地味な図書館司書、異世界で「禁書」を解読したら、うっかり救国の英雄に

あーる

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弟子の報告

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 「…帰りましょう、アリアさん」
 「は、はいっ! 承知いたしました!」

 まだ興奮冷めやらぬアリアに声をかけ、俺は、無事に『星銀』を収めた背嚢を背負い直した。星銀そのものは見た目より軽かった。

 俺たちは、もはや何の反応も示さなくなった。エルフの遺跡を後にした。通路を逆戻りし、石造りのアーチをくぐり抜けると、再び古代樹の森の湿った空気が肌を撫でる。

 アリアは、俺の背後を守るようにぴったりとつき従いながら、しきりに周囲を警戒している。…いや、警戒しつつも、時折熱っぽい視線を俺の背中に送ってくるのが、気配で分かった。

「……」 
「……」

 奇妙なことに、あれほど不気味だった森は、帰り道、不自然なまでに静まり返っていた。行きにあれほど感じていた魔獣の気配や、鳥の声すらほとんど聞こえない。

「け、賢者様…!」

  アリアが、感動を押し殺したような声で俺に囁いた。

「森が…森が、静かです! あれほど濃かった瘴気や、魔獣の気配が、まるで浄化されたかのように…!」 
「あ、ああ、そうだね…」 

(そりゃあ、あれだけデカい声で絶叫して逃げていったんだ。森のヌシがいなくなれば、他の動物も警戒して隠れるだろ…)

  俺は、影喰らいの断末魔を思い出しながら、そんな至極真っ当な推測をしていたが、口には出さなかった。

 アリアは、俺のそっけない返事など気にも留めず、一人で深く納得したように頷いている。 「間違いありません…! 先ほどの賢者様の『言霊』…あれは、あの影喰らい一体に向けられたものではなく、この森全体に巣食う穢れそのものを祓う、大いなる浄化の御力だったのですね…! なんということでしょう…!」  違う、絶対に違う。だが、もうアリアの中で事実はどうでもよくなっているらしい。彼女は、神の奇跡にでも立ち会ったかのように、うっとりとした表情で天を仰いでいた。

 そんな感動に包まれたまま、俺たちは比較的順調に森を抜け、夕暮れ時、ついに街の南東門へと帰り着いた。

 門を守っていた衛兵たちは、俺たちの姿を認めると、一瞬驚き、すぐに駆け寄ってきた。
 「ゴードン隊長! お戻りになりました!」 「おお! よくぞ戻った、アリア! …そして、透殿! ご無事で何より!」

  詰所から飛び出してきたゴードン隊長は、俺とアリアの姿、特にアリアが怪我一つなく無事なことに、安堵の表情を浮かべた。

「隊長! ご報告いたします!」

  しかし、その安堵は一瞬だった。アリアが、俺が制止する間もなく、隊長の前に進み出て、カッと敬礼し、朗々と、そして興奮気味)叫んだのだ。

「私、アリアは、この目でしかと拝見いたしました! 賢者・透様の、真の御力を!」
 「なっ…真の御力だと!?」
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