10 / 29
9
しおりを挟む
王太子殿下の視線の意味が分からない。何かしただろうか?そんなことを気にしながら、王宮神殿から別の場所に移動するみんなの後を一生懸命ついて行ったが、大人の足には追い付けず途中で見失ってしまった。リルアイゼはお父様に抱っこされ、クルーガはお母様の腕の中だ。私の護衛はお役御免となったのか何処にもいない。
どうしよう?
『キュウちゃん、コマちゃん。屋敷に帰ってもいいと思う?』
『王都観光しようよ』
『ライナスは探しそうだが、適当にまたここに戻ればいいのではないか?』
そうは言っても、この格好はダメだな。
『一度私の部屋で着替えてから王都観光に行こう』
誰にも見つかることなく、私は自室で着替え、王都に繰り出した。お兄様と出掛ける領都より遥かに広い。行けども行けども道は続き、お店が建ち並んでいる。キョロキョロと辺りを見回しながら歩く私は、観光客まる出しだろう。
ドン!
「わっ!」
少年と肩がぶつかってたたらを踏んだ。前から歩いてきていたその少年をちゃんと避けたつもりだった。
「気を付けろよ!田舎者が!」
「おっと」
私の後ろで男の人が少年を捻りあげた。キュウちゃんとコマちゃんも唸り声をあげている。何が起こっているのか分からない。唖然とふたりを見つめた。男は少年のズボンのポケットを探ると何かを取り出した。
「ほら、嬢ちゃんのだろ?」
「!!!」
握られているのは私の財布。お兄様から誕生日にもらった大切なものだ。
『すまんな。あいつに先を越された』
『すぐに取り返すつもりだったのに!』
『スリ?』
気付かなかった・・・・。
「・・あ、ありがとう、ございます?」
戸惑いからお礼が疑問系になってしまったが、男は気にしていないようだ。
「こいつ、どうする?」
「離せ、離せよ!」と暴れる少年の処遇などどうしたものか?困っていると近くを通った衛兵が男に事情を聴き、連れていってくれた。常習犯だそうだ。
「嬢ちゃん、連れはどうした?」
先程この男は衛兵に私のことを妹と言っていた。コマちゃんたちが何も言わないから害はないのだろう。それに、どこか懐かしい感じがする。熊のような大男。
「連れ?私、お使いの途中で」
「嘘はダメだぞ?」
なぜ、速攻でバレた?キュウちゃんを見るも首を横に振っているから分からないようだ。
「財布。平民が持つようなものじゃない。キョロキョロして王都の住民とは思えない。髪。艶があって平民には似つかわしくない。貴族の子だな?護衛や侍女はどこにいる?」
男は逃がさないつもりなのか、私の手をしっかり握って離してくれない。妹と手を繋いでいても誰も咎めない。確信犯だ。私は近くのベンチに座らされ、尋問を受けることになった。
「・・・・」
「俺は、ガイウス。鍛冶師だ。貴族に顧客がいるからそのくらいは見れば分かる」
う~ん。この人にはどんな言い訳も通用しない気がする。
「私はシュシュ。10歳。授けの儀を受けた帰り。家族とはぐれて迷子になったの。王都観光なんてなかなか出来ないから、この際だし楽しもうとしてた矢先」
はぐれた場所が違うだけで嘘は言ってない。王都観光しているのも本当のことだ。ガイウスは呆れた顔をしている。
「大胆な嬢ちゃんだ」
「ガイウスは薬師協会の場所を知ってる?」
「知ってるが、何故だ?」
「登録をしたくて。案内してよ♪」
「あのなぁ。家族が探してると思うぞ?」
「大丈夫!私がはぐれたことも気づいてないと思うから」
軽~く言ってみたが、ガイウスは複雑な顔をしている。けれど、それ以上の追求はなかった。
「10歳なら保護者の許可がいるから登録はできないぞ」
知らなかった・・・・。
「送っていく。家名は?」
「・・・・」
「家の場所は?」
「・・・・」
「拐われるぞ?」
「・・・・」
「何処に行きたいんだ?」
「!ガイウスの鍛冶工房」
「はあ?!」
それから、すったもんだのやり取りはあったが、最終的にガイウスが折れた。たどり着いた鍛冶工房は、地面に炉が作られ、鍛冶する場所には沢山の金槌?がある。その脇には水を張った大きな甕。鉄の他にも何種類もの鉱物が転がっていた。
「な?だから、面白いものはないって言ったろ?」
「面白いよ♪」
私は鼻唄を歌いながら工房を探索した。ここなら、私がちょっとお邪魔して調薬しても邪魔にならなそうだ。それに工房の先は店舗なのか普通の剣、短剣、大剣、レイピア、槍、ナイフ、包丁、杖?など太さや長さ、大きさの異なる刃物が並べてあるから、販売もできる!
