DIRECTION

Leoll Bluefield

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2 引けなくて引くしかなくて引きつけて

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翌日の朝、飛頼はいつも通りの朝を迎えていた。
「ふぁ……眠……」
学校までの道を体が動くまま淡々と歩く飛頼はあれだけ考えていたカフェの話など気にしていなかった。学校に着き、授業が始まるといつものに入る。
(そいやあ昨日の話マジだったのかな……マジだったら面……いや……)
飛頼は一瞬退屈な日常からかけ離れた話を思いだし楽しくなった自分に嫌気が差す。
(何が面白いだよ 昨日はあれだけカフェのマスターを疑っといて いつもの生活に戻ったらもう信じたくなるのかよ俺って都合良いよなホント)
退屈な日常が一番だと再認識した飛頼はノートにペンを走らせる。
ーー
(退屈……何か起きねーかな~)
1時間目に反省した飛頼は4時間目にして既に心が折れていた。
(数学ムカつく 鬼かよこれ 先生が言ってる意味を理解できねーよ)
今度は自分ではなく苦手科目に嫌気が差した飛頼は日常への感謝を他所に窓からグラウンドを眺める。
(あのカフェ今日もやってんのかな……いや全然行く気はないけど……ん?)
眺めていたグラウンドの先の校門に人影を見つけた飛頼はその人影に違和感を覚える。
(変な歩き方するな 酔っ払い?)
人影はのろのろとグラウンドに入ってきて止まる気配がない。
(おいおい誰かに見つかったら……!?)
近づいてくる人影の姿に飛頼は不気味さを感じた。見たことのないような格好に顔は覆面でも被っているのか真っ黒で何もない。
普通じゃないと判断した飛頼は教師に伝えようとしたが動きが止まる。
生徒が1人、黒い顔の侵入者に近づいていくのが見え、飛頼はそれを見守る。
(注意しに行ったのか?でも何で生徒が……!)
注意しに行ったとばかり思っていた飛頼はそれが違うことに気づくと同時に生徒が構えたものに目を疑った。
グラウンドにいる生徒が持っているものは銃だった。
(は?嘘だろ?エアガ……)
「何だ君!」
教師の突然の声に飛頼は後ろを振り向く。
教室の後ろのドアにはグラウンドにいた侵入者と同じ姿の者が立っていた。
教室がざわつく中、侵入者は教室に入ってくる。
「待ちなさい!」
教師が侵入者を止めに向かうが飛頼は嫌な予感がした。
(あいつは言葉なんて通じるのか?人っぽいけど人じゃないんじゃ……)
そう思っていると膝に何かが当たったのを感じて下を見る。
(何だ……は!?何でこんなのが教室に!?)
そこにはまたしても銃があった。
(どこから!?まさか机か!?)
飛頼が机を覗くとそこには教材の上に並ぶ銃の弾薬があった。
(どのタイミングだよ! 誰がやったんだよ!これ!)
飛頼は続けざまに起こる出来事に頭が回らなくなりパニックになる。
「君!聞いているのか?」
一方で教師が侵入者を問い詰めるが侵入者は言葉を発することはなく不気味な唸り声を発して見せた。
「ギュルル……」
「これは何の格好だ!顔を見せなさい!」
教師は侵入者に詰め寄る。
「ギュルル……ギュルル……キシャアァー!」
侵入者は突然教師を掴み、鋭い牙だらけの口を大きく開けて見せた。
「うわぁー!」
「やぁー!」
生徒達から悲鳴が上がり何人かの生徒が侵入者を教師から引き離そうとする。
数人係でも離れない侵入者は教師に噛みつこうともがき暴れる。
その騒動で飛頼は考えることを止め、銃を手にする。
(誰かが死ぬくらいなら罪に問われてでも止めてやる!)
飛頼は走って侵入者に掴みかかる。銃の使い方は全く知らなかったが無意識に安全装置セーフティーを外し侵入者に突き付ける。
(銃がわざわざこの状況で手に入るのは絶対偶然じゃないし俺がやるしかない!ここで引くことが本当の罪だろ!)
飛頼はそう自分に言い聞かせ引き金トリガーを引くしかない状況に自分を追い込む。
侵入者を掴み絶対に外さないよう引き付ける。
「うあぁー!!」      
自分のしていることの重大さをかき消すように雄叫びを上げながら飛頼はトリガーを引き、辺りに銃声が響き渡る。  
頭を撃ち抜かれた侵入者はぐったりと力なくその場に倒れる。
「助かった でも上白、お前何故そんなものを」
教師に聞かれ飛頼は本当のことを話す。
「ハァ……ハァ……俺も……分かってないのですが……机の中に……入ってて……」
教室にいた生徒達も化物のような侵入者と飛頼が銃を所持していたこと、飛頼がそれを使ったことに混乱するものや疑念を抱くものがいた。
「上白、いつも持ち歩いてたのか?」
男子生徒が口を開く。
「この化物が入ってくるのわかってたんじゃないのか?」
続けざまに生徒達がざわつき始めた。
「どうして使い方知ってんだよ」
「これって違法だよな」
「待てよ 上白が撃たなかったら俺ら死んでたかもしれないぞ」
「そうよ 助けてくれたんじゃない」
「あぁ 確かにでも違法には変わらないんじゃないか」
「そもそも銃使う必要あったのか?」
「三人係でも押さえつけれなかっんだぞ 銃がなければヤバかったろ」
次々と飛び交う言葉に飛頼は答える気力もなかった。
銃声は他のクラスにも届いたため人が集まり、数分後には警察が駆けつけることになった。飛頼は警察署で話をすることになった。
