15 / 20
ささやかな主張
しおりを挟む
ミカエル様に抱えられて離宮に戻ってきた。爺やもプリシラも他のみんなも抱えられて急に戻ってきた私を心配して声をかけてくれるが、それに答える余裕はまだない。みんなもそれを分かっているから、返事がなくても何も言わない。ミカエル様の私室に辿り着き、仮面とマントを取ったミカエル様の膝に乗って、未だしがみついたままだ。ミカエル様も何も言わず、何も聞かず、髪を撫で続けてくれる。
「・・・・」
「・・・・」
やっぱり、この人の腕の中は安心できる。ずっとここにいたい。
「落ち着いたな?」
「うん」
もう少しだけ、このままでいたい。ミカエル様は、私が甘えているだけと気づいても、何も言わずに甘えさせてくれる。今だってそうだ。私を急かしたり突き放したりしない。私を傷つけない。だから、余計に甘えてしまう。猫ならゴロゴロと喉をならしただろう。髪を撫でる手が気持ちいい。頬を擽る指が心地いい。
「スミレ、話せるか?」
気遣う声音が耳に優しく響く。
「うん。・・・・あの眼がダメなの。支配しようとする眼が怖いの」
思い出しただけでブルッと全身が震えた。
「無理はしなくていい」
「今言わないと言えなくなるから」
ミカエル様の胸に凭れて、あの世界での私のことを異母兄のことを含めて淡々と話した。そうしなければ、胸が詰まりそうだったから。ミカエル様は、私を腕の中に抱え込んで、時折、背中を擦ってくれたり、「ゆっくりでいい」と励ましてくれた。だから、全部伝えられた。
「キモチ悪いよね」
「何を!キモチ悪くなどない!」
「こんな身体要らない・・・・」
「スミレ!」
「あっ・・・・」
「そのような悲しいこと言うな!貴女が居なければ、私は、また独りだ」
こんな悲しい顔をさせたかった訳じゃない。
「ごめんなさい。・・私、ここに居ていいの?」
「私を独りにするのか?」
「だって、謁見の時、返事に間があったから・・・・」
「ああ。それは、本当に私でいいのかと戸惑っただけだ。今まで請われたことはなかったのでな。それに、私は、華やかな場に呼ばれることは、まずない」
「華やかな場?」
「夜会やお茶会、パーティーだな」
「ああ。興味ないから、別に構いません。だって、半分は男性ですよね?無理です。行きたくありません」
「フフ。そうだったな」
「もう!・・ミカエル様がいいんですよ。分かってます?」
「ああ。好きなだけここに居るといい」
「じゃあ、ずっと居ます」
「そうか」
「はい」
眼を閉じて、抱き寄せてくれる優しい腕に身を委ねる。もう少し、私の心が暖まるまで、もう少しだけ・・・・。
ふわふわと優しい時間を漂っていると、突然階下が騒がしくなった。身体に緊張が走り、硬くなる。
「大丈夫だ。爺が応対してくれる」
「うん」
緊張を解すようにゆったりとした口調で囁きながら、私の髪、頬、手の甲を順に撫でていく。ミカエル様の楽しそうな雰囲気が伝わってきて、私も緊張が溶けて、身体の力が抜けていった。再び、眼を閉じて身体を預けた。
コンコンコン
のんびりと寛いでいると、扉が軽く叩かれた。この叩き方は爺やだ。
「殿下、両陛下と第二王子殿下、第三王子殿下がお見えです。如何いたしましょうか?」
「すぐ行く。応接室にお通ししろ」
「姫様も呼ばれておりますが」
「分かった。スミレは支度が必要ゆえ、お待ちいただけ」
「スミレ様はどこだ!」
「お待ち下さい!ガルクローグ兄上!」
バン!という轟しい音と共に第二王子が乱入してきた。その後を追って、第三王子と国王陛下まで部屋に入ってきた。私は、反射的にミカエル様にすがりついて、恐怖を押さえる。バサリと音がしたと思ったら、視界が遮られ、力強い腕に抱き込まれてほっとした。
「私室に無断で入るなど、どういうつもりだ、ガルクローグ」
ミカエル様の手は、私の背中を擦って落ち着かせてくれる。
「くっ!そのおぞましい顔をさっさと隠せ!」
「何故だ?私室でどのようにしていようとも、指図されるいわれはない」
「ならば、連れ去ったスミレ様を出せ!貴様のような化け物にスミレ様は渡せん!」
「スミレならば、ここにいるが?」
「「「は?」」」
「スミレ、姿を出せるか?」
ブンブンと首を横に振った。ミカエル様にしがみつく手に力を込めて拒否をした。
「・・やです」
「だそうだ」
「!!!スミレ様は、ランスロットと共におるのか?スミレ様の私室ではなく?」
王様の声が聴こえた。
「ここに居ますよ。申し訳ありませんが、スミレの支度が終わるまで、応接室でお待ち下さい。人前に出られる状態ではありません」
「「「は?」」」
ミカエル様、言い方!それだと、私とミカエル様の間に何かあったと勘ぐられます!・・・・あれ?別にいいのか、な?
