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10 振り抜く度に強くなる
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アティスに成るための訓練を開始してから6ヶ月が経つ頃、飛頼は優志の作り出した空間でマードの訓練をしていた。
掌に意識を集中し、光を出す。光は少しずつゆっくりと伸びていき、剣として扱える程の長さで止まる。
「今じゃ 飛頼!光を掴め!」
優志の言葉に飛頼は光を掴む。掴んだ瞬間光に重みが宿り、清涼感のある音が鳴る。
「これって……完成ですか!?」
「うむ よくやったの ではマードを持ったまま外へ出られるかの?」
飛頼はエルガイアの空間から外へ出る。
「振ってみなさい」
飛頼はマードをゆっくりと振る。マードは常に僅かだが清涼感のある音を発していて、振る度にそれは唸るようにして大きくなる。
「この音は?」
「マードのエルガイアが空気に触れて鳴っておる」
「スゲェ」
「かっこいいじゃろ?」
「はい!ヤバイっす」
「さて どうやって剣になるかだが……」
「そっかこれはまだ剣の状態じゃないんだ」
マードは光っているため確認が難しいがよく見ると剣のような鋭さはなく細い円柱のような形をしているのが確認できる。
「うむ だから今君が持ってるマードはどこを触っても怪我はしない 試しに触ってみなさい」
飛頼は恐る恐る左手でマードの中心辺りを触る。
「確かにこれじゃあ剣としては扱えないですね どうしたら?」
「上白君の家では新聞をとっているかな?」
「はい……何故……ですか?」
「次回は要らなくなった新聞紙をできるだけ多く持ってきてくれるかの?それでマードを剣にするための訓練を始める」
「分かりました……どうやって新聞を活用するんですか?」
「それは訓練してみたら分かるから楽しみにしておいてくれ さて!そろそろ終わりにしようか」
「このマード消したくないな」
「訓練を始めた頃も言っておったな」
「確かに」
飛頼は笑いながらマードを持っていた手を開く。マードを消すと飛頼は優志と共にビュートを出ていく。
「今月分じゃ」
「ありがとうございます」
優志は訓練を開始した頃に約束した通り飛頼にちょっとしたバイト代を渡す。それは中学生の飛頼にとっては十分な額で飛頼は訓練を始めて以来、欲しいものには困らなかった。
「ご両親とはいつも通りに過ごせているかの?」
「ええ 家のことはご心配なく今は応援してくれているので」
「君に協力してもらう上で一番の悩みどころだったからの 理解ある方々で助かってるよ」
「いやいや最初マスターがこの話を持ち掛けたときなんて二人とも思いっきり不信感出してましたよ!?」
「うん だがそれは当たり前じゃろう 君はあり得ない現象に遭遇するのが先だったが お二人は知らない老人からこれから自分の子供を鍛えて異世界に連れていかれる話を急に聞かされたんじゃからな」
「未だに訓練内容とか帰って話すと信じてもらえはしませんが毎日楽しそうだなって家族に言われますよ」
「そうか 良かった どうせなら楽しくないとな」
飛頼はカフェを出て帰路につく前に寄り道をする。優志からの給料でマウンテンバイクを手に入れてからは人が多い所へ出ていきトラブルがないかを見るようになった。
「迷子かよ」「おいおい聞こえるぞ?」「聞こえてっかー?」「ハハッ」
しかし大抵は違う学校の生徒に喧嘩を売られるだけで終わってしまう。
「迷子じゃないけど 今誰が言った?」
飛頼の問いに三人組の中の一人が答える。
「俺だよ 青果野だろお前 迷子は帰れよ」
「お前俺が身長190のバキバキの逆三角だったら同じこと言えた?自分を強く見せたいならお友達に囲まれてないときにしたら?こんな普通男子にボディーガードつけて煽ってきてもダサいぞ?」
「ゆーねー 説教か?バカにされて悔しかったか?」
「悔しくなるのはこの先のお前だよ 1対1で挑む勇気見せてみろよ 何ならここで恥かせようか?」
(アイデックの力が無かったら絶対言えねーセリフだな)
飛頼が自分に呆れていると早速相手が挑んできたが一方的に打ちのめして最後は背中を踏み付け残りの二人に質問する。
「助けなくていいの?」
「い いやそいつが…勝手にやっただけだし…」
さっきまでの勢いがなくなってしまった二人に踏み台が怒り始める。
「お前ら何で何もしねえんだよ!?ふざけんな…う…ふ…」
(あらま…泣いちゃった…)
他人事のように飛頼が踏み台を見ていると周囲がざわつき始める。
「何あれ…やばくない?」
「ママーあのお兄ちゃん何してるのー?」「しっ!見ないの!」
「お?喧嘩?」「つーか いじめじゃね?」
(待って 恥かいてんのは俺も同じじゃん どーゆー顔してればいんだ?)
