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第31話 スレイド書肆
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そうこうしているうちに、ライト達はお目当ての本屋の前に辿り着いた。
「ここはラグナロッツァでも指折りの老舗書店だ。蔵書数も随一だし、取り扱うジャンルの幅も広い。本を探すならまずここ、てのが常識になってるくらいなんだぜ」
「お前の読みたい本や買いたい本も、ここならきっと見つかるさ」
老舗と言うだけあって、歴史と風格を感じさせる佇まいの建物だ。店の入口は重厚な扉で、扉の上には【スレイド書肆】という立派な看板が掲げられている。
ライトは緊張した面持ちで、レオニスとともに建物の中に入った。
中に入ると、執事の出で立ちをした男性がいた。
「おや、レオニス。いらっしゃいませ」
「久しぶりだな、グライフ。ちょいと邪魔するぜ」
「どうぞごゆっくり。……おや、こちらのお子さんは?」
レオニスにグライフと呼ばれた、オーナー?店番?らしき男性がライトを見た。
白藍色の髪を左側に緩く縛り、横に流している。年の頃はレオニスより少し上くらいか。
瞳は深い青藍色で、何もかもを見透かしてしまいそうな知性と教養を感じさせる眼差しだ。軽くかけている縁なし眼鏡が、更にその知的オーラを倍増させている気がする。
姿勢良く背筋をピンと伸ばした佇まいも、彼の育ちの良さや品の良さを感じさせる。
一目見ただけで上質な生地と分かる、淡いグレーのクラシカルな燕尾服を着た執事風の男性グライフから、柔らかく優しい眼差しを向けられたライトは慌てて挨拶をした。
「あ、えっと、ぼく、ライトっていいます。今日はぼくがレオ兄ちゃんにお願いして、本屋さんに連れてきてもらいました」
グライフは微笑みながら、挨拶を返した。
「これは丁寧なご挨拶、痛み入ります。私はグライフと申します。代々この書店を営むスレイド家の末席に連なる者にて、以後お見知りおきいただければ幸いでございます」
レオニスとはまた違う、知的方面のイケメン大王だ。
洗練された動作のひとつひとつが全てにおいて優雅で、その見事なまでに美しい所作にライトは思わず見惚れてしまった。
そんなライトの横で、レオニスがライトの耳に向けて何やら囁く。
「……ライト、こいつは今でこそこんな優雅な態してるがな、もとは聖銀級の冒険者だからな?クレア同様騙されんなよ?」
「えッ、そうなの?」
レオニスの忠告に、ライトは驚いた。
どこからどう見ても紳士然としていて、とても元冒険者とは思えない雅な雰囲気だが、レオニスが言うからにはそれは事実なのだろう。
しかも聖銀級、それはレオニスの金剛級の次に位置する階級である。金剛級ほどではないが、聖銀級に至れる者も指折り数える程度の数少ない精鋭中の精鋭だという。
このグライフという青年、見た目に反してかなりの実力者のようである。
「……コホン。レオニス、それはもう昔の話ですよ?」
グライフが小さな咳払いをしながら、レオニスを横目でちろりと見遣る。
「何言ってんだかな。お前ほどの腕がありゃ、今だって現役バリバリ最前線の冒険者やれるだろうに」
「私はもう冒険者として十分に働いたし、十二分に楽しみましたよ。これからはスレイド家の者として、その務めを果たしていくことが私の望みです」
「そんなもんかねぇ。ま、お前がそうしたいならそれが一番だろうけど」
「そんなもんですよ。それに、本を見るのも読むのも書くのも探すのも、全て好きですし。書店の店番なんて、最も私の性に合ってますからね」
二人は穏やかな表情で、軽快かつ楽しそうに会話を交わす。
「あー、俺も隠居したら何か没頭できるような趣味でも見つけなきゃなぁ」
「おやおや、日も高い真っ昼間から何やら寝言を吐いてるようですね。寝言は寝て言うものですよ?貴方が冒険者引退とか、エイプリルフールも尻尾を巻いて裸足で逃げ出すジョークですね」
「……お前ね、クレアと同じようなこと言ってんじゃないよ」
「彼女とは遠縁の親戚ですし、多少似通うのは致し方ありません」
「ホンット、お前らって手に負えねぇよな……」
「金剛級の御仁からお褒めに与り、光栄の至りに存じます」
「褒めてねぇよ……」
ここでグライフは、渋い顔をしているレオニスは放置放置、とばかりにライトの方に身体を向き直した。
「ライトさん、本日はどのような本をお探しですか?」
「あッ、えっと、この国や世界の歴史を詳細に書いてある歴史書とか、魔法関連の技術書、職業に関する本などがあれば、購入したいと思っています」
「……これは驚きました。レオニスのところのお子とは、とても思えないほど賢くて聡明な御方ですねぇ……」
「そうだろそうだろ、ライトはすんげー賢くて優しくて良い子なんだぞ?」
グライフは、びっくりした面持ちでライトの顔を見る。
あのね、レオ兄?