「侍女を呼ぶから隣の部屋で着替えさせてもらえ」
「ここに居てくれますか?」
「ここにいる」
ミカエル様に抱き上げられて、ミカエル様の寝室に降ろされた。急いでやって来たビアンカとコーネルは、私のドレスなどの衣装を持って待機している。
「ここなら、私が隣の部屋にいれば、誰も入れない。ゆっくり着替えなさい。頼んだ」
「畏まりました」
ミカエル様は、私の頭をぽんぽんとすると、隣室へと出ていった。
「さあ、姫様。着替えましょうね。ドレスはどちらになさいますか?」
サーモンピンクのレースを使った可愛いドレスとゴールドにシルバーの刺繍がされた上品なドレスを見せられた。勿論、ミカエル様の色を選んだ。この場にふさわしいと思ったからだ。ビアンカとコーネルも満足そうだ。化粧も髪型もドレスに合わせた。全てが整い隣室に行くと、仮面とマントを着けたミカエル様が待っていた。
「よく似合っている」
ドレスが、自分の色だと気づいたのだろう、声が嬉しそうだ。ちょっと恥ずかしいけど、これは、私の主張であり、意思だ。
「仮面、着けちゃったんですね」
「先程まで陛下がいたからな」
「そうですか・・・・」
「不満そうだな」
「不満です」
美人は3日で飽きるというけど、ミカエル様はどれだけ見ていても、飽きない。むしろ、足りないくらいだ。
「そんなことを言うのは、貴女くらいだな。・・これから、両陛下と第二王子、第三王子に会うことになる。大丈夫か?」
「大丈夫じゃありません。第二王子とは、会いたくありません」
「そうだろうな」
会わないという選択肢はないようだ。ミカエル様のエスコートで応接室に着くと、爺やが扉を開けてくれた。室内には、立ち上がり頭を垂れた王族がいた。
またか。
「楽にしてください」
その言葉で全員が座り、お茶が入れ直された。私は、ミカエル様と一緒のソファーに腰を下ろした。今度はマントではなく、しっかりと腕を掴んでいる。本当は、膝の上に座りたい。私の安全地帯だ。
「お待たせ致しました、陛下」
「いや、かまわん。スミレ様、先程は紹介できませんでしたので、我が国の王妃と王子の紹介をしても宜しいでしょうか?」
いえ、別に要りません、とは言えない。
「はい。座ったままでお願いします」
「わたくしは、王妃のカテリーナ・アルル・ロールウッドでございます。お見知りおきを」
あっ、この人は大丈夫な人だ。ママに似てる。笑顔が作り物じゃない。思わず、微笑み返してしまった。
「俺は、第二王子のガルクローグ・セバス・ロールウッド。必ずやスミレ様をその化け物から解放してみせます!その俯いた美しい顔を輝かんばかりの微笑みに変えてみせましょう」
ハァ、ウザい。話しの通じない人は、相手にしたくない。この人、絶対ナルシストだよ。
マントの中に隠れたい。見ないで欲しい。
ミカエル様は、私の緊張に気づいて手の甲をそっと撫でて宥めてくれた。
「・・・・私は、第三王子のレイナード・クルス・ロールウッドと申します。お見知りおきを」
良くも悪くも普通かな。でも、普通は大事。ちゃんと礼儀もわきまえている。
「スミレ様、ご気分はいかがでしょうか?」
