DIRECTION

Leoll Bluefield

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12 流れる水

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マードが振り下ろされる瞬間、飛頼が躱す間もなく誰かが割って入ってきた。
マードがぶつかる音が響き、飛頼はその人物を確認する。青い髪に紫の瞳、手には青いマードを持ちザリーグに流れるような剣さばきで詰め寄る。
飛頼「た 助かった」
ザリーグ「な!ダルクだと!?何故こんな所に!?」
ダルクと呼ばれた人物はザリーグの言葉に返答せずマードを弾く。
ザリーグ「ま!待て!俺はお前と闘うつもりは……」
ダルク「アティスとヴァイスは闘うしかないんだろ?」
ザリーグ「あ……いや……?……お前もヴァイスだろ!?」
ダルク「さあな」
ザリーグは先程とは打って変わって余裕がなく怯えている。ダルクはマードを向けて冷めた目でザリーグを見つめる。
ザリーグ「くっ!」
逃げるザリーグをダルクは逃さない。
ダルク「逃げるのか?」
そのやり取りは先程までの自分とザリーグのようで飛頼はいかに自分が情けなかったかを自覚する。
ザリーグ「フ……フフフ……フハハハ!!ちょっと力がある程度で図に乗るなよ!?」
ザリーグは吹っ切れたように勢いを取り戻しダルクへ向かう。
ダルク「潤弾撃アグンベレカ
ダルクがエルグを唱えてマードを振ると複数の水が弾丸のようなスピードでザリーグを襲う。
ザリーグ「がぁっ!ごぅっ!うぐっ!」
ザリーグは水が当たった衝撃だけではなく、当たって弾ける瞬間にもエルガイアの乗った水によってダメージを負う。
ザリーグ「ハァ…ハァ…だから何だよ…それで勝ったつもりかぁ!!」
ダルク「潤凝花アグンフルスト
ダルクの2つ目のエルグはザリーグの体からクリスタルのような氷を発生させて動きを鈍らせる。
ザリーグ「くっ!氷だと!?」
スピードの落ちたザリーグはダルクの攻撃に追いつけずマードを弾かれる。ダルクはそのままマードで斬りつける。
ザリーグ「があぁっ!」
飛頼「え……?」
飛頼はザリーグの傷を見て驚く。
飛頼「血が……青い……?」
ザリーグ「いきなりABかよ……フフ……流石はダルク……だが鈍ってんなぁ!もっと強かったろぉ!」
ザリーグは起き上がりエルグを唱える。
ザリーグ「虚斬撃!ノルスレイカ!
ダルクはザリーグの攻撃を先読みして既に走り始めている。腰にあるホルスターからハンドガンを取り出しザリーグのマードから放たれた黒い光のような斬撃をスライディングで避けてそのままハンドガンを連射する。
ザリーグ「ぶぁっ!ばぅ!だぁ!」
ザリーグから流れ出る青い血は紫になる。
飛頼「色が……変わった?」
ザリーグ「ここが……俺の……最期だと……ふざけるなよ……ふざけるなよダルクー!!」
ザリーグの体は少しずつ薄くなり、同時に黒く光る雪のようなものが舞い上がっていく。
「……な なあ あのヴァイスはどうなったんだ?」
「……」
ダルクは答えず歩みを進める。
「ちょ……ちょっと!ちょっと待ってくれ!」
追いかけようと飛頼が近づくとダルクは振り向く。
「お……」
飛頼はこちらをまっすぐ見つめるダルクの目に思わず怯む。
「お前はなぜここにいる」
「え?」
「目的はなんだ」
「それってビュートに来た理由のこと?」
「ああ」
「聞いた話ではヴァイスが争いの絶えない人間に嫌気が差して 心を……感情を削ろうとしてるとか で実際俺にその話を持ちかけた人にこれから来る未来の世界を見せてもらったら皆笑ってなくて……当然信じなかったけどその人の力を見てマジなんだって実感して それで1年間訓練したんだよアティスになるために で 今ここにいる」
「それは建前だろ」
「え」
「自分が注力しなくても他者が犠牲になることで解決する事柄に率先して手を出す人間は微量だ お前はそうは見えない」
「な……何で見た目で決めつけんだよ」
「先程のヴァイスとの会話を聞く限り 危なくなったら手段を選ばない狡猾さが目立つ 世界のためではなく力を得るためだろ」
「違う!理不尽や不平等を俺が消すためだ!確かに力は欲しいけどそれは私利私欲のためじゃない!」
「どうだろうな」
「……でも……」
「……?」
「でも俺が100%正しいわけがない それは分かってる だからそっちみたいな強い人が俺を監視してれば道を踏み外さないだろ?」
「俺がお前を見張る?断る 物は言い方だな 結局  と言いながら と言いたいんだろ」
「だって君 俺が何言っても聞く耳持たないじゃん 俺が強くなるまで見張ってくれたらそのときに証明してみせる 全てを正して皆が笑えるように……だから……見張っ……見守ってくれ!俺が私利私欲で他人を傷つけないように!助けてくれ!俺が負けないように!」
ダルクは紫色の綺麗な目で飛頼をじっと見る。
「……うっ……」
「皆が笑うことができるなんて理想だ そしてお前が目の前にしている人間も100%正しい保証はない」
「だったら早く君の力量に追いついて間違わないように道を示す!」
「本当にいるんだな」
「へ?」
「ビッグマウスって生き物」
「は!?それはどういう意味だよ!」
「そのままだが」
「いやサイズがデカくなっただけのネズミ野郎かもしれないじゃん!?」
「好きな方を」
「どっちもいらねーよ!」
怒る飛頼をスルーしてダルクは歩みを進める。
「どこ行くんだよ?」
「帰る」
「俺この先の何もない場所に1軒だけ建ってる会社みたいなとこにいるから!良ければ色々教えてくれ!」
ダルクは返事をせず去っていく。
(クール気取りすぎだろ ホントに大丈夫かな)
拠点へ戻ると飛頼はぐったりと床に伏せる。
「疲れた 早く防御の方法覚えないとメンタル持たない」

それから6日経った昼下り、飛頼はマードを振るため外へ出る。
「おお~やってるの~」
飛頼に緊張が走る。話しかけてきたのは姿を消していた優志だった。
灯剣マード
飛頼は戸惑うことなくマードを出す。
「教えた恩師に使うことになるとは皮肉じゃの」
(わざとらしい態度とりやがって少しでも近づけば斬る)
「ほら…チャンスだぞ」
優志は歩きながら近づいてくる。
(あ…何だ?)
飛頼はマードを構えようとして異変に気づく。優志の動きはゆったりとしたものだったが飛頼が構える頃には目の前にいた。
「あ~あ」
優志は嘲るように飛頼を見る。
「ダハァッ!」
優志のキックが飛頼の横腹に入る。
「1週間…恐怖に怯えてはなかったようだね」
優志は満足気に笑ってみせるとその場を後にする。
「ゔぅ…あぁ!あぁぁ!おふっ!はっ!」
強い苛立ちに叫ぶ飛頼だったが痛みでそれすら許されない。
「何か無いのか…あのゴミ野郎をぶっ潰せる方法…てか…もう…帰りてぇ…」
飛頼は地面に伏せて静かに泣く。
(何か…変えないと…マジでヤバいかもな)
飛頼は不安に煽られ人の多い街へ出ることにした。
(何か情報があれば エルガイアを纏える方法の何か)
宛もなく歩く飛頼の前にロンゼムが5体現れる。
(何だよ こんなに頻繁に出るのか?この数は…逃げたほうが…いや…ちょうど良い 元はと言えばコイツらがいるから俺はビュートに来ちまったんだ あのジジイに蹴られ殴られてんだ 5体纏めてぶっ殺す!)
灯剣マード
飛頼はマードを出しながら前に跳び、体を回転させ2体斬りつける。
「残り3」
着地し顔を上げた瞬間ロンゼムの拳が飛んでくる。
「くっ!」
咄嗟に左腕で受け止めるが攻撃の重さに怯む飛頼。立て続けに残りのロンゼムから蹴りが放たれる。
「マズ」
バランスを崩したところへ1体が止めにかかる。
「キシャア!」
1年前の学校のロンゼムと同じような鋭い牙が向かってくる。
「うっわ!」
マードで防ごうとする飛頼だったが横から誰かに蹴られる。
「うあっ!」
飛ばされた飛頼は地面に転がる。その間ロンゼムは蹴った人物に一瞬で倒される。
「ダルク!」
飛頼は痛みを忘れて思わぬヒーローに喜ぶ。
「助かった…流石にごっ…!」
ダルクは飛頼をもう一度蹴り飛ばす。
「何すんだよ!」
「何してた?」
「あ!?」
「あれから1週間経って何も変わってないなアティスの成長は人間と同じように初期は一週間でも変化が分かる」
「マードは毎日振ってたさ でもエルガイアを防御に使う方法が分からなくて…」
飛頼の話の途中でダルクがマードで詰め寄る。
「待て!待てよ!」
一瞬でマードを弾かれ飛頼は吹き飛ばされる。
「あぁー!何なんだよお前ら!ただの暴力集団だろ!世界の繁栄?ざけんな!こんなんだからヴァイスが心を削るんだよ!だからヴァイスに狙われるんだろ!お前も!あのイカレジジイも!」
「言葉で解決できれば良かったな」
「は?」
「泣きわめいて敵が分かってくれるならアティスもヴァイスも無かっただろう 努力もせず自己満足で明日は生きていけると錯覚するのは弱さではない 怠慢だ」
「うぅらあー!」
飛頼はダルクに斬りかかる。
「分かってんだよ!努力できないって!」
ダルクは淡々とマードを受け流す。
「俺は自分を戒める力がない!」
ダルクは何も言わない。
「だからあのイカレ野郎についていこうって最初は思った!」
飛頼は何度も何度も斬りつける。
「裏切られても帰る手段もない!知り合いもいない!」
疲弊してくる腕、それでもマードを振り続ける。
「アンタが一緒に闘ってくれるかと思ったらまた裏切られる!」
力が入らないマードを振り続ける。
「ハァ…ハァ…振り抜く…度に…強くなる…」
飛頼は優志に学んだことを活かそうとする。
「振り抜く…度に…」
「自分に言い聞かせて強くなるのか?」
「は?ちげーよあのゴミ野郎が俺に教えたエルグだよ」
「そんなエルグはない」
「え…」
「それは気休めだ 集中力のないお前に集中させるためだろう」
その言葉を聞いて飛頼は膝をつく。
「何を信じればいんだ?…どこからが本当でどこからが嘘なんだ…」
ダルクは飛頼を見下ろす。飛頼の前にプラスチックカードが落ちてくる。
「こ…これは?」
顔を上げる飛頼だったがダルクは既にいなかった。
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