俺の嫁が可愛すぎるので、とりあえず隣国を滅ぼすことにした。

イコ

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第四話

甘い旦那様

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《side ノーラ・フィアステラ》

 朝からずっと、エルド様が優しい。

 ……いえ、いつも優しいのだけれど、今日は何かが違う。

 朝目覚めたときには、まだ寝ぼけ眼の私をそっと腕に抱いていて。

 そのまま、ふわりとおでこに口づけを落として、恥ずかしい。

「ん……おはよう、ノーラ」

 と、耳元で囁くものだから、私は心臓が跳ねてしまった。

 寝間着のまま顔を真っ赤にして、思わずシーツをかぶった私に、エルド様は驚いた顔した後に笑っていた。

 年齢が上だから、エルド様は、少し私のことを子供扱いしていると思う。

 とても大切にしてくれているのはわかるのだけど……。

「ごめんごめん」

 そう言って頭を撫でてくれた。

 ……な、なんなんでしょう今日のエルド様は! 少し距離が近いと思います。

 確かに、初めて一緒のベッドで眠りました。

 だけど、約束した通りエルド様は、私の体に触れたりはしなかった。

 エルド様の体は温かくて、安心していつの間にか寝てしまった。

 朝食の間も、ずっと私の皿に好きなパンを取ってくれたり、熱くないかとスープを手ずからふーふーしてくれたり。側から見れば、国主が新婚妻に夢中なだけなのだけれど、私はもう落ち着いて食事どころではない。

 そして、午後。

 屋敷の庭にあるベンチで、刺繍をしていた私のもとへ、ふいに現れたエルド様が、いきなり私の膝枕に頭を乗せてきた。

「えっ……!? エルド様、あのっ……!」
「すまない。少しだけ昨日眠れなかったんだ」

 そう言ってエルド様はすぐに寝息を立てていた。

 昨日眠れなかったのかな? 私が一緒に寝ていたから?

 それからしばらく、刺繍どころではなくなってしまった私は、エルド様の髪をそっと撫でていた。

 エルド様は穏やかな顔をして寝ている。

(……反則です)

 あたたかくて、穏やかで、こんなにも甘やかされて、私のほうがどうにかなりそうです。

 だけど、こんな時間がずっと続けばいいのにと、そう思ってしまう。

 ふと、エルド様が目を開けて、私を見上げた。

「ノーラ、聞いてくれ」
「……はい?」
「君の側にいると安心するよ。ノーラにふさわしい夫になれるように頑張るよ」

 目を見て、真っ直ぐに、そう言われた。

 どんな戦よりも、どんな魔物よりも、この人の想いに触れるときが、いちばん心を撃ち抜かれる。

 私は、唇を噛みながら、そっと微笑んだ。

「……私も、です。エルド様に相応しい妻になれるように頑張ります」
「君は十分だよ。大好きだよ」
「ハゥ!」

 そして、また彼は、膝の上でうっとりした顔をして、ぽつりと呟いた。

「このまま、誰にも邪魔されずに、ノーラを独り占めできたらいいのにな……」
「っ……そ、それは、ずるいです」

 そんな言葉を甘くささやかれて――私は、もう立ち上がる気力も残っていなかった。

 エルド様が、甘い言葉を囁くのはズルイです!
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