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29【死神事件の後】
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マレクを連れ帰って、医師の手当てを受けさせた。幸いなことに傷は臓器にまで達していなかった。
フベルトのような素人の腕では、確実には仕留めきれないようである。
一命は取りとめたものの、二日経っても、目を覚まさなかった。
バルトルトはマレクの世話をしつつ、半日以上を自室で過ごした。
森にあった死神の里を壊滅させたことは、バルトルトの勲章をひとつ増やす結果になった。
しかし、そんなものは気にならなかった。マレクが意識を失う間際に言ってくれたひとことが、気になって仕方ない。
バルトルトは寝台にうつ伏せで眠るマレクの額を布で拭いながら、「あれは何だったんだ」とたずねた。
――「バル、愛してる」
そう告げた本人は答えることもなく、静かな呼吸を続けている。
バルトルトはマレクの首元に指を添えた。鼓動は確かに音を刻んでいる。瞼を伏せて、心音を数えた。触れば温かいし、生きているのにどうして目を覚まさないのだろう。
バルトルトはマレクの手を両手で握り込んだ。血に染まっていた手は、バルトルトが丁寧に拭いた。爪の隙間も時間をかけて綺麗に落とした。
「頼むから、目を覚ましてくれ」
祈るように自身の額に押し付けた。執事が部屋に入ってくるまで、ずっとそうしていた。
◆
マレクが目を覚まさない間も、事態は進展していた。
死神の里をくまなく調べたところ、ある家の地下に牢屋があった。一人分の寝台しかない狭い空間には、アラバンド国の王弟が横たわっていた。
王弟が囚われていた事実は、ホンザとフベルトの企てを裏付ける証拠になった。
シモンが王弟を発見し、グロッスラリア王国の城まで連行した。今は城内にて、取り調べを行っている。王弟は「企てには加担していない」と関与を否定したそうだ。
ホンザも厳しい取り調べを受けているという。取り調べが終われば、裁判で判決を言い渡されるだろう。
それを見越してか、できるだけ裁判までの時間を伸ばすために、黙秘を続けているという。どこまでも悪知恵が働く男だが、国王の命令があれば、すぐにでも処刑できる。
本来ならバルトルトも立ち会うべきだが、マレクのそばを片時も離れたくない。目を覚ましたとき、真っ先に自分の姿を見てほしいと思った。
しかし、そうも行かなくなった。国王の書簡が届いたからだ。
内容を要約すると、これからのバルトルトにとって、大事な話があるらしい。気持ちとして断りたいのはやまやまだが、マレクにも関連した話とあって、バルトルトは大人しく登城した。
謁見の間に通されて、国王が現れるまで跪く。面を上げることを許されると、バルトルトは国王の顔を拝んだ。
「“お前の”マレクはまだ目を覚まさぬのか? 王妃もマレクの体調を気にして、私にはまったく構ってくれない」
今は国王の惚気にも何も反応できない。バルトルトは「はっ」と答えた。
「お前を呼んだのは他でもない、アラバンドについてのことだ。それはマレクにも関連している」
国王は玉座から腰を上げると、バルトルトに歩み寄ってきた。同じ目線になるようにしゃがみこむ。先程までの親しみやすさは完全に鳴りを潜めた。数多の戦地をくぐり抜けた騎士団長でさえ、王の迫力に息を呑む。
「お前にはアラバンドの復興のため、ある地方に行ってもらいたい。そこは――」
次の国王の言葉にバルトルトは目を瞠った。ここにマレクがいないのが残念でならなかった。
「行ってくれるな?」
断る気はなかった。ただ、バルトルトひとりでできるとは到底思わない。アラバンドはもちろんのこと、今度赴任する場所を知り尽くした優秀な補佐が必要だ。
