マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜

潟湖

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第26話 底知れぬ実力

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 ライトのほっぺをムニりムニられ、一頻り戯れた後、二人は改めて向き合った。

「で、何でまたいきなり首都ラグナロッツァなんだ?人に慣れるためなら、そんな大都市よりもうちょい近場の街とかから始めてもいいんじゃないか?」
「うん、人見知りしないようにするだけなら、それでもいいんだけどね」
「他にも何か目的があんのか?」
「ぼく、図書館か本屋さんに行きたいんだ」
「図書館か、本屋?」

 ライトはこれまでにも、たくさんの本を読んできた。
 もともとレオニス宅の書斎にあった数々の専門書だけでなく、新しく買ってもらったりもしていた。
 それこそ幼子らしからぬ勢いで数々の書物を読み漁るその姿は、異様ですらある。

 しかし、おねだりして買ってもらった書物のほとんどはライトの年相応さを演じるべく、絵本だったり童話の本だったり、子供向けの歴史本などであった。
 確かに、この世界の歴史や神話を知るには童話本やお伽噺は入門書として最適だ。ライトの中身の年齢を悟られないようにするにももってこいだし、まさに一石二鳥である。
 だが、これからはそんな悠長なことを言ってはいられない。入門書ではなく、本格的な書物からより深い知識を得なければならないのだ。

 ライトの知るアイテムの差異や、職業に関する調査だけでなく、この世界に広がる根本と現状を知ることが喫緊の課題だ。
 それを知らなければ、俺の前世の知識など何の役にも立たないし活かすこともできない。兎にも角にも、全てにおいて知識が足りないのだ。
 そしてその問題を解決するには、一に情報、二に情報、三四も五六も以下略同文なのだ!

「うん、ぼく、この世界のこと、まだ何にも知らないからね」
「……ライト、お前、すごいね……俺がお前の歳の頃なんて、朝晩の飯のことしか考えてなかったわ」
「本なんぞ読んだところで、腹が減ることはあっても膨れることなんて絶対にないからなぁ」

 孤児院育ちのレオニスならではのあるある話なのだが、そこは微笑みつつスルーしてあげるのが優しさというものである。

「ぼくは、レオ兄ちゃんのおかげで、ありがたいことに衣食住全て満ち足りてるからね。あ、でも晩御飯のメニューとか毎日楽しみだけど!」
「衣食住……お前、どうしてそんな言葉知ってんの……?」

 そこも華麗にスルーして話を続けるライト。

「でね、できれば図書館よりまずは本屋さんで買いたいな。借りたものだと期日までに返さないといけないし、ものによっては持ち出し禁止だろうし」
「お、おぅ……」
「図書館は、本屋さんで買って読みたい本がなくなってからでいいかなー。ぼく、本はじっくり何度も読み返したい派だから」

 ライトの話を聞いていたレオニスは、少し考えて徐に口を開いた。

「そうか、分かった。じゃあ明日にでもラグナロッツァ行くか」
「え、いいの!?ありがとう!!」

 願いを聞いてもらえて喜ぶライトだったが、はたと動きが止まる。

「あ、でも、ラグナロッツァまで行くのって、ここから片道何日もかかるんじゃ……?」
「あー、そこら辺は心配すんな。冒険者ギルドの転移門使うから」
「えッ、冒険者ギルドに転移門なんてあるの!?」

 初めて聞く話にびっくりするライト。

「おう、あんまり小さな集落なんかには冒険者ギルドの支部や出張所すらないが、大抵の街や要所にはギルドの関連建物のひとつくらいはあるんだぜ?」
「そうなんだぁ……えー、でも冒険者ギルドの設備?を個人で使えるの?使っていいもんなの?」

 ふと浮かんだライトの疑問は、最も至極なものである。
 だが、そんなライトの素朴な疑問など木っ端微塵に粉砕する、とんでもない答えがレオニスから返ってくる。

「あー、それも問題なしなし。転移門の動力源って、このカタポレンの森の魔石だから」
「!?」
「ほれ、家の周りでいつも定期的に回収する無属性の魔石。あれの魔力を転移門の動力にしてんの」
「!?!?」
「で、その魔石を冒険者ギルドに提供してるのが、俺なの。魔の森カタポレンのド真ん中に常時住み続けて、その上魔石まで採取できるのなんて今のところ俺しかいないからなー、ハハハッ」
「!?!?!?」

 ライトはあまりの驚愕に、開いた口がずっと塞がらない。
 そんなライトのことなどお構いなしに、レオニスはシレッと言い放ち続ける。

「ま、普通なら私用目的で転移門を使うなんてありえないけどな。転移門を使えるのは基本王族か上級貴族、冒険者ギルドの幹部くらいのもんだ。それも頻繁に使うもんじゃない、緊急時は別だが」
「だ、だよね?普通は、そうだよね?」
「ああ。でも俺の場合、動力源供給者権限で使い放題なの。俺だって普段そんなに転移門なんぞ使う機会は少ないが、万が一街や村が魔物に襲撃された時には一刻も早く現場に向かわなきゃならんし。それに、私用だろうと多く使ったら使ったで、使用分の補填として新しい別の魔石納めりゃいいだけの話だ」
「ああ、うん、そうなの……」
「あーでもここ最近はアルのご飯の食材買い出しでバンバン使ってるわ。だからこないだも魔石多めに渡してきたっけな、ハハハッ」
「………アルェ………」

 思わぬところで職権乱用発覚だが、アルのご飯のためなら仕方あるまい……

「ま、これからは俺だけでなく、お前も魔石納品できるようになるな。そしたらお前も転移門の使い放題確定だwww」
「そ、そ、それは……す、ごー、く、アリガタァイ、ネ、ハハ、ハ……」

 先程から塞がらない口から何とか言葉を絞り出しているが、ライトの顔はずっと引き攣りまくっている。
 その発音や音程も、何やら怪しい片言モードになっている。

「さっきも言った通り、冒険者ギルドってのはアクシーディア公国はもちろんのこと他国にも支部を置く、大陸全土に広がる多国籍組織だ。転移門のあるギルド限定ではあるが、逆に言えば冒険者ギルドのある街なら大抵は転移可能ってことになるんだ」

 このレオニスという男。
 金剛級という伝説級の実力だけでなく、転移門などという国内外を網羅する最重要設備まで牛耳ることのできる立場だったとは。

 その実力は、どこまでも底知れない。
 ライトの目には、自分の目の前でカラカラと陽気に笑うその男が、今まで以上に大きく見えた。

 俺は―――この人を越えることが、果たしてできるのか?
 あまりにも強く、あまりにも偉大なこの男に追いつけるのか?
 ―――いや、追いつき追い越さなくてもいい。肩を並べて、ともに生きていければ、それでいい―――

 あまりにも眩しく、あまりにも大きなその背中を、ライトは神妙な面持ちで見つめ続けるのだった。
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