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第四話
エルフとの交渉 2
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「どんな真意を問う? どんな真意であろうと聞こう」
「ならば問う。貴殿は何者だ?」
俺の前に立つエルフは長衣に身を包み、銀色の髪を背に垂らす女性が、なおも警戒を解かぬままこちらに視線を向けていた。
その手には、一分の揺らぎもなく構えられた刃が手にある。
それが俺を試すかのように、静かに脈打っていた。
「我が名はルティア・シルヴァ=アストレア。この地を治める者。そして、連合の一端を担うエルフの長だ」
その声には、凛とした威厳が宿っていた。
「貴殿は何者だ」
再び問われる。その刃が、言葉以上に真剣だった。
「ヨンク国主、エルド・カレヴィ。連合の一員であり、今回の訪問は、毒に侵された民を救うための解毒薬を求めてのものだ」
簡潔に。だが、真摯に。
それでもルティアは眉一つ動かさず、冷たい声で言葉を返してきた。
「……それだけで説明がつくものか!」
彼女の目は、俺の内側を見ていた。外見でも名前でもない。
そこにある何か。
「貴様の魔力や気配は異常だ! 存在そのものが放つ違和を、説明せよ。さもなくば我々は協力しない」
俺はため息を一つ吐いて、視線をまっすぐに返した。
「……ならば、話そう。だが、皆の前で話す内容ではない。できれば、二人で話をさせてくれ」
しばしの沈黙。やがてルティアが片手を下ろし、周囲の警戒を解除するように手を振った。
「ティオ。少しだけ席を外してくれ」
「え、エルドさん……!? いや、でも……」
「平気だ。もし俺が危険なら、ここまでは来られなかった」
ティオが不服そうに唇を尖らせながらも一歩下がる。周囲のエルフたちも、合図を受けて静かに引いていった。
残されたのは、俺とルティアの二人。
深く静まり返る森の中心。空気はひどく澄んでいるのに、緊張が張り詰めていた。
「言葉ではなく、肌で感じる。あなたはただの人間ではない。魔王の残滓にも、神の系譜にも似ている……だが、それでも説明がつかない“異質”がある」
ルティアの目は、淡く光っていた。真理を見抜くような眼差しだった。
俺は静かに言った。
「……確かに、俺はただの人間じゃないかもしれない。けど、ヨンクの民にとっては国主であり、家族を守るために剣を振るうだけの男だ」
ルティアは、ふっと目を細めた。
「ならば、聞かせてもらおう。その力を持って、あなたはこの先、何を望む?」
その問いは、まるで選定のようだった。
だが、答えは決まっている。
「俺は、守りたいものを守る。そのためだけに、この力を使う。エルフが望むなら、俺は同じ連合の仲間として、あんたらを守ることを誓う」
ノーラを。仲間を。ヨンクの民を。
それ以外に、力を振るう理由はない。
その言葉に、ルティアはようやく魔力を解き、微かに微笑んだ。
「……良い眼をしている。ならば、薬の交渉に応じましょう。ですが、あなたにそれ以上の役割が迫られるとき。再び我らは問うことになるでしょう」
「ああ。問われるなら、その時また、答えよう。だが、俺の中で流れる力に気づいているのではないか?」
剣を抜くでもなく、魔法を交えるでもなく。
ただ静かに、二人の間に信頼の種が蒔かれていた。
「力とは振るう者に委ねられる。貴殿は、純粋であり、長いに欲望はない。もしも、人としての欲望と、魔族としての本能で、私の言葉に答えたならば、その時はエルフの全てを持ってあなたを討伐していた」
俺は魔人。
その意味を、ノーラには話している。
それが世界を守る俺の役目だから。
「ならば問う。貴殿は何者だ?」
俺の前に立つエルフは長衣に身を包み、銀色の髪を背に垂らす女性が、なおも警戒を解かぬままこちらに視線を向けていた。
その手には、一分の揺らぎもなく構えられた刃が手にある。
それが俺を試すかのように、静かに脈打っていた。
「我が名はルティア・シルヴァ=アストレア。この地を治める者。そして、連合の一端を担うエルフの長だ」
その声には、凛とした威厳が宿っていた。
「貴殿は何者だ」
再び問われる。その刃が、言葉以上に真剣だった。
「ヨンク国主、エルド・カレヴィ。連合の一員であり、今回の訪問は、毒に侵された民を救うための解毒薬を求めてのものだ」
簡潔に。だが、真摯に。
それでもルティアは眉一つ動かさず、冷たい声で言葉を返してきた。
「……それだけで説明がつくものか!」
彼女の目は、俺の内側を見ていた。外見でも名前でもない。
そこにある何か。
「貴様の魔力や気配は異常だ! 存在そのものが放つ違和を、説明せよ。さもなくば我々は協力しない」
俺はため息を一つ吐いて、視線をまっすぐに返した。
「……ならば、話そう。だが、皆の前で話す内容ではない。できれば、二人で話をさせてくれ」
しばしの沈黙。やがてルティアが片手を下ろし、周囲の警戒を解除するように手を振った。
「ティオ。少しだけ席を外してくれ」
「え、エルドさん……!? いや、でも……」
「平気だ。もし俺が危険なら、ここまでは来られなかった」
ティオが不服そうに唇を尖らせながらも一歩下がる。周囲のエルフたちも、合図を受けて静かに引いていった。
残されたのは、俺とルティアの二人。
深く静まり返る森の中心。空気はひどく澄んでいるのに、緊張が張り詰めていた。
「言葉ではなく、肌で感じる。あなたはただの人間ではない。魔王の残滓にも、神の系譜にも似ている……だが、それでも説明がつかない“異質”がある」
ルティアの目は、淡く光っていた。真理を見抜くような眼差しだった。
俺は静かに言った。
「……確かに、俺はただの人間じゃないかもしれない。けど、ヨンクの民にとっては国主であり、家族を守るために剣を振るうだけの男だ」
ルティアは、ふっと目を細めた。
「ならば、聞かせてもらおう。その力を持って、あなたはこの先、何を望む?」
その問いは、まるで選定のようだった。
だが、答えは決まっている。
「俺は、守りたいものを守る。そのためだけに、この力を使う。エルフが望むなら、俺は同じ連合の仲間として、あんたらを守ることを誓う」
ノーラを。仲間を。ヨンクの民を。
それ以外に、力を振るう理由はない。
その言葉に、ルティアはようやく魔力を解き、微かに微笑んだ。
「……良い眼をしている。ならば、薬の交渉に応じましょう。ですが、あなたにそれ以上の役割が迫られるとき。再び我らは問うことになるでしょう」
「ああ。問われるなら、その時また、答えよう。だが、俺の中で流れる力に気づいているのではないか?」
剣を抜くでもなく、魔法を交えるでもなく。
ただ静かに、二人の間に信頼の種が蒔かれていた。
「力とは振るう者に委ねられる。貴殿は、純粋であり、長いに欲望はない。もしも、人としての欲望と、魔族としての本能で、私の言葉に答えたならば、その時はエルフの全てを持ってあなたを討伐していた」
俺は魔人。
その意味を、ノーラには話している。
それが世界を守る俺の役目だから。
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