そして、真っ先に浮かんだ候補はただ一人だった。
国王もマレクが目を覚ますことを信じて、提案しているに違いない。バルトルトは恭しく頭を垂れる。胸に手を当てて、「承知いたしました」と答えた。
国王は威厳を解いて、柔らかく笑った。
「マレクが目を覚ましたら、王妃に真っ先に知らせよ。夜の営みがないのは、やはり寂しいからな」
国王と王妃の夜の事情などどうでもいいが、本当にマレクにはいい加減、目を覚ましてもらいたい。
あの深い青色の中に自分を写し込みたい。言いっ放しはずるい。自分からも愛をささやきたい。周囲から呆れられるほどそばにいて、添い遂げたいとまで思っている。その願いをすべて叶えてくれるのは、マレクだけだ。
「必ず、ご報告いたします」
バルトルトは謁見の間から退出するやいなや、急いで馬車に乗り込み、自分の屋敷へと帰っていった。
◆
マレクは未だに夢の中にいた。
扉を閉ざしたクローゼットの内側は、完全な暗闇ができていた。
膝を抱えてじっとしていると、扉の外から声が聞こえてきた。
「マレク、どこにいる! 隠れても無駄だ!」
恐怖で体が震える。両耳を手で塞いで聞こえないようにした。
兄のフベルトは父の言いなりで、マレクを見つけると、躊躇いなく痛めつけてくる。泣いてもすがっても許してくれない。
むしろ、泣けば泣くほど、兄の残虐性を刺激してしまう。「もっと、泣け」と平気で蹴る力を強くする。マレクが動けなくなるまで、折檻は終わらない。
――「泣くな、叫ぶな」と繰り返し、自分の中で唱える。
マレクは唇を噛み締めて、涙を耐えるしかなかった。
幼いマレクを助けてくれたルジェクが、もうこの世にいないのは知っている。執事のオルジフも屋敷にはいなかった。いたとしても、オルジフにフベルトを咎めることはできない。
ここで助けを待っても、どうにもならないことはわかっている。しかし、どうにもならなくても、どうにかしなくてはならない。
クローゼットが外側から強く叩かれた。遠慮のない音に、マレクは小さな体を震わせた。か細い悲鳴を上げる。できるだけ奥の方へと逃げようと、内側の壁に背中をつけた。
軋む音を立てながら、ひとりでに扉が開かれる。
クローゼットの隙間が広がると、靴先に光が差してくる。どんどん光は広がっていき、マレクは眩しくて目を細めた。
腕が伸びてくる。太い指がマレクの手首に触れた。がっしりと離さないようにと強く握られる。光が眩しすぎて、人の顔は見られない。
「マレク! 目を覚ませ! 覚ましてくれ!」
切羽詰まった声には聞き覚えがあった。
光の先が見通せるようになったとき、マレクはその人の名を呼んだ。
自らの意志で闇から這い上がり、光の中へと向かった。
◆
マレクが目を覚ましたとき、寝室には誰もいなかった。勢いよく上体を起こそうとすると、背中が痛くてうずくまる。
大きな寝台の中央に寝かされていた。ここには見覚えがあった。マレクが忍び込んだバルトルトの部屋だ。つまり、マレクはバルトルトの自室で寝ていたことになる。
頭の中で一つずつ整理していく。意識を失うまでのホンザとの一方的なやり取り。フベルトに刺されたこと。そして、フベルトの喉元を掻っ切ったこと。バルトルトが現れて、倒れかけた自分の体を受け止めてくれた。
――「バル、愛してる」
自分の声を思い返して、全身が熱くなった。マレクは両手で顔を覆った。意識が朦朧としていたものの、その声はバルトルトにもはっきり聞こえたはずだ。
伝えるつもりはなかった。
胸の中に押し込めて、バルトルトの前から去ろうと決めていたのに、できなかった。いざ死を前にして、未練がましく伝えてしまった。
バルトルトはどう思っただろうか? 今更、死の間際に言うなと腹を立てていたら申し訳ない。
