マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜

潟湖

文字の大きさ
9 / 125

第9話 新天地へ(side:レミ)

しおりを挟む
 ディーノ村の冒険者ギルドで、全財産確保と受付嬢クレアへの挨拶を済ませたレミは、ギルド近くの馬車停留所でハイロマ王国行きの乗り合い馬車を探した。

 身重の身体で乗り合い馬車に乗って長距離移動するのは、かなりきついからなるべく避けたい。
 しかし、貴族が乗るような乗り心地の良さげな馬車には平民など乗れないし、翼竜ワイバーンの籠便なんてもっとお値段高くて使えやしない。

 だが、22歳にして黄金級冒険者となっていたグランの稼ぎはかなり良く、消耗品である回復剤や傷んだ武器防具を買い替えても余りある貯蓄があった。
 その蓄えを今こそ使うべく、レミは停留所にいる商隊の集団に個別交渉をした。

「あの、もし良かったら私をハイロマ王国までいっしょに乗せていってくださいませんか?もちろんお代は、ちゃんと出しますので」

 だが、この交渉がなかなか上手くいかない。
 明らかにお腹の大きい女性、道中で産気づいたりでもされたら敵わん!と、けんもほろろな対応が続いた。
 そこにいる殆どの御者に断られ続け、どうしようかといよいよ途方に暮れかけたその時。いきなり誰かにレミの背後から声をかけられた。

「ねぇねぇ、そこのお姉さん」

 一瞬びっくりしながらその声に振り向くと、小柄なレミより僅かに小さいくらいの少年がいた。年の頃は12、3歳くらいか。
 ショートの黒髪の頭のてっぺんには、ふさふさとして大きな可愛らしい猫耳が見える。金茶色の大きな瞳が愛らしく、少年らしいあどけなさがまだ残っている。
 よく見ると、後ろに細長めの黒い尻尾がピョコピョコと動いているのも見える。
 どうやら獣人の少年のようだ。

「そのお腹じゃ、普通の馬車乗るのは厳しくない?俺の翼竜籠に乗せてってやろうか?」

 レミは驚き戸惑いを隠せないながらも、自分に声をかけてくれた少年に向き合い問いかけた。

「……本当にいいの?……でも、翼竜の籠便ってすごくお金がかかるんでしょう?そこまでのお金、今の持ち合わせで足りるかどうかも分からないんだけど……」

 おずおずと言うレミに対し、少年はカラカラと笑いながら元気な声で答えた。

大丈夫だーいじょぶ大丈夫だってー、俺今日ここのギルドに届け物したばかりで、カゴ空っぽなんだよ。往復便じゃなくて片道便の仕事だったから、帰りはそのまま空いてんだよね」
「そういう時はさ、なるべく客とっ捕まえて多少寄り道でもいいから帰る前にちっとでも売上出せ!ってねー、じいちゃんからいっつも言い聞かせられてんのよ」
「全くさー、優秀な翼竜乗りってのも辛いもんだよねー、ニャハハハッ」
「そうなの……あなたも大変ねぇ……」

 少し雑談を交えながら、レミは少年に確認する。

「そしたら、あなたの翼竜籠便でハイロマ王国までいくらで移動してくれるの?」
「んー、ハイロマ王国の場所にもよるけどぉ、お姉さんはどこに行きたいの?」
「行きたい場所は特に決まってないの。ただ、ここには帰らずそのままハイロマ王国に移住するつもりだから、なるべくなら移民の手続きとか諸々まとめてこなせる大きめの街や都市がいいかなぁって」
「そっかー、んー……そしたらアレかなー、国境沿いで一番大きなエメラルドシティ?がいいかなぁ。ハイロマの南玄関口と呼ばれるあすこなら、国外から来た人々の移住に関するいろんな手続きもできる筈だし」
「へぇ、そうなのね。それはいいことを聞いたわ!なら、そのオススメのエメラルドシティに行こうかな。そこまでの翼竜籠便はおいくら払えばいいの?」
「そうだねー、そしたら10万Gでどう? 2泊3日の空の旅、宿代込み!ここから出るハイロマ行きの翼竜籠便としちゃかなり格安な方だよ?」

 レミは思わず息を呑みかける。というか「ヒョエッ」とか少し声に出ちゃってた気がする。
 10万Gと言えば、結構な大金だ。レミがディーノ村で宿屋の手伝いで1ヶ月間休み無く毎日働いても、10万Gなんて絶対に届かない。10万どころか1万いくかどうかすらも怪しい。