何気にレオ兄がディスられてるんだから、そこは怒るところじゃないの?フッフーン♪とか機嫌良さ気に鼻高々するところじゃないと思うよ?
つーか、二人とも、俺のことを褒めたり手放し絶賛とか照れくさいからやめてッ!
「知識を求めて書物を手に取り読むというのは、とても良い事です」
「ライトさんのご希望に沿える品があるかどうかは分かりませんが、お時間の許す限りご滞在ください」
「何かご質問やご要望がございましたら、いつでもお呼びください」
「では、どうぞごゆっくりお過ごしください」
グライフはそう言うと、静かに店の奥に引っ込んでいった。
その後ろ姿を、ライトとレオニスは静かに見送る。
「……はぁー、ラグナロッツァってすごいところなんだねぇ、あんな立派な紳士さんが聖銀級の元冒険者で、今は本屋さんでのんびりと店番してるだなんて。想像もつかないや」
「ライト、さっきも言ったが騙されちゃいかんぞ?あいつはクレアと同類の人種だ」
そういやさっきも、グライフさん自身が遠縁だから致し方ないとか言ってたっけ。
ゲームではクレア嬢の縁戚なんて出てこなかったが、リアルとなれば親兄弟や親戚くらいいて当たり前だよな。
それに、言われてみれば知的な雰囲気といい話し方や仕草といい、どことなく二人は似ているような気がする。
「ふふっ、そんなこと言って。レオ兄ちゃんは、クレアさんともグライフさんとも、とっても仲良し、なんでしょ?」
「……まぁな。あいつらほど冒険者というものを理解して行動できるやつもそうはいないからな」
照れ隠しなのか、少し顔を背けながら若干小声で呟く。
「ぼくもいつか冒険者になったら、レオ兄ちゃんのようにたくさんの友達や、信頼できる仲間ができたらいいなぁ」
「ライトならできるさ!俺が保証するぜ!!」
「もちろん、僕が世界で一番信頼しているのは、レオ兄ちゃんだからね?」
「……ううッ、ライトぉぉぉ、嬉しいこと言ってくれるじゃないかぁぁぁッ」
うっすらと涙目になりながら、ライトに渾身の頬ずりをするレオニス。
そんな暑苦しいレオニスに苦笑いしながらも、なすがままに身を委ねるライトであった。
「ここはラグナロッツァでも指折りの老舗書店だ。蔵書数も随一だし、取り扱うジャンルの幅も広い。本を探すならまずここ、てのが常識になってるくらいなんだぜ」
「お前の読みたい本や買いたい本も、ここならきっと見つかるさ」
老舗と言うだけあって、歴史と風格を感じさせる佇まいの建物だ。店の入口は重厚な扉で、扉の上には【スレイド書肆】という立派な看板が掲げられている。
ライトは緊張した面持ちで、レオニスとともに建物の中に入った。
中に入ると、執事の出で立ちをした男性がいた。
「おや、レオニス。いらっしゃいませ」
「久しぶりだな、グライフ。ちょいと邪魔するぜ」
「どうぞごゆっくり。……おや、こちらのお子さんは?」
レオニスにグライフと呼ばれた、オーナー?店番?らしき男性がライトを見た。
白藍色の髪を左側に緩く縛り、横に流している。年の頃はレオニスより少し上くらいか。
瞳は深い青藍色で、何もかもを見透かしてしまいそうな知性と教養を感じさせる眼差しだ。軽くかけている縁なし眼鏡が、更にその知的オーラを倍増させている気がする。
姿勢良く背筋をピンと伸ばした佇まいも、彼の育ちの良さや品の良さを感じさせる。
一目見ただけで上質な生地と分かる、淡いグレーのクラシカルな燕尾服を着た執事風の男性グライフから、柔らかく優しい眼差しを向けられたライトは慌てて挨拶をした。
「あ、えっと、ぼく、ライトっていいます。今日はぼくがレオ兄ちゃんにお願いして、本屋さんに連れてきてもらいました」
グライフは微笑みながら、挨拶を返した。
「これは丁寧なご挨拶、痛み入ります。私はグライフと申します。代々この書店を営むスレイド家の末席に連なる者にて、以後お見知りおきいただければ幸いでございます」
レオニスとはまた違う、知的方面のイケメン大王だ。
洗練された動作のひとつひとつが全てにおいて優雅で、その見事なまでに美しい所作にライトは思わず見惚れてしまった。
そんなライトの横で、レオニスがライトの耳に向けて何やら囁く。
「……ライト、こいつは今でこそこんな優雅な態してるがな、もとは聖銀級の冒険者だからな?クレア同様騙されんなよ?」
「えッ、そうなの?」
レオニスの忠告に、ライトは驚いた。
どこからどう見ても紳士然としていて、とても元冒険者とは思えない雅な雰囲気だが、レオニスが言うからにはそれは事実なのだろう。