気分?良いわけがない。王妃様の笑顔に少しだけ癒されたのに台無しだ。
「・・・・」
「あ、・・おほん・・・・」
王様は、気まずそうに視線をさ迷わせた。
「ハァ。陛下、この様なところまで、どういったご用件でしょうか」
「おお。それなんだが・・・・。スミレ様の伴侶候補にと選んだ者達が、お主では納得がいかぬと申してな。その・・・・スミレ様と共に過ごす時間が欲しいと・・・・」
「お断りします」
即座に断った。冗談じゃない。
「何故だ!皆、俺を筆頭に容姿も剣の腕も申し分ない者ばかりだ。共に過ごせば、その化け物より優れていると分かるはずだ。スミレ様は、騙されている!」
「先程から、化け物と聴こえてきますけど、よもやわたくしの息子のことではありませんよね?ガルクローグ」
王妃様、笑顔が怖いです。その笑顔は、第二王子に向けたままにしてください。それにしても、第二王子は、王妃様の子じゃないの?
「第二王子は、側妃の子だ」
ぼそりと隣から声が聴こえた。
なるほどね。通りで、第二王子だけ浮いてると思った。
王妃様に問われた第二王子は、何も答えることができず、蛇に睨まれた蛙のようだ。
「陛下。スミレ様をご覧になれば、誰を想っていらっしゃるかは一目瞭然でございましょう?思い上がった者達の戯れ事など取り合う必要はございませんわ」
「それは、分かっておる。だが、こちらから声をかけたのだ。無下にもできん」
「ならば、伴侶、として誰が相応しいか、ランスロットと勝負させましょう?それがいいですわ。ランスロット、30人程度、叩きのめせるわね?」
「準備運動にもなりませんよ」
ふたりとも不敵に微笑まないで。いや、ミカエル様は見えないけど、絶対に笑ってる。
「宜しいですわね、陛下。5日後の9時。第一騎士隊の訓練場で。わたくし達も立ち合います。ガルクローグも良いですわね?あれだけのことを言ったのですから、是非ともスミレ様を救い出して見せるとよろしいわ。ホホホ」
王妃様、その高笑い、素敵です。
「フン!」
第二王子は、足音も荒く離宮から出ていった。
「・・・・」
「・・・・」
やっぱり、この人の腕の中は安心できる。ずっとここにいたい。
「落ち着いたな?」
「うん」
もう少しだけ、このままでいたい。ミカエル様は、私が甘えているだけと気づいても、何も言わずに甘えさせてくれる。今だってそうだ。私を急かしたり突き放したりしない。私を傷つけない。だから、余計に甘えてしまう。猫ならゴロゴロと喉をならしただろう。髪を撫でる手が気持ちいい。頬を擽る指が心地いい。
「スミレ、話せるか?」
気遣う声音が耳に優しく響く。
「うん。・・・・あの眼がダメなの。支配しようとする眼が怖いの」
思い出しただけでブルッと全身が震えた。
「無理はしなくていい」
「今言わないと言えなくなるから」
ミカエル様の胸に凭れて、あの世界での私のことを異母兄のことを含めて淡々と話した。そうしなければ、胸が詰まりそうだったから。ミカエル様は、私を腕の中に抱え込んで、時折、背中を擦ってくれたり、「ゆっくりでいい」と励ましてくれた。だから、全部伝えられた。
「キモチ悪いよね」
「何を!キモチ悪くなどない!」
