【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした～追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

第２章

終わり

　アルヴィンは弱体化しながらも、なお残された力…星霜の結晶の歪んだエネルギーを振り絞り、最後の抵抗を試みようとしていた。だが、俺たちが見逃すはずがない！

「今だ！ 全力で叩くぞ！」

　俺の叫びに応え、仲間たちが最後の力を解き放つ！
「聖域の光よ、邪悪を打ち払え！」
　エルミナが杖を掲げ、遺跡の力を借りた眩い光の槍をアルヴィンに放つ！

「プルも！ レントに力を！」
　プルは自身の魔力の全てを俺へと注ぎ込む！ 温かく、純粋なエネルギーが俺を満たす！

『主よ！ 我らの炎を！ キュオオオオオッ！！』
　リンドが天高く舞い上がり、覚醒した力の全てを込めた、白く輝く浄化の炎ブレスをアルヴィン目掛けて放つ！

　三方向からの猛攻！ アルヴィンは闇の障壁を展開しようとするが、聖域調律の影響で力が安定せず、リンドの浄化の炎がその障壁を焼き尽くし、彼の結晶化した体に直撃した！

「ぐあああああっっ！！」

　アルヴィンが凄まじい苦痛に叫び声を上げる！ その防御が完全に崩れた、まさにその瞬間！ 俺は最後の力を振り絞り、アルヴィンの懐へと飛び込んだ！

（託された想い、仲間との絆、俺が歩んできた道のり…その全てを、この一撃に！）

　【収納∞】スキルを限界を超えて解放！ 時間停止空間の奥底に渦巻いていた混沌のエネルギー、リンドから流れ込む浄化の炎、プルが送ってくれた純粋な魔力、そして俺自身の魂の全てを、『星穿』へと注ぎ込む！

　剣が、もはや形を保てないほどの、星屑そのもののような眩い輝きを放ち始める！ 周囲の空間が歪み、時間がねじれるような感覚！

「アルヴィン！ お前の歪んだ野望は、ここで終わりだ！！」
　俺は叫び、その究極の一撃を放った！

「『絆想・無限星穿（ばんそう・インフィニティスターゲイザー）』！！！！」

　星々の煌めきを凝縮したかのような光の奔流が、『星穿』から放たれ、アルヴィンの胸元――禍々しい力の源となっていたであろう、黒水晶の中心――を正確に貫いた！

　―――…………。

　一瞬、世界から音が消えた。
　そして、次の瞬間。アルヴィンの体から、黒いオーラが浄化されるように霧散し、異形化していた結晶の鎧が、ガラスのように砕け散っていった。

「……馬鹿…な……。俺が……勇者…である…俺が……こんな……」

　砕け散る結晶の中から現れたのは、驚くほど弱々しく、そしてどこか元の青年の面影を残したアルヴィンの姿だった。彼の瞳から狂気が消え、代わりに映るのは、深い後悔か、それとも解放されたことへの安堵か…。

「……そうか……これが……光……なのか……眩しい、な……」

　彼は、穏やかな春の日差しが降り注ぐ空を見上げ、最期にそう呟くと、その体はキラキラとした光の粒子となり、風に吹かれて跡形もなく消え去っていった。後には、力を失い黒く変色した、小さな星霜の結晶の欠片だけが、カランと音を立てて地面に転がった。

　……………。

　長きにわたる因縁、そして世界の危機をもたらした元凶は、ついに滅びたのだ。
　遺跡には、本当の静寂が戻ってきた。エルミナが維持していた聖域調律の光も、役目を終えたかのようにゆっくりと収まっていく。

「……終わった……のか……？」

　俺は、その場に膝から崩れ落ちた。全ての力を出し切り、もはや指一本動かせない。視界が急速に暗くなっていく。

「レント！」
『主よ！』

　プルとリンドが、満身創痍ながらも必死に俺の名を呼びながら駆け寄ってくるのが見えた。エルミナも、深い疲労を隠さずにこちらへ歩み寄ってくる。

（…みんな…無事、なんだな……よかった……）

　氷刃の最後の言葉が脳裏をよぎる。「アルヴィンは止められんぞ」……いや、俺たちは止めたんだ。仲間と共に。

　これで、本当に……。
　俺の意識は、仲間たちの呼びかける声を遠くに聞きながら、安らかな闇の中へと沈んでいった。