巻き込まれて死亡?!神様、責任とってくださいね?

紅子

文字の大きさ
3 / 23

新しい人生の始まり

しおりを挟む
今日も朝からいい天気。私は伸びをしてベッドから降りた。

「おはよ、ヴィーグ」

『おはよう。よく眠れたようだな。今日は、魔法ギルドか?家で仕事か?』

「ギルドだね。お昼からは魔インクの材料を集めに森に行きたい」

『分かった』

私とヴィーグはこの身体の持ち主が暮らしていた国から3つほど先にある亜人の国クレイガー王国にいる。王都ではなく、シーアーバンスという比較的治安のいい海辺の領都だ。近くには大きな森もあり浅いところなら私でも採取に出掛けられる。海に行けば、貝や昆布、わかめが簡単に手に入るし、いいところだ。ここに来て半年。神様が生前の私の実績を反映させてくれたおかげで、なかなか希有な魔法陣描きとして、お金に困ることなく生活している。ヴィーグは、私の従魔として登録されていた。家と身分証があるのは大きい。

「ナーサリー、おはよ~う。納品に来たよ」

「おはよう、サイカ。助かったわ。実は、さっき急ぎだって、治癒と解毒の魔法陣をあるだけ持って行かれたのよ、騎士団に。灯りの魔法陣も出せるだけ引き取っていかれちゃって、困ってたの」

私は、定期的に納めている魔法陣と個別に受注した魔法陣を受付に出した。

「治癒と解毒の魔法陣をあるだけなんて、穏やかじゃないね」

「腐敗の森でラフランシアが大量発生したらしくて、その殲滅にてこずってるらしいわ」

腐敗の森は、私が素材を集めに行く森の最奥の名称で、街に近い方から、実りの森、駆け出しの森、見極めの森、強者の森、腐敗の森と呼ばれる。ラフランシアとは、生き物を糧とする魔植物で、毒があり、滅多に繁殖しないが、繁殖し出すとひと晩で百体ほど増えるため、大事になることが多い。

「腐敗の森で?!そりゃあ、買い占められるわ。じゃあ、これなんて売れる?」

私は、無限鞄から大量の屑魔石を取り出した。防毒の魔法陣と灯りの魔法陣を刻んである。この無限鞄は、この世界なら誰でも持っている容量の一番小さなもの。大切なものは、ヴィーグが持つ無限収納に入れてあって、ヴィーグは私の眷族だから、私もアクセス権限をもっている。

「こんなに?!」

「防毒の魔法陣は、4月前に個別依頼で作った余り。灯りの魔法陣は、手土産代わりになるからちょこちょこ作ってるやつ」

灯りの魔法陣や湧き水の魔法陣は、お礼に渡すと喜ばれるから、常備している。魔石自体の質はそんなによくはないから、持って1月ほど。防毒は、大量にほしいと言われて作ったが、多すぎて買い取ってもらえなかったのだ。こっちは、1回使い捨て。

「そういえば、そんな依頼、受けてたわね。これだけあれば大分戦況が変わるわ。灯りの魔法陣は、さすがに買い占められると市民生活に支障を来すから、最低限しか売れなかったし」

ラフランシアは、明るいところでは動きが鈍くなるし、弱い個体は眠ってしまう。が、腐敗の森は常に薄暗くほとんど陽が差さない。

「じゃあ、買い取ってもらえる?特に防毒の魔法陣なんて使いどころがなくて困ってたんだ」

「量を考えなさいよ!この常識なしめ!」

「それは、亡き養い親に言って。これが普通だとずっと信じてきたんだから」

私は、この世界では、超有名な魔法陣描きでAランクの魔法剣士の唯一の養い子という肩書になっている。私がこの街に来る2月前に他界しているという設定付きだ。神様がちょこっと記憶の操作をして創り出した実在しない人物。強いて言うなら、前の世界の職場の先輩たちがその師匠になるのかも?