「こんな身体要らない・・・・」
「スミレ!」
「あっ・・・・」
「そのような悲しいこと言うな!貴女が居なければ、私は、また独りだ」
こんな悲しい顔をさせたかった訳じゃない。
「ごめんなさい。・・私、ここに居ていいの?」
「私を独りにするのか?」
「だって、謁見の時、返事に間があったから・・・・」
「ああ。それは、本当に私でいいのかと戸惑っただけだ。今まで請われたことはなかったのでな。それに、私は、華やかな場に呼ばれることは、まずない」
「華やかな場?」
「夜会やお茶会、パーティーだな」
「ああ。興味ないから、別に構いません。だって、半分は男性ですよね?無理です。行きたくありません」
「フフ。そうだったな」
「もう!・・ミカエル様がいいんですよ。分かってます?」
「ああ。好きなだけここに居るといい」
「じゃあ、ずっと居ます」
「そうか」
「はい」
眼を閉じて、抱き寄せてくれる優しい腕に身を委ねる。もう少し、私の心が暖まるまで、もう少しだけ・・・・。
ふわふわと優しい時間を漂っていると、突然階下が騒がしくなった。身体に緊張が走り、硬くなる。
「大丈夫だ。爺が応対してくれる」
「うん」
緊張を解すようにゆったりとした口調で囁きながら、私の髪、頬、手の甲を順に撫でていく。ミカエル様の楽しそうな雰囲気が伝わってきて、私も緊張が溶けて、身体の力が抜けていった。再び、眼を閉じて身体を預けた。
コンコンコン
のんびりと寛いでいると、扉が軽く叩かれた。この叩き方は爺やだ。
「殿下、両陛下と第二王子殿下、第三王子殿下がお見えです。如何いたしましょうか?」
「すぐ行く。応接室にお通ししろ」
「姫様も呼ばれておりますが」
「分かった。スミレは支度が必要ゆえ、お待ちいただけ」
「スミレ様はどこだ!」
「お待ち下さい!ガルクローグ兄上!」
バン!という轟しい音と共に第二王子が乱入してきた。その後を追って、第三王子と国王陛下まで部屋に入ってきた。私は、反射的にミカエル様にすがりついて、恐怖を押さえる。バサリと音がしたと思ったら、視界が遮られ、力強い腕に抱き込まれてほっとした。
「私室に無断で入るなど、どういうつもりだ、ガルクローグ」
ミカエル様の手は、私の背中を擦って落ち着かせてくれる。
「くっ!そのおぞましい顔をさっさと隠せ!」
「何故だ?私室でどのようにしていようとも、指図されるいわれはない」
「ならば、連れ去ったスミレ様を出せ!貴様のような化け物にスミレ様は渡せん!」
「スミレならば、ここにいるが?」
「「「は?」」」
「スミレ、姿を出せるか?」
ブンブンと首を横に振った。ミカエル様にしがみつく手に力を込めて拒否をした。
「・・やです」
「だそうだ」
「!!!スミレ様は、ランスロットと共におるのか?スミレ様の私室ではなく?」
王様の声が聴こえた。
「ここに居ますよ。申し訳ありませんが、スミレの支度が終わるまで、応接室でお待ち下さい。人前に出られる状態ではありません」
「「「は?」」」
ミカエル様、言い方!それだと、私とミカエル様の間に何かあったと勘ぐられます!・・・・あれ?別にいいのか、な?
