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妹
しおりを挟む皇宮近くの邸宅は、父があまりに公務が多いときに休息を取るのに使っていた場所だった。小さく質素であるためか義母やラティーシャは訪れたことがない。
そこにフェリシアを連れてきた。
そしてそれからずっと、リンジーはここに通いつめていた。
フェリシア……。
下の妹が、義母ともう一人の妹により酷い仕打ちを受けていたとは、まさに驚愕だった。
フェリシアの母の実家から来たという男は、グリッグとだけ名乗った。
爵位などわからず、とりあえず閣下と呼んだら、嫌な顔をされたので、サー・グリッグと呼んでいる。
そのサー・グリッグに、リンジーと父は大変な叱責を受けた。赤ん坊だったフェリシアを置いて消えた母にも問題があるとは思うが、こちらとしては一言も言い返せる立場ではなかった。
それに……。
フェリシアは本当に可憐で愛らしく、それを辛い目にあわせていたと思うと胸が傷んだ。
本当なら、今すぐあの二人は地下牢にぶち込むか、山の上の塔にでも幽閉か、とにかく問いただしかったが、サー・グリッグがなぜか今はこのままで、と言うのでフェリシアのことは知らせていない。
建国祭にフェリシアを連れて行きたいと父が言ったところ、是非お願いしたいとのことなので、今、でなく、その後なのだろう。
二階に向かうと、フェリシアの侍女の声が聞こえてきた。どうやら先に父が来ているらしい。
「公爵様、まことにありがとうございます。ただ、もう花を活ける花瓶がありません。そして、クローゼットもドレスが溢れていて入りません」
父はまた花とドレスを持ってきたらしい。
まあ、父の気持ちも分からないではない。
この家についてすぐ、父はフェリシアに何か欲しいものはないかと尋ねた。
フェリシアは少し考えて、こう言ったのだ。
「あの……。あの館はこれからどうなるのでしょう。
館にいた庭師のロイですが、仕事を続けていけますか?」
義母が外を取り繕うために、一人だけ残しておいた庭師のことらしい。たった一人で前庭の管理をしていたらしい。さすがに裏庭までは手が回らなかったらしいが。
「ロイは、とっても優しくて親切にしてくれました。
時々、お弁当のサンドイッチを分けてくれて……。
あ、あと、ロイは息子さんの小さくなった服も持ってきてくれたんです。とても助かって……」
そこで父が叫んだので、フェリシアは驚いて言葉を途切らせた。リンジーも、父と一緒に思わずえっ? と言ってしまった。
庭師の、
息子の、
お下がり?
……フェリシアの暮らしが大変だったとは、サー・グリッグに散々聞かされたが、実際こうしてフェリシアの口からでてくると、大変な衝撃だった。
父の衝撃はリンジーの比ではなかったらしく、涙を流して口もきけない有り様だった。
そこから、毎日こうして花やらドレスやら贈っているらしい。
リンジーはちょうどフェリシアの部屋から出てきた父と一緒に書斎へ向かった。
「サーは?」
「グリッグ殿は……今日は留守らしい」
「そうですか」
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