巻き込まれて死亡?!神様、責任とってくださいね?

紅子

文字の大きさ
23 / 23

ルクセンバルグ王国、再び

しおりを挟む
と言うわけで、私とアダベルトは、ルクセンバルグ王国に旅立った。まだ、1日目だが、既にシーアーバンスに帰りたい。お尻が痛くて涙がこぼれる。乗馬初体験の私は、馬の背中にベッタリとお尻をつけて乗る。すると、馬が歩く振動でお尻が鞍とコツッコツッコツッコツッとあたるのだ。しかも、内ももが服と擦れてだんだんと痛くなってくる。それを一日中。私のお尻は死んだ。馬の歩調に合わせてリズムを取るなんてそんな高等なこと出来るわけない。おかしい。ヴィーグに乗ったときは、痛くなったことなんてなかったのに。

『当たり前だ。我がどれほど気を遣って走っておったか。それにな、空を飛ぶときに揺れることはない』

なんと!新事実発覚。もうね、ヴィーグ様々だよ。

「ヴィーグと後から追いかけるから、ルトは先に行って。もう、馬ヤダ!」

ベッドにうつ伏せで沈んだ。口以外動かせない。

「そんなっ。ダメだ!サイカが歩くなら、俺も歩く」

いや、歩かないよ?こっそりとヴィーグに乗って行きたいだけで。

「乗合馬車で行こうかと」

「余計にダメだ。どんな奴が乗り合わせるか、分からないだろう?こんなに可愛いサイカをそんなところに1人で放り込めと?」

「ヴィーグがいるから」

「むぅっ」

ヴィーグを頼る私に不満を抱いたアダベルトは、尻尾をタシッタシッと近くの椅子を叩いて私に抗議してきた。耳もパタパタと忙しなく動いている。

「だって、でも、馬はもう無理!」

「分かった。鞍に直接乗るから痛いんだ。明日は、クッションを用意した上で、魔法で浮きながら行こう」

「・・・・明日だけだからね?それでも痛くなったら、馬には乗らない」

「仕方ないな」

翌日、クッションを手に入れて、少し浮きながら馬を走らせた。私を浮かせるのはアダベルトの魔法だ。ほぼ一日中魔法をかけることになるのだが、「これくらいたいしたことはない」と言う。ヴィーグからも『総魔力の1/5だから、気にすることもない。一晩で回復する』と言われれば、心配する必要もなさそうだ。お尻の問題を解決できた私たちは、予定通り、14日かけてルクセンバルグ王国の王都にたどり着いた。

「遠かったぁ」

馬で2週間。馬車に比べれば、1週間も早く着いたが、楽なのは、改造済みの馬車だったなぁと思うと、どっと疲れが出てくる。

「離宮に滞在でよかったのか?」

「え?ダメだった?」

「いや。サイカがいいなら、いいんだ」

今回は離宮に用があるのだから、宿を取る必要はないと思う。ああ、もしかして、私がこの離宮に滞在した時のことを思い出して、嫌がるとでも思ったのかな?

「そんなに繊細じゃないから、気にしないで。気にするくらいなら、避難先に指定したりはしないでしょ」

アダベルトのほうがよほど繊細だと思う。

「そうか。なら、いい。それと、・・家族がサイカに会いたがってて・・・・」

「離宮を使わせてもらうんだから仕方ないよね。礼儀作法とか全く知らないから、それでも良ければ会うよ」

これも想定内。アダベルトのほっとした様子にくすりと笑いが漏れた。

「伝える。たぶん、お茶会に招かれると思う」

お茶会かぁ。まあ、それなら許容範囲だな。晩餐会はやめてほしい。音を立てずに粛々と食べながら会話するなんて高等な技術は持ち合わせていない。ド庶民にそんなことを求められても困る。それよりも・・・・。

「ここって、それなりに安全だけど不便だよね」

出された紅茶を飲みながらしみじみ思う。入るのも厳しいけど、出るのも厳しい。気軽に出入りできるところではない。今回は、魔法陣を施すという用事があるから仕方なかったけど、あまり来たいところじゃない。

「やっぱり、魔法陣を仕込んだら、宿に移るか?」

う~ん。そうだ!

「旅に出よう!王都を見て回った後、他の観光地を訪れつつ帰ろう。ルクセンバルグ王国の観光地ってどこ?」

ワクワクしてきた。

「そうだな。今の時期なら温泉か。まだ雪は積もっているが、東のハイレール領にある。綿花とルビーが有名だ。そこから南に下ると古代遺跡で有名なトロフィルア領と魔道具で有名なクグッツク領、ビゼアの国境を越えてクレイガー王国に入るとシルクの産地ヒースクーリフ領。そこから1週間でシーアーバンスに着く」

「温泉。いいねぇ。その後の行程もいいんじゃない?ハイレールはうどんが有名だし、南に下るとフィリッツアの蜜柑とワカサギ、それに蒸し料理があるし、少し行くとヌモールの林檎。パイもジュースも美味しいよね。ビゼアの国境を越えてからは、マイセリアの陶器とチーズ料理。ドリアとラザニアは絶品だって聞いた。そこから5日でシーアーバンスに着く」

