ブラック企業のおっさんが天使と悪魔の力を駆使して地球を救う話 〜ギャンブルなんて二度とせんわ!賭けてもええで!〜

真星 紗夜

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02.ミクちゃんの教育係はワイや!

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 ――ピピピピッピピピピッ♪

 スマホのアラームが鳴っている。
 ワイはいつもの時間にいつものように目を覚ました。

 時刻は六時。 もう見慣れてしまった時間や。
 どうしてアラームの音ってこんな耳障りなんやろか。

 今日は四月一日の土曜日、休日出勤一日目や。
 まあ、年度が変わったからって何も特別な事はあらへん。
 
「今日も朝のニュースつけるか……」

『続いてのトピックです。
 日本の剣道界が誇るあの選手に、我々が密着取材いたしました』

 そういや、ワイも学生の頃は剣道で全国大会出たっけなぁ。
 ここ十年以上は身体動かしてへんから、もうアカンやろけど……。

「ほな、今日も会社に行きまっか」
 
 ◇

 会社に到着し、いつも通り一時間半のタダ働きを終えると、今日は珍しく社長も事務所に来た。
 そう、新年度の初日は毎年決まって全員で社歌を歌い、社訓を唱和するんや。
 そして、社長の一時間くらいのスピーチをボーっと聞き流す。

 北粥きたかゆ社長もハゲたよなぁ……。
 はぁ……、これが終わったらまた通常業務や……。
 なんやかんや毎年恒例のこの暇な一時間が楽しみなんやけどな。

 そんな事をボケーっと考えていると、社長が何かを話し始めたんや。
 ワイの耳に飛び込んできたんは信じられへん言葉やった。

「今年度から、新しい仲間が加わることになった。
 さあ、入ってくれたまえ」

 な、なな、なんやって!
 何年ぶりの新入社員なんや!

「失礼いたします!」

 その女の子はパリッとしたスーツ姿で清潔感のある容姿やった。
 朝日に照らされたツヤツヤの髪は青っぽく光って見えた。

 ……!
 この子、ワイの通勤中によく現れて、笑顔で会釈してくれる子や……!
 
「こちらが、新卒で入社となった天導てんどうさんだ。
 自己紹介を頼むよ」

「はい!今日からお世話になります、都立天柄あまつか高校卒の天導未来てんどうみくと申します!
 ご迷惑をおかけしますが、ご指導よろしくお願いします!」
 
 その新入社員はそう言って深々と頭を下げた。
 とてもハキハキとしていてワイには好印象や。

 ワイが彼女に見惚れていると、鈴香部長がこう続けた。

「それじゃ、みんな業務開始!
 彼女の教育係はサビ残くんに任せたわよ。
 ……あと、歓迎会のセッティングも頼むわね?」

「あっ、承知しました!鈴香部長」

 反射的にそう言ったが、ホンマは何も承知してへんで……。
 新人教育なんてした事あらへんし、マニュアルとかも見た事ないで……?

 とにかく、彼女はワイのクソみたいな日常に現れた一人の天使や。
 なんとか辞めないでもらえるよう、優しくせんと。

「じゃあ、天導さん。 
 まずは、簡単にワイの自己紹介でもするから、リラックスして聞いてな」

「はいっ!」

「ワイは錆田斬鉄さびたざんてつ
 この黒糖製菓では開発課の課長をやっとるんや。
 まあ、メンバーはみんな辞めちゃってワイしかおらんのやけど……」

「ザンテツ課長って、珍しいお名前ですよね!
 一回聞いたら忘れられないです!
 あ!私の事はミクって呼んでください!」

「ミクちゃんね! 了解や!
 ほな、早速ワイのお仕事見てもらおうかな!
 これ、ワイが新人の時にメモった紙なんやけど、見てみ?」

 ワイはそう言って、汚い字で書かれたメモ帳を見せた。

 ――――
 ぼくの仕事のじゅん番メモ
 1.黒糖を使ったデザートを考える。
 2.調理室で作る。
 3.自分で食べてレシピをしゅう正する。
 4.なっ得するもの出来たら上司に食べさせる。
 5.OK出たら工程書を作成して、外部イタクする。
 ――――

 ミクちゃんはサッと流し見をしてふむふむと頷いている。

「なるほど、これが課長のお仕事なんですね!」

「せやで。
 まぁ一番ムズいんは、最後のOK貰うとこやな。
 大事なんは、上司の機嫌とタイミングなんやで?」

 ワイはそう言いながら事務所内をキョロキョロ見渡した。
 
「ほな、ここで問題や!
 今の鈴香部長、ムズい顔してPCカチカチしとるやろ?
 アレは何をやっとるんでしょ~か?」

「オンライン麻雀で忙しいんでしょうか?」

「ちゃうちゃう。
 アレな、オンライン麻雀やって――
 って、当たってるやん! なんで分かったん⁉︎」

「まぁ、分かってたと言うか、知ってたと言うか。
 ここで正解すると、課長そういう反応するんですね。ふふふ」

 ……? この子は何を言っとるんや?
 まあ、ええか。
 
「ほんでな、麻雀で負けとる時は決まって椅子の上であぐらをかくんや。
 せやから、そういう時は試食頼んだらアカン。
 上司を観察する能力が合否を分けると言っても過言やないねん!」

「勉強になります!先輩!」

「ええ返事や!
 ほな、黒糖パンの試作やってみよか?」

「はいっ!よろしくお願いします!」
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