DIRECTION

Leoll Bluefield

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9 ハンドガン

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飛頼は家に帰るなり部屋のソファーに倒れこむ。
「マジ疲れた エルガイアってスゲーな」
飛頼が横になると眠気が一気にかかり、眠りにつくかつかないかのところで帰る直前での優志との会話を思い返す。
『もし君がアティスに成ると決めたら教えてくれるかの?その場合は来年の4月にビュートに来てもらう そして1年間でヴァイスとケリをつける 交渉になるか戦闘になるかは分からんがの』
『丁度 高校入るタイミングですか』
飛頼はそこで眠りについてしまった。
ーー
「……何だ?風?風だ」
飛頼は広大な大地の上に立っていた。
「ここは……ビュート?」
風は徐々に強くなる。
「何か風強くね?」
最初は心地良かった風が強く吹き荒ぶ。
「何だよこの風……ん!?」
強風の中で飛頼は拳銃を持っていることに気づく。
「またか!」
驚く飛頼は遠くに誰かがいることに気づく。
「あれは……あの怪物!」
学校に現れた怪物がゆっくりと歩いてくるのに対して飛頼は拳銃を構えようとする。
「消えた?何で!」
武器を失って怪物の方に目を向けるとグラウンドにいた青年があの時と同じ様に怪物に拳銃を構える。飛頼が青年に気をとられていると雨が降りだす。雨は激しくなり、いつの間にか怪物は消えていた。残った青年は歩き出し、目の前に優志が現れる。優志は手をかざしてシャボン玉の部屋を飛頼の周りに作り出す。飛頼の右手には訓練したときと同じ様な光があり、飛頼はそれを完成させようと目を閉じる。
ーー
「は!?」
夢から覚めると朝になっていた。
「寝落ちの夢落ち……落ちてばっかり」
飛頼はそう言って浴室に向かう。
(朝シャンなんて滅多にしないんだが……)
シャワーを浴びながら自分の右手を見る。
(俺は本来ならアティスに成れる人間じゃない だがアイデックの力を受け継いだがために可能性は広がった 昨日はカフェのマスターが作り出したエルガイアの空間でマードとか言う光の元を具現化出来たがそれはあの人の作り出した空間だったからだ……多分 そして4月にはビュートに向かうかどうかを決めていなければならない つまりあと1年もない内にマードも作り出せるようになってアティスに成れると言うことだろうか……それとも……)
ーー
アティスへの訓練の後の日曜日、飛頼は優志の元へ向かう。
「いらっしゃい どうしたのかな?」
「こんにちは アティスの訓練のことで1つ提案があるのですが……」
「うむ どうしたのかな?」
「日曜も訓練って出来るのですか?」
「お!向上心!感心!」
「真面目に聞いてます?」
「聞いておるよ 出来るがどうしたのかな?」
(この人『どうしたのかな?』ばっかりだな……)
「本来の俺はアティスに不向き でもアイデックと貴方の訓練があるから可能性は広がった でももし4月までに自力で成れなかったら俺はアティスじゃないままビュートで過ごすってことですよね?」
「そうじゃよ?だが4月までには必ずエルガイアを君のものにしてみせよう マードはそれからでも遅くない」
「つまりはエルガイアに守られた人間又はマードを使えないアティスの状態ってことですか?」
「そうじゃの そんなとこじゃ」
「あっちにはヴァイスがいるのにそんな状態で向かうのは……」
「いや ビュートにヴァイスはおるがやつらもそんなに簡単に普通の人間に近づけるわけではない そんな事ならビュートに普通の人はすめないぞ」
「そっか……」
「わしの計画はビュートに向かう頃にはエルガイアを身につけてハンドガンを扱えるようになってもらうというものじゃ」
「ハンドガン?」
「所謂拳銃 君が使ったものじゃ マードがあれば剣にして闘えるがそれは時間が要る だが闘う手段は剣だけではない」
飛頼はその話を聞いて改めて事の大きさを実感する。
「ハンドガン……つまりそれは相手も使ってくると言うことですよね?」
「ヴァイスはほとんど使わないが別にハンドガンだけが君の脅威ではない 危険に変わりはない だからエルガイアを身につけさせる 身につけたら銃弾なんて 避けられるし当たっても自分は怪我をせずエルガイアがカバーする」
「え?撃たれても平気なんですか?」
「出血を伴うような負傷はせん しかし当たれば当然衝撃があるし少しの痛みはある エルガイアがカバーすると言うことはその分エルガイアを使うから疲れたりする 生身の人間よりは当たっても大丈夫ってことじゃよ」
「ではある程度俺がエルガイアを身につけられたら次はハンドガンの訓練ですか?」
「いや 同時進行でハンドガンも扱ってもらう予定じゃよ それで?日曜も訓練するのかの?」
「はい もし仮に4月に俺が向かうことになるなら強くなっておきたい」
「うむ ではドアの外のプレートをクローズにしてきてくれるかの?」
「え?お休みにしちゃうんですか?」
「今日からではまずいかの?」
「いえ……お店は?」
「君が何度かここへ来てお客さん見た?」
「い……いえ……」
「今日は厳しめで行きまーす!」
「何でですか!?」
飛頼は鋭く突っ込みながらもドアを開ける優志についていく。
