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やっぱり、ダメでした?
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私たちは今、第1王子殿下の執務室という名のティールームでお茶を楽しんでいる。・・のは、お兄様とクラウスだけ。私は・・・・。
「はい、レイア。あーん♪」
第1王子殿下に餌付けされている。私の口元にはフォークに刺さったチョコケーキがある。
「レイア。こっちのほうが美味しいわよ?」
反対側からはアイリス様。こちらはフルーツタルトがお薦めらしい。もうお腹いっぱい。喋ろうと口を開けば、ふたりが競ってケーキを突っ込んでくる。どんな拷問か・・・・。
「ふたりとも。レイはもう満腹だぞ?そろそろ止めないと次はないかもな」
ありがとう、クラウス。頷きながらケーキで一杯の口をモグモグと動かしてクラウスを見ると、クラウスは苦笑している。残っていたタルトをクラウスが、チョコケーキをお兄様が食べてくれた。私はこの和やかな雰囲気が大好きだ。みんなで食べるケーキもみんなで遊ぶゲームも。心から笑い合える人たちに囲まれたかけがえのない時間を愛しいと思う。まだ、失いたくない。
コンコンコン
「ご歓談中、失礼致します。第3王子殿下がお目通り願っております」
ドクン
心臓が軋んだ。
「通せ」
血の気が引いた。まだ、そうとは限らない。違うかもしれない。そうよ、お茶会はまだ先だわ。きっとまだ、大丈夫。
もう、会いたくない・・・・
ひたすら違うことを祈って、両手をきつく握りしめた。それでも震える身体はどうしようもない。
「レイ、大丈夫か?顔が真っ青だ」
「レイア?」
「え?レイア?」
「どうした、レイア?」
みんな心配して声をかけてくれるけど、ぜんぜん大丈夫じゃない。身体が強張り言葉すら出てこない。クラウスが私を抱き上げて膝に乗せてくれた。私はクラウスの胸に顔を寄せ、埋もれるように身体を小さく小さく丸めた。
「兄上。今日は剣の稽古は・・・・。!良い匂いがする」
私は更に身体を小さくしてぎゅっとクラウスにしがみついた。クラウスも何かを察したのか私を隠すように抱き締めてくれる。
「よく来たな、ウィリアム。さっきまでお茶をしていたからな。ケーキの匂いでも残っていたか」
どうか気付かないで。
「違います。・・・・」
コツコツコツ
こちらに近づく軽快な足音。それは、無情にも私たちが座るソファーの前で止まった。
「見つけた。僕の番♪」
第3王子殿下は、クラウスにしがみつく私を引き離し、私を抱き締めると私に満面の笑みを私に向けてくる。だが、私にとってそれは、死への宣告だ。
「いやぁ!」
私は驚く第3王子殿下の顔を見ながら、絶望に意識を手放した。
第3王子であるウィリアム殿下が私を番認定したことで、トントン拍子に私とウィリアム殿下との婚約は整ってしまった。王子妃教育とウィリアム殿下との交流のため、私は王宮へと通い始めた私は、もうクラウスに抱き上げられることも第1王子殿下やアイリス様から餌付けされることもなくなった。クラウスとはウィリアム殿下が嫌がるからあの日以来会っていない。時折、お兄様からお話を聞くと寂しくてたまらなくなる。
「クリス」
ウィリアム殿下は私をそう呼ぶ。私の名前を呼ぶ殿下の声は蜂蜜のように甘い。私はただ静かに微笑んでそれを受け止める。端から見れば、番を溺愛する王子と幸せを噛み締める令嬢に見えるだろう。幸いにも、アイリス様とお兄様の婚約者のお蔭で、今までのような陰湿な虐めはないが、ウィリアム殿下のことを狙っているご令嬢がいるのは知っている。死が怖くないわけではない。苦しいのも痛いのも嫌だ。もう、絶望を味わいたくはない。でも、何をどうしても変わらない結末をこれだけの回数迎えると、諦めることが最善に思えてくる。どう抗っていいのか最早分からないのだ。だから、私は全てを受け入れたように心静かに幸せに見える笑みを張り付ける。
こうして、私の何回目か分からない死へのカウントダウンが始まった。
私とウィリアム殿下は、傍目には仲睦まじく日々を過ごし、私が社交界デビューしてからは夜会やパーティーには必ずエスコートされた。もちろん、その時に着るドレスや装飾品も毎回贈られてくる。だが、どんな贈り物も甘い言葉も私の心には響かない。
「レイア、大丈夫かい?」
あの日から時折、お兄様にかけられる言葉。返す言葉は決まっている。
「はい。もちろんですわ」
気遣わしそうな視線を送るお兄様に微笑むのもいつものこと。きっとお兄様は、私が屈託なく笑わなくなったことに気づいている。でも、敢えて何も聞いてこないのは、私があの日、ウィリアム殿下に番だと告げられた時の叫びを聞いているからだと思う。今でもお兄様は私に甘い。変わらずに私を溺愛してくれる。遠くない将来、この人を悲しませることになると思うと、胸が軋んだ。
