忘れられた姫と猫皇子

kotori

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フェリの誕生日

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 フェリシア・ベル・ラムズは今日で十四歳になった。
 
 そう、今日はフェリの誕生日だった。
 フェリ自身は忘れていたのだが、父、ラムズ公爵から見事な薔薇の花かごが届いたので思い出した。
 花かごの中には、薔薇とカードと(フェリシア、おめでとうの金箔押し)革張りの綺麗なケースが入っている。
 ケースの中はエメラルドのブレスレットだった。
 フェリの瞳と同じ、深く輝く緑色だ。

 フェリはふうっとため息をついて箱を閉じた。
 こんな物をもらったって、どうせ……。と思う。

 何年も会っていない父は、顔もよくわからない。
 毎年プレゼントだけは届くけれど、こういう物じゃなくて、食べ物をくれるといいのにな……。いつもそう思う。

 本に出てくるタルトって、どんな感じだろう。
 レモンタルトって、甘いのかな。レモンって酸っぱいんじゃないっけ……。甘いのか酸っぱいのか、いったいどっちなんだろう……。

 お誕生日、ねえ。
 
 フェリはもう一度ため息をついて、ブレスレットのケースをかごに戻した。
 誕生日だからといって、いつもと特別なにも変わらない。
 それから、ふと思い直して花かごを見た。

 そうだ、これはいいんじゃない?

 フェリは急にうきうきと、薔薇や革のケースを全部出してかごを空にし、それだけ持って部屋を出た。
 そのままがらんとした長い廊下を走り抜け、扉を開けて裏庭へと続く階段を駆け降りる。

 サンザシの白い花が、その重さで地面につく程びっしり咲いている。五月のむせるような花の香りの中、フェリは奥へと進む。
 元は綺麗な庭園だったのかもしれないが、あたりはまるで森のようにいろいろな木や草が生い茂っている。

 フェリの大好きな草のベンチ……おそらく元は本当のベンチだったのが、草で覆われてしまっている……の下に、黒苺が生えているのを見つけ、フェリは歓声をあげた。まだ白くて小さいけれど、そのうち食べられる。

 蔦で覆われた大きな石の鳥を周り、井戸の側まで来ると、一面のタンポポだった。

 わあい!

 小さく歓声をあげると、フェリはそれを摘んではかごに入れた。
 思った通りたくさんあった。
 今の時期の若葉は柔らかくて、サラダにちょうどいいのだ。

 ふと気づくとウサギが三匹寄ってきた。

「わあ、チャービーたち、久しぶり!」

 フェリは嬉しそうに笑った。
 フェリは茶色のウサギたちを、まとめてチャービーと呼んでいた。白いのはシロビー、黒いのはクロビーだ。

 「冬の間元気に過ごせた?」
 それからはっとする。
「あ!」
 競うようにタンポポの若葉を食べるウサギたち。
「待って待って、私にも少しちょうだい」
 慌ててフェリも負けじと草を摘む。

 ある程度食べ終わると、チャービーはフェリに頭を擦り付けてきた。フェリもその頭を撫でる。中でもぐいぐい頭を擦り付ける小柄なウサギをフェリは抱き上げた。そのまま締め付けすぎないようにギュッと抱きしめる。

「はー。ふわふわ。もふもふ。気持ちいい……」
 ウサギも気持ちいいのかじっとしている。
 そのままチャービーが逃げないので、フェリはタンポポのいっぱい入ったかごを左腕に、右腕にチャービーを抱いて館へと戻って行った。
 振り返るとほかの二匹のチャービーもついてきた。
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