白き聖杖亭へようこそ!

餅蔵

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赤き竜と白き死神の物語

叡智の塔 6

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side:Leon



 影の狼達の猛攻をなんとか潜り抜け、森の中を進んでいたら怪しい魔術陣を見つけた。

 土の上で僅かに浮き上がり、緑色の光を淡く放っているが、元素魔術の知識が無い俺では残念ながら何のための陣なのか分からないのでソフィアに解析を頼んで、アイリスと共に影の狼が追ってきていないか周りを警戒する。

 先ほどの猛攻はなりを潜め、やけに辺りは静まり返っていた。


「これ、転移の魔術陣ですぅ!どこに繋がってるかはわかりませんがぁ」

「でも他に出入り口も上に続く階段も無さそうだし、それ乗るしか無いんじゃない?」

「あァ、何があるか分からねェし俺が先に行くか」


俺の提案にソフィアがチッチッチッと指を振った。なんだそれちょっとムカつくな。


「レオン様が先に行っても伝音の魔術が使えないんですから安全が確認できないですよぉ」

「じゃああたしが先に行く。大丈夫そうなら二人に伝音魔術でそう伝えるけど、しばらく何も無かったら陣には入らずに別の手を考えて」

「……分かった。気をつけろよ」

「お姉様……」


 アイリスは躊躇なく魔術陣に飛び乗り、俺たちにピースサインを送ってにかりと笑った。

 次の瞬間には、アイリスを旋風と木の葉が覆い隠してすぐにその姿が消え去る。


「……レオン様、お姉様大丈夫でしょうかぁ……?」

「あいつも手練だ。そう簡単にどうにかならねェよ」


 そう信じてはいるが、ここは常識の通じない訳のわからない魔術だらけの塔だ。

 確証が無く、半ば自分に言い聞かせるようにして落ち着こうとした。

 シロだってきっと大丈夫な筈だ。そうであってくれ。


『あー、あー、二人とも聞こえる?陣に入って。それで塔の上に上がれるみたい』

「「!!!」」


 風に乗ってアイリスの声が聞こえた。無事なようで安心した。

 ソフィアは胸に手を当てて、ふー、と深く深呼吸して安堵を示している。

 俺が先に乗り、ソフィアが後に続くようにと決めて陣に乗ると、アイリスに起こったのと同じように風が巻き上がって木の葉が視界を隠し、それが収まると景観は先ほどと大きく変わっていた。

 塔の外側と同じく灰色の石造りの大広間がそこにあり、広間の中央にはアイリスと……


「シロ!!!テメェっ!!!シロに何しやがった!!!」

「五月蝿いな。喚くな。元素が枯渇して気を失っているだけだ」


 床に倒れたシロに寄り添うようにアイリスと、保護対象の魔導士である男が居た。

 元素枯れを起こすほどの戦いがあったのか……!?

 ほどなくしてソフィアも陣で飛んできて、「お姉様ぁ~っ!」と叫んでアイリスに飛びついたのを見て気が抜けた。


「貴様の仲間は五月蝿い奴しかいないのか」

「基本うるさいね。冒険者ってそんなもんよ」

「フン……さて、シロに元素を分け与えるが」

「それは俺がやる!!!」


 魔導士の男はじっとりと俺を眺める。


「……フン、私も先の戦いで全力を出した後で疲れているからな。その有り余った元気を分けてやるといい」

「いちいち偉そうな奴だな……おい、どっか人目につかねぇ場所はあるか?」

「……はぁ?元素の共有でなぜ人目を気にする」


 そりゃ前にシロがこうなった時は口付けで元素を注いだのだから、あんまり他人に見せていいもんじゃ無いだろ……と言いたかったのだが、ソフィアも俺の発言にきょとんとしていた。

 アイリスは笑いを堪えている。

 おい、どういうことだこれは。


「もういい、私がやった方が早い」

「ちょっ」

「『我が内に在る元素よ、ここに集い、彼の者に力を与えよ』」


 魔導士の男がシロの胸あたりに手を翳して唱えると、手のひらから流れるようにして色んな色の光がシロを包みこんだ。


「ちなみに貴様の言う元素の受け渡し、まさか接吻ではないだろうな」

「あァ!?!?」

「図星か……」

「ぶふっ……ごめんレオン、実はこういう方法でも元素の受け渡し出来るんだよね」

「アイリスてめェ」


 もしかしてあの時、俺は騙されたのか!?※イレギュラ討伐~変異ケルピーの回参照

 だがあの時は口付けで確かに元素の交流ができたし、シロも目を覚ました。


「レオン様は魔術がからっきしですから、口付けでの元素受け渡しは悪く無い方法ですよぉ?別に難しい魔術ではないから口付けでの受け渡しが一般的では無いだけでぇ」

「よ、良かったぜ……」

「でもその方法だと、お互いに強い想いを抱いてないとちゃんと元素は流れないんですよぉ。だからお二人はやっぱり両想」

「ソフィアストップ!そこは二人でよーーーく話し合った方がいいことでしょ?」

「あっ、私ったら……私はお姉様と元素の受け渡ししたいですぅキッスで」

「遠慮しとく」


 ソフィアがアイリスに迫っている茶番を眺めている間にシロの体内元素が戻ったらしく、彼はむくりと上体を起こした。


「シロ!!!気がついたのか!!!」

「レオン、みんなも。無事で良かった。グレアさん、ありがとうございます」

「気にするな。無理を強いてすまなかったな」


 ……なんかこの男、シロに対してだけ態度が違うように感じる。

 どうにも胸がモヤモヤしてシロを抱き寄せると、シロは抵抗なく俺の胸に体を預けた


「さて、話すと長くなるけど、折角だからここで色々と整理していこうか」


 シロが俺にもたれながら、一度俺の目を見てニコリと微笑んだ。



7に続く



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