【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる

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第1章

三つ巴の死闘と氷刃の一撃

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 隊長『氷刃』の指揮のもと、騎士団は一時的に体勢を立て直した。魔法使いが展開する防御障壁に守られ、円陣を組んで全方位を警戒している。霧と泥濘、そして見えざる敵(俺たち)への恐怖と戦いながら。

(しぶといな。だが、このまま守りに入られても厄介だ。もう一押し、彼らの集中力を削いでやろう)

 俺は【収納∞】にアクセスし、時間停止空間に保存しておいた『お土産』を取り出す。それは、この沼地に自生していた、見るからに毒々しい紫色のキノコと、触れると強烈な痒みを引き起こすという蔦(つた)の葉だった。

(さて、派手にぶちまけてやるか)

 スキルを使い、騎士団の円陣のわずかな隙間や、彼らの頭上付近の空間に、それらを文字通り『ぶちまけた』。時間停止が解除され、大量の毒キノコの胞子や痒みを引き起こす葉が、防御障壁の内側へと降り注ぐ!

「うわっ! なんだこれ!?」
「けほっ、けほっ! 息が……!」
「か、痒い! 体が痒くてたまらん!」

 突然降り注いだ未知の物質に、兵士たちは再びパニックに陥った! 毒キノコの胞子を吸い込んで咳き込み、蔦の葉に触れて体を掻きむしる者もいる。防御障壁は物理的な攻撃は防げても、このような微細な物質までは完全には防ぎきれなかったようだ。魔法使いは慌てて解毒や治癒の魔法を試みるが、障壁維持と併用では手が回らない。騎士団の防御陣形は、内側から崩壊し始めていた。

 そして、その混乱は、招かれざる客をも呼び寄せた。
 戦闘の騒ぎ、血の匂い、そしておそらくは毒キノコの胞子などが刺激となったのだろう。沼地の静寂を破り、本来の住人たちが姿を現し始めたのだ。

 ――ズルリ。
 泥の中から、巨大な蚯蚓(みみず)のような触手を持つ魔物、マッドワームが鎌首をもたげる。
 ――シュルルル…。
 木の上からは、緑色の鱗を持つ巨大な沼蛇、スワンプサーペントが長い舌をちらつかせながら降りてくる。
 ――グポォォ…。
 遠くの沼からは、毒々しい色の泡と共に、腹を膨らませた巨大な蛙、ポイズンフロッグが跳ねながら近づいてくる。

 彼らは、縄張りを荒らす侵入者――騎士団と、そして俺たちを、無差別に敵と認識したようだった。

「な、なんだこいつらは!?」
「魔物だ! 沼の魔物が集まってきたぞ!」

 騎士団は、俺たちという見えざる敵に加え、凶暴な沼地の魔物にも対処しなければならなくなった。まさに、三つ巴の混戦状態だ。

(好都合だ!)

 俺はこの状況を利用しない手はない。
「プル、回復と援護を頼む! リンド、派手に暴れてやれ!」

 俺は指示を出し、自らも霧に紛れて動き出す。騎士団が沼地の魔物と交戦している隙を突き、消耗している兵士や、陣形から孤立した兵士を狙って的確に無力化していく。
 プルは《ヒール》で俺やリンドを回復させつつ、《ウォーターカッター》で魔物と騎士団兵の両方を牽制する。リンドは覚醒した力で、思う存分に暴れまわった。高温のブレスがスワンプサーペントを焼き、その巨体がマッドワームを薙ぎ払い、咆哮がポイズンフロッグを怯ませる。その圧倒的な力は、騎士団兵たちにさらなる恐怖を与えていた。

「くそっ! あの赤竜め……! まずはアレを仕留めるぞ!」

 この混戦状況を引き起こし、最大の脅威となっているのはリンドだと判断したのだろう。隊長『氷刃』が、ついに自ら動いた。彼は腰の細身の剣を抜き放つ。その瞬間、剣身が淡い青色の冷気を纏い始めた!

「――凍てつけ」

 低い声と共に、氷刃がリンドに向かって駆ける! その動きは、これまでの兵士たちとは比較にならないほど速く、鋭い!
 彼が振るう剣からは、絶対零度を思わせる冷気が放たれ、リンドの熱波と激しく衝突する! ジュウウウ、と水蒸気が上がり、視界が一瞬白くなった。

「キュアアアアッ!!」

 リンドも負けじと、より強力な熱波を放ち、氷刃の剣撃に応戦する! 伝説の竜と、王国の精鋭騎士団隊長。氷と炎(熱波)の激突は、周囲の魔物すら吹き飛ばすほどの凄まじいエネルギーを生み出していた。

 その激しい戦闘の傍らで、俺は着実に騎士団の兵士たちの数を減らしていく。魔法使いは度重なる魔法行使で消耗しきっており、防御障壁は今にも消えそうだ。沼地の魔物も数を増し、騎士団は完全に包囲され、壊滅の危機に瀕していた。

「た、隊長! このままでは全滅しますぞ!」
「撤退! 撤退許可を!」

 兵士たちの悲鳴が上がる。隊長『氷刃』は、リンドと激しく打ち合いながらも、その悲鳴を聞き逃してはいなかった。彼の冷徹な顔に、初めて焦りの色が浮かぶ。

(そろそろ、潮時か……?)

 俺は、この混戦に終止符を打つべく、新たな一手――時間停止空間に隠しておいた、とっておきの『切り札』――を放つ準備を始めた。

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