「侍女を呼ぶから隣の部屋で着替えさせてもらえ」
「ここに居てくれますか?」
「ここにいる」
ミカエル様に抱き上げられて、ミカエル様の寝室に降ろされた。急いでやって来たビアンカとコーネルは、私のドレスなどの衣装を持って待機している。
「ここなら、私が隣の部屋にいれば、誰も入れない。ゆっくり着替えなさい。頼んだ」
「畏まりました」
ミカエル様は、私の頭をぽんぽんとすると、隣室へと出ていった。
「さあ、姫様。着替えましょうね。ドレスはどちらになさいますか?」
サーモンピンクのレースを使った可愛いドレスとゴールドにシルバーの刺繍がされた上品なドレスを見せられた。勿論、ミカエル様の色を選んだ。この場にふさわしいと思ったからだ。ビアンカとコーネルも満足そうだ。化粧も髪型もドレスに合わせた。全てが整い隣室に行くと、仮面とマントを着けたミカエル様が待っていた。
「よく似合っている」
ドレスが、自分の色だと気づいたのだろう、声が嬉しそうだ。ちょっと恥ずかしいけど、これは、私の主張であり、意思だ。
「仮面、着けちゃったんですね」
「先程まで陛下がいたからな」
「そうですか・・・・」
「不満そうだな」
「不満です」
美人は3日で飽きるというけど、ミカエル様はどれだけ見ていても、飽きない。むしろ、足りないくらいだ。
「そんなことを言うのは、貴女くらいだな。・・これから、両陛下と第二王子、第三王子に会うことになる。大丈夫か?」
「大丈夫じゃありません。第二王子とは、会いたくありません」
「そうだろうな」
会わないという選択肢はないようだ。ミカエル様のエスコートで応接室に着くと、爺やが扉を開けてくれた。室内には、立ち上がり頭を垂れた王族がいた。
またか。
「楽にしてください」
その言葉で全員が座り、お茶が入れ直された。私は、ミカエル様と一緒のソファーに腰を下ろした。今度はマントではなく、しっかりと腕を掴んでいる。本当は、膝の上に座りたい。私の安全地帯だ。
「お待たせ致しました、陛下」
「いや、かまわん。スミレ様、先程は紹介できませんでしたので、我が国の王妃と王子の紹介をしても宜しいでしょうか?」
いえ、別に要りません、とは言えない。
「はい。座ったままでお願いします」
「わたくしは、王妃のカテリーナ・アルル・ロールウッドでございます。お見知りおきを」
あっ、この人は大丈夫な人だ。ママに似てる。笑顔が作り物じゃない。思わず、微笑み返してしまった。
「俺は、第二王子のガルクローグ・セバス・ロールウッド。必ずやスミレ様をその化け物から解放してみせます!その俯いた美しい顔を輝かんばかりの微笑みに変えてみせましょう」
ハァ、ウザい。話しの通じない人は、相手にしたくない。この人、絶対ナルシストだよ。
マントの中に隠れたい。見ないで欲しい。
ミカエル様は、私の緊張に気づいて手の甲をそっと撫でて宥めてくれた。
「・・・・私は、第三王子のレイナード・クルス・ロールウッドと申します。お見知りおきを」
良くも悪くも普通かな。でも、普通は大事。ちゃんと礼儀もわきまえている。
「スミレ様、ご気分はいかがでしょうか?」
気分?良いわけがない。王妃様の笑顔に少しだけ癒されたのに台無しだ。
「・・・・」
「あ、・・おほん・・・・」
王様は、気まずそうに視線をさ迷わせた。
「ハァ。陛下、この様なところまで、どういったご用件でしょうか」
「おお。それなんだが・・・・。スミレ様の伴侶候補にと選んだ者達が、お主では納得がいかぬと申してな。その・・・・スミレ様と共に過ごす時間が欲しいと・・・・」
「お断りします」
即座に断った。冗談じゃない。
「何故だ!皆、俺を筆頭に容姿も剣の腕も申し分ない者ばかりだ。共に過ごせば、その化け物より優れていると分かるはずだ。スミレ様は、騙されている!」
「先程から、化け物と聴こえてきますけど、よもやわたくしの息子のことではありませんよね?ガルクローグ」
王妃様、笑顔が怖いです。その笑顔は、第二王子に向けたままにしてください。それにしても、第二王子は、王妃様の子じゃないの?
