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Leoll Bluefield

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「俺の周りから……か 昼休みを使ってみるか」
飛頼は授業を受けながら自分の力の事を考える。
(昨日の帰り道から今日の朝まで特に変化は無かったけど大丈夫かな てか俺の学校って平和なイメージだけど困ってるやつらなんているのか?)
考え事で半分流すように聞いていた4時間目が終わり、昼食をとっていよいよ昼休みとなる。
(さて 探してみますか)
学校内のを開始し、飛頼は期待と不安で鼓動が早くなるのが分かったが平静を装い廊下を歩く。
「お!上白!体育館行こうぜ!バスケバスケ!超上手い転校生がいてさ!皆そいつ見に行ってんだよ!」
(あ~噂のイケメン転校生か……やっぱそうゆうヤツって運動もできんだよな~)
飛頼は転校生が気になったが生徒の誘いには乗らなかった。
「悪い!先生に呼び出し喰らってさ!」
「上白最近色々あったもんな 分かった!終わったら来いよ!」
「ああ!」
生徒とは反対方向に向かい、人気のない教室を音をたてないように覗いて確認していく飛頼。
「やべ~よな 丸で覗きの犯人みたいなことしてる 先生に見つかったら面倒だろ~な~」
そう小さく囁きながらたどり着いた美術室のドアを少し開く。
「お願いしますから!僕だってお金貯めてるんです!今日はもう渡せないです……」
「へぇ~じゃあ代わりに払う代償は分かるよね?ほら腹見せろよ」
「い、嫌です」
「いやいや 断るとダメなの分かってんだろ?」
座り込んだ生徒の足の膝を一人の生徒が踏みつける。
「ぐうぅ!」
痛みで生徒が呻くと踏みつけた生徒とは別の生徒がしゃがみこんで話す。
「ほら、見せてみろ」
飛頼はそのやり取りを見ていたが美術室に乗り込むことが出来なかった。
(本当に力が与えられたなら勝てるかもしれない でももし違ったら……俺も同じことになるかもしれないぞ……)
さっきまで意気込んでたことが嘘のように飛頼は恐怖に支配される。
「ほーら こんなになってまた喰らいてーの?」
しゃがみこんで話す生徒の言葉に飛頼は踏みつけられた生徒の腹部を見る。
(うわっ……マジかよ……)
シャツをめくって見せた生徒の腹部には青紫のアザがいくつもあった。
「まだ誰にも見せてないよな?このアザ」
「はい……」
踏みつけた生徒も口を開く。
「この前はヤバかったもんな溝にモロ入って息できてなかったしな!ハハ またあーなりたくないよな?」
笑いながら言う生徒の後ろでドアが勢い良く開く。
「うお!何だお前?」
問われても飛頼は答えず話す。
「踏むのやめない?」
「あ~こいつこの前のBクラスの事件のヤツじゃん」
「マジ?で何?学校のヒーローになったと勘違いして次は俺らを止めるとか?フフ……」
飛頼は言葉を無視して歩みより踏まれた生徒の前でしゃがむ。
「シカトかよ」
飛頼はそのまま踏みつけた足を払おうとする。
「勘違いヒーローも一緒にお金貰いまーす!」
生徒はそう叫んで踏みつけていた足を引き、サッカーのように思い切り前に突き出す。その瞬間飛頼には生徒の足を振り下ろす速度が遅くなったように見え、簡単に見切ることができた。
(見えた!)
飛頼を捉えることが出来なかった足を空かさず掴み思い切り引き付けてそのまま捨てるように手を離す。
「ふぁ~!」
不細工な格好と情けない声を出して生徒が倒れるなか、もう一人が飛頼の胸ぐらを掴もうとしてくる。
「おい、邪魔なんだ……」
「フッ!」
その手を掴み逃げれなくなった相手を思い切り蹴りつける。
「がぁっ!」
腹部を蹴られもがく生徒。それを見て飛頼は力が発揮されたことを実感する。
(マジで見える……相手の動くスピードが遅く感じる!)
「もう止めとく?」
飛頼は質問するが返ってきたのは言葉ではなく拳だった。
「ハハ……ハハハ……ウラァ!」
先に倒れた生徒が殴りかかる。
「オホッ!ゲホッ!殺せー!」
腹部を蹴られ苦しんでいた生徒も起き上がり、後ろから飛頼を掴もうと迫る。飛頼は前からの攻撃を交わしながら背後の生徒の顔を蹴り飛ばす。
「ふぅー!んー!んー!」
後ろの生徒は痛みで顔を押さえて悶える。
(しまった!咄嗟に蹴っちゃった!)
