化け物騎士は元令息の血塗られた手を離さない

コムギ

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33【騎士の有り余る体力】

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 バルトルトは意識を失ったマレクを前に、さすがに無理をさせすぎたかと、苦笑を浮かべた。

 はじめからこんなにがっつくつもりはなかった。マレクの気持ち重視で進められたらと、悠長に構えていた。

 だが、実際、マレクの胸を目にした瞬間、抑えなど効かなくなっていた。

 恥じらいながら「ごめんなさい」と言われたとき、あまりの可愛さに、バルトルトの意識が一瞬、飛びかけた。言葉さえも失った。

 無意識に手が伸びた。隠れた先が気になって仕方なく、服をはだけさせた。

 後はもうマレクを貪り続けた。いちいち断りを入れたのは、やせ我慢だった。どうにか理性があるように見せていた。実際、最後の方は気づかう余裕もなく、マレクが意識を飛ばすまで腰を振り続けた。

 激しい運動をしたというのに、現在の自分は体力を持て余している。獣の血肉を食らった日は特に、力が漲ってきて寝付きが悪くなる。そういうときは、剣を振り回したり、走ったりと発散するのだが、今はマレクの顔を眺めていたい。

 マレクの頭を起こさない程度に優しく撫でた。青色の瞳が瞼の裏に隠されている。小振りな鼻は安らかな寝息を立てている。口元まで目線を移すと、あの言葉を思い出す。

 ――「好き、バル」

 マレクが意識を失う前に零した言葉だ。耳に届いた瞬間、全身の血が沸き立った。特に下半身が燃えるように熱くなった。あの時のマレクは可愛すぎて、完全にやられた。

 一度、快感を体で覚えると、我慢など効かない。

 達する寸前の強烈な中の締まりを思い出し、また入りたいと下半身が反応してくる。マレクの頭を穏やかな気持ちで撫でていたはずなのに、雄が膨らんできた。

 バルトルトは前屈みの体勢で、音を立てないように、寝台から降りた。手早く服を身に着けた。

 井戸から汲んだ水を台所で熱して、部屋まで運んだ。

 なかなか、いい運動になった。マレクの体の感触を頭の中から追い出すには、ちょうど良かった。布は適当にあったのを持ってきた。

 清潔そうな布を浸して盆に絞ってから、丁寧にマレクの体を拭いていく。

 今まで生きてきた中で、こんなにも繊細な作業をしたことがなかった。できるだけ、胸や下半身は見ないように努めた。尻穴は仕方なく凝視せざるを得なかった。

 許されるなら、何度だってしたい。しかし、マレクの体のことを考えると、抑えなくてはと思う。自分の欲望を優先させてまで叶えたいものではない。

 一息吐いて、傍らに腰を下ろす。

 安らかに眠るマレクの額に口づけを落とした。

 バルトルトは隣に横たわった。抱き寄せて、なるべくマレクの体を見ないように瞼を閉じる。

 腕に張り付くマレクの肌の感触。温かさ。寝息が胸板に触れてこそばゆい。マレクの匂いを強く感じて、また下半身が熱を持ってくる。

 全身でマレクを求めている。これは一生鎮まらないだろうと諦めた。



 眠れぬ夜を過ごし、マレクは朝まで起きなかった。目が覚めたときには、日だまりを受けたように柔らかな表情で挨拶してくれた。しかし、頭の靄がはっきりしてくると、窓の外から差してきた日の光に目を見開いた。

「もう、朝になってる!」

 勢いよく上体を起こして、胸があらわになっていることにも気づいていない。明るいところで見る、程よく筋肉のついたマレクの体は眼福だ。しなやかな腰や背中、うなじにいたるまで、すべてを舐め回したい気分にかられる。

 あまりに変態だと自覚しているため、今はしない。

 それでも、このくらいは許されるだろうと、バルトルトは身を起こして、肩に腕を回した。そして、頬や肩に口づけを落とした。視線を外さないまま、わざと音を立てて、唇を離す。

 マレクは一瞬、うっとりしかけたが、すぐに首を振った。

「帰らないと」
「まだいいだろう」
「え、だって、休みは昨日までで、騎士のお仕事があるのに」

 バルトルトはさらに力を加えて、マレクを腕の中に閉じ込めた。

「俺はもう少し、こうしていたい」

 本音を口にすれば、目の前の頬が美味しそうに熟れる。唸り声を上げる唇は尖っていた。

 バルトルトに赤らめた目元を向けた。恥じらったように上目遣いで見てくる。

「本当に、少しだけだからね」

 マレクの方からバルトルトの腰に腕を回して、抱きついてくる。それだけで興奮し、雄が膨らみはじめた。掛け布からもわかるように押し上げている。

 バルトルトはそれよりもマレクの眉間に唇を押し付けた。本当は唇にしたいが、あまりやり過ぎると抑えが効かなくなる。昨日の二の舞いになるのは、ごめんだ。一日中、寝顔を見ていても飽きないが、マレクの体のことを考えると、そうも言えなかった。

 マレクの顔が上がる。バルトルトの唇を目がけて、一瞬触れると離れていった。人の気も知らないのだろう。至近距離の顔がしてやったりと笑った。

 不意打ちをつかれたバルトルトの顔が間抜けだったからだろう。

「僕だって、したいときはするし、そんなに驚かないでよ」

 くすくすと笑うマレクが可愛くて、バルトルトはなけなしの理性を失った。抱き締めたまま寝台に横たわると、深い口づけでマレクのささやかな抵抗を奪った。

 結局、その日はグロッスラリア王国に帰れず、明朝、怒れるマレクとともに馬を飛ばした。
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