『ほぼ同じ行程なのに、ここまで違うとはな』

呆れるヴィーグのことは、無視無視。

「よし!決まりだな」

翌日から私たちは、王都の散策を楽しんだ。さすがに国の中心なだけある。美味しいものがたくさんあった。屋台も店毎に味が違って、それぞれに贔屓の客がいると言う。私が気に入ったのは、スープのお店。ポトフが絶品だった。常時5種類から選べて、具沢山。隣の屋台のパンとも相性が良くて、感心してしまった。そしたら、なんと、屋台の主人は兄弟だった。お昼を食べて、のんびりと屋台街を歩いていく。食べ物屋から雑貨を扱うお店が増えてきた。

「食べ物だけじゃないんだ」

「ああ。ここで腕試しをして資金を貯める者も多い」

なるほど。いきなり店舗を持つのは敷居が高いけど、こういった屋台なら趣味でも出来る。ひとつひとつを興味深く見ていた私の目にある屋台のある商品が飛び込んできた。自然とその店の前で足が止まる。

「?」

アダベルトは、不思議そうにしながらも何も聞かずに止まってくれる。私は、無言でそれに魅入った。

『それがどうかしたのか?』

「懐かしくて」

「よかったら、手に取ってご覧くださいね」

「・・・・いいんですか?」

私は、それをそっと手に乗せた。自然と口角が上がる。

「これをくれ」

「えっ?自分で買うよっ」

慌ててアダベルトを止めたが、既にお金を払った後だった。

「まあまあ、お客さん。彼氏の顔を立ててあげなさいって」

「そうそう」

店主はにっこり笑顔だし、アダベルトも満足そうに笑った。

『ここは、礼を言って貰っておけ。その方がスマートだぞ』

ヴィーグまで。もう!

「ありがとう」

ちょっと顔が熱いのは気のせいだ。

「着けてやる」

アダベルトが私にプレゼントしてくれたのは、前の世界で入社祝いに自分で買った・・・・・・お気に入りのプラチナのネックレスに瓜二つのネックレス。小さなダイヤが一粒。その周りに蝶と花と葉っぱが品よくあしらわれている。アダベルトにプレゼントされたそれのダイヤには、見たことのない魔法陣が刻まれていた。

「こちらは、そのネックレスと対になる男性向けのネックレスです。よろしければ、彼氏にいかがですか?」

そう言われたら、買うしかないよね。私は、苦笑いでそれを購入して、アダベルトに贈った。アダベルトの反応は、言うまでもないよね。尻尾がブンブン回ってた。

「楽しかったか?」

「うん!ヴィーグを連れて行けるお店もたくさんあるし、掘り出し物も見つけたし。やっぱり都会は違うね」

「住みたくなったか?」

「ならないよ。たまに来るからいいんじゃない」

「そうか」

私の髪を弄りながら、穏やかに笑うアダベルトの隣で、知らず知らず微笑んだ。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されました。親友は第一王子に惚れられて、ぽっちゃりな私は聖女として精霊王とイケメン達に愛される!?〜聖女の座は親友に譲ります〜

あいみ
恋愛
ーーーグランロッド国に召喚されてしまった|心音《ことね》と|友愛《ゆあ》。 イケメン王子カイザーに見初められた友愛は王宮で贅沢三昧。 一方心音は、一人寂しく部屋に閉じ込められる!? 天と地ほどの差の扱い。無下にされ笑われ蔑まれた心音はなんと精霊王シェイドの加護を受けていると判明。 だがしかし。カイザーは美しく可憐な友愛こそが本物の聖女だと言い張る。 心音は聖女の座に興味はなくシェイドの力をフル活用して、異世界で始まるのはぐうたら生活。 ぽっちゃり女子×イケメン多数 悪女×クズ男 物語が今……始まる

無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いてほしい!!

カントリー
恋愛
懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。 でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。 大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きなぽっちゃりした女子高校生。 今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。 異世界先は獣人の世界ークモード王国。住民の殆どが美男美女で、おデブは都子だけ。 ダーク 「…美味そうだな…」ジュル… 都子「あっ…ありがとうございます!」 (えっ…作った料理の事だよね…) 元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが… これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。 ★いいね・応援いただけると嬉しいです。創作の励みになります。

千年に一度の美少女になったらしい

みな
恋愛
この世界の美的感覚は狂っていた... ✳︎完結した後も番外編を作れたら作っていきたい... ✳︎視点がころころ変わります...

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

好感度0になるまで終われません。

チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳) 子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。 愛され続けて4度目の転生。 そろそろ……愛されるのに疲れたのですが… 登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。 5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。 いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。 そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題… 自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

"番様"認定された私の複雑な宮ライフについて。

airria
恋愛
勝手に召喚され 「お前が番候補?」と鼻で笑われ 神獣の前に一応引っ立てられたら 番認定されて 人化した神獣から溺愛されてるけど 全力で逃げ出したい私の話。 コメディ多めのゆるいストーリーです。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...