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第十七話 悲運の始まり

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「……あの者……よくも……!」

ルイナ妃は苛立ちを隠せなかった。自室に戻っても余韻は冷めないまま、現実が受け入られなかった。

私は絶対に王子と一緒になりいずれはこの国の王妃になる…ルイナ妃には野望があった。

側室になった現状では満足できない…もっと上に登りつめる必要がある…

……きっと王子には伝わっていたのだろう…己の野心が…

野心を持つ者より自分を心から愛してくれる人…王子の考えていそうなことは訊かずとも分かる。

私は自分の身を投げ売って王子を助けようとは思わない。そこまで王子のことは愛していない。

いや…そもそもとルイナ妃は思う。

王子を愛しているとかいないとかではなく、王妃になるための資質があるかどうかで決めるべきではなかろうか…

しかもあの者は…この国に災いを及ぼすとされる者…
幾多の血が流れることだろう…
そんな者がもし王妃に選ばれようものなら…この国はどうなってしまうのか…
それに私は側室から王妃に登りつめることができなくなってしまうだろう…

早いところあの者をどうにかしなければ…
…………そうか…この逸話を利用すればいい………

……今…王子とあの者は親密な仲にある…

……この国の民が命を落とすことになれば…
 王子は自分を責めあの者と距離を置こうとするのではなかろうか…
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