ブラック企業のおっさんが天使と悪魔の力を駆使して地球を救う話 〜ギャンブルなんて二度とせんわ!賭けてもええで!〜

真星 紗夜

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ReReRe……06.何度やっても勝てへん

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 ――ピピピピッピピピピッ♪

 今日は覚えとるだけでも十回目の四月九日の日曜日や。

 ループしとるおかげか肉体的な疲労は一切感じへんが、精神的にはそろそろキツいで……。
 あの宇宙人、勝たれへんわ。

「……ん?待てよ。
 ループしとるって事は全て元に戻るって事やんな?
 よっしゃ、冷蔵庫のもん爆食いしたるで!」

 ワイは冷食の唐揚げやらパスタやらを全てチンして、朝っぱらからたらふく食べた。
 デザートにはカコが買っていたプリンや♡

 
「ふぅ~、腹いっぱいや……。ゲプッ」

 そんな訳で、今回のループでも寝ているカコを放置してミクと公園へ向かった。

 ◇

 ――キュイィィン!

 公園に着くなりミクちゃんは刀に変身し、ワイはそれを握りしめた。
 
『それじゃ、パラドックス起こしますね!
 ザンテツ課長の預金残高は八万二千円、経験人数は一人、アパートの洗面所の下にはTENGOが置いてあって、五年前には鈴香部長のパンストで◯◯◯◯ピーして――』

「はいはい、当たっとるで……。
 毎度この詠唱がキツいけど、毎回内容変えへんでええやろ!」

 直後、いつものように目の前には全身銀色の宇宙人が現れる。
 もはや見慣れた光景や。

「◎△$♪×¥●#!」

「よっしゃ、負けへんで! 宇宙人!」

 奴との距離はおよそ十メートル。
 ワイは刀を構えてジワリジワリと前に進む。

 ……がむしゃらに攻めるんは通用せんのは分かった。
 一撃目は敢えて外してみるか……!

 対する宇宙人もワイを見つめて戦局をうかがっとる。
 まあ顔はのっぺらぼうやから、“見つめて”ってのは変やが。

 ワイは斬撃を奴の右の足元めがけて放った。
 当然、奴はそれを避けるように左にジャンプした。

 戦場には土煙が舞っている。

『課長!今です!』

 ワイは不意をつき、低い姿勢で一気に間合いに入った。

「もろたでぇっ!」

 ――スパンッ!

 その瞬間、宇宙人の首からは白い血飛沫が上がった。
 まぁ、それが血なんかは分からんが。

 ……しばらく静寂が流れる。

「やっと……、勝てたんか……」

『ザンテツ課長!やりましたね!
 四月のうちに宇宙人を倒すなんて、今までのループじゃ考えられない快挙です!
 それじゃ、刀を地面に置いて後ろを向いてください』

「ん? ……あぁ、了解や」

 ワイはとりあえず言われた通りにした。

 ――キュイィィン!

 背後が光ったかと思うと、裸足で地面を走る音がした。
 
 ……なるほど、ミクちゃんは地面に落ちた下着や服を拾いに行ったんやな。

 すると、遠くからお決まりのやり取りが聞こえた。

「ママ~、あのお姉ちゃん服着てないよ~?」
「しっ! 見るんじゃありません!」

 ミクちゃん、変身解除するたびに全裸になるん大変やな……。

「あ~あ、羽を生やした時、ジャージの背中に穴開いちゃいましたね……。
 ブラはホックが壊れてしまいましたし……。
 あ!もうこっち向いて大丈夫ですよ!」

 振り向くと、ミクちゃんの新しめのピンクのジャージは見るも無惨な姿になっていた。

「新しいジャージ、買ったろか……?」

「無理しないでくださいよ、残高八万二千円なんですから……」

「それは……、ミクちゃんの力でパチ回るまでループさせれば、稼げるんとちゃう……?」

「そんな使い方、絶対許しませんよ……!」

 ◇

 家に帰る途中、ワイはふと気になった事をミクちゃんに質問してみた。
 
「今更やが、何故に宇宙検閲官は地球を消そうとするんや?」

「宇宙検閲官は地球を支配している人間の幸福度の低さをバグと捉えているのです」

「確かに、幸福度が低いのは否定せんが……。
 そんな事で惑星一つを消すほどなんか?」
 
「最近新しく就任した検閲官は方針をガラッと変えて、惑星を次々と消してるんですよ。
 ですが、今の宇宙では反感が高まってます!
 私としても、神から任されたこの地球を消させる訳にはいかないんです!」

「過激な奴が検閲官に選ばれたんやな……。
 てか、神って言うのは何や?」

「神は神ですよ! この宇宙の創造神です!
 その神が天使と悪魔を各惑星に派遣するんです!」

「天使とか悪魔の存在も疑わしいが、神なんてホンマにおったんやな……。
 でも、検閲官も神が選んだんとちゃうん?」

「検閲官って言うとなんか公的なイメージをされるかもしれませんけど、実情は歪んだ正義を掲げる自警団みたいな連中なんです」

「宇宙にも色々派閥があるんやなぁ。
 あともう一つ聞きたいんは、なんでワイが巻き込まれなアカンねんって事や。
 きっとワイ、他にもやりたい事あると思うで~?
 パチンコとかソシャゲとか」

 それを聞くと、ミクちゃんはピタリと足を止めた。

「……、ザンテツ課長、本当なら三十歳手前で亡くなられるんですよ」

 ……え? なんやて……?
 
「課長、三十歳過ぎたら無敵の人になりましたよね?
 男優に応募したり、鈴香部長のパンストで◯◯◯◯ピーしたり……」
 
 確かに言われてみれば、ワイも昔は慎重で心配性で生真面目で責任感の強い男やった。
 だがそのくらいの時期からやな、全てがどうでも良くなって恥を捨てて……。
 それで自分のことを“ワイ”とか言ったり、エセ関西弁を使い始めたりしたんや……。

「ワイ、やっぱり自殺なんか……?」

「……はい。
 バグの都合上詳しくは教えられませんが、ザンテツ課長は自らの命を断つ決断をされたんです。
 ですが、私の能力で巻き込んでしまってその機会を失ったのです」

「責任とか感じとるんやったら、筋違いやで……」

「そうはいかないですよ。
 私は課長の人生の“幸福の総量”を乱してしまいました。
 現状、本来の人生よりも十年ほど長くブラック企業で働かせてしまっています。
 だからこれからは幸せにさせる義務があるんです!
 私の力で、課長を宇宙の英雄にして差し上げたくて……」
 
「それが天使の仕事って事かいな?」
 
「はい。私がもっと上手くやれていれば、地球の人々にはもっと幸せになってもらう事ができたんです……。
 私はまだまだ未熟者です……」

「そんな落ち込むなや!
 よっしゃ、なんかウマイもん食いに行くで!
 残高八万二千円のワイが何でも奢っちゃるわ!」

 長かった四月九日は、高級寿司を食べながら幕を閉じた。
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