数多の想いを乗せて、運命の輪は廻る

紅子

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召喚聖女とジュエルの貴公子①

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もうひとり、この世界に召喚された少女がいた。


そう、咲李亜の隣で信号待ちをしていた高校生だ。彼女は今、大きな魔方陣の真ん中に茫然と座っていた。

「何これ?」


「「「「おー!!!!」」」」

「成功いたしましたな」

「殿下、おめでとうございます」

「これで、第二王子よりも優位なお立場になられましたね」


周りを取り囲むようにいるごてごてとした煌びやかな時代がかった服を着た人たちの向ける視線の先には、一流モデルも真っ青な美男子が、こちらも何処の王子様?な煌びやかな服を着て私を見ていた。

うわー!何この美形。
ん?でもこの人、どっかで見たことあるような・・・・?何処だっけ?
うーん・・・・。

「異世界からこられた召喚聖女様」

王子様は、私の前ですっと跪いて、手を取った。

「私、ですか?」

「ええ」

極上の笑みで見つめられる。
きっと、顔は真っ赤に違いない。

「召喚に応じてくださったこと、ありがたく存じます。私は、この国の第一王子ラファーガ・ダイヤモンド。ラファーガとお呼びください。お名前をお伺いしても?」

「さ、桜井 まりあです。あっ、名前は、まりあで家名が桜井です」

嘘だ。私の本当の名前は、田中梅子。平凡どころか田舎臭くて大嫌いだ。だから、知らない人には桜井まりあでとおしている。

ポーとしながらも恥ずかしげに答える。

「まりあ嬢とお呼びしても?」

「はい、ラファーガ様」

「突然のことにさぞ驚かれたでしょう。寛げる場所でいろいろとご説明したいのですが?」

「勿論です!」

私は現実離れしたこの状況に、"選ばれた者"だという優越感と超絶美形な王子様に酔いしれていた。



そして、エスコートされた部屋は・・・・。
以前訪れたベルサイユ宮殿も真っ青な豪華で美しい部屋だった。

「侍女長、召喚聖女様のお召し替えを。終わったら、呼んでくれ。話をする」

「畏まりました」

「まりあ嬢、先程も申しましたが、貴女のお召し物は、その、こちらにはそぐわない故、侍女長をお付けしますから、着替えていただきたい」

今の私は、制服だ。あの部屋で立ち上がったとき、周りの人たちはぎょっとしていた。直ぐにラファーガ様がマントを羽織らせてくれたけど、その時に、"そのように脚を見せるのは・・・・"と、マナー違反だとやんわりと教えてくれた。

「解りました」

ラファーガ様は、甘い笑顔と手の甲に口付けを残して、さっと部屋から出ていった。

うっわー、どうしよう。
動作のいちいちがスマートすぎて、見惚れちゃう!

「さ、召喚聖女様、お湯の用意が整っております。お手伝い致しますので、あちらへどうぞ」

「ええ、お願いね」


お風呂からマッサージを経て、ドレスを着付けられるところで、そのドレスのセンスのなさに呆れてしまった。侍女にお世話されるのは慣れている。うちにも私付きのお手伝いが居るからね。私は、一流企業の社長令嬢だ。ミス・ユニバースの日本代表候補・・に選ばれたこともある。物の善し悪しは見ればすぐにわかるし、ドレスもパーティーで着なれている。

「ちょっと、あなた。どういうつもり?こんなセンスの欠片もないドレスを私に着ろと?」

いくらなんでも、ピンクのフリフリはない。生地もあまり良いとは言えない。しかもこのデザインでは、太って見えるではないか。

「申し訳ございません。別のドレスをいくつかご用意致します」

「早くしてちょうだい」

用意されたドレスはどれも先程と違いラインのきれいな見ただけで最高級とわかるものばかりだった。

「試すのは人を見てになさい。次はないわ」

侍女長たちは、青い顔で頷いていた。



夢か現か。

着替えが済むと侍女長は、ラファーガ様とその側近たちを呼びにいった。私の前には、お茶と軽食が出されている。それには手をつけずに、ラファーガ様を待つ。ノックと共に立ち上がり、ラファーガ様を迎える。

この辺りは、あちらのマナーと変わりないようだ。相手は王子様だから、本来はカーテシーで迎えるべきだろうが、自分の立ち位置を考え、止めておいた。

「これは・・・・、よくお似合いだ。先程の姿も可憐でしたが、こちらの装いも大変美しい」

キラキラの笑顔で誉められて、赤くなった顔を隠すように頬に手をあてた。ふと後ろに控える側近たちが目に入る。

私とラファーガ様、そして、4人いる側近のうち2人は座り、ふたりはラファーガ様の後ろに控えた。侍女たちは、壁際で気配を殺している。
この4人も何処か見覚えがある。

「詳しい話の前にまずは、私の側近を紹介しておきます」

まずは、左手に居る人が自己紹介を始めた。

「私は、サファイア公爵家の次男、フェルド・サファイア。フェルドとお呼びください、姫」

「僕は、エメラルド侯爵家の長男、オルト・エメラルド。宰相の父について勉強中です。オルトとお呼びください、姫様」

「俺は、ルビー侯爵家の次男、ガリバ・ルビーだ。騎士団に所属している。ガリバとでも呼んでくれ、姫さん」

「わた、私は、・・・・パール伯爵家の次男、シーラント・パール・・・・です。まま、魔術師団に所属しています・・・・」


ダイヤモンド・サファイア・エメラルド・ルビー・パール。

!!!思い出した!この人たち、この間までやってた乙ゲー『召喚聖女とジュエルの貴公子』の攻略対象にそっくりなんだ!というか、その世界に召喚されちゃった?!
うわー、小説のネタだと思ってたけど、本当にあるんだね。
ヒロインだって!どうしよう。