「こら、何良からぬことを考えてるんだ?」
「いひゃい!」
私の思考に気付いたのかガイウスは私の頭を片手で掴みグリグリと力を込めてくる。何で分かった?
「そろそろ、帰った方がいいぞ」
外を見ると陽が陰り始めていた。ずいぶん長居してしまったようだ。私は大人しく王都にある神殿に送ってもらうことにした。
「ガイウス。ありがとう。またね♪」
私はガイウスの手を振りほどき神殿内部に向かって走った。
「おい!・・気を付けて行けよ?」
「う~ん!」
突然のことに若干戸惑っていたガイウスだったけど、笑って送り出してくれた。いい人だ。そこから、自室に転移し、着替えて更に王宮神殿まで転移した。王宮神殿の近くにある木に凭れているとほどなくして、額に汗をかいたお兄様が血相変えてやって来た。
「シュシュ!」
「お兄様」
「ごめん!」
お兄様は飛び付くようにぎゅうっと私を抱き締めた。
「抜け出せなくて。今、リルアイゼの今後のことが決まったところなんだ。ねえ、シュシュ。本当にシュシュは称号を授かってはいないんだね?」
「どうして?リルアイゼが愛し子なのでしょう?」
「うん。シュシュがいいなら何も言わない。私は何があってもシュシュの味方だよ」
予言めいたお兄様のこの一言がいつまでも耳から離れなかった。
どうしよう?
『キュウちゃん、コマちゃん。屋敷に帰ってもいいと思う?』
『王都観光しようよ』
『ライナスは探しそうだが、適当にまたここに戻ればいいのではないか?』
そうは言っても、この格好はダメだな。
『一度私の部屋で着替えてから王都観光に行こう』
誰にも見つかることなく、私は自室で着替え、王都に繰り出した。お兄様と出掛ける領都より遥かに広い。行けども行けども道は続き、お店が建ち並んでいる。キョロキョロと辺りを見回しながら歩く私は、観光客まる出しだろう。
ドン!
「わっ!」
少年と肩がぶつかってたたらを踏んだ。前から歩いてきていたその少年をちゃんと避けたつもりだった。
「気を付けろよ!田舎者が!」
「おっと」
私の後ろで男の人が少年を捻りあげた。キュウちゃんとコマちゃんも唸り声をあげている。何が起こっているのか分からない。唖然とふたりを見つめた。男は少年のズボンのポケットを探ると何かを取り出した。
「ほら、嬢ちゃんのだろ?」
「!!!」
握られているのは私の財布。お兄様から誕生日にもらった大切なものだ。
『すまんな。あいつに先を越された』
『すぐに取り返すつもりだったのに!』
『スリ?』
気付かなかった・・・・。
「・・あ、ありがとう、ございます?」
戸惑いからお礼が疑問系になってしまったが、男は気にしていないようだ。
「こいつ、どうする?」
「離せ、離せよ!」と暴れる少年の処遇などどうしたものか?困っていると近くを通った衛兵が男に事情を聴き、連れていってくれた。常習犯だそうだ。
「嬢ちゃん、連れはどうした?」
先程この男は衛兵に私のことを妹と言っていた。コマちゃんたちが何も言わないから害はないのだろう。それに、どこか懐かしい感じがする。熊のような大男。
「連れ?私、お使いの途中で」
「嘘はダメだぞ?」
なぜ、速攻でバレた?キュウちゃんを見るも首を横に振っているから分からないようだ。
「財布。平民が持つようなものじゃない。キョロキョロして王都の住民とは思えない。髪。艶があって平民には似つかわしくない。貴族の子だな?護衛や侍女はどこにいる?」
男は逃がさないつもりなのか、私の手をしっかり握って離してくれない。妹と手を繋いでいても誰も咎めない。確信犯だ。私は近くのベンチに座らされ、尋問を受けることになった。
「・・・・」
「俺は、ガイウス。鍛冶師だ。貴族に顧客がいるからそのくらいは見れば分かる」
う~ん。この人にはどんな言い訳も通用しない気がする。
「私はシュシュ。10歳。授けの儀を受けた帰り。家族とはぐれて迷子になったの。王都観光なんてなかなか出来ないから、この際だし楽しもうとしてた矢先」
はぐれた場所が違うだけで嘘は言ってない。王都観光しているのも本当のことだ。ガイウスは呆れた顔をしている。
「大胆な嬢ちゃんだ」
「ガイウスは薬師協会の場所を知ってる?」
「知ってるが、何故だ?」
「登録をしたくて。案内してよ♪」
「あのなぁ。家族が探してると思うぞ?」
「大丈夫!私がはぐれたことも気づいてないと思うから」
軽~く言ってみたが、ガイウスは複雑な顔をしている。けれど、それ以上の追求はなかった。
「10歳なら保護者の許可がいるから登録はできないぞ」
知らなかった・・・・。
「送っていく。家名は?」
「・・・・」
「家の場所は?」
「・・・・」
「拐われるぞ?」
「・・・・」
「何処に行きたいんだ?」
「!ガイウスの鍛冶工房」
「はあ?!」
それから、すったもんだのやり取りはあったが、最終的にガイウスが折れた。たどり着いた鍛冶工房は、地面に炉が作られ、鍛冶する場所には沢山の金槌?がある。その脇には水を張った大きな甕。鉄の他にも何種類もの鉱物が転がっていた。
「な?だから、面白いものはないって言ったろ?」
