞれの戦闘スタイルにあった組手を学び、喩術科は治療を行う。
 魔騎士実践は、体術実技に加えて、武器の使用が認められた本格的な訓練だ。もちろん喩術科は治療にあたる。

 風花は、前衛科を選択していた。

 科目の説明は昨日聞いている。今日は簡単な実力測定の組手の予定だった。
 正直、学生のレベルがわからない。
 今までの生活で同年代と触れる機会がなかったため、風花は自分が同年代からどれだけ逸脱しているのか理解していなかった。

 これからのことを考えると目立つのは極力避けたい。
 中の下くらいで十分だ。
 まだ人の気配が疎らな訓練場の片隅で、風花は作戦を練った。
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