俺の嫁が可愛すぎるので、とりあえず隣国を滅ぼすことにした。

第一話

プロポーズ

　朝日が屋敷の窓辺を柔らかく染め、静かに一日が始まろうとしている。

　昨夜の激闘や不穏な影を一切感じさせないように、処理はオン婆に全てを任せた。

　ノーラには、何一つ思い出して欲しくない。

　だからこそ、普段通りの日常に戻ることが大事だ。

　台所では、俺が丹精込めて用意した朝食の香りが、静かに家中に広がっている。

　ゆっくりと、台所を出てリビングにに向う。

　目を覚ましたノーラが驚いた顔をして座っている。

　彼女が起きてきて、何もしなくていいと言って座らせて、紅茶を飲んでもらっていた。

　彼女の柔らかな瞳は、朝の光に映えるな。

「おはよう、ノーラ」
「おはようございます。エルド様」

　俺は、静かに彼女の隣に腰を下ろす。

　穏やかな空気の中で、心臓が不意に高鳴るのを感じる。ノーラはただ優しい微笑みを返してくれた。その瞬間、俺の胸の中で決意が固まった。

「エルド様が作ってくださったのですか？」
「俺だって料理ぐらいするさ。これまでは一人で生活していたんだから。国主って言ってもこんな田舎じゃ、独り身のむさいオッサンだぞ」
「むさい？」

　ノーラが首を傾げて、言葉を理解して笑顔になってくれた。
　
　昨日に続いて、笑ってくれたことが嬉しい。

「ノーラ、君は自分のことを話してくれた。だから、俺の話も聞いてくれるか？」
「もちろんです！」

　誰にも、自分の心の内を話したことがないのも俺も同じだ。

　これまで、戦いと激動の中で数え切れぬ苦しみや混乱があった。しかし、今この場所で、ノーラと共に穏やかな朝を迎えられることが、何よりも尊く感じられる。

　それを守るために。

「……ノーラ、お前がこの数日で俺のことを嫌いだと思わなければ、本当に俺の妻になってほしい」

　俺に出来るのは、ノーラと真摯に向き合うことだ。

　ノーラは一瞬驚いたように目を見開いたが、やがてその瞳に、静かな思いが映るのを感じた。

「俺は……ノーラが来てから、本当に幸せだった。これからも、一緒にこの道を歩んでいきたい。どんな困難があっても、必ずノーラを守るから……」

　部屋の中は、朝日の柔らかな光と、心の中の温かな決意で満たされ、時間がゆっくりと流れていくようだった。

　ノーラは、しばらく黙って俺の言葉に耳を傾けた後、静かに頷いた。

「……はい、エルド様」

　ノーラからの返事に胸が熱くなる。

　俺は、彼女の手をそっと握り返し、固く誓った。

「これからも、隣にいてほしい。俺はノーラの夫として、何があっても守り抜く」
「私も、エルド様をお守りします」
「ノーラが守るのか？」
「はい。私は弱いままではありません。これからはエルド様を支えられる妻になれるように頑張りたいと思います」

　思った答えとは違うが、ノーラの言葉に嬉しくて、俺も笑ってしまう。

「それは頼もしいな！　その時はよろしく頼む」
「はい！」

　朝の静かな時間に、俺は改めてノーラにプロポーズをした。

　確かな一歩として刻まれていくのを感じながら、心からの誓いを交わした。

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　あとがき

　どうも作者のイコです。

　第一話目終わりです。

　応援をお待ちしております。

　どうぞよろしくお願いします。