「第二王子は、側妃の子だ」
ぼそりと隣から声が聴こえた。
なるほどね。通りで、第二王子だけ浮いてると思った。
王妃様に問われた第二王子は、何も答えることができず、蛇に睨まれた蛙のようだ。
「陛下。スミレ様をご覧になれば、誰を想っていらっしゃるかは一目瞭然でございましょう?思い上がった者達の戯れ事など取り合う必要はございませんわ」
「それは、分かっておる。だが、こちらから声をかけたのだ。無下にもできん」
「ならば、伴侶、として誰が相応しいか、ランスロットと勝負させましょう?それがいいですわ。ランスロット、30人程度、叩きのめせるわね?」
「準備運動にもなりませんよ」
ふたりとも不敵に微笑まないで。いや、ミカエル様は見えないけど、絶対に笑ってる。
「宜しいですわね、陛下。5日後の9時。第一騎士隊の訓練場で。わたくし達も立ち合います。ガルクローグも良いですわね?あれだけのことを言ったのですから、是非ともスミレ様を救い出して見せるとよろしいわ。ホホホ」
王妃様、その高笑い、素敵です。
「フン!」
第二王子は、足音も荒く離宮から出ていった。
98
あなたにおすすめの小説
【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する
雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。
ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。
「シェイド様、大好き!!」
「〜〜〜〜っっっ!!???」
逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。
前世は有名コーヒーチェーン店で働いてたので、異世界で再現してみようという話
くじら
恋愛
王立学園の薬学科には、いつも白衣を着て調合室でコーヒーを淹れている女学生がいる。
彼女の淹れるコーヒー(という回復薬)を求めて、今日も学生がやってくる。
美醜逆転の世界に間違って召喚されてしまいました!
エトカ
恋愛
続きを書くことを断念した供養ネタ作品です。
間違えて召喚されてしまった倉見舞は、美醜逆転の世界で最強の醜男(イケメン)を救うことができるのか……。よろしくお願いします。
【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?
きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。
『ゴツすぎる』と婚約破棄されて追放されたけど、夢だった北の大地で楽しくやってます!〜故郷は剣聖の私なしにどうやって災厄魔物から国を守るんだろ
古森きり
恋愛
『アトラ=ルミナアース』を襲った災厄魔王を、勇者リードが封印して三百年。
『勇者』を支えた五人の英雄――『賢者』『剣聖』『聖女』『槍聖』『弓聖』の“力”と“魂”を受け継ぐ者たちが世界平和を守り続けていた。
いずれ封印が弱まり、魔王のかけらたる厄災魔物が現れても彼らが守ってくれるだろう。
皆がそう信じてやまない中、現在の『剣聖』であるアリアリットは婚約者であるベルレンス国王に「ゴツくて女らしくない!」と婚約破棄を突きつけられる。
それなら夢であった北の地へ、修行も兼ねて行ってみよう!
長き間、女を捨てて役割に縛られていたけれどもう自由に生きていいのだ。
アリアリットの新しい人生が今始まる。
ノベプラに書き溜め中。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、ベリカフェ、Noraノベルに掲載予定
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜
波間柏
恋愛
仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。
短編ではありませんが短めです。
別視点あり
召しませ、私の旦那さまっ!〜美醜逆転の世界でイケメン男性を召喚します〜
紗幸
恋愛
「醜い怪物」こそ、私の理想の旦那さま!
聖女ミリアは、魔王を倒す力を持つ「勇者」を召喚する大役を担う。だけど、ミリアの願いはただ一つ。日本基準の超絶イケメンを召喚し、魔王討伐の旅を通して結婚することだった。召喚されたゼインは、この国の美醜の基準では「醜悪な怪物」扱い。しかしミリアの目には、彼は完璧な最強イケメンに映っていた。ミリアは魔王討伐の旅を「イケメン旦那さまゲットのためのアピールタイム」と称し、ゼインの心を掴もうと画策する。しかし、ゼインは冷酷な仮面を崩さないまま、旅が終わる。
イケメン勇者と美少女聖女が織りなす、勘違いと愛が暴走する異世界ラブコメディ。果たして、二人の「愛の旅」は、最高の結末を迎えるのか?
※短編用に書いたのですが、少し長くなったので連載にしています
※この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる