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25【騎士の覚悟】
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「それじゃあね」と、扉の外で声がした。
足音が遠ざかっていく。
バルトルトは人の気配が完全に無くなるのを待ってから、ゆっくりと扉を開けた。
左右を確認して、ようやくため息をついた。部屋の前にいたはずのマレクは、すでにいなかった。
通路の窓が開いていて、まだ朝に満たない冷たい風が流れ込んできた。
顔を合わせずに済んだ安堵感と、一度は顔を会わせたかったという複雑な感情が、綯い交ぜになっている。
バルトルトは窓に近寄ると、外を覗き込んだ。暗い庭を横切りながら、マレクの遠ざかる姿が見える。
先程の別れの挨拶も、扉の前で拳を握りながら耐えていた。絶対に出てはならないと、おのれを制した。
努力の甲斐もあって、マレクは遠慮なく行ってしまった。
振り返らずに、前だけを見ている。眼中にはバルトルトの存在はない。ただ、それだけのことだ。落ち込むに値しない。
そう言い聞かせても、胸に重くのしかかってくる。
簡単に割り切れないのは、自分の中に芽生えた感情のせいだ。
国王にも言い当てられた、恋だと。
確かに、心の底から、マレクを求めている。片時も離れたくない。肩が触れ合うほど近くにいたい。飽きるまで一緒にいたい。
その感情が強く出た昨晩は、完全に失態だった。話し込むマレクとフベルトの再会を邪魔した。
マレクの父がアラバンドの王弟を匿っていることは、部下の調査により、疑いは濃厚になってきていた。
つまりはマレクを泳がせて、その先の行方を追うのが効率がいいはずだった。
しかし、バルトルトは黙って見ていられなかった。考えるよりも早く登場して、ふたりを戸惑わせた。
結果、いらぬ警戒心を植え付けて、フベルトを追い払うことになった。
もちろん、単身でフベルトのもとに行くなど、自分から罠に引っかかるようなものだ。反対はしなくても、自分がついていきたい。
どれだけ言葉を尽くしても、マレクから頼られなかった。必要とされていない事実を受け入れられなかった。
愛着に近いものを見せてくれると期待していたのに、あっさり屋敷を出ていくと言われたときは、裏切られた思いがした。
子供のように拗ねた。大人の振る舞いができずに、愛する人を馬車に置き去りにした。
縋りついてでも屋敷から出ていくなと言うべきだったのに、しなかった。引き止める言葉も、見送る言葉もなく、結局、おのれを制した。
当初の予定通り泳がせることにしたのだ。
マレクの背後から、人影が追っていく。黒フードで顔を隠した男は、バルトルトの部下のシモンだ。隠密や内偵が得意なシモンならば、見つからずに追跡が可能だろう。
マレクの行方と何か起きたときの対処を任せている。
だからといって、安心はできない。走馬からの知らせを待ち、すぐに実行に移せるように準備をはじめる。
バルトルトは軍人の厳しい顔つきになった。どんなことがあってもマレクを守り抜く覚悟を決めた。
あらゆる雑念を振り切るように、窓から背中を向ける。とにかく一歩目を踏み出すことで、心はどうあれ、前だけを見て進める気がした。
◆
バルトルトはじっと、執務室で時が来るのを待っていた。何度も立ったり座ったりと、非常に落ち着きがない。書類の山は片付かないまま積まれていた。
バルトルトをよく知る騎士たちは、初めて見る上官の姿に目を丸くさせる。
戦場にいるときもまったく動じず、血も涙もない男が、たったひとつの知らせを待つだけで、右往左往している。
扉を睨みつけて、瞼を伏せる。時折、ため息を吐く姿は、恋慕を思わせる。実に滑稽だったが、人間らしさも醸し出していて、上官も人の子であったと、親しみさえわいた。
バルトルトは頭の中で「早く来い、来てくれ」とうるさく唱えている。もはや祈りというより呪いのような想いの強さだ。ノックがされ、走馬の騎士が入ってきた。
「報告いたします!」
ついに知らせを聞いたバルトルトはすでに歩き出していた。軽装のまま、部下の制止を振り切り、執務室を飛び出した。
フベルトの潜伏場所である屋敷に向かった。荒れ果てた庭には、マレクの護衛と追跡につけていたシモンと三人ほどの部下が待っていた。
すでに屋敷内の探索は終えた後だった。もぬけの殻となり、使用人らしき人物がひとりいるだけだという。
シモンは片膝をついて、赤い頭を垂らした。「報告せよ」と命じれば、青白い顔でバルトルトを仰ぎ見た。いつものおちゃらけも鳴りを潜めている。
「マレクさんが連れ去られました」
文言だけでも胸がえぐれたように苦しくなる。居ても立っても居られない。
「場所はわかっているな? 案内しろ」
一刻も早く屋敷を出ようとマントを翻したとき、シモンの声が引き止めてきた。
「それが厄介な場所でして、死の森の奥に入っていきました」
アラバンドとグロッスラリアの対立の中心にあり、誰も寄りたがらない死の森だった。バルトルトとすれば、死の森を熟知している自信はあった。
「アラバンド国とグロッスラリア国との国境にあり、幸いなことにどちらも近づきたがらないか。身を隠すにはちょうどいい場所だ」
それだけ危険な場所であることは、ここにいる部下も、シモンも承知しているだろう。バルトルトは迷わず決断できるが、他の者は命が惜しくても仕方ない。
「これより、俺は死の森へと向かう。ついてこれる者だけついてくるといい。無理強いはしない」
バルトルトはすぐさま愛馬に跨ると、馬の腹を押して、駆け出した。シモンはまったくと呆れたように、ため息をこぼす。
「あんたをひとりで行かせるわけねぇでしょうが」