「はい、レイア。あーん♪」
第1王子殿下に餌付けされている。私の口元にはフォークに刺さったチョコケーキがある。
「レイア。こっちのほうが美味しいわよ?」
反対側からはアイリス様。こちらはフルーツタルトがお薦めらしい。もうお腹いっぱい。喋ろうと口を開けば、ふたりが競ってケーキを突っ込んでくる。どんな拷問か・・・・。
「ふたりとも。レイはもう満腹だぞ?そろそろ止めないと次はないかもな」
ありがとう、クラウス。頷きながらケーキで一杯の口をモグモグと動かしてクラウスを見ると、クラウスは苦笑している。残っていたタルトをクラウスが、チョコケーキをお兄様が食べてくれた。私はこの和やかな雰囲気が大好きだ。みんなで食べるケーキもみんなで遊ぶゲームも。心から笑い合える人たちに囲まれたかけがえのない時間を愛しいと思う。まだ、失いたくない。
コンコンコン
「ご歓談中、失礼致します。第3王子殿下がお目通り願っております」
ドクン
心臓が軋んだ。
「通せ」
血の気が引いた。まだ、そうとは限らない。違うかもしれない。そうよ、お茶会はまだ先だわ。きっとまだ、大丈夫。
もう、会いたくない・・・・
ひたすら違うことを祈って、両手をきつく握りしめた。それでも震える身体はどうしようもない。
「レイ、大丈夫か?顔が真っ青だ」
「レイア?」
「え?レイア?」
「どうした、レイア?」
みんな心配して声をかけてくれるけど、ぜんぜん大丈夫じゃない。身体が強張り言葉すら出てこない。クラウスが私を抱き上げて膝に乗せてくれた。私はクラウスの胸に顔を寄せ、埋もれるように身体を小さく小さく丸めた。
「兄上。今日は剣の稽古は・・・・。!良い匂いがする」
私は更に身体を小さくしてぎゅっとクラウスにしがみついた。クラウスも何かを察したのか私を隠すように抱き締めてくれる。
「よく来たな、ウィリアム。さっきまでお茶をしていたからな。ケーキの匂いでも残っていたか」
どうか気付かないで。
「違います。・・・・」
コツコツコツ
こちらに近づく軽快な足音。それは、無情にも私たちが座るソファーの前で止まった。
「見つけた。僕の番♪」
第3王子殿下は、クラウスにしがみつく私を引き離し、私を抱き締めると私に満面の笑みを私に向けてくる。だが、私にとってそれは、死への宣告だ。
「いやぁ!」
私は驚く第3王子殿下の顔を見ながら、絶望に意識を手放した。
第3王子であるウィリアム殿下が私を番認定したことで、トントン拍子に私とウィリアム殿下との婚約は整ってしまった。王子妃教育とウィリアム殿下との交流のため、私は王宮へと通い始めた私は、もうクラウスに抱き上げられることも第1王子殿下やアイリス様から餌付けされることもなくなった。クラウスとはウィリアム殿下が嫌がるからあの日以来会っていない。時折、お兄様からお話を聞くと寂しくてたまらなくなる。
「クリス」
ウィリアム殿下は私をそう呼ぶ。私の名前を呼ぶ殿下の声は蜂蜜のように甘い。私はただ静かに微笑んでそれを受け止める。端から見れば、番を溺愛する王子と幸せを噛み締める令嬢に見えるだろう。幸いにも、アイリス様とお兄様の婚約者のお蔭で、今までのような陰湿な虐めはないが、ウィリアム殿下のことを狙っているご令嬢がいるのは知っている。死が怖くないわけではない。苦しいのも痛いのも嫌だ。もう、絶望を味わいたくはない。でも、何をどうしても変わらない結末をこれだけの回数迎えると、諦めることが最善に思えてくる。どう抗っていいのか最早分からないのだ。だから、私は全てを受け入れたように心静かに幸せに見える笑みを張り付ける。
こうして、私の何回目か分からない死へのカウントダウンが始まった。
私とウィリアム殿下は、傍目には仲睦まじく日々を過ごし、私が社交界デビューしてからは夜会やパーティーには必ずエスコートされた。もちろん、その時に着るドレスや装飾品も毎回贈られてくる。だが、どんな贈り物も甘い言葉も私の心には響かない。
「レイア、大丈夫かい?」
あの日から時折、お兄様にかけられる言葉。返す言葉は決まっている。
「はい。もちろんですわ」
気遣わしそうな視線を送るお兄様に微笑むのもいつものこと。きっとお兄様は、私が屈託なく笑わなくなったことに気づいている。でも、敢えて何も聞いてこないのは、私があの日、ウィリアム殿下に番だと告げられた時の叫びを聞いているからだと思う。今でもお兄様は私に甘い。変わらずに私を溺愛してくれる。遠くない将来、この人を悲しませることになると思うと、胸が軋んだ。
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