巻き込まれ召喚になった私はまったりのんびりスローライフを目指します!

紅子

文字の大きさ
1 / 28

巻き込まれぇ~

しおりを挟む
私は、天咲羽あまさわ 神麻みあさ。1年と少し前に両親が事故で亡くなって、天涯孤独になった。親戚もいない。もっとも、当時既に24歳だったから、生活に支障はなかった。今も変わらず、両親から引き継いだ畑の野菜を毎日見て回り、時間を見つけては趣味のコスプレの衣装作りで稼いでいる。今は、ネットという有難い文明の利器のお蔭で、コスプレの衣装も完全オーガニックの野菜も順調に売れて、手間は掛かるけど充実した日々だ。たまに、こういう迷惑な客も来るけど。

「だからぁ、ここの野菜を契約してあげるって言ってるの」

「ですから、結構です。そんなに数が出来るわけではないですから、専属契約は出来ません」

「もう!分からない人ね!出来た分だけでいいって言ってるのにぃ。余らせて腐らせるくらいならぁ売ればいいのよ」

「足りないことはあっても、余ることはないんです。そんなに簡単じゃありません」

どこのお嬢様のお遊びか知らないけど、オーガニック野菜のことを知らなすぎて話にならない。大きなレストランと契約できるほど作れないから、断ってるのに!

「これ以上話すことはありません。お帰りください」

「お茶の一杯も出さないなんて、常識ないんじゃないのぉ?」

突然やって来て、いきなり契約の話をしてきたのはそっち。いい加減ウンザリしてイライラし始めた私は、家に入ろうと踵を返した。

「待ちなさいよぉ!!!」

あまりの金切り声に振り向いた私の目に映ったのは、地面に何の前触れもなく、突然浮かび上がった何かの模様。私の居たところ、彼女から一歩分のところを中心に円形に広がっている。見間違いかと目をこすって見るも、さっきよりもはっきりと見えてしまった。

「え?」

「何よ。突然黙り込まないでよねぇ」

「いや、でも・・・・、それ」

私の指さした先を見た彼女も目を見開いた。どうやら、私の目がおかしくなったわけじゃないらしい。

「何これ?!あんた、何したのよ?!」

私?!

「知るわけないでしょ?!突然」

そこまで言ったところで、彼女の周りに風が巻き起こり、それは徐々に勢いを増していく。竜巻の様相を呈してきた。

「やだ。や。何これ。たす、助けて!助けてよぉ!」

こんなのどうすればいいの?!あたふたしつつも、私はその竜巻に、近くにあった箒を恐る恐る差し入れた。

「へ?!」

グワン!という効果音が聞こえそうなくらいの勢いで、私もその渦に巻き込まれ、咄嗟にめがねを抑えた。条件反射のようなものだ。すぐに箒を手放したにも関わらず、竜巻に飲み込まれた。はあ?!



コロコロコロコロ
ゴン

痛った・・・・。何が起きたの?

自宅の玄関を出たところに居たはずなのに・・・・。竜巻から放り出されてぶつかったのは石の壁。床に触れる手の感触は何処までも冷たい。家は、土間と畳の部屋しかないし、木造だ。間違っても大理石のような床と壁ではない。目の前には、重厚という言葉が相応しい緋色のベルベットのカーテンが、私と外界を隔離していた。何処まで運ばれちゃった、私?




「成功だ!」

「召喚、出来たぞ!」

「おおおお~♪!!!!」

カーテンの向こうから年配と思われる男の人の声が聞こえた。不穏な単語があった気がする。

「聖女様。召喚に応じていただきありがとうございます♪」

へぇぇぇぇ!!!!聖女ぉ!召喚だぁあ?!

まるでゲームのような単語が飛び交っている。私以外の誰か、いや、あのお嬢様しかいないか、が、このカーテンの向こうにはいるらしい。ここから出て行くべきか?