「まあ、今回はそれで助かる訳だから、罵倒もしにくいわね。すぐに騎士団に持って行くわ」

よかった。不良債権が裁けた。

「今日は実りの森には行かない方がいいかなぁ」

私は、ヴィーグと依頼が張り出してある掲示板を見ながら呟いた。私の買い取りを処理しているナーサリーにもその声が届いたらしい。処理をしながら教えてくれた。

「そうねぇ~。南から東は騎士団と魔法剣士やそのパーティーでごった返してるから近づかない方が無難ねぇ。でも、暫くはこの状態が続くから、急ぎなら西側で済ますのをお薦めするわ」

「そうする。ありがとう」

「はい。これね。現金?カード?」

「端数は現金で、残りはカードに入れてほしい。今日は、これを受けるわ」

私は、張り出してある依頼から、期限が7日後の無限鞄に使う魔法陣100枚と期限が10日後の氷を作る魔法陣10個の依頼を受けることにした。

「ああ、それ、期限と数がキツくて誰も受けてくれないやつだから、助かるわ。やだぁ。この魔石、刻印していないじゃない!誰よ!ちょっと待ってて。もう!・・・・・・・・お待たせ。はい」

神様から魔法陣創造の能力とそれに付随した専用スキルをもらったから、期限は私にはあまり関係がない。その依頼の受付を済ませた私は、お昼を済ませると、ヴィーグと一緒に実りの森の西側に向かった。街から出る際に西門を通ったが、結構人が出入りしている。が、衛兵に「腐敗の森の南東にラフランシアが出たから気をつけるように」と声をかけられる程度には、いつもと違う森のようだ。ヴィーグがいれば、大丈夫だよね?

「どう、ヴィーグ?」

『駆け出しの森までいつもなら見極めの森にいる奴らが下がってきてるな。実りの森にいる魔物の数もいつもの5倍くらいだ』

「なら、街道沿いで見つけることにする」

私は、交渉の末、神様から戴いた鑑定を使って必要なキノコや木の実や皮を採取した。

『むっ。誰か来る』

森に目を向けても誰もいないが、私はヴィーグの近くに寄った。ヴィーグが居るというなら居るのだ。

「襲われてるとか?」

『いや、こちらに歩いて来る』

「なら、もう充分採取できたし、戻ろう」

『そうだな』

私たちは、その誰かを待つことなくその場を離れた。面倒ごとに巻き込まれたくはない。ただでさえ、蒼狼に擬態しているヴィーグを譲れと脅してくる馬鹿が後を絶たないのだから。ヴィーグに促されるままの私は気付かなかった。街に帰る私たちの後ろ姿をじっと見る人影があったことに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されました。親友は第一王子に惚れられて、ぽっちゃりな私は聖女として精霊王とイケメン達に愛される!?〜聖女の座は親友に譲ります〜

あいみ
恋愛
ーーーグランロッド国に召喚されてしまった|心音《ことね》と|友愛《ゆあ》。 イケメン王子カイザーに見初められた友愛は王宮で贅沢三昧。 一方心音は、一人寂しく部屋に閉じ込められる!? 天と地ほどの差の扱い。無下にされ笑われ蔑まれた心音はなんと精霊王シェイドの加護を受けていると判明。 だがしかし。カイザーは美しく可憐な友愛こそが本物の聖女だと言い張る。 心音は聖女の座に興味はなくシェイドの力をフル活用して、異世界で始まるのはぐうたら生活。 ぽっちゃり女子×イケメン多数 悪女×クズ男 物語が今……始まる

無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いてほしい!!

カントリー
恋愛
懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。 でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。 大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きなぽっちゃりした女子高校生。 今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。 異世界先は獣人の世界ークモード王国。住民の殆どが美男美女で、おデブは都子だけ。 ダーク 「…美味そうだな…」ジュル… 都子「あっ…ありがとうございます!」 (えっ…作った料理の事だよね…) 元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが… これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。 ★いいね・応援いただけると嬉しいです。創作の励みになります。

千年に一度の美少女になったらしい

みな
恋愛
この世界の美的感覚は狂っていた... ✳︎完結した後も番外編を作れたら作っていきたい... ✳︎視点がころころ変わります...

好感度0になるまで終われません。

チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳) 子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。 愛され続けて4度目の転生。 そろそろ……愛されるのに疲れたのですが… 登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。 5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。 いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。 そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題… 自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

"番様"認定された私の複雑な宮ライフについて。

airria
恋愛
勝手に召喚され 「お前が番候補?」と鼻で笑われ 神獣の前に一応引っ立てられたら 番認定されて 人化した神獣から溺愛されてるけど 全力で逃げ出したい私の話。 コメディ多めのゆるいストーリーです。

愛とオルゴール

夜宮
恋愛
 ジェシカは怒っていた。  父親が、同腹の弟ではなく妾の子を跡継ぎにしようとしていることを知ったからだ。  それに、ジェシカの恋人に横恋慕する伯爵令嬢が現れて……。  絡み合った過去と現在。  ジェシカは無事、弟を跡継ぎの座につけ、愛する人との未来を手にすることができるのだろうか。

処理中です...