(パトカーに乗ることになるなんてな……取調室ってとこで怒られんのかな……てかカツ丼ってマジで出るのかな)
飛頼は不安と小さな期待を抱いてパトカーを降り、恐らく取調室であろう部屋へ案内された。
警察は飛頼にいくつもの質問をし、飛頼はそれに正直に事細かく説明して返した。
状況を一通り話し終えた頃に1人の警察官が部屋に来て取り調べをしていた警察官達に何かを耳打ちで伝える。そしてその内容はすぐに飛頼にも伝えられた。
「君の机に銃を忍ばせた者が判明したらしい 今回は相手が人間ではないと言う点と正当防衛と言う点で殺人や銃刀法違反にはならない可能性が高いがまだ君を自由には出来ないからここで待っていてくれ」
そう伝えると警察官は全員部屋を出ていってしまい飛頼はそれからしばらくして解放された。
(誰なんだそれって……あ……まさか!)
飛頼は取り調べでも話しておいた自分が銃を使う直前にグラウンドに出てきた生徒を思い出した。
(でもどうやって?俺の机に銃を入れるには教室に入る必要が……そして数学が始まる時点では机の中に教材以外は無かったはず こうなると誰1人として忍ばせることは不可能……)
飛頼は今日1日の教室の様子を思い出すが心当たりは1つもなかった。
(1番可能性があるのはあの生徒だけど物理的に無理が……いや、物理的にとかもう関係ないんじゃないか?あんな化物みたいな奴も出てきたし昨日も変な物見て変な話聞いたし……)
そう思い返す内に飛頼に昨日のカフェのマスターの言葉がよぎる。
[良い忘れておったがアイデックが見せた過去はビュートじゃが、恐らく未来はこの世界を見せたはず その未来が100年後なのか明日なのかは分からんが、止められる者、止めるべき者が止めない限り必ず来るじゃろう わしはそう言った者を探しておるだけじゃよ 何か困ったときはまた来なさい]
家に帰ると飛頼は家族からの質問ラッシュに対応することとなり休む暇も無かった。
(これじゃあゆっくりもできないな 明日あのカフェのマスターに色々聞いてみるか)
一通り質問に答え、落ち着いたところでようやく飛頼は自分の時間を確保することができた。
現実とはかけ離れた出来事、自分のした行い、クラスメイトからの疑念の目と声、家族からの心配と質問、全てが飛頼に重くのしかかる1日だったため悩むより先に眠さが優先され、眠りにつくのは難しくなかった。
ーー
翌日、飛頼は心配されながらも学校に向かう。校門に着く頃、一部の生徒からの視線と話し声に飛頼は気づく。
「あの人だよ……昨日の不審者をやっちゃった人」
「夜ニュースになってたやつだよね……!あの人なんだ……!」
女子生徒のそんな会話に飛頼は声にせずに応える
(聞こえてますよ~ やっちゃったって……確かにやっちゃったけど……そんな言い方すんなよ……するならもっと聞こえないレベルでお願いしますよ)
「ハァ……」
思わずため息をつく飛頼だったがこんな時でも余計な想像をし始める。
(どーせヒソヒソ話するならもっと違う話してよ『あの人誰~?気になる~』とか『話してみたい~』とか恋愛的な会話を……)
そんなポジティブシンキングをしているうちにクラスに着くと直接飛頼に質問してくる者、何やら耳打ちする者、昨日の話で話し合う者がいた。その中で飛頼の耳に入ってきたのは昨日グラウンドにいた生徒の話だった。
「昨日のヤバイヤツグラウンドにもいたらしいぜ?」
「マジかよ?」
「職員室にいた先生が何人も見たってさ しかもうちの生徒がそいつを追い払ったって 銃で」
「流石にヤバくね?何かのドッキリじゃねーの?」
「俺もそう思いたいけど 見たろあの侵入者の口 しかも上白の銃はマジだったし」
「朝の校門付近の先生の見張りの数も異常だったし 何より皆の顔がひきつってるもんな」
「正直俺今もちょっとこえーもん」
「俺も朝来るとき誰もいない道走ってきたから」
 チラチラこちらを見ながら話し合う男子の話を聞きながら飛頼は共感する。
(だよな俺もあんな化け物見て更に法律違反だからWパンチで怖いしこんな状況でも休みにならない学校も怖い……あれ?トリプルパンチじゃねーか……てか俺の事気になるのは分かるけどチラチラ見るんじゃね~)
飛頼は注目されることに恥ずかしさを感じるような性格ではなかったがはっきりとしない空気感の視線に小さくストレスを抱え、それは帰りのホームルームの頃には大きくなっていた。
(だぁ~!疲れた……チラ見 質問 チラ見 質問 チラ見 質問 何の無限ループだよ)
飛頼はホームルームが終わった瞬間逃げるように教室を出てカフェに直行した。
「こんにちは」
カフェに直行した飛頼はカフェのドアを開けてマスターの翼神 優志を見つける。「いらっしゃい お客さんとしてでは無さそうじゃの」
優志は優しく笑いながらそう言うと水を入れ始める。コポコポと透明のグラスの中から気持ちの良い音が鳴り、ゆったりとしたカフェ内が更に穏やかな空間に成るなか、飛頼は優志が知っている情報への探求心と未だ残る不信感により胸中穏やかには成れなかった。



                                                                            
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