転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫

文字の大きさ
42 / 52

故郷

しおりを挟む
「楽しそうだね、なにがあったの?」

「人に話す内容じゃないかな」

お昼休み、屋上で一緒にお弁当を食べていた時無意識で顔が緩んでいた。
イクサスは不思議そうに見ていて、俺は笑って誤魔化した。

友達でもアルくんとの事は話したくないし、他人に話す事ではないと思った。

魔法で治したとはいえ、俺の身体を気遣ってくれてお弁当を作ってくれた。
アルくんの手作りがお昼に食べられるとは、幸せだな。

つい食べながら口元が緩んでいた。

お弁当を作るアルくんの後ろ姿は神々しく感じた。
眩しく光っていたが、ちゃんと目に焼き付けておいた。

「そんなに今日のお弁当美味しいの?」

「うん!」

「また一口食べていい?」

イクサスの言葉に真顔でイクサスの方を見た。

俺のお弁当ならいいけど、これはアルくんが俺のために作ってくれた愛情たっぷりのお弁当だ。
朝、お弁当箱を受け取った時…アルくんは「ユートが今日も幸せになるまじないを込めたよ」と言っていた。

アルくんがいたらいつでも幸せだけど、お弁当があればアルくんと一緒に食べているように感じる。
それに俺の制服の下にはアルくんの印が刻まれている。

アルくんが一緒にいる、いつも俺の傍に…

考えているだけなのにゾクゾクと背筋を駆け上がる感覚がした。

今アルくんはいないのに、アルくんの事を考えるのは控えよう。

「ユート、どうしたの?」

「今、無心になってるところ」

「…そ、そうなんだ」

アルくんはよく分かってなさそうだけど、頷いていた。

お弁当をお裾分けするという事は、アルくんの愛情をお裾分けする事になる。
それはごめんなさい、今日はアルくんを独り占めしたい。

イクサスに「今日は人に作ってもらったからごめんね」と言った。
「ユートの手料理じゃないならいいよ」と言っていた。

それってどういう事なんだろう、俺の手料理は美味しくないからいらない?
口に合わなかったみたいで申し訳なかったなと思いながらアルくんのお弁当を食べた。

今日の夕飯はお弁当のお礼に俺なりのフルコースを用意しようかな。
愛情増し増しでアルくんの好物を考える。

俺の料理は何でも美味しいと言ってくれるが、微妙に反応が違う時がある。
それが好物だと思っていて、もっとアルくんに笑ってほしい。

「そういえばユート、なんか今日少し距離がない?」

「友達同士ベタベタするのは変かと思って」

そこは友達だから誤魔化さずに言うと、何故かイクサスが近付いてきた。
離れても近付いての繰り返しで、イクサスの顔は楽しそうだ。

からかわれているんだよな、俺は真剣なのに…

昼飯の後の運動のように追いかけっこが始まった。








ーーー

学校が終わり、まっすぐ家に向かって帰っていた。

食材は常にアルくんが補充してくれて、買い物はする必要がない。
俺も居候しているから半分払って負担を減らしたい。

上層部で仕事を探すより、お母さんの仕事場で働いた方が安心か。
久々に顔も見たい、今ならボロボロの制服じゃないから心配掛けずに済む。

給料は少なくても、何もしないでアルくんの世話になるのは嫌だ。

まだ高校生でも稼げる年齢なんだ。

下層部に入ると、懐かしいにおいと空気が淀んでいた。
上層部と下層部は近いのに、故郷に帰ってきたみたいだ。

しばらく歩くと家が見えて、歩く速度が早くなる。

玄関をノックすると、少しして女性が見えた。

そこまで日が経っていないから記憶と全く変わらない母がそこにいた。

「ユート?ユートなの?」

「久しぶり、お母さん」

母は涙を流して抱きしめ合った。
俺もいろんな感情が込み上げてきて、目元が熱くなる。

母は変わらないけど、俺は少し変わったかな。
少しだけ身長が伸びたのかな、気持ちも成長してたらいいな。

家に入って椅子に座っていろんな話をした。
学校の事はほとんどが話せず、友人の話をした。
イクサスが友達になってくれて良かった。

一人暮らしをしてると思っているから、生活についても聞きたいみたいだった。
さすがにそこは嘘を付けず、友達と同居してると言った。

いきなり恋人と言ったら誰ってなるからまだ言えない。
アルくんのタイミングが合えば、いつか紹介したい。

いろいろ話していて、バイトの話をしようとしたら母は思いついたように小さく声を上げた。

「そうだ、ユートにお願いがあるんだけど」

「…俺?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

既読無視の年下幼馴染みの部屋に行ったら、アイドルグッズだらけだった。しかも推しは俺

スノウマン(ユッキー)
BL
国民的アイドルの朝比奈 春人(あさひな はると)はいつもラインを既読無視する年下の幼馴染、三上 直(みかみ なお)の部屋をとある理由で訪れる。すると部屋の中はアイドルのグッズだらけだった、しかも全部春人の。 『幼馴染の弟ポジジョン×国民的アイドルのお兄さん』になる前のドタバタコメディです。

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

贖罪公爵長男とのんきな俺

侑希
BL
異世界転生したら子爵家に生まれたけれど自分以外一家全滅という惨事に見舞われたレオン。 貴族生活に恐れ慄いたレオンは自分を死んだことにして平民のリオとして生きることにした。 一方公爵家の長男であるフレドリックは当時流行っていた児童小説の影響で、公爵家に身を寄せていたレオンにひどい言葉をぶつけてしまう。その後すぐにレオンが死んだと知らされたフレドリックは、以降十年、ひたすらそのことを悔いて生活していた。 そして十年後、二人はフレドリックとリオとして再会することになる。   ・フレドリック視点は重め、レオン及びリオ視点は軽め ・異世界転生がちょいちょい発生する世界。色々な世界の色々な時代からの転生者の影響で文明が若干ちぐはぐ。 ・世界観ふんわり 細かいことは気にしないで読んでください。 ・CP固定・ご都合主義・ハピエン ・他サイト掲載予定あり

難攻不落の異名を持つ乙女ゲーム攻略対象騎士が選んだのは、モブ医者転生者の俺でした。

一火
BL
――聖具は汝に託された。覚醒せよ、選ばれし者 その言葉と共に、俺の前世の記憶が蘇る。 あれ……これもしかして「転生したら乙女ゲームの中でした」ってやつじゃないか? よりにもよって、モブの町医者に。 「早く治癒魔法を施してくれ」 目の前にいるのは……「ゲームのバグ」とまで呼ばれた、攻略不可能の聖騎士イーサン!? 町医者に転生したものの、魔法の使いをすっかり忘れてしまった俺。 何故か隣にあった現代日本の医療器具を「これだ」と手に取る。 「すみません、今日は魔法が売り切れの為、物理で処置しますねー」 「……は!?」 何を隠そう、俺は前世でも医者だったんだ。物理治療なら任せてくれ。 これが後に、一世一代の大恋愛をする2人の出会いだった。 ひょんな事から、身体を重ねることになったイーサンとアオ。 イーサンにはヒロインと愛する結末があると分かっていながらもアオは、与えられる快楽と彼の人柄に惹かれていく。 「イーサンは僕のものなんだ。モブは在るべき姿に戻れよ」 そして現れる、ゲームの主人公。 ――……どうして主人公が男なんだ? 女子高生のはずだろう。 ゲーム内に存在し得ないものが次々と現れる謎現象、そして事件。この世界は、本当にあの乙女ゲームの世界なのだろうか? ……謎が謎を呼ぶ、物語の結末は。 ――「義務で抱くのは、もう止めてくれ……」 ――結局俺は……どう足掻いてもモブでしかない。 2人の愛は、どうなってしまうのか。 これは不器用な初恋同士と、彼らの愉快な仲間たちが織り成す、いちばん純粋な恋の物語。

性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!

モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。 その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。 魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。 その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?! ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。

くまだった
BL
 新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。  金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。 貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け ムーンさんで先行投稿してます。 感想頂けたら嬉しいです!

処理中です...