 だが、確かに2泊3日でハイロマ王国に行けるならレミにとってもかなり助かる。
 普通の乗り合い馬車なら、カタポレンの森を大きく迂回して一度大陸の端の海沿いを行かなければならないので、ハイロマ王国まで10日はかかる距離なのだ。
 その日数を考えると、見た目にも分かる身重のレミがハイロマ行きの馬車に乗ることを悉く断られたのも、致し方ないことと言えた。

 しかし、空路なら悪路の山道や森の中をガタガタと揺られることなく、より短時間で目的地に進めて道中の宿代も込みだという。
 レミはくるりと踵を返し、少年に背を向けながら財布の中を見た。

「1、2、3……5…… うん、これなら、まぁ……」

 レミは少し考えた後、向き直って少年に答えた。

「分かりました。お金もちゃんと足ります。では、今からあなたの翼竜籠便で、ハイロマのエメラルドシティ行きをお願いできますか?」
「もちろんもちろん、ニャハハハッ!」
「…………ふふッ」

 10万Gという金額は、レミにとっては十分に大金だが全く払えないほどではない。手持ちのお金で賄える範囲だ。
 基本倹約家のレミにとっては驚愕のお値段だが、背に腹は替えられない。お金も大事だが、今は何よりお腹の子の安全を最も優先して考えて、行動しなければならないのだから。

「ではお願いね。頼もしい御者さん、あなたのお名前は何ていうのかしら?」
「俺?俺はシグニスってんだ。安心安全迅速快適がモットーの、翼竜籠便界の王子様だぜ!よろしくな!」
「ふふっ、ありがとう。私はレミっていうの。ハイロマ王国までよろしくお願いね?」
「任せとけって!あッ、お代は前金半分到着後に残り半分で頼むね?ニャハハハッ!」

 ニパッと明るく笑う、獣人の少年シグニス。
 こうしてレミは、祖国アクシーディア公国を旅立ち新天地ハイロマ王国へと向かっていった。




====================

Gはアクシーディア国の通貨単位です。読み方はまんま「ジー」。
1Gは日本円にして約10円です。

ああッ、主人公が出てこれない……
次こそは本編に戻ります……ッ……!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

黄金の魔導書使い  -でも、騒動は来ないで欲しいー

志位斗 茂家波
ファンタジー
‥‥‥魔導書(グリモワール)。それは、不思議な儀式によって、人はその書物を手に入れ、そして体の中に取り込むのである。 そんな魔導書の中に、とんでもない力を持つものが、ある時出現し、そしてある少年の手に渡った。 ‥‥うん、出来ればさ、まだまともなのが欲しかった。けれども強すぎる力故に、狙ってくる奴とかが出てきて本当に大変なんだけど!?責任者出てこぉぉぉぃ!! これは、その魔導書を手に入れたが故に、のんびりしたいのに何かしらの騒動に巻き込まれる、ある意味哀れな最強の少年の物語である。 「小説家になろう」様でも投稿しています。作者名は同じです。基本的にストーリー重視ですが、誤字指摘などがあるなら受け付けます。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

ゴミ捨て場領主のクラフト無双 ~最弱魔法【分解と合成】で領地を黄金郷に変えたら、俺を見下していた大貴族令嬢たちが掌を返してすり寄ってきた件~

namisan
ファンタジー
東西南北の大貴族から「毒の川」「凶暴な魔獣」「莫大な借金」を押し付けられ、王国の『ゴミ捨て場』と化したローゼンベルク領。 父と兄を謀殺され、その絶望の領地を押し付けられた無能貴族のアークは、領地の分割を企む高慢な令嬢たち(王女、公爵令嬢、姫将軍など)に嘲笑われていた。 だが、彼には現代の知識と、隠された最強チート能力があった! 触れたものを瞬時に素材に戻し、全く別のモノに作り変える神の御業――【分解と合成】。 「毒の川」を分解して『超高価な宝石と純水』へ! 「魔獣の死骸」と「瓦礫」を合成して『絶対に壊れない防壁』へ! 借金取りには新素材を高値で売りつけ、逆に敵の経済を支配していく。 圧倒的なクラフト能力で、瞬く間にゴミ捨て場を「無敵の黄金郷」へと作り変えていくアーク。 己の敗北を悟り、震え上がる悪徳貴族と高慢な令嬢たち。 さらに、アークの圧倒的な知略と底知れぬ実力は、気高い令嬢たちの本能に深く刻み込まれていく。 「どうか、私をあなたの手駒としてお使いください……っ!」 プライドを完全にへし折られた最高位の美少女たちは、いつしかアークの与える『恩恵』なしでは生きられないほど、彼に絶対の忠誠と依存を誓うようになっていく――。 最弱のゴミ捨て場から始まる、爽快クラフト内政&ざまぁファンタジー、堂々開幕!

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

処理中です...