巻き込まれて死亡?!神様、責任とってくださいね?

紅子

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万事、為されるがままに

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私の気苦労など全く知らないアダベルトは、鋭意お掃除中にも関わらず、夕方には王妃様の宮に来て、朝ゆっくりと自分の離宮に帰って行く。夜這い対策だと平然と言い切るあたり、漸く離宮の使用人が信用できないと気づいたようだ。王太子殿下たちの教育躾けの賜物と思われる。だいたい、あの執事を含めた使用人は、悉くハープシャープ公爵家の関係者だったし!

私は、アダベルトのお掃除の報告という名の愚痴を聞いた後、宮に籠もってアダベルトに買ってもらったネックレスに刻まれている魔法陣の解析に勤しんでいた。そんな生活が5日。

「これ、すっっっっっごく複雑で難解なんですけど。あらゆる防御の塊?こんな魔法陣、組める人いる?」

『ふん。人でなければ組めるのではないか?』

「・・・・え?ん?人でない・・・・マジか」

過保護すぎませんか?神様。

『まあ、それだけ神もサイカが人生を全うすることを望んでおられるのだ。不穏な影も見え隠れしておるしな』

「・・・・ヴィーグ、知ってたでしょ?」

じとっとヴィーグを睨んだ。

『まあな。気付くまでは黙っているように、とな。アダベルトのネックレスも同じ魔法陣が組み込まれている』

思わず、「はぁ」と溜め息がこぼれ出た。

「だいたいさぁ、この魔法陣が見える時点でおかしいことに気付くべきだったわ。こんなの、固定魔法陣なわけないじゃん。これ、私にしか見えてないんだよね?」

『まあ、そうだろうな』

私は、この複雑怪奇な魔法陣を少しずつ崩して、複数の魔法陣に分裂させていく。それだけで、貴重な魔法陣がいくつも出来上がった。そして、更にそれを掛け合わせて新しい魔法陣を組み立てていくと・・・・。

「う~ん。ヤバそうなのが何個か出来上がっちゃった」

『自重と言うことを知らんのか?!』

横で見ていたヴィーグも頭を抱える程のヤバさだ。

「・・・・知ってたら、創らなかったと思う」

だって、頭の中に魔法陣が次々と展開するんだもん。それをなかったことには、産みの苦しみを経験しただけに、出来るはずもない。

『スキルがあって良かったと心底思うぞ』

「ははは」

私もそう思う。このパソコンは、私とヴィーグ以外には閲覧権限がない。よって、何かに描かない限りは誰の目にも触れない。創作魔法陣であっても、外に出したら解読されないとは限らないのだ。

「この辺りなら、ギリギリ出せそうじゃない?」

『固定魔法陣は無理だぞ?』

「しないよ。個人的にお世話になってる人に、だよ。万が一解読されても支障ないっていうかさ」

『支障はあると思うが、これとこれなら、国王や王妃たちには役に立つだろうな。間違っても、ひとつの魔法陣に落とし込むなよ?』

「うっ・・・・!」

見抜かれてた?!1つの魔法陣にした方が、複雑にはなるが、魔石効率は良くなる。だから、ね・・・・。

ヴィーグが示したのは、拘束力のある魔法陣を弾くものと心身の異常を回復させるものだった。これらがあれば、隷属の魔法陣も毒も、なんなら暗殺すらも怖くない。狙われやすい喉を掻き切られたとしても、端から瞬時に治癒していく。血の一滴も出ないかもしれない。やっぱり、王族ともなると危険がいっぱいってことだね。

『だから、自重というものをだな・・言っても無駄か。ハァ』

「イヤーカフに最高品質の粒魔石を埋め込むか。2つ、いや、4つ・・・・うん。2つだね」

4つと言ったときのヴィーグの目が氷点下だった。怖いよぉ。

『・・・・アダベルトが寄越したやつが幾つかあっただろう。それに刻め』

「へへ。ナーサリーには、こっちかな。この危険を察知して自動展開する結界。それに拘束力のある魔法陣を弾くもの。ギルド長と副ギルド長には、追加で余剰魔力の蓄積が出来るようにしておこう」

回復には使えなくても魔法を発動する時の補助としては有用だ。

ヴィーグは呆れたと言わんばかりの視線を寄越すが、止めない、ということは、ギリギリでセーフなラインなのだろう。

『許容範囲は超えておるからな?』

「えっ・・・・!」

ヴィーグに見放された?!