飛頼は反射的に出た自分の行動に驚きながらもそれを表には出さずに言う。
「俺はしっかり聞いたから 止めるか止めないか……選んだのはお前らだから」
そして殴りかかってきた生徒の腹部めがけて右ストレートを放つ。
「おはっ!かはっ!止めるとかねーからお前潰すまで止めねーから……」
その言葉を聞いて飛頼は内心気分が上がった。
(そうだお前らが俺に攻撃する分だけ俺も攻撃を返せる だからもっとかかってこいこの生徒が受けたのはもっと酷かったはずだ お前らはもっと無惨な目に合わないとダメだ)
「ッラァ!」
ストレートを喰らった生徒はまた殴ってくるが飛頼はそれを避けずに手で止める。そしてそのまま話しかける。
「お前さっきこの人に言ってたよな 息できてないのが面白かったって 反対にそれを今この人が見たらこの人はどう思うと思う?悲しむと思うか?可哀想だと思うと思うか?普通なら思わないよな 当然の報いと思うか もっと苦しめって思うはず」
「知るかよ!」
聞く耳を持たずまたしても攻撃に走る生徒だが飛頼にとっては全く脅威にならない。
「分かった」
飛頼はそう返事をして思う。
(そうだよな 俺が今言って分かるんなら最初からこんなことしてないよな やっぱり酷い目に合わないと分からないんだ だから分からせてやるしかない)
飛頼は攻撃を交わしては反撃を続ける。
「ハァ……ハァ……クソ……お前……何なんだよ」
「そんなことよりさっき言ったこと覚えてるか?お前が息できてなかろうが何だろうがこの人には全く関係ないって」
「はぁ?ゴフォッ!」
飛頼はアッパーを生徒の腹部へ放つ。
「ハァ……ハァ……覚えてる……覚えてるから……待ってくれ……頼む」
疲れはて、反撃すらできなくなった生徒は涙目で訴え始める。
「って言ってるけどどうする?」
飛頼は踏みつけられていた生徒に質問した。
「ぼ、僕は……」
その生徒は答えかけたが飛頼の横で倒れている生徒を見て迷う。飛頼はそれを見て察するように言う。
「まあ、『もっとやれ』なんて言えないよな コイツらが元気になって 今のこの恐怖とか痛みとかを忘れた頃にまたをしてくるかもしれないもんな」
それを聞いた疲れはてた生徒は飛頼にまた訴えかける。
「もうそんなことしないから……頼む!」
そう言って這いずって飛頼の足にすがる。
「お前らが訴えかける程 俺は許せなくなる」
「はぁ?……どうしてだよ……」
「あの人の腹のアザに比べたらまだ温いのにどうして辛そうにしてんだよ まだ余裕だろ?」
「じゃあ どうしたら俺らは許されんだよ!?」
「じゃあ お前はあの人の『止めてくれ』って声に応えたのか!?言葉を無視して続けたのはお前だろ!」
相手の必死の訴えに怒りで返すと飛頼は冷静になって話し続ける。
「言葉で分からないなら体に教えるしかないだろ?お前もお金が渡せないこの人にそうやって教え込もうとしたんだろ?」
「違う!金が貰えないからついカッとなって」
「どんな理由だよ」
(やっぱ理不尽だ)
飛頼が足にすがる生徒と会話していると後ろからの気配に気づく。
「そのまま掴んでろ!」
顔を蹴られた方の生徒がまたしても背後から攻撃してきた。
「ハァ!」
足を掴まれて交わすのが難しいと判断した飛頼は体を捻ってフックを放つ。
「ぐぁー!ううぅー!」
さっきと全く同じ箇所に攻撃を受けた生徒は酷く痛がる。そして飛頼は前を見て足を掴んだ生徒を見下ろす。
「あいつはあんなになってるけど……どうする?」
「見逃してくれ……」
「じゃあ足放してくれ」
生徒が足から離れると飛頼は被害にあった生徒の所へ向かう。
「立てそう?」
「今日は殴られる前に君が来てくれたから大丈夫……」
「そっか良かった」
「あ!後ろ!」
足を放した生徒が飛頼の後ろから攻撃するが当然のように飛頼は交わして話しかける。
「勝てないと分かると何度でも背後から攻撃を試すんだな ワンパターン過ぎる」
「じょ 冗談だよ」
「だな 冗談もできるし体も動くからやっぱ足りてないんだよ」
飛頼はその生徒の腹部めがけて右回し蹴り 左ニーキック 右アッパー 右バックキックを休まず放つ。
「オガァ!グハッ!ガハッ!……ハァ……ハァ……」
連続で攻撃を受けた生徒は呼吸が一瞬出来なくなり必死で呼吸をする。
「あ~あ」
飛頼は冷めたようにその生徒を見下ろすが内心やり過ぎたと後悔の念が自分にあることに気づく。
(コイツらが悪いんだ……先生が解決してもコイツらへの罰の重さと被害側の被害の重さはどうせ釣り合わない……俺も酷いけどそうさせたのはコイツらだから)
飛頼は自分に言い聞かせるようにそう思った。
「とりあえず保健室行こう そのお腹のアザを見せて事情を説明しよう」
「でも先生に言ったらアイツらがまた何か仕掛けてくるかも……」
「流石にそのアザを見たら先生も目を光らせて監視すると思う……何よりそのアザが残ってるうちが証拠だし いかにアイツらが悪いかを証明する」
「確かに…」
その日から被害にあっていた生徒は飛頼が攻撃した二人組の生徒からお金を請求されなくなった。そして二人組は廊下で飛頼を見つけると目をそらして避けるように逃げて行くようになる。顔を蹴られた生徒は顔が酷く腫れて、腹部に連続でダメージを負った生徒はあばら骨が折れていたらしい。しかし自分達がしたことが先に広まっていたためか、飛頼に恐れてか他の者に真実を話すことはなかった。
「上白先輩!」
後ろから声をかけられ振り向く飛頼。そこには飛頼に助けられた生徒がいた。
「大和君!お腹の方は大丈夫?」
「はい!あのあとお金のこととかも話したらちゃんと返ってきました 倍になってですけど……」
そう言って生徒は苦笑いをする。
「まあある分には越したことないからいんじゃない?」
飛頼もそれに合わせて苦笑いをする。
「僕 本当に助かって 上白先輩に何かお礼をしたいんですけど 何をしたら良いのか分からなくて……」
「当然大和君を助けたかったけど俺がやりたくてやったことだから大丈夫!ありがとう」
「僕こそありがとうございます!」
飛頼はあの時の自分の行動が正しいとは思っていなかったが間違っているとも思わなかった。そして今、感謝の言葉を受けて確信する。
(正しいとか正しくないとか関係ない助かる人がいるならそれで良い だからこれからも続けてやる)





    
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