飛頼が焦り始めたころ警察が駆けつける。
「君!何してるんだ!」
飛頼は警察に言われて初めて足を退ける。数時間後帰宅した飛頼は家族に説教を受け、翌日は優志に自ら報告をした。
「本来わしが一番強く注意すべきだが君を信頼しているし止めるべき時は止める だがほどほどにな」
「すみません 粋がってるやつに分からせたくなって」
「ふん…だが周りの目には君がそう映っていたのでは?」
「はい…恥かかせるつもりが自分も同じだと気づかされました」
「だからすぐ逃げなかったのか?」
「いいえ 周囲の反応をよく見たかった…」
「ふん…」
「バカにしてきたやつがどれだけ悪くても報復すればバカにされた方が悪者になってしまう 力ある者はその使い方を考えるべきだとは思いますが 果たして言葉で訴えかけて分かり合えるでしょうか?俺は無理だと思います 誰かが力づくでねじ伏せるしかない でもそれは間違ってるってことを再確認するために警察官が来るまで相手を踏みつけてました 案の定俺は注意されて周りはみんな引いてました 俺にとっての悪者は足の下で泣いてるだけで一瞬にして慈悲の目を向けられ 俺は一瞬で悪者です やっぱり力を得たなら正すべきだこの理不尽を そう思いました」
優志は飛頼の話を聴いても注意することはなかった。
「永遠のテーマじゃの この世界にとっての そして君にとっての だから間違ったときはわしや未来の仲間に正してもらえばいい レベルはあれど皆誰かにとっての悪者になるしかない 大きく言えば人間である以上地球にとって悪者 牛・豚・鶏・魚介類にとって悪者だろ?」
「それは目的がある上であって…」
「何じゃ?目的あれば犠牲も仕方ないか?確かにな だが犠牲になる側はそんなこと思わないはず」
「それは…そうですが…」
「まあ君の言いたいことは分かる 簡単な話100%正しい奴が支配すべきってことじゃろ?だがその時点で必ず君の嫌いな理不尽は存在する だから君は最強になったら自分が支配して全てを正しくしたいと思ってる なぜなら自分が正しいと思ってるから 大丈夫みんな同じじゃよ 苦しみ 悩め 大切なのは君のその意志だから 理不尽を無くしたいと願い 闘い続ける人間らしさがある限りわしは君の味方じゃよ」
飛頼は複雑だった。自分は間違っていないと思いつつ正しくもないとわかっていて、それを優志も咎めない。自分の中に渦巻く矛盾に答えは見つからなかった。
「さーて せっかく持ってきてくれた新聞を活用しようかの?」
「これをどう使うんですか?」
「工作の時間じゃ!長ーくしてみよう!マードみたいに!」
(子供の遊びに見せかけて何か意味があるんだろうな)
飛頼は言われた通りに新聞紙を自分が作り出すマードと同じほどの長さに細長くする。優志もいつの間にか作り終え、それを高く掲げる。
「よーし!楽しい訓練へ!」
(さっきの話はもういいのか…)
飛頼は優志の楽観的な態度に調子が狂う。優志はドアを開けビュートへ向かう。
「野球少年!そのバットでひたすら打ち返すんじゃ!」
「野球少年?」
有無を言わさず優志は新聞紙を丸めて飛頼の前にトスする。飛頼はそれを打ち返そうとするがなかなか当たらない。
「空振り少年の間違いじゃった すまん」
「言わなくていいですから!」
「バットにボールが当たる瞬間をしっかり目で追い 当たる瞬間まで力を抜き インパクトの瞬間打ち返すつもりで」
飛頼は言われた通りに意識して丸めた新聞紙を狙っていき、時間とともにヒットする回数が増えていった。
「打ちながら いいかの?」
「何ですか?」
「エルガイアを使うにはエルグを知らなければならん」
「エルグ?」
「ベタベタだが分かりやすく言えば魔法を使うには呪文を知るべきってこと」
「あ~」
「振り抜く度に強くなる」
「はい?」
「これが今回のエルグ ボールへのインパクトの瞬間に放つんじゃ」
飛頼は打つ瞬間、言われた通りに言ってみる。
「振り抜く度に…強くなる」
「ふふ…確かに照れくさいかもしれんの 気持ちは分かるがわしは本気じゃよ インパクトの瞬間に集中して言うだけじゃ」
「はい」
飛頼はひたすら同じ言葉を繰り返しひたすら打ち返す。そして時々空振る。
「真剣にエルグ放って外した時が一番面白いの」
優志は目を細くして笑う。
「真剣にやれって言ったからでしょ!」
飛頼は思わず大声で言い返す。
「まあまあ だからこそもっと慣れて もっと集中して外さないように極めるんじゃろ?イライラしない」
「クッ…振り抜く度に強くなる!」
「いや…全然力抜けとらん…」
それからの飛頼の訓練には新聞紙での振り抜く訓練と実際にマードを振り抜く訓練が追加された。
「振り抜く度に強くなる……振り抜く度に強くなる……振り抜く度に強くなる」
2ヶ月後、飛頼のマードに変化が現れる。
「振り抜く度に強くなる……振り抜く度に強くなる……振り抜く……!あれ?変わってる!?変わってる!!」
マードは刀のように鋭さを持ち、以前より攻撃的なフォルムになった。
「刀身には触れぬようにな」
「マジで剣だ…これって…斬れちゃうんですよね」
「ああ」
飛頼が目を輝かせていると優志は続ける。
「恐怖と覚悟の違いって何だと思う?」
「え?…そうですね…恐怖は怖がることで覚悟はそれに対しての心構え…?てか比較するものでもないような…」
「覚悟があれば恐怖に克てる?」
「と…思いますが…」
「では明日死ぬとして君は今日覚悟を決めた 怖くないか?」
「それは…そんな状況下に置かれたことないから考えにくいのですが…」
優志は少し笑う。
「だろうな 覚悟を決めるって相当難しいことだとわしは思う」
「マスターでもそう思いますか?」
「ああ だから覚悟も恐怖の内だと思う 怖くなかったら覚悟なんて持たないだろ?」
「確かに」
「君はハンドガンやマードを使って闘う 闘うということは傷つけ傷つけられること それに対しての覚悟はあるかな?」
「……」
「君はわしが必ず生き残らせる だからといって傷つかないことは無いだろうし 傷つけることは必至だろう 君が持っている剣はそう言う形をしている」
悪事を働く輩は報いを受けるべき、飛頼のそう言った考えは揺るがなかったが剣や銃で致命傷を負わせるとなると話が変わってくる。そしてそうなることが分かっていて平気なままだった自分に今更怖くなる。
(ふ…フフ…確かに…覚悟と恐怖の違いも分かってない)
掌に意識を集中し、光を出す。光は少しずつゆっくりと伸びていき、剣として扱える程の長さで止まる。
「今じゃ 飛頼!光を掴め!」
優志の言葉に飛頼は光を掴む。掴んだ瞬間光に重みが宿り、清涼感のある音が鳴る。
「これって……完成ですか!?」
「うむ よくやったの ではマードを持ったまま外へ出られるかの?」
飛頼はエルガイアの空間から外へ出る。
「振ってみなさい」
飛頼はマードをゆっくりと振る。マードは常に僅かだが清涼感のある音を発していて、振る度にそれは唸るようにして大きくなる。
「この音は?」
「マードのエルガイアが空気に触れて鳴っておる」
「スゲェ」
「かっこいいじゃろ?」
「はい!ヤバイっす」
「さて どうやって剣になるかだが……」
「そっかこれはまだ剣の状態じゃないんだ」
マードは光っているため確認が難しいがよく見ると剣のような鋭さはなく細い円柱のような形をしているのが確認できる。
「うむ だから今君が持ってるマードはどこを触っても怪我はしない 試しに触ってみなさい」
飛頼は恐る恐る左手でマードの中心辺りを触る。
「確かにこれじゃあ剣としては扱えないですね どうしたら?」
「上白君の家では新聞をとっているかな?」
「はい……何故……ですか?」
「次回は要らなくなった新聞紙をできるだけ多く持ってきてくれるかの?それでマードを剣にするための訓練を始める」
「分かりました……どうやって新聞を活用するんですか?」
「それは訓練してみたら分かるから楽しみにしておいてくれ さて!そろそろ終わりにしようか」
「このマード消したくないな」
「訓練を始めた頃も言っておったな」
「確かに」
飛頼は笑いながらマードを持っていた手を開く。マードを消すと飛頼は優志と共にビュートを出ていく。
「今月分じゃ」
「ありがとうございます」
優志は訓練を開始した頃に約束した通り飛頼にちょっとしたバイト代を渡す。それは中学生の飛頼にとっては十分な額で飛頼は訓練を始めて以来、欲しいものには困らなかった。
「ご両親とはいつも通りに過ごせているかの?」
「ええ 家のことはご心配なく今は応援してくれているので」
「君に協力してもらう上で一番の悩みどころだったからの 理解ある方々で助かってるよ」
「いやいや最初マスターがこの話を持ち掛けたときなんて二人とも思いっきり不信感出してましたよ!?」
「うん だがそれは当たり前じゃろう 君はあり得ない現象に遭遇するのが先だったが お二人は知らない老人からこれから自分の子供を鍛えて異世界に連れていかれる話を急に聞かされたんじゃからな」
「未だに訓練内容とか帰って話すと信じてもらえはしませんが毎日楽しそうだなって家族に言われますよ」
「そうか 良かった どうせなら楽しくないとな」
飛頼はカフェを出て帰路につく前に寄り道をする。優志からの給料でマウンテンバイクを手に入れてからは人が多い所へ出ていきトラブルがないかを見るようになった。
「迷子かよ」「おいおい聞こえるぞ?」「聞こえてっかー?」「ハハッ」
しかし大抵は違う学校の生徒に喧嘩を売られるだけで終わってしまう。
「迷子じゃないけど 今誰が言った?」
飛頼の問いに三人組の中の一人が答える。
「俺だよ 青果野だろお前 迷子は帰れよ」
「お前俺が身長190のバキバキの逆三角だったら同じこと言えた?自分を強く見せたいならお友達に囲まれてないときにしたら?こんな普通男子にボディーガードつけて煽ってきてもダサいぞ?」
「ゆーねー 説教か?バカにされて悔しかったか?」
「悔しくなるのはこの先のお前だよ 1対1で挑む勇気見せてみろよ 何ならここで恥かせようか?」
(アイデックの力が無かったら絶対言えねーセリフだな)
飛頼が自分に呆れていると早速相手が挑んできたが一方的に打ちのめして最後は背中を踏み付け残りの二人に質問する。
「助けなくていいの?」
「い いやそいつが…勝手にやっただけだし…」
さっきまでの勢いがなくなってしまった二人に踏み台が怒り始める。
「お前ら何で何もしねえんだよ!?ふざけんな…う…ふ…」
(あらま…泣いちゃった…)
他人事のように飛頼が踏み台を見ていると周囲がざわつき始める。
「何あれ…やばくない?」
「ママーあのお兄ちゃん何してるのー?」「しっ!見ないの!」
「お?喧嘩?」「つーか いじめじゃね?」
(待って 恥かいてんのは俺も同じじゃん どーゆー顔してればいんだ?)
飛頼が焦り始めたころ警察が駆けつける。
「君!何してるんだ!」
飛頼は警察に言われて初めて足を退ける。数時間後帰宅した飛頼は家族に説教を受け、翌日は優志に自ら報告をした。
「本来わしが一番強く注意すべきだが君を信頼しているし止めるべき時は止める だがほどほどにな」
「すみません 粋がってるやつに分からせたくなって」
「ふん…だが周りの目には君がそう映っていたのでは?」
「はい…恥かかせるつもりが自分も同じだと気づかされました」
「だからすぐ逃げなかったのか?」
「いいえ 周囲の反応をよく見たかった…」
「ふん…」
「バカにしてきたやつがどれだけ悪くても報復すればバカにされた方が悪者になってしまう 力ある者はその使い方を考えるべきだとは思いますが 果たして言葉で訴えかけて分かり合えるでしょうか?俺は無理だと思います 誰かが力づくでねじ伏せるしかない でもそれは間違ってるってことを再確認するために警察官が来るまで相手を踏みつけてました 案の定俺は注意されて周りはみんな引いてました 俺にとっての悪者は足の下で泣いてるだけで一瞬にして慈悲の目を向けられ 俺は一瞬で悪者です やっぱり力を得たなら正すべきだこの理不尽を そう思いました」
優志は飛頼の話を聴いても注意することはなかった。
「永遠のテーマじゃの この世界にとっての そして君にとっての だから間違ったときはわしや未来の仲間に正してもらえばいい レベルはあれど皆誰かにとっての悪者になるしかない 大きく言えば人間である以上地球にとって悪者 牛・豚・鶏・魚介類にとって悪者だろ?」
「それは目的がある上であって…」
「何じゃ?目的あれば犠牲も仕方ないか?確かにな だが犠牲になる側はそんなこと思わないはず」
「それは…そうですが…」
「まあ君の言いたいことは分かる 簡単な話100%正しい奴が支配すべきってことじゃろ?だがその時点で必ず君の嫌いな理不尽は存在する だから君は最強になったら自分が支配して全てを正しくしたいと思ってる なぜなら自分が正しいと思ってるから 大丈夫みんな同じじゃよ 苦しみ 悩め 大切なのは君のその意志だから 理不尽を無くしたいと願い 闘い続ける人間らしさがある限りわしは君の味方じゃよ」
飛頼は複雑だった。自分は間違っていないと思いつつ正しくもないとわかっていて、それを優志も咎めない。自分の中に渦巻く矛盾に答えは見つからなかった。
「さーて せっかく持ってきてくれた新聞を活用しようかの?」
「これをどう使うんですか?」
「工作の時間じゃ!長ーくしてみよう!マードみたいに!」
(子供の遊びに見せかけて何か意味があるんだろうな)
飛頼は言われた通りに新聞紙を自分が作り出すマードと同じほどの長さに細長くする。優志もいつの間にか作り終え、それを高く掲げる。
「よーし!楽しい訓練へ!」
(さっきの話はもういいのか…)
飛頼は優志の楽観的な態度に調子が狂う。優志はドアを開けビュートへ向かう。
「野球少年!そのバットでひたすら打ち返すんじゃ!」
「野球少年?」
有無を言わさず優志は新聞紙を丸めて飛頼の前にトスする。飛頼はそれを打ち返そうとするがなかなか当たらない。
「空振り少年の間違いじゃった すまん」
「言わなくていいですから!」
「バットにボールが当たる瞬間をしっかり目で追い 当たる瞬間まで力を抜き インパクトの瞬間打ち返すつもりで」
飛頼は言われた通りに意識して丸めた新聞紙を狙っていき、時間とともにヒットする回数が増えていった。
「打ちながら いいかの?」
「何ですか?」
「エルガイアを使うにはエルグを知らなければならん」
「エルグ?」
「ベタベタだが分かりやすく言えば魔法を使うには呪文を知るべきってこと」
「あ~」
「振り抜く度に強くなる」
「はい?」
「これが今回のエルグ ボールへのインパクトの瞬間に放つんじゃ」
飛頼は打つ瞬間、言われた通りに言ってみる。
「振り抜く度に…強くなる」
「ふふ…確かに照れくさいかもしれんの 気持ちは分かるがわしは本気じゃよ インパクトの瞬間に集中して言うだけじゃ」
「はい」
飛頼はひたすら同じ言葉を繰り返しひたすら打ち返す。そして時々空振る。
「真剣にエルグ放って外した時が一番面白いの」
優志は目を細くして笑う。
「真剣にやれって言ったからでしょ!」
飛頼は思わず大声で言い返す。
「まあまあ だからこそもっと慣れて もっと集中して外さないように極めるんじゃろ?イライラしない」
「クッ…振り抜く度に強くなる!」
「いや…全然力抜けとらん…」
それからの飛頼の訓練には新聞紙での振り抜く訓練と実際にマードを振り抜く訓練が追加された。
「振り抜く度に強くなる……振り抜く度に強くなる……振り抜く度に強くなる」
2ヶ月後、飛頼のマードに変化が現れる。
「振り抜く度に強くなる……振り抜く度に強くなる……振り抜く……!あれ?変わってる!?変わってる!!」
マードは刀のように鋭さを持ち、以前より攻撃的なフォルムになった。
「刀身には触れぬようにな」
「マジで剣だ…これって…斬れちゃうんですよね」
「ああ」
飛頼が目を輝かせていると優志は続ける。
「恐怖と覚悟の違いって何だと思う?」
「え?…そうですね…恐怖は怖がることで覚悟はそれに対しての心構え…?てか比較するものでもないような…」
「覚悟があれば恐怖に克てる?」
「と…思いますが…」
「では明日死ぬとして君は今日覚悟を決めた 怖くないか?」
「それは…そんな状況下に置かれたことないから考えにくいのですが…」
優志は少し笑う。
「だろうな 覚悟を決めるって相当難しいことだとわしは思う」
「マスターでもそう思いますか?」
「ああ だから覚悟も恐怖の内だと思う 怖くなかったら覚悟なんて持たないだろ?」
「確かに」
「君はハンドガンやマードを使って闘う 闘うということは傷つけ傷つけられること それに対しての覚悟はあるかな?」
「……」
「君はわしが必ず生き残らせる だからといって傷つかないことは無いだろうし 傷つけることは必至だろう 君が持っている剣はそう言う形をしている」
悪事を働く輩は報いを受けるべき、飛頼のそう言った考えは揺るがなかったが剣や銃で致命傷を負わせるとなると話が変わってくる。そしてそうなることが分かっていて平気なままだった自分に今更怖くなる。
(ふ…フフ…確かに…覚悟と恐怖の違いも分かってない)
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