「あ、あのぉ?何がどうなって?」

彼女の混乱に満ちた声が届いた。ペタンペタンと靴音が響く。

「混乱するのも無理はありません。私たちは精霊王様たちの神託によって、あなたをこの世界に召喚いたしました」

「え?!何の、ために・・・・?」

同意する。何のために?嫌な予感がするのは彼女も同じらしく、声が固い。

「どうかこの世界を共にお救いください」

ざっと大勢の人が動いた音がした。

「還して!元の世界に戻しなさいよぉ!」

うん。私もそう言いたい。

「残念ながら、精霊王様たちのご意志です」

「どういうことよぉ!!!」

ダン!と足を踏み鳴らす音が部屋に木霊した。その時、カタンという音と風が部屋に流れ込んできた。ペタペタと靴音がする。

「聖女様」

今までのおっさんの声とは明らかに違う若々しい静かな声が響いた。

「ようこそお越しくださいました。図々しいことは承知しておりますが、どうかこの世界のためにそのお力を貸してくださいませんか?」

「あっ。あの、そのぉ」

さっきまでの彼女の勢いは消え失せている。ああ。しどろもどろになるほどいい男なのか。声の端々にハートが飛んでるねぇ。

「私たちの都合でこちらに召喚してしまったのです。あなたの今後は私が責任を持ちましょう」

「殿下!」

「いいんだよ。突然この世界に連れ去られて、帰れないんだ。不安になるのは当然だよ」

殿下・・・。ここは身分制度のある社会か?

「あの、でも。私に力なんてありません」

「大丈夫」

カチャッと金属がこすれる音が微かに聞こえて・・・・。

「な、何を!!!」

「この傷を治して?」

「そ、そんなこと・・・!どうやって?!」

「大丈夫。出来るよ。私を信じて?ヒールと唱えてごらん」

うーん。何が起こってるのか、さっぱり分からない。

「ひ、ヒール」

「お、おおおおおお」

何が起こってるの?!!!!!ここから出て行った方がいいんじゃない?私がどうしようか悩んでいると、ふわふわと金色の光の玉が幾つか眼鏡の隙間から私の目の中に飛び込んできた。

「本物だ!」「素晴らしい!」「ひゃっ」

私の声は野太い歓声に掻き消され、何故か私はそのまま意識を失った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

平民に転落した元令嬢、拾ってくれた騎士がまさかの王族でした

タマ マコト
ファンタジー
没落した公爵令嬢アメリアは、婚約者の裏切りによって家も名も失い、雨の夜に倒れたところを一人の騎士カイルに救われる。 身分を隠し「ミリア」と名乗る彼女は、静かな村で小さな幸せを見つけ、少しずつ心を取り戻していく。 だが、優しくも謎めいたカイルには、王族にしか持ちえない気品と秘密があり―― それが、二人の運命を大きく動かす始まりとなるのであった。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

猛獣のお世話係

しろねこ。
恋愛
「猛獣のお世話係、ですか?」 父は頷き、王家からの手紙を寄越す。 国王が大事にしている猛獣の世話をしてくれる令嬢を探している。 条件は結婚適齢期の女性で未婚のもの。 猛獣のお世話係になった者にはとある領地をあげるので、そこで住み込みで働いてもらいたい。 猛獣が満足したら充分な謝礼を渡す……など 「なぜ、私が?私は家督を継ぐものではなかったのですか?万が一選ばれたらしばらく戻ってこれませんが」 「その必要がなくなったからよ、お義姉さま。私とユミル様の婚約が決まったのよ」 婚約者候補も家督も義妹に取られ、猛獣のお世話係になるべくメイドと二人、王宮へ向かったが…ふさふさの猛獣は超好み! いつまでもモフっていたい。 動物好き令嬢のまったりお世話ライフ。 もふもふはいいなぁ。 イヤな家族も仕事もない、幸せブラッシング生活が始まった。 完全自己満、ハピエン、ご都合主義です! 甘々です。 同名キャラで色んな作品を書いています。 一部キャラの台詞回しを誤字ではなく個性として受け止めて貰えればありがたいです。 他サイトさんでも投稿してます。

追放即死と思ったら転生して最強薬師、元家族に天罰を

タマ マコト
ファンタジー
名門薬師一族に生まれたエリシアは、才能なしと蔑まれ、家名を守るために追放される。 だがそれは建前で、彼女の異質な才能を恐れた家族による処刑だった。 雨の夜、毒を盛られ十七歳で命を落とした彼女は、同じ世界の片隅で赤子として転生する。 血の繋がらない治療師たちに拾われ、前世の記憶と復讐心を胸に抱いたまま、 “最強薬師”としての二度目の人生が静かに始まる。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜
恋愛
「お前との婚約を破棄する!」 あらまぁ...別に良いんですよ だって、貴方と婚約なんてしたくなかったですし。

処理中です...