マレクが羞恥に悶えていると、部屋の外が騒がしくなってきた。大きな足音が近づいてくる。
顔を上げると、扉が勢いよく開けられるところだった。弾け飛ばなかった扉は随分と丈夫な作りをしているようだ。
バルトルトは恐ろしく眉間にシワを寄せて、不機嫌を隠そうともしない。じろっとマレクを睨めつけた。バルトルトを知らない人間なら、その鋭い目に恐れを抱くことだろう。
しかし、マレクは違う。琥珀色の瞳を真っ直ぐに受けて、目頭が熱くなってきた。ずっと、夢の中でも求めていた人が変わらずそこに立っていたからだ。
「マレク! 早く起き……?」
先程の威勢はどこへやら、バルトルトは呆けたように口を開けた。怒らせていた肩の力が抜けていく。もはや、立っていることも忘れているのではないだろうか。マレクをじっと見つめている。
「バルトルト、おはよ」
マレクはいつものように軽く笑おうとした。それなのに涙が溢れてきて、口元が歪んだ。唇が震えて、嗚咽が漏れそうになる。
自分はこんなにもバルトルトに会いたかったのかと、全身で感じた。視線だけでなく、腕の温もりも感じたい。
どんどん欲張りになる。両手を広げて、バルトルトを迎えた。
「マレク、マレクっ」
バルトルトも目を潤ませていた。すぐさま駆け寄ると、寝台に片膝をついて、マレクを抱き寄せた。
遠慮のない強い抱き方に、マレクは泣き笑いする。せっかく整えた髪も振り乱しながら、マレクの元に来てくれた。涙を流しながら再会を喜んでくれた。
人生において、これほど嬉しいことがあるのだろうか。
逞しい腕に自分の手を添えて、マレクは至近距離からバルトルトを見つめた。愛する人の温もりに包まれながら、小さく笑う。「バル」と呼ぶと、声が返ってきた。
「マレク、愛している」
胸がくすぐったくてたまらない。マレクは誤魔化すようにバルトルトの唇に自分の唇を重ねた。してやったりと笑ってみせると、バルトルトは耳を赤らめながらも反撃とばかりに、マレクの顔中にキスを降らせた。
フベルトのような素人の腕では、確実には仕留めきれないようである。
一命は取りとめたものの、二日経っても、目を覚まさなかった。
バルトルトはマレクの世話をしつつ、半日以上を自室で過ごした。
森にあった死神の里を壊滅させたことは、バルトルトの勲章をひとつ増やす結果になった。
しかし、そんなものは気にならなかった。マレクが意識を失う間際に言ってくれたひとことが、気になって仕方ない。
バルトルトは寝台にうつ伏せで眠るマレクの額を布で拭いながら、「あれは何だったんだ」とたずねた。
――「バル、愛してる」
そう告げた本人は答えることもなく、静かな呼吸を続けている。
バルトルトはマレクの首元に指を添えた。鼓動は確かに音を刻んでいる。瞼を伏せて、心音を数えた。触れば温かいし、生きているのにどうして目を覚まさないのだろう。
バルトルトはマレクの手を両手で握り込んだ。血に染まっていた手は、バルトルトが丁寧に拭いた。爪の隙間も時間をかけて綺麗に落とした。
「頼むから、目を覚ましてくれ」
祈るように自身の額に押し付けた。執事が部屋に入ってくるまで、ずっとそうしていた。
◆
マレクが目を覚まさない間も、事態は進展していた。
死神の里をくまなく調べたところ、ある家の地下に牢屋があった。一人分の寝台しかない狭い空間には、アラバンド国の王弟が横たわっていた。
王弟が囚われていた事実は、ホンザとフベルトの企てを裏付ける証拠になった。
シモンが王弟を発見し、グロッスラリア王国の城まで連行した。今は城内にて、取り調べを行っている。王弟は「企てには加担していない」と関与を否定したそうだ。
ホンザも厳しい取り調べを受けているという。取り調べが終われば、裁判で判決を言い渡されるだろう。
