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4話「あたたかい手」
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4話「あたたかい手」
見に行くと一際目立つ美しい花魁がいた。白雪花魁だ。しかし医者をしている九条は白雪がなにかに苦しんでいるのを感じ取った。それから瑞希に言われたのもあるが個人的にも彼が気になったため白雪花魁を指名した。
(先程少し話しただけでもわかる。ユキさんは心優しく美しい。あんなところで苦しむべきじゃない。)
そして九条は彼を身請けすると決めた。
(彼が望むかは分からない。彼が好意を持っている相手もいるかもしれないからまだ分からないが。でも俺は彼を絶対遊郭から救いたい。)
それから翌日。ユキは今夜も九条を待っていた。
(……九条さん。早く会いたいよ。)
ユキは先程まで別の客の相手をしていた。以前中絶を経験したため、客との行為にトラウマのようなものを持ってしまい行為中自然と涙が出るようになってしまった。しかし客にはそれは苦しみの涙ではなく快楽によるものだと勘違いされさらに激しく突かれる。そして最後には客のものが全て中へと放たれる。それがユキはただただ不快だった。
「めちゃくちゃな客だったな。どろどろだ……。最悪。」
九条が来る前に身体を必死に清めた。着替えていると窓から九条が店に入るのが見えた。
「九条さん……!早く準備しなくては!」
遊郭に来てからユキからは笑顔が消えた。しかし九条に出会ってから少しずつユキは笑顔を取り戻した。
「白雪さん。」
部屋の扉がノックされる。
「どうぞ。」
「失礼します。ユキさん。」
「九条さん。今夜も来てくれて嬉しいです。それと、呼び方……。」
ここではいつも「白雪」と呼ばれているため部屋に入った九条から本名である「ユキ」と呼ばれ少し恥ずかしさを感じた。でも嬉しかった。
「……すみません。嫌でしたか。」
「……ううん。ユキなんて呼ばれたのいつぶりかな。びっくりしたけど嬉しくて。九条さん。二人の時にはユキって呼んでよ。」
ユキは九条の前では満面の笑みを見せた。
「ユキさん。以前よりも笑顔が増えましたね。俺は嬉しいです。」
「君もそう思う?私、あなたに出会ってから今までの苦しさが浄化されたみたいだ。」
「そんな、言い過ぎですよ。俺はあなたの話を聞いただけです。」
「ここではあなたが救いなんだ。また来てくれる?」
「明日も来ます。」
「嬉しい。そうだ。手、握って私の。」
「……?いいのですか。俺はアルファですよ。あなたはアルファの男に触れられるのはトラウマがあるのでは。」
「九条さん。君は別だよ。ほら。」
ユキは九条に手を差し出す。九条はその手を大切そうに握り返した。
「あたたかいね九条さん。あなたの心のように。」
見に行くと一際目立つ美しい花魁がいた。白雪花魁だ。しかし医者をしている九条は白雪がなにかに苦しんでいるのを感じ取った。それから瑞希に言われたのもあるが個人的にも彼が気になったため白雪花魁を指名した。
(先程少し話しただけでもわかる。ユキさんは心優しく美しい。あんなところで苦しむべきじゃない。)
そして九条は彼を身請けすると決めた。
(彼が望むかは分からない。彼が好意を持っている相手もいるかもしれないからまだ分からないが。でも俺は彼を絶対遊郭から救いたい。)
それから翌日。ユキは今夜も九条を待っていた。
(……九条さん。早く会いたいよ。)
ユキは先程まで別の客の相手をしていた。以前中絶を経験したため、客との行為にトラウマのようなものを持ってしまい行為中自然と涙が出るようになってしまった。しかし客にはそれは苦しみの涙ではなく快楽によるものだと勘違いされさらに激しく突かれる。そして最後には客のものが全て中へと放たれる。それがユキはただただ不快だった。
「めちゃくちゃな客だったな。どろどろだ……。最悪。」
九条が来る前に身体を必死に清めた。着替えていると窓から九条が店に入るのが見えた。
「九条さん……!早く準備しなくては!」
遊郭に来てからユキからは笑顔が消えた。しかし九条に出会ってから少しずつユキは笑顔を取り戻した。
「白雪さん。」
部屋の扉がノックされる。
「どうぞ。」
「失礼します。ユキさん。」
「九条さん。今夜も来てくれて嬉しいです。それと、呼び方……。」
ここではいつも「白雪」と呼ばれているため部屋に入った九条から本名である「ユキ」と呼ばれ少し恥ずかしさを感じた。でも嬉しかった。
「……すみません。嫌でしたか。」
「……ううん。ユキなんて呼ばれたのいつぶりかな。びっくりしたけど嬉しくて。九条さん。二人の時にはユキって呼んでよ。」
ユキは九条の前では満面の笑みを見せた。
「ユキさん。以前よりも笑顔が増えましたね。俺は嬉しいです。」
「君もそう思う?私、あなたに出会ってから今までの苦しさが浄化されたみたいだ。」
「そんな、言い過ぎですよ。俺はあなたの話を聞いただけです。」
「ここではあなたが救いなんだ。また来てくれる?」
「明日も来ます。」
「嬉しい。そうだ。手、握って私の。」
「……?いいのですか。俺はアルファですよ。あなたはアルファの男に触れられるのはトラウマがあるのでは。」
「九条さん。君は別だよ。ほら。」
ユキは九条に手を差し出す。九条はその手を大切そうに握り返した。
「あたたかいね九条さん。あなたの心のように。」
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