『サイカよ。権力者と関わるとろくなことがないというのには同意するが、既に手遅れだ。それに、そなたの自重のなさはその上を軽々と超えておる。我の言いたいことは分かるな?』

だよねぇ。自重、してるつもりなんだけど、足らないんだよねぇ。

「国王陛下の申し出を受けろって?」

『多少の見返りは必要だが、あやつらとて我の怒りは買いたくなかろう。アダベルトの半身に無理は言わんはずだ』

その点は心配していないが、1番の不安材料がアダベルトっていうところがねぇ。なんだかなぁ。

「ルトの掃除の成果と王太子殿下たちの教育の成果次第かな。命が幾つあっても足りないなんて、寿命まで生きなきゃいけない私の敵だよ」

『それもそうだな。半身を危険に晒すような奴など、不要だな』

アダベルトが聞いたら泣いて縋ってきそうな会話をしつつ、魔法陣を魔石に刻んでいった。そして、王妃様に頼んで王家御用達の宝飾店で装飾品に加工してもらう。それらが出来上がった頃。

「やっとお掃除が終わりました。つきましては、母上の宮からお帰り願えませんでしょうか?」

アダベルトは、何故か敬語で恐る恐ると私にお伺いを立ててきた。尻尾の先がソワソワと忙しなく小刻みに動いている。耳は半垂れだ。お義姉様たちからは簡単に許してはダメ!と言い含められているけど、私の想定と異なる状況に若干どうしようかと焦っている。もっと、こう、「掃除できた」褒めて褒めてとくるかと思ってた。

「・・・・えっと?」

「使用人は全員解雇した。ハープシャープ公爵家に縁の者は、離宮を含む後宮での採用を30年間禁止。現在務めている者も解雇。ミリアンティナ嬢は、俺とサイカへの接近禁止令が出る。表だって何かしたわけじゃないから、これが精一杯だった。すまない」

「うん。それが出来うる最大のことならそれでいいよ」

私に被害がないなら異を唱える気はない。

「それから、城下の下町に小さな家を買った。そこと離宮を繋げば、煩わされることなくシーアーバンスと同じように生活できる。離宮は、サイカの転移の魔法陣を据え付ける拠点にしようと思う」

つまり、離宮にいるように見せかけて下町の家で生活するってこと?シーアーバンスには帰らないってことかな?

「私、シーアーバンスに帰るけど?」

「分かってる。シーアーバンスと離宮を繋げば、往き来が出来るんだろう?だから、サイカが許してくれるなら、兄上たちと相談して、俺はシーアーバンスから時々ここの騎士団に通って、稽古をつけようかと思ってる」

なるほど、そう来たか。これはきっと、お義姉様情報から思案した結果なんだろうなぁ。私も腹を括る時なのかもしれない。

「分かった。私も陛下からの後ろ盾の打診を受けることにする。それなら、多少は私の持つ魔法陣の情報を出しても漏れることはないでしょう?」

魔法陣の公開はしないし、極秘として扱ってはもらうが。

「ああ。誓約の魔法陣を使ってもいい。持ってるだろう?それに、父上の後ろ盾があれば、俺がこことシーアーバンスを頻繁に往き来しても誤魔化してもらえるだろう。・・・・で、帰ってきてもらえるのだろうか?」

はは。律儀に聞いてくるのか。尻尾と耳がソワソワと落ち着かないところが、何とも可愛い。

「仕方ないね。帰って、魔法陣を仕込むことにする」

私の言葉に直ぐさま反応する分かりやすい尻尾と耳に笑ってしまった。
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