「どうかされましたか?」

「いえ、お話をお伺いしても宜しいですか?突然、見知らぬ世界に連れてこられて、少し混乱しております。何が起こってたのか教えていただけますか?」

できるだけ優雅におっとりと微笑んでみせた。


ラファーガ様たちの話をまとめると、この国は、ビジュー王国と言い、数年前まで人族至上主義の国だった。今は、第一王子派と第二王子派で国を二分する勢いだそう。だから、自分の後ろ楯となってこの国を共に導いてほしい、ということだった。

国の名前も設定もゲームと同じだ。3ヶ月違いの第二王子と王太子争いをしている中、聖女召喚に成功すれば優位に立てる。何と言っても召喚聖女は、この世界にはない回復魔法を使える。それに、聖女が守る国は魔獣が増えにくくなる。

第一王子のラファーガは王妃の子で、第二王子は側室の子だ。だが、国王は、身分的に王妃にはなれない側室を溺愛している。本来、王妃の子であるラファーガが王太子となるはずだが、国王は側室の願いを聞き届けたい。王妃がそれを快く思うわけもなく・・・・。だから、未だにどちらも立太子されていない。

ふふ、攻略対象者は全員イケメンだし、地位もそれなりに高い。王妃になるのも夢じゃない。でもね、ごめんね、私の押しキャラは、ここには居ないの。

この攻略対象者全員を好感度マックスで誰も選ばずに終えると隠しキャラが出てくる。その隠しキャラがちょっと冷たい外見の甘やかし系キャラなのだ。このギャップがいい。隠しキャラ攻略の暁には、この世界をひとつに纏めた帝国の皇帝妃だ。
何回もやり直してやっと出会えたのに、攻略の初っぱなでお父様にゲームを取り上げられたから最後までできなかったのが悔やまれる。

攻略期間は、2年。
学園が舞台で、いろいろなイベントをこなしていくことになる。

攻略対象者は、隠しキャラ以外、全員婚約者持ち。ルートによって悪役令嬢となる。今回は、もちろん、隠しキャラ狙いだから、それぞれの攻略対象者が婚約者と繋がりを絶つことなく、好感度をマックスまで上げなくてはならない。

このゲームは、他の乙女ゲームと違い、ゲームをこなしていくことで、マナーや立ち居振舞い、話術、センスを身に付けていくことを目的としていた。要するに、お花畑なヒロインでは、攻略は不可能。そこさえ押さえれば、好感度をあげること事体、難しくない。マナーと攻略対象者の心情を的確に判断すればいい。楽勝だ!

だが、私はこのとき、ヒロインという役に浮かれて、第一王子の話をしっかりと聞いていなかった。ゲームの世界だと気付いた思い込んだことで、知っている・・・・・と思い込み、とんでもない思い間違いをしていたことに気づくことが出来なかった。それが、あの結末を呼ぶことになろうとは。全ては、この時に決まっていたのかもしれない。




それからは、目の回るような忙しさだった。

まず、召喚聖女としてその能力があるか神殿で調べられた。召喚聖女という称号があり、回復というスキルもあったし、実際にわざと腕に傷をつけたラファーガ様を癒すことができた。その後も負傷した騎士たちの回復をして、魔力量を計った。歴代の召喚聖女くらいはあるようだ。

その後、召喚聖女として、国王陛下へ謁見。国王陛下への私の印象、というより、召喚聖女への心象はあまりよくなさそうだ。始終、難しい顔をしていた。それに反して、王妃様は満面の笑みである。何か思惑がありそうで怖いな。

急遽開催されたお披露目の夜会にも参加した。召喚者が第一王子であると周りに知らしめるために、婚約者を連れたラファーガ様のエスコートだ。そこで、攻略対象者とその婚約者にも会うことになった。スチル通り、婚約者の令嬢たちも見目麗しいが、所詮、政略だ。あまり、仲睦まじいというふうには、見受けられない。簡単に婚約破棄しそうだ。




そして、3月後、私は予定通り学園に編入した。その間にこの国の歴史やマナー、魔法学などを詰め込んだ。お受験に比べれば、大したことはない。ここでも好感度アップだ。

ゆったりと愛らしく慎ましやかで、それでいて芯の通った心優しき令嬢の鏡。

私は女優。未来の皇帝妃。
目指せ!逆ハーレム!
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