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せつなときずな 27
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「せつなときずな」 27
煙草の臭いがする。
サキは刹那の部屋に上がると、その乾いた埃っぽい残香に、なんとも言い難い不安を覚えた。
それを聞こうかどうか、心の中で躊躇した。
二つに一つだ。
刹那が誰かを部屋に上げた。
その場合、親しい友人がいるとは思えない娘には、男の影を疑いたくなる。
もしくは、刹那自身が喫うということ。
自分が知る限り、今まで喫煙体験を持たない刹那がそれを選択したということは、決してポジティブな行動とは思えない。
犯罪加害者家族になるということは、日常生活が心の変調に侵食されるということなのだ。
自分が喫煙者のサキは、その残香に気後れする。
絆が生まれてから、絆とサキの健康を気にした刹那から、せめて電子タバコに換えてはどうかと言われたことがある。
「タバコは…」
サキはその時の返答を思い返した。
「人生のスタイルなのよ。
健康を摂るかどうかも、自分の人生の選択。
その選択の結果タバコを喫うということは、生き様なのよ」
喫煙者の男ができようが、刹那自身が喫煙を選ぼうが、この状況ではどちらにしてもよろこばしいことではないし、私の言葉を覚えていてタバコを喫うのなら、相応の覚悟もあってのことかもしれない。
自宅でも、林家に訪れた時でも、サキは自分以外の誰かがいたら席を外して外でしか喫わなかった。
しかし、誰かはここで喫っていたのだ。
またやっかいな感じだなと思うと、サキは自分が猛烈に一服つけたくなって背中がぞわぞわした。
「刹那」
サキは考えるのが面倒くさくなってしまい、そのままを刹那にぶつけた。
「あんた、煙草喫ってるの?」
「うん」
刹那はサキの目を見ない。
後ろめたいと思うなら、やらなければいいのにと思わなくもない。
「別にそれはいいんだけどさ、どうして今のタイミングで喫いだしたの?」
こういう空気を読めないところが、刹那にとっては母親を苦手に感じる理由の一つなのだが、いづれわかることだからと最初から隠す気がなかったのも自分自身だ。
「自分の人生に対する、ささやかな反逆」
だろうなとサキはおもったが、案外正直に話した娘の心中を思うと、刹那はやっぱりぎりぎりなのかもしれないと考えずにはいられない。
かといって、今の自分には、娘を安心させるだけの力など微塵も持ち合わせていない。
そしてそれは、20年以上を経て、初めて親として娘と向き合っているという苦しい現実をサキに突き付けている。
「煙草は好きじゃなかったけど、お母さんが煙草を喫う姿はいつも様になってるって、ずっと思っていたんだ。
他の同性の誰よりも、そんな風に見えた。
私は…それが、なんていうか、ちょっとした嫌悪と、ちょっとした憧れのない交ぜの気持ちで見ていたんだと思う。
そして今、当たり前だけど、もう最低な感じでしょ。
だから、そのちょっとした嫌悪とちょっとした憧れで、遅れてきた反抗期みたいなダサいことをしたくなったんだって、たぶんそんな感じ…」
言い訳をする幼い子供のような刹那を見つめながら、私の感情に、娘の言葉のほんの一握りの感性でもあったならと、サキは切ない気持ちになった。
煙草の臭いがする。
サキは刹那の部屋に上がると、その乾いた埃っぽい残香に、なんとも言い難い不安を覚えた。
それを聞こうかどうか、心の中で躊躇した。
二つに一つだ。
刹那が誰かを部屋に上げた。
その場合、親しい友人がいるとは思えない娘には、男の影を疑いたくなる。
もしくは、刹那自身が喫うということ。
自分が知る限り、今まで喫煙体験を持たない刹那がそれを選択したということは、決してポジティブな行動とは思えない。
犯罪加害者家族になるということは、日常生活が心の変調に侵食されるということなのだ。
自分が喫煙者のサキは、その残香に気後れする。
絆が生まれてから、絆とサキの健康を気にした刹那から、せめて電子タバコに換えてはどうかと言われたことがある。
「タバコは…」
サキはその時の返答を思い返した。
「人生のスタイルなのよ。
健康を摂るかどうかも、自分の人生の選択。
その選択の結果タバコを喫うということは、生き様なのよ」
喫煙者の男ができようが、刹那自身が喫煙を選ぼうが、この状況ではどちらにしてもよろこばしいことではないし、私の言葉を覚えていてタバコを喫うのなら、相応の覚悟もあってのことかもしれない。
自宅でも、林家に訪れた時でも、サキは自分以外の誰かがいたら席を外して外でしか喫わなかった。
しかし、誰かはここで喫っていたのだ。
またやっかいな感じだなと思うと、サキは自分が猛烈に一服つけたくなって背中がぞわぞわした。
「刹那」
サキは考えるのが面倒くさくなってしまい、そのままを刹那にぶつけた。
「あんた、煙草喫ってるの?」
「うん」
刹那はサキの目を見ない。
後ろめたいと思うなら、やらなければいいのにと思わなくもない。
「別にそれはいいんだけどさ、どうして今のタイミングで喫いだしたの?」
こういう空気を読めないところが、刹那にとっては母親を苦手に感じる理由の一つなのだが、いづれわかることだからと最初から隠す気がなかったのも自分自身だ。
「自分の人生に対する、ささやかな反逆」
だろうなとサキはおもったが、案外正直に話した娘の心中を思うと、刹那はやっぱりぎりぎりなのかもしれないと考えずにはいられない。
かといって、今の自分には、娘を安心させるだけの力など微塵も持ち合わせていない。
そしてそれは、20年以上を経て、初めて親として娘と向き合っているという苦しい現実をサキに突き付けている。
「煙草は好きじゃなかったけど、お母さんが煙草を喫う姿はいつも様になってるって、ずっと思っていたんだ。
他の同性の誰よりも、そんな風に見えた。
私は…それが、なんていうか、ちょっとした嫌悪と、ちょっとした憧れのない交ぜの気持ちで見ていたんだと思う。
そして今、当たり前だけど、もう最低な感じでしょ。
だから、そのちょっとした嫌悪とちょっとした憧れで、遅れてきた反抗期みたいなダサいことをしたくなったんだって、たぶんそんな感じ…」
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