それを見越してか、できるだけ裁判までの時間を伸ばすために、黙秘を続けているという。どこまでも悪知恵が働く男だが、国王の命令があれば、すぐにでも処刑できる。
本来ならバルトルトも立ち会うべきだが、マレクのそばを片時も離れたくない。目を覚ましたとき、真っ先に自分の姿を見てほしいと思った。
しかし、そうも行かなくなった。国王の書簡が届いたからだ。
内容を要約すると、これからのバルトルトにとって、大事な話があるらしい。気持ちとして断りたいのはやまやまだが、マレクにも関連した話とあって、バルトルトは大人しく登城した。
謁見の間に通されて、国王が現れるまで跪く。面を上げることを許されると、バルトルトは国王の顔を拝んだ。
「“お前の”マレクはまだ目を覚まさぬのか? 王妃もマレクの体調を気にして、私にはまったく構ってくれない」
今は国王の惚気にも何も反応できない。バルトルトは「はっ」と答えた。
「お前を呼んだのは他でもない、アラバンドについてのことだ。それはマレクにも関連している」
国王は玉座から腰を上げると、バルトルトに歩み寄ってきた。同じ目線になるようにしゃがみこむ。先程までの親しみやすさは完全に鳴りを潜めた。数多の戦地をくぐり抜けた騎士団長でさえ、王の迫力に息を呑む。
「お前にはアラバンドの復興のため、ある地方に行ってもらいたい。そこは――」
次の国王の言葉にバルトルトは目を瞠った。ここにマレクがいないのが残念でならなかった。
「行ってくれるな?」
断る気はなかった。ただ、バルトルトひとりでできるとは到底思わない。アラバンドはもちろんのこと、今度赴任する場所を知り尽くした優秀な補佐が必要だ。
そして、真っ先に浮かんだ候補はただ一人だった。
国王もマレクが目を覚ますことを信じて、提案しているに違いない。バルトルトは恭しく頭を垂れる。胸に手を当てて、「承知いたしました」と答えた。
国王は威厳を解いて、柔らかく笑った。
「マレクが目を覚ましたら、王妃に真っ先に知らせよ。夜の営みがないのは、やはり寂しいからな」
国王と王妃の夜の事情などどうでもいいが、本当にマレクにはいい加減、目を覚ましてもらいたい。
あの深い青色の中に自分を写し込みたい。言いっ放しはずるい。自分からも愛をささやきたい。周囲から呆れられるほどそばにいて、添い遂げたいとまで思っている。その願いをすべて叶えてくれるのは、マレクだけだ。
「必ず、ご報告いたします」
バルトルトは謁見の間から退出するやいなや、急いで馬車に乗り込み、自分の屋敷へと帰っていった。
◆
マレクは未だに夢の中にいた。
扉を閉ざしたクローゼットの内側は、完全な暗闇ができていた。
膝を抱えてじっとしていると、扉の外から声が聞こえてきた。
「マレク、どこにいる! 隠れても無駄だ!」
恐怖で体が震える。両耳を手で塞いで聞こえないようにした。
兄のフベルトは父の言いなりで、マレクを見つけると、躊躇いなく痛めつけてくる。泣いてもすがっても許してくれない。
むしろ、泣けば泣くほど、兄の残虐性を刺激してしまう。「もっと、泣け」と平気で蹴る力を強くする。マレクが動けなくなるまで、折檻は終わらない。
――「泣くな、叫ぶな」と繰り返し、自分の中で唱える。
マレクは唇を噛み締めて、涙を耐えるしかなかった。
幼いマレクを助けてくれたルジェクが、もうこの世にいないのは知っている。執事のオルジフも屋敷にはいなかった。いたとしても、オルジフにフベルトを咎めることはできない。
ここで助けを待っても、どうにもならないことはわかっている。しかし、どうにもならなくても、どうにかしなくてはならない。
クローゼットが外側から強く叩かれた。遠慮のない音に、マレクは小さな体を震わせた。か細い悲鳴を上げる。できるだけ奥の方へと逃げようと、内側の壁に背中をつけた。
