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・視点なし・
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悪魔と契約してからというもの、何も変わらなかった。
想いを寄せるアルフリードも邪魔な存在のセレナも何も変わらない。
少しはなにかするんじゃないかと思っていたが、これでは契約した意味がない。
嘘だったのか、馬鹿にされた気分で眉を寄せた。
すれ違う人達は寄せ付けないオーラで離れていく。
やはり自分でどうにかするしかない、他人任せにはもうしない。
欲しいものはなにがあっても手に入れる。
バイトに行こうと城に向かって歩いていたから、後ろから声が聞こえた。
拒絶の気配を纏っていたから声をかけられると思わず驚いた。
「お姉ちゃん!」
「…なんだ、ユートだったの」
つい足を止めて後ろを振り返ると、遠くから人影が見えた。
能天気に笑いながらこちらに走ってくる弟に小さくため息を吐いた。
正直言って、愚弟に構っている暇なんてない。
アルフリードにアピールする時間は多くない。
仕事中、私情では話す事が出来ない…だから頑張っているところを印象付ける。
そしてセレナは逆に失敗するように仲間のメイド達で小細工をする。
いろいろと忙しいんだ、一分一秒無駄には出来ない。
ユートを無視して行こうと思ったが、息を切らしながら呼び止める。
「何?私、忙しいんだけど」
「はぁ、はぁ…お母さっ…から、伝言…」
「伝言?私、実家で暮らしているんだから直接言えばいいのに」
「帰ってからじゃ…遅いから」
「何それ」
「今日は、少し遅めに帰ってきて…お願い!」
「…はぁ?なんでよ」
「時間が余ってるなら暇つぶしに付き合うから!」
必死なユートに気味が悪いと思いながら、母からの伝言なら変な話ではないはずだ。
「仕方ないからそうする」と上から目線でユートに言った。
ユートにはこのぐらいの扱いで十分だと思っている。
とりあえず今はバイトに行こうと思って背を向けた。
なんで今日は遅く帰らないといけないのかと考えた。
自分がいたら不都合な事だという事は分かる。
今日はなにがあったのか、すっかり忘れていた事を思い出した。
毎年の事だけど、今年は焦りと苛立ちで特に自分の事を考えていなかった。
そうか、今日だったんだ。
後ろを振り返り、まだユートがいるであろうと口を開いた。
「ユート、今日ってもしかして私の…」
「誕生日?」と言おうとした口は閉ざした。
後ろにはいるはずのユートの姿がなかった。
伝言を伝えたらもう行ってしまったのかと考えたが、来る時はした足音は全く聞こえない。
それにさっきまでユートが立っていた場所が真っ赤に染まっていた。
これは、まさか…血?そして血の心当たりがある。
自分の願いは何もしなかったのに、ユートを殺して魂を奪った?
悪魔だから、契約だと言ってそういう事もするかもしれない。
顔を青ざめて、急いでその場から離れた。
両親を失うぐらいならユートをと思っていた。
ユートなら姉の幸せのために犠牲になってくれると勝手に思っていた。
それはきっと現実ではあり得ない事が起きたから、頭も現実逃避をしていた。
外の世界で魔物がいても見た事がないし、人外を見たのはあの悪魔が初めてだ。
愚弟とはいえ、弟が自分のせいで殺された現実を受け止められなかった。
城の中には、顔見知りのメイドが働いていて挨拶をしてくる。
その声が頭に入って来なくて走った。
何処を目指しているのか分からないが、とにかく行かなきゃ…という気持ちが動かした。
「きゃっ!!」
「大丈夫?」
誰かとぶつかって尻餅を付いた。
ぶつかったであろう男は手を差し伸ばしてきたが、それがイラついた。
完全に八つ当たりだけど、モブに構っている暇はなかった。
不満そうにしている男、名前は忘れたが後ろを歩く人物に気付いて振り返った。
声を掛ける前にその男を押し退けて、今来たばかりの人を見た。
一度しかまともに会話していないから、親しい関係ではない。
でも、あの悪魔を倒せるのはこの人しかいない。
男が近くにいるメイドを呼んで、引き剥がすために腕を掴まれて引っ張られた。
それでも言わないと、騎士団長であるアルフリードに…
「ちょっとアナタ!アルフリード様に失礼ですよ!」
「お願いします、アルフリード様っ」
「メイドの仕事をクビにしますよ!」
「ユートを助けてっ…」
アルフリードにとって、下層部の何でもない一般人を助けるメリットはない。
それでも、頼れる人は一人しか思い浮かばなかった。
腕を引っ張る力がなくなり、アルフリードを見るとメイドを下がらせていた。
鋭い瞳で見つめられて、今まで見た事がない顔をしていた。
アルフリードは静かな声で「どういう事か、説明してくれるか」と言っていた。
怒りを必死に抑えているような顔で、怖いと初めて感じた。
想いを寄せるアルフリードも邪魔な存在のセレナも何も変わらない。
少しはなにかするんじゃないかと思っていたが、これでは契約した意味がない。
嘘だったのか、馬鹿にされた気分で眉を寄せた。
すれ違う人達は寄せ付けないオーラで離れていく。
やはり自分でどうにかするしかない、他人任せにはもうしない。
欲しいものはなにがあっても手に入れる。
バイトに行こうと城に向かって歩いていたから、後ろから声が聞こえた。
拒絶の気配を纏っていたから声をかけられると思わず驚いた。
「お姉ちゃん!」
「…なんだ、ユートだったの」
つい足を止めて後ろを振り返ると、遠くから人影が見えた。
能天気に笑いながらこちらに走ってくる弟に小さくため息を吐いた。
正直言って、愚弟に構っている暇なんてない。
アルフリードにアピールする時間は多くない。
仕事中、私情では話す事が出来ない…だから頑張っているところを印象付ける。
そしてセレナは逆に失敗するように仲間のメイド達で小細工をする。
いろいろと忙しいんだ、一分一秒無駄には出来ない。
ユートを無視して行こうと思ったが、息を切らしながら呼び止める。
「何?私、忙しいんだけど」
「はぁ、はぁ…お母さっ…から、伝言…」
「伝言?私、実家で暮らしているんだから直接言えばいいのに」
「帰ってからじゃ…遅いから」
「何それ」
「今日は、少し遅めに帰ってきて…お願い!」
「…はぁ?なんでよ」
「時間が余ってるなら暇つぶしに付き合うから!」
必死なユートに気味が悪いと思いながら、母からの伝言なら変な話ではないはずだ。
「仕方ないからそうする」と上から目線でユートに言った。
ユートにはこのぐらいの扱いで十分だと思っている。
とりあえず今はバイトに行こうと思って背を向けた。
なんで今日は遅く帰らないといけないのかと考えた。
自分がいたら不都合な事だという事は分かる。
今日はなにがあったのか、すっかり忘れていた事を思い出した。
毎年の事だけど、今年は焦りと苛立ちで特に自分の事を考えていなかった。
そうか、今日だったんだ。
後ろを振り返り、まだユートがいるであろうと口を開いた。
「ユート、今日ってもしかして私の…」
「誕生日?」と言おうとした口は閉ざした。
後ろにはいるはずのユートの姿がなかった。
伝言を伝えたらもう行ってしまったのかと考えたが、来る時はした足音は全く聞こえない。
それにさっきまでユートが立っていた場所が真っ赤に染まっていた。
これは、まさか…血?そして血の心当たりがある。
自分の願いは何もしなかったのに、ユートを殺して魂を奪った?
悪魔だから、契約だと言ってそういう事もするかもしれない。
顔を青ざめて、急いでその場から離れた。
両親を失うぐらいならユートをと思っていた。
ユートなら姉の幸せのために犠牲になってくれると勝手に思っていた。
それはきっと現実ではあり得ない事が起きたから、頭も現実逃避をしていた。
外の世界で魔物がいても見た事がないし、人外を見たのはあの悪魔が初めてだ。
愚弟とはいえ、弟が自分のせいで殺された現実を受け止められなかった。
城の中には、顔見知りのメイドが働いていて挨拶をしてくる。
その声が頭に入って来なくて走った。
何処を目指しているのか分からないが、とにかく行かなきゃ…という気持ちが動かした。
「きゃっ!!」
「大丈夫?」
誰かとぶつかって尻餅を付いた。
ぶつかったであろう男は手を差し伸ばしてきたが、それがイラついた。
完全に八つ当たりだけど、モブに構っている暇はなかった。
不満そうにしている男、名前は忘れたが後ろを歩く人物に気付いて振り返った。
声を掛ける前にその男を押し退けて、今来たばかりの人を見た。
一度しかまともに会話していないから、親しい関係ではない。
でも、あの悪魔を倒せるのはこの人しかいない。
男が近くにいるメイドを呼んで、引き剥がすために腕を掴まれて引っ張られた。
それでも言わないと、騎士団長であるアルフリードに…
「ちょっとアナタ!アルフリード様に失礼ですよ!」
「お願いします、アルフリード様っ」
「メイドの仕事をクビにしますよ!」
「ユートを助けてっ…」
アルフリードにとって、下層部の何でもない一般人を助けるメリットはない。
それでも、頼れる人は一人しか思い浮かばなかった。
腕を引っ張る力がなくなり、アルフリードを見るとメイドを下がらせていた。
鋭い瞳で見つめられて、今まで見た事がない顔をしていた。
アルフリードは静かな声で「どういう事か、説明してくれるか」と言っていた。
怒りを必死に抑えているような顔で、怖いと初めて感じた。
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