ビュートに出て、優志は飛頼がドアを通過した後に一度ドアを閉めてから開ける。
「今日は早速ハンドガンを扱えるようになってもらう」
開けたドアの先は地球では見ないような施設になっていた。
「こっちじゃ」
優志が案内した先は地下だった。
「ガントレーニングルームじゃ」
その部屋は2つに別れた構造になっていた。片方は入ってすぐの空間、ガラスでもう片方の部屋が見られるようになっていて長椅子がある。ガラスのある壁側はカウンターのようになっていて、その台の上には等間隔で何かの操作パネルが並んでいた。もう片方は広く、グレー一色の部屋になっていて何もない空間になっている。優志は操作パネルにパスワードか何かを入力する。
『メンバー ガウォル リスト ハンドガン ガンケースオープン ルームアンロック』
パネル付近から女性の声がそう告げるとパネルの右からハンドガンが出てくる。
ホルダーに収まったハンドガンを手にすると優志はトランシーバーを耳にかける。
(いやいやどこから取り出したんだよ!?)
優志が急に非日常的なアイテムを自然に取り出したことに飛頼は驚く。
「隣の部屋は防音にしてある わしはこのトランシーバーで話しかけるから君はここにいてくれるかの?」
「分かりました」
『使い方は以前わしが教えた通りじゃ』
パネル付近から優志の声が聞こえ、飛頼はその言葉に質問する。
「え?教えてもらっては……」
『学校でハンドガンを使えたのはわしの与えたエルガイアの力と教えたじゃろ?つまりわしが教えたんじゃよ』
優志はそう言ってガラス越しに飛頼に得意気に笑って見せる。
(そんなドヤ顔されても……)
飛頼は苦笑いする。
優志は向こうの部屋で何かを操作するとさっきと同じ女性の音声が流れる。
『パターンA スタート』
向こうの部屋に的が現れて優志はそれを射つ。
「マジ……?」
飛頼は思わずそう小さくこぼした。
優志は的が出た瞬間にトリガーを引き、当てた箇所は的の中心だった。そして飛頼が唖然としている中で優志は次々現れる的に同じ速度と精度で命中させていく。
(エルガイアのおかげだよな?こんなの……普通の人間には……)
飛頼がそう思っていると優志が隣の部屋から戻って来る。
「時間はたくさんある しっかり狙って射つんじゃ 言葉より実際に射った方が早い わしも君の隣で見ておくから心配要らんよ」
飛頼はセーフティを外してスライドを引く。優志はそれを確認してパネルを操作する。先程と同じパターンAという音声と共に的が1つ出てくる。飛頼はフロントサイトとリアサイトを駆使して射撃を行う。衝撃と轟音が飛頼に響く。
「うーん 使い方は完璧じゃの」
「ありがとうございます」
「わしの教え方素晴らしいってことじゃよな?の?の?」
「あぁ……はい……でも……何か……直接教えてもらってないから……実感は……そんなに」
「へぇ~……ところで質問」
「な……何ですか?」
「今撃ってみてうるさかったかの?」
「は……はい」
「耳キンキンしたかの?」
「ええ……キンキンと言うかピーって言ってます」
「これは耳あてじゃ」
「あ……ありが……え?」
優志はそれを持ったままドアへ向かう。
「それを貸してくれるとかじゃないんですか?」
「え~?なんじゃ?耳キンキンして聞こえんぞ~」
「今会話してたでしょ!?」
「う~ん?わしの教え方素晴らしいって~?」
飛頼はそれを聞いて察した。
(子供だ……いやそれは俺だけど……)
「貴方のおかげで銃が扱えてます!ありがとうございます!」
「ほい!」
優志は耳あてを飛頼へ投げる。
「使ってい~ぞ~」
「はぁ……」
飛頼はハンドガンをひたすら射ち続けた。しっかりと時間をかけても的の中心へ当てるのは簡単ではなく、優志が先程簡単にやってのけたことは異常だと実感した。
(聞けない……あの人の射撃の腕はエルガイアを使ってのものなのか使わずしてあの正確さなのか……でももしエルガイアを使っていなかったら?俺は同じことが出来るようになるのか?あんなの……まるでマシンじゃないか……的が出た瞬間に射ってど真ん中って……しかも全部……)
「雑念ありありは怪我するぞ どうしたんじゃ?」
優志が後ろからそう話しかけると飛頼は的に狙いをつける。
「不気味なくらい鋭いですよね」
「色んな人を見てきたからの~」
飛頼は耳あてを少し浮かせて話を聞く。
「それってアティスを何人も育ててきたってことですか?」
「さ~て!どおかの 今は君を強くするだけじゃ さて集中しようか」
「あ……はい」
その日、飛頼はハンドガンの訓練に加えてマードの訓練も受けた。掌に現れた光に大きな変化はなく、マードの生成にはまだ時間も力も必要だと痛感させられることとなった。
(ま 2回目だしな……やっぱ日曜も訓練して良かったんじゃないか……水曜と違って時間もあるし 本来はこの人が作ってくれたシャボン玉の部屋無しでアティスに成れなきゃ意味ないしな)
考えを巡らせてエルガイアの空間から出てみると飛頼はあることに気づく。
(ん……前より疲れてない……足も重くないし……アティスにはまだまだだけどエルガイアには慣れてきてんのかな……)
飛頼は小さな進歩を実感しながら帰宅するとまたしても自室のソファーに倒れこむ。
(やっぱねみーわ……)














    
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