軋む音を立てながら、ひとりでに扉が開かれる。
クローゼットの隙間が広がると、靴先に光が差してくる。どんどん光は広がっていき、マレクは眩しくて目を細めた。
腕が伸びてくる。太い指がマレクの手首に触れた。がっしりと離さないようにと強く握られる。光が眩しすぎて、人の顔は見られない。
「マレク! 目を覚ませ! 覚ましてくれ!」
切羽詰まった声には聞き覚えがあった。
光の先が見通せるようになったとき、マレクはその人の名を呼んだ。
自らの意志で闇から這い上がり、光の中へと向かった。
◆
マレクが目を覚ましたとき、寝室には誰もいなかった。勢いよく上体を起こそうとすると、背中が痛くてうずくまる。
大きな寝台の中央に寝かされていた。ここには見覚えがあった。マレクが忍び込んだバルトルトの部屋だ。つまり、マレクはバルトルトの自室で寝ていたことになる。
頭の中で一つずつ整理していく。意識を失うまでのホンザとの一方的なやり取り。フベルトに刺されたこと。そして、フベルトの喉元を掻っ切ったこと。バルトルトが現れて、倒れかけた自分の体を受け止めてくれた。
――「バル、愛してる」
自分の声を思い返して、全身が熱くなった。マレクは両手で顔を覆った。意識が朦朧としていたものの、その声はバルトルトにもはっきり聞こえたはずだ。
伝えるつもりはなかった。
胸の中に押し込めて、バルトルトの前から去ろうと決めていたのに、できなかった。いざ死を前にして、未練がましく伝えてしまった。
バルトルトはどう思っただろうか? 今更、死の間際に言うなと腹を立てていたら申し訳ない。
マレクが羞恥に悶えていると、部屋の外が騒がしくなってきた。大きな足音が近づいてくる。
顔を上げると、扉が勢いよく開けられるところだった。弾け飛ばなかった扉は随分と丈夫な作りをしているようだ。
バルトルトは恐ろしく眉間にシワを寄せて、不機嫌を隠そうともしない。じろっとマレクを睨めつけた。バルトルトを知らない人間なら、その鋭い目に恐れを抱くことだろう。
しかし、マレクは違う。琥珀色の瞳を真っ直ぐに受けて、目頭が熱くなってきた。ずっと、夢の中でも求めていた人が変わらずそこに立っていたからだ。
「マレク! 早く起き……?」
先程の威勢はどこへやら、バルトルトは呆けたように口を開けた。怒らせていた肩の力が抜けていく。もはや、立っていることも忘れているのではないだろうか。マレクをじっと見つめている。
「バルトルト、おはよ」
マレクはいつものように軽く笑おうとした。それなのに涙が溢れてきて、口元が歪んだ。唇が震えて、嗚咽が漏れそうになる。
自分はこんなにもバルトルトに会いたかったのかと、全身で感じた。視線だけでなく、腕の温もりも感じたい。
どんどん欲張りになる。両手を広げて、バルトルトを迎えた。
「マレク、マレクっ」
バルトルトも目を潤ませていた。すぐさま駆け寄ると、寝台に片膝をついて、マレクを抱き寄せた。
遠慮のない強い抱き方に、マレクは泣き笑いする。せっかく整えた髪も振り乱しながら、マレクの元に来てくれた。涙を流しながら再会を喜んでくれた。
人生において、これほど嬉しいことがあるのだろうか。
逞しい腕に自分の手を添えて、マレクは至近距離からバルトルトを見つめた。愛する人の温もりに包まれながら、小さく笑う。「バル」と呼ぶと、声が返ってきた。
「マレク、愛している」
胸がくすぐったくてたまらない。マレクは誤魔化すようにバルトルトの唇に自分の唇を重ねた。してやったりと笑ってみせると、バルトルトは耳を赤らめながらも反撃とばかりに、マレクの顔中にキスを降らせた。
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