しかも聖銀級、それはレオニスの金剛級の次に位置する階級である。金剛級ほどではないが、聖銀級に至れる者も指折り数える程度の数少ない精鋭中の精鋭だという。
このグライフという青年、見た目に反してかなりの実力者のようである。
「……コホン。レオニス、それはもう昔の話ですよ?」
グライフが小さな咳払いをしながら、レオニスを横目でちろりと見遣る。
「何言ってんだかな。お前ほどの腕がありゃ、今だって現役バリバリ最前線の冒険者やれるだろうに」
「私はもう冒険者として十分に働いたし、十二分に楽しみましたよ。これからはスレイド家の者として、その務めを果たしていくことが私の望みです」
「そんなもんかねぇ。ま、お前がそうしたいならそれが一番だろうけど」
「そんなもんですよ。それに、本を見るのも読むのも書くのも探すのも、全て好きですし。書店の店番なんて、最も私の性に合ってますからね」
二人は穏やかな表情で、軽快かつ楽しそうに会話を交わす。
「あー、俺も隠居したら何か没頭できるような趣味でも見つけなきゃなぁ」
「おやおや、日も高い真っ昼間から何やら寝言を吐いてるようですね。寝言は寝て言うものですよ?貴方が冒険者引退とか、エイプリルフールも尻尾を巻いて裸足で逃げ出すジョークですね」
「……お前ね、クレアと同じようなこと言ってんじゃないよ」
「彼女とは遠縁の親戚ですし、多少似通うのは致し方ありません」
「ホンット、お前らって手に負えねぇよな……」
「金剛級の御仁からお褒めに与り、光栄の至りに存じます」
「褒めてねぇよ……」
ここでグライフは、渋い顔をしているレオニスは放置放置、とばかりにライトの方に身体を向き直した。
「ライトさん、本日はどのような本をお探しですか?」
「あッ、えっと、この国や世界の歴史を詳細に書いてある歴史書とか、魔法関連の技術書、職業に関する本などがあれば、購入したいと思っています」
「……これは驚きました。レオニスのところのお子とは、とても思えないほど賢くて聡明な御方ですねぇ……」
「そうだろそうだろ、ライトはすんげー賢くて優しくて良い子なんだぞ?」
グライフは、びっくりした面持ちでライトの顔を見る。
あのね、レオ兄?
何気にレオ兄がディスられてるんだから、そこは怒るところじゃないの?フッフーン♪とか機嫌良さ気に鼻高々するところじゃないと思うよ?
つーか、二人とも、俺のことを褒めたり手放し絶賛とか照れくさいからやめてッ!
「知識を求めて書物を手に取り読むというのは、とても良い事です」
「ライトさんのご希望に沿える品があるかどうかは分かりませんが、お時間の許す限りご滞在ください」
「何かご質問やご要望がございましたら、いつでもお呼びください」
「では、どうぞごゆっくりお過ごしください」
グライフはそう言うと、静かに店の奥に引っ込んでいった。
その後ろ姿を、ライトとレオニスは静かに見送る。
「……はぁー、ラグナロッツァってすごいところなんだねぇ、あんな立派な紳士さんが聖銀級の元冒険者で、今は本屋さんでのんびりと店番してるだなんて。想像もつかないや」
「ライト、さっきも言ったが騙されちゃいかんぞ?あいつはクレアと同類の人種だ」
そういやさっきも、グライフさん自身が遠縁だから致し方ないとか言ってたっけ。
ゲームではクレア嬢の縁戚なんて出てこなかったが、リアルとなれば親兄弟や親戚くらいいて当たり前だよな。
それに、言われてみれば知的な雰囲気といい話し方や仕草といい、どことなく二人は似ているような気がする。
「ふふっ、そんなこと言って。レオ兄ちゃんは、クレアさんともグライフさんとも、とっても仲良し、なんでしょ?」
「……まぁな。あいつらほど冒険者というものを理解して行動できるやつもそうはいないからな」
照れ隠しなのか、少し顔を背けながら若干小声で呟く。
「ぼくもいつか冒険者になったら、レオ兄ちゃんのようにたくさんの友達や、信頼できる仲間ができたらいいなぁ」
「ライトならできるさ!俺が保証するぜ!!」
「もちろん、僕が世界で一番信頼しているのは、レオ兄ちゃんだからね?」
「……ううッ、ライトぉぉぉ、嬉しいこと言ってくれるじゃないかぁぁぁッ」
うっすらと涙目になりながら、ライトに渾身の頬ずりをするレオニス。
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