シモンも含めて数人の騎士たちも、遅れて馬上の人となった。
足音が遠ざかっていく。
バルトルトは人の気配が完全に無くなるのを待ってから、ゆっくりと扉を開けた。
左右を確認して、ようやくため息をついた。部屋の前にいたはずのマレクは、すでにいなかった。
通路の窓が開いていて、まだ朝に満たない冷たい風が流れ込んできた。
顔を合わせずに済んだ安堵感と、一度は顔を会わせたかったという複雑な感情が、綯い交ぜになっている。
バルトルトは窓に近寄ると、外を覗き込んだ。暗い庭を横切りながら、マレクの遠ざかる姿が見える。
先程の別れの挨拶も、扉の前で拳を握りながら耐えていた。絶対に出てはならないと、おのれを制した。
努力の甲斐もあって、マレクは遠慮なく行ってしまった。
振り返らずに、前だけを見ている。眼中にはバルトルトの存在はない。ただ、それだけのことだ。落ち込むに値しない。
そう言い聞かせても、胸に重くのしかかってくる。
簡単に割り切れないのは、自分の中に芽生えた感情のせいだ。
国王にも言い当てられた、恋だと。
確かに、心の底から、マレクを求めている。片時も離れたくない。肩が触れ合うほど近くにいたい。飽きるまで一緒にいたい。
その感情が強く出た昨晩は、完全に失態だった。話し込むマレクとフベルトの再会を邪魔した。
マレクの父がアラバンドの王弟を匿っていることは、部下の調査により、疑いは濃厚になってきていた。
つまりはマレクを泳がせて、その先の行方を追うのが効率がいいはずだった。
しかし、バルトルトは黙って見ていられなかった。考えるよりも早く登場して、ふたりを戸惑わせた。
結果、いらぬ警戒心を植え付けて、フベルトを追い払うことになった。
もちろん、単身でフベルトのもとに行くなど、自分から罠に引っかかるようなものだ。反対はしなくても、自分がついていきたい。
どれだけ言葉を尽くしても、マレクから頼られなかった。必要とされていない事実を受け入れられなかった。
愛着に近いものを見せてくれると期待していたのに、あっさり屋敷を出ていくと言われたときは、裏切られた思いがした。
子供のように拗ねた。大人の振る舞いができずに、愛する人を馬車に置き去りにした。
縋りついてでも屋敷から出ていくなと言うべきだったのに、しなかった。引き止める言葉も、見送る言葉もなく、結局、おのれを制した。
当初の予定通り泳がせることにしたのだ。
マレクの背後から、人影が追っていく。黒フードで顔を隠した男は、バルトルトの部下のシモンだ。隠密や内偵が得意なシモンならば、見つからずに追跡が可能だろう。
マレクの行方と何か起きたときの対処を任せている。
だからといって、安心はできない。走馬からの知らせを待ち、すぐに実行に移せるように準備をはじめる。
バルトルトは軍人の厳しい顔つきになった。どんなことがあってもマレクを守り抜く覚悟を決めた。
あらゆる雑念を振り切るように、窓から背中を向ける。とにかく一歩目を踏み出すことで、心はどうあれ、前だけを見て進める気がした。
◆
バルトルトはじっと、執務室で時が来るのを待っていた。何度も立ったり座ったりと、非常に落ち着きがない。書類の山は片付かないまま積まれていた。
バルトルトをよく知る騎士たちは、初めて見る上官の姿に目を丸くさせる。
戦場にいるときもまったく動じず、血も涙もない男が、たったひとつの知らせを待つだけで、右往左往している。
扉を睨みつけて、瞼を伏せる。時折、ため息を吐く姿は、恋慕を思わせる。実に滑稽だったが、人間らしさも醸し出していて、上官も人の子であったと、親しみさえわいた。
バルトルトは頭の中で「早く来い、来てくれ」とうるさく唱えている。もはや祈りというより呪いのような想いの強さだ。ノックがされ、走馬の騎士が入ってきた。
「報告いたします!」
ついに知らせを聞いたバルトルトはすでに歩き出していた。軽装のまま、部下の制止を振り切り、執務室を飛び出した。
フベルトの潜伏場所である屋敷に向かった。荒れ果てた庭には、マレクの護衛と追跡につけていたシモンと三人ほどの部下が待っていた。
すでに屋敷内の探索は終えた後だった。もぬけの殻となり、使用人らしき人物がひとりいるだけだという。
シモンは片膝をついて、赤い頭を垂らした。「報告せよ」と命じれば、青白い顔でバルトルトを仰ぎ見た。いつものおちゃらけも鳴りを潜めている。
「マレクさんが連れ去られました」
文言だけでも胸がえぐれたように苦しくなる。居ても立っても居られない。
「場所はわかっているな? 案内しろ」
一刻も早く屋敷を出ようとマントを翻したとき、シモンの声が引き止めてきた。
「それが厄介な場所でして、死の森の奥に入っていきました」
アラバンドとグロッスラリアの対立の中心にあり、誰も寄りたがらない死の森だった。バルトルトとすれば、死の森を熟知している自信はあった。
「アラバンド国とグロッスラリア国との国境にあり、幸いなことにどちらも近づきたがらないか。身を隠すにはちょうどいい場所だ」
それだけ危険な場所であることは、ここにいる部下も、シモンも承知しているだろう。バルトルトは迷わず決断できるが、他の者は命が惜しくても仕方ない。
「これより、俺は死の森へと向かう。ついてこれる者だけついてくるといい。無理強いはしない」
バルトルトはすぐさま愛馬に跨ると、馬の腹を押して、駆け出した。シモンはまったくと呆れたように、ため息をこぼす。
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シモンも含めて数人の騎士たちも、遅れて馬上の人となった。
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