「面白いよ♪」
私は鼻唄を歌いながら工房を探索した。ここなら、私がちょっとお邪魔して調薬しても邪魔にならなそうだ。それに工房の先は店舗なのか普通の剣、短剣、大剣、レイピア、槍、ナイフ、包丁、杖?など太さや長さ、大きさの異なる刃物が並べてあるから、販売もできる!
「こら、何良からぬことを考えてるんだ?」
「いひゃい!」
私の思考に気付いたのかガイウスは私の頭を片手で掴みグリグリと力を込めてくる。何で分かった?
「そろそろ、帰った方がいいぞ」
外を見ると陽が陰り始めていた。ずいぶん長居してしまったようだ。私は大人しく王都にある神殿に送ってもらうことにした。
「ガイウス。ありがとう。またね♪」
私はガイウスの手を振りほどき神殿内部に向かって走った。
「おい!・・気を付けて行けよ?」
「う~ん!」
突然のことに若干戸惑っていたガイウスだったけど、笑って送り出してくれた。いい人だ。そこから、自室に転移し、着替えて更に王宮神殿まで転移した。王宮神殿の近くにある木に凭れているとほどなくして、額に汗をかいたお兄様が血相変えてやって来た。
「シュシュ!」
「お兄様」
「ごめん!」
お兄様は飛び付くようにぎゅうっと私を抱き締めた。
「抜け出せなくて。今、リルアイゼの今後のことが決まったところなんだ。ねえ、シュシュ。本当にシュシュは称号を授かってはいないんだね?」
「どうして?リルアイゼが愛し子なのでしょう?」
「うん。シュシュがいいなら何も言わない。私は何があってもシュシュの味方だよ」
予言めいたお兄様のこの一言がいつまでも耳から離れなかった。
598
あなたにおすすめの小説
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
妹は謝らない
青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。
手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。
気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。
「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。
わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。
「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう?
小説家になろうにも投稿しています。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
元カノが復縁したそうにこちらを見ているので、彼の幸せのために身を引こうとしたら意外と溺愛されていました
おりの まるる
恋愛
カーネリアは、大好きな魔法師団の副師団長であるリオンへ告白すること2回、元カノが忘れられないと振られること2回、玉砕覚悟で3回目の告白をした。
3回目の告白の返事は「友達としてなら付き合ってもいい」と言われ3年の月日を過ごした。
もう付き合うとかできないかもと諦めかけた時、ついに付き合うことがてきるように。
喜んだのもつかの間、初めてのデートで、彼を以前捨てた恋人アイオラが再びリオンの前に訪れて……。
大好きな彼の幸せを願って、身を引こうとするのだが。
君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。
みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。
マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。
そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。
※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓
婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません
天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。
ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。
屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。
家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。
永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~
畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる