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故郷
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「楽しそうだね、なにがあったの?」
「人に話す内容じゃないかな」
お昼休み、屋上で一緒にお弁当を食べていた時無意識で顔が緩んでいた。
イクサスは不思議そうに見ていて、俺は笑って誤魔化した。
友達でもアルくんとの事は話したくないし、他人に話す事ではないと思った。
魔法で治したとはいえ、俺の身体を気遣ってくれてお弁当を作ってくれた。
アルくんの手作りがお昼に食べられるとは、幸せだな。
つい食べながら口元が緩んでいた。
お弁当を作るアルくんの後ろ姿は神々しく感じた。
眩しく光っていたが、ちゃんと目に焼き付けておいた。
「そんなに今日のお弁当美味しいの?」
「うん!」
「また一口食べていい?」
イクサスの言葉に真顔でイクサスの方を見た。
俺のお弁当ならいいけど、これはアルくんが俺のために作ってくれた愛情たっぷりのお弁当だ。
朝、お弁当箱を受け取った時…アルくんは「ユートが今日も幸せになるまじないを込めたよ」と言っていた。
アルくんがいたらいつでも幸せだけど、お弁当があればアルくんと一緒に食べているように感じる。
それに俺の制服の下にはアルくんの印が刻まれている。
アルくんが一緒にいる、いつも俺の傍に…
考えているだけなのにゾクゾクと背筋を駆け上がる感覚がした。
今アルくんはいないのに、アルくんの事を考えるのは控えよう。
「ユート、どうしたの?」
「今、無心になってるところ」
「…そ、そうなんだ」
アルくんはよく分かってなさそうだけど、頷いていた。
お弁当をお裾分けするという事は、アルくんの愛情をお裾分けする事になる。
それはごめんなさい、今日はアルくんを独り占めしたい。
イクサスに「今日は人に作ってもらったからごめんね」と言った。
「ユートの手料理じゃないならいいよ」と言っていた。
それってどういう事なんだろう、俺の手料理は美味しくないからいらない?
口に合わなかったみたいで申し訳なかったなと思いながらアルくんのお弁当を食べた。
今日の夕飯はお弁当のお礼に俺なりのフルコースを用意しようかな。
愛情増し増しでアルくんの好物を考える。
俺の料理は何でも美味しいと言ってくれるが、微妙に反応が違う時がある。
それが好物だと思っていて、もっとアルくんに笑ってほしい。
「そういえばユート、なんか今日少し距離がない?」
「友達同士ベタベタするのは変かと思って」
そこは友達だから誤魔化さずに言うと、何故かイクサスが近付いてきた。
離れても近付いての繰り返しで、イクサスの顔は楽しそうだ。
からかわれているんだよな、俺は真剣なのに…
昼飯の後の運動のように追いかけっこが始まった。
ーーー
学校が終わり、まっすぐ家に向かって帰っていた。
食材は常にアルくんが補充してくれて、買い物はする必要がない。
俺も居候しているから半分払って負担を減らしたい。
上層部で仕事を探すより、お母さんの仕事場で働いた方が安心か。
久々に顔も見たい、今ならボロボロの制服じゃないから心配掛けずに済む。
給料は少なくても、何もしないでアルくんの世話になるのは嫌だ。
まだ高校生でも稼げる年齢なんだ。
下層部に入ると、懐かしいにおいと空気が淀んでいた。
上層部と下層部は近いのに、故郷に帰ってきたみたいだ。
しばらく歩くと家が見えて、歩く速度が早くなる。
玄関をノックすると、少しして女性が見えた。
そこまで日が経っていないから記憶と全く変わらない母がそこにいた。
「ユート?ユートなの?」
「久しぶり、お母さん」
母は涙を流して抱きしめ合った。
俺もいろんな感情が込み上げてきて、目元が熱くなる。
母は変わらないけど、俺は少し変わったかな。
少しだけ身長が伸びたのかな、気持ちも成長してたらいいな。
家に入って椅子に座っていろんな話をした。
学校の事はほとんどが話せず、友人の話をした。
イクサスが友達になってくれて良かった。
一人暮らしをしてると思っているから、生活についても聞きたいみたいだった。
さすがにそこは嘘を付けず、友達と同居してると言った。
いきなり恋人と言ったら誰ってなるからまだ言えない。
アルくんのタイミングが合えば、いつか紹介したい。
いろいろ話していて、バイトの話をしようとしたら母は思いついたように小さく声を上げた。
「そうだ、ユートにお願いがあるんだけど」
「…俺?」
「人に話す内容じゃないかな」
お昼休み、屋上で一緒にお弁当を食べていた時無意識で顔が緩んでいた。
イクサスは不思議そうに見ていて、俺は笑って誤魔化した。
友達でもアルくんとの事は話したくないし、他人に話す事ではないと思った。
魔法で治したとはいえ、俺の身体を気遣ってくれてお弁当を作ってくれた。
アルくんの手作りがお昼に食べられるとは、幸せだな。
つい食べながら口元が緩んでいた。
お弁当を作るアルくんの後ろ姿は神々しく感じた。
眩しく光っていたが、ちゃんと目に焼き付けておいた。
「そんなに今日のお弁当美味しいの?」
「うん!」
「また一口食べていい?」
イクサスの言葉に真顔でイクサスの方を見た。
俺のお弁当ならいいけど、これはアルくんが俺のために作ってくれた愛情たっぷりのお弁当だ。
朝、お弁当箱を受け取った時…アルくんは「ユートが今日も幸せになるまじないを込めたよ」と言っていた。
アルくんがいたらいつでも幸せだけど、お弁当があればアルくんと一緒に食べているように感じる。
それに俺の制服の下にはアルくんの印が刻まれている。
アルくんが一緒にいる、いつも俺の傍に…
考えているだけなのにゾクゾクと背筋を駆け上がる感覚がした。
今アルくんはいないのに、アルくんの事を考えるのは控えよう。
「ユート、どうしたの?」
「今、無心になってるところ」
「…そ、そうなんだ」
アルくんはよく分かってなさそうだけど、頷いていた。
お弁当をお裾分けするという事は、アルくんの愛情をお裾分けする事になる。
それはごめんなさい、今日はアルくんを独り占めしたい。
イクサスに「今日は人に作ってもらったからごめんね」と言った。
「ユートの手料理じゃないならいいよ」と言っていた。
それってどういう事なんだろう、俺の手料理は美味しくないからいらない?
口に合わなかったみたいで申し訳なかったなと思いながらアルくんのお弁当を食べた。
今日の夕飯はお弁当のお礼に俺なりのフルコースを用意しようかな。
愛情増し増しでアルくんの好物を考える。
俺の料理は何でも美味しいと言ってくれるが、微妙に反応が違う時がある。
それが好物だと思っていて、もっとアルくんに笑ってほしい。
「そういえばユート、なんか今日少し距離がない?」
「友達同士ベタベタするのは変かと思って」
そこは友達だから誤魔化さずに言うと、何故かイクサスが近付いてきた。
離れても近付いての繰り返しで、イクサスの顔は楽しそうだ。
からかわれているんだよな、俺は真剣なのに…
昼飯の後の運動のように追いかけっこが始まった。
ーーー
学校が終わり、まっすぐ家に向かって帰っていた。
食材は常にアルくんが補充してくれて、買い物はする必要がない。
俺も居候しているから半分払って負担を減らしたい。
上層部で仕事を探すより、お母さんの仕事場で働いた方が安心か。
久々に顔も見たい、今ならボロボロの制服じゃないから心配掛けずに済む。
給料は少なくても、何もしないでアルくんの世話になるのは嫌だ。
まだ高校生でも稼げる年齢なんだ。
下層部に入ると、懐かしいにおいと空気が淀んでいた。
上層部と下層部は近いのに、故郷に帰ってきたみたいだ。
しばらく歩くと家が見えて、歩く速度が早くなる。
玄関をノックすると、少しして女性が見えた。
そこまで日が経っていないから記憶と全く変わらない母がそこにいた。
「ユート?ユートなの?」
「久しぶり、お母さん」
母は涙を流して抱きしめ合った。
俺もいろんな感情が込み上げてきて、目元が熱くなる。
母は変わらないけど、俺は少し変わったかな。
少しだけ身長が伸びたのかな、気持ちも成長してたらいいな。
家に入って椅子に座っていろんな話をした。
学校の事はほとんどが話せず、友人の話をした。
イクサスが友達になってくれて良かった。
一人暮らしをしてると思っているから、生活についても聞きたいみたいだった。
さすがにそこは嘘を付けず、友達と同居してると言った。
いきなり恋人と言ったら誰ってなるからまだ言えない。
アルくんのタイミングが合えば、いつか紹介したい。
いろいろ話していて、バイトの話をしようとしたら母は思いついたように小さく声を上げた。
「そうだ、